アレキサンマルコの活躍によって新河系は完成し、待望の平和の時代が訪れたかのように見えた。
しかし、新世界パンゲラクシーでは聖魔の悲劇が繰り返されようとしていた。
土の大層マッドーチェの荒野からは命の息吹は何一つ感じられず、静寂だけが存在していた。
「残りはセレンスだけ・・・無事でいてくれよ。」
苛立った顔を浮かべながらベリー・オズは独りオーストルーザーでコッキー達に合流すべくその中を疾走していた。
彼がなぜここに居るのかというとそれは新河系が完成して少し後にまでさかのぼる。
新河系が完成され、平和な時代を謳歌していたオズはアレキサンマルコ、ディオ・コッキーと一緒に異聖メディアによって曼聖羅に呼び出された。
そして、そこで告げられたのは新世界パンゲラクシーの存在と自分の分身ともいえる存在が第二の曼聖羅を作るべく暗躍しているという衝撃の事実である。
異聖メディアから命じられたのはその動きを止めてほしいというというものであった。
次界に戻ったオズ達は協議を行い、パンゲラクシーへは先発隊として自分とコッキーが行くことになったがそれに待ったをかけてきた者達がいた。
セレンス達ベイギャルズである。ベイギャルズは新河系創造の際のエネルギーの影響でそれぞれの因子が活性化し、GD5としてパワーアップ可能になっていたのだ。
ベイギャルズはいまだ不安定な新河系の重要人物である二人に代わって自分達がパンゲラクシーに行くと言い出したのだ。
最初はその提案に躊躇したオズ達も彼女達の熱意に押されてお目付け役としてアクア層から来たヤマト王子の因子を持つ戦士ヤマトJ(ジュニア)の同行を条件としてその任務を任せることにした。
しかし、その決断が裏目にでたのかベイギャルズからの連絡が一週間もしないうちに連絡が全く無くなってしまったのだ。
そこで、第二陣として派遣されたのが自分とコッキーというわけである。
「オズが頑張ってる姿を見てたら、私も新河系のために何か役に立たなきゃって思っただわさ。」
パンゲラクシー出発前夜にオズの胸元でふと言ったセレンスの言葉がオズの耳元で甦った。
そのときの彼女のさらりとした髪の感覚はオズは妙に覚えていた。
あの時彼女達の提案を受け入れなければこんなことには確実にならなかった。オズはただ自らの決断をひたすらに悔やんでいた。
別れて捜索しているコッキーからはすでに風の大層でヤマトJ、 金の大層でベスタニャ、 水の大層でメルクリン、 森の大層でボルカンヌの四名の無事と
火の大層でミネルンバが悪魔化され、クライシスピーターになったということ、全ての原因は水の大層の層主ハムラビシーゲルであるという報告を受けていた。
「セレンス!!聞こえたら返事をしろ!!私だ!!ベリー・オズだ!!」
苛立ちを周囲にぶつけるように大声でオズが叫んでも周囲からは何一つ物音は感じられなかった。
「何も反応はなしか・・・。」
オズはオーストルーザーを降りると周囲を見回した。コッキーからの情報によるとセレンスはこの土の大層に向かったらしい。
どんな思いでセレンスはこの大層を歩いていたのだろう。たった一人で心細かったのではなかろうか。
もしセレンスがミネルンバのように悪魔化したらそれはしぶしぶ提案を受け入れを主張した自分の責任である。
思考の海で溺れていたオズを引き上げたのはどこか懐かしい印象を受ける中性的な男の声であった。
「おい、貴様。どこの大層の手の者だ?」
腕組みしながらオズを見つめるその声の主は言葉こそ穏健であるが目は明らかにオズを敵視していた。
「私はベリー・オズ。新河系から来たものだ。人にものを尋ねるときは自分から言うのが礼儀であろう。」
オズはいつ戦闘になってもいいようにマヤセッ剣を構えた。
「俺か?俺はクライシス・フッド。水の大層の層主ハムラビシーゲル様の手の者だ。」
「クライシス・フッドだと!?」
オズはフッドという言葉で動きを止め、クライシス・フッドを見つめた。セレンスの持つ因子が魯迅フッドのものだったからである。
名前がフッドだと?そんなはずはない第一セレンスは女だ。単なる偶然にきまっている。おおかたハムラビシーゲルとやらの姑息な計略であろう。
オズは最悪の可能性を心の中で無理やり笑い飛ばそうとしたがクライシスフッドの緑の肌はセレンスのマスクの色をそっくりであった。
「どうした?かかってこないのか?俺はいつでも準備はできてるぜ。それともその剣はお飾りか?」
「それよりも貴殿に尋ねる。セレンスという女性がここに来たはずなんだが覚えはないか?」
オズは無駄を承知でこの悪魔に訪ねてみるとした。すると挑発めいた笑いを浮かべていたクライシスフッドの顔が突然怒りに変わった。
「貴様!!俺の前でその名前を言うんじゃねえ!!」
クライシスフッドはオズがマヤセッ剣を引き抜く前にオズを殴り飛ばしていた。
「くっ・・。」
オズはよろめきながら立ち上がり、目を血走らせているクライシスフッドを改めて見つめることにした。
背中に生えた蝙蝠に似た翼、黄色い目と口に生えた牙、姿だけで考えるなら彼の知る悪魔そのものであったが
オズはその額にセレンスの持っていた銅鐸の形の装飾を見つけるとセレンスの武器であるリンリンごう鐸を思い出した。
フッドという名前、セレンスのマスクと同じ色の肌、セレンスという名前に対するアレルギー的な反応、額の銅鐸の装飾、全てがオズに最悪の可能性が実現したと証明していた。
「まさか・・・本当に・・・君が・・・セレンスなのか?」
オズは愕然とした表情を浮かべながらフッドに尋ねたが、オズのその言葉はクライシスフッドを更に激高させた。
「黙れ!!」
クライシスフッドが再びオズに殴りかかろうと拳を作った瞬間、オズの目の前で奇妙な現象が起こり始ったのである。
「このアマ・・・出てくるんじゃねえ・・・ちっ!!」
クライシスフッドは殴ろうとしていた腕をもう一方の自ら腕で押さえたのだ。
次に、背中に生えていた翼と口の牙が消えて、目の色は黄色から白に変わり瞳も茶色になった。
最後は中性的な男性のものであったクライシスフッドの体が膨らみと丸みを帯びて女性のものへと変わっていったのである。
しばらくして変化を終えたクライシスフッドの体にオズはセレンスのものだと即座に気づいてしまったのだった。
「オズ・・・助けに来てくれたんだわさね・・・。」
オズが聞き覚えのあるその声を聞いて力なくひざを突くと、その地面には黒い染みが一つ一つ生まれていった。
こんなことならあのとき縛ってでも止めればよかった。なぜ彼女達にこんな危険な任務を任せてしまったのだろう。
悪魔にするなら彼女ではなく自分にしてくれればよかった。
オズの心は今まさに後悔という名の海で溺死してしまいそうであった。
「まさか・・・本当にセレンスだったなんて・・・。」
セレンスはそんなオズを抱きしめようとしたが変わり果てた自らの容姿に気づき、腕を止めてしまった。
「ごめんだわさオズ。こんなことになっちゃって・・・。」
今の自分ではオズに触ること権利はないし、ましてや抱きしめるなぞ論外である。
セレンスは何もすることができず、ただただ涙を流すオズを見つめているしかなかった次の瞬間、セレンスにとっては思いもしないことが起こったのである。
「私を殺してくれセレンス!!君に殺されるのなら本望だ!!!」
なんとオズはセレンスの目の前で土下座をしたのだ。しかもその気持ちを示すかのように額を地面につけてまでである。
この男はここまで自分を思っていてくれていたのか。だとしたらこれほど女として嬉しいことはない。
セレンスは普段のオズからは考えられない惨めな姿に思わずオズに手をかけてしまっていた。
「むしろ許してほしいのはオズの期待に応えられなかった私のほうだわさ。」
おそるおそる顔を上げたオズの眼は涙で腫れきっておりセレンスに嬉しさと後ろめたさを同時に与えた。
「私を許してくれるというのかセレンス・・・。」
オズはそっと立ち上がると縋るようにセレンスを抱きしめたが、クライシスフッドの鎧の冷たさがセレンスとの接触を邪魔していた。
「オズ・・・もし私のことが嫌いになってなかったら・・・抱いてほしいだわさ。」
「勿論だよ・・・体は悪魔でも心は君なのだろう?」
セレンスがクライシスフッドの鎧を脱いでいく様は「脱ぎ捨てる」という言葉にふさわしいものだった。
オズはセレンスのその姿を横目に見ながら何も出来ない自分が許せない思いでいた。
自分の恋人一人救えないで何が新河系の立役者だ。全く持って笑わせる限りだ。
今の自分は単なる役立たずに過ぎない。現にクライシスフッドから必死に逃れようとしている彼女に出来ることは彼女を抱いてやることぐらいじゃないか。
しかも、その準備は自分の羽織っていたマント一枚を地面に敷くぐらいしかない。
オズは怒りと苛立ちで顔を歪めつつ自ら全裸になった。本来なら行為に至るとはいえ、敵地で全裸になることなぞ考えもしないが今のオズの頭はそんな次元ではなかった。
悪魔となってしまったセレンスに愛していることを伝えるにはこうするしかないと思っていたのである。
もし仮に行為の途中にセレンスがクライシスフッドに戻って殺されても絶対後悔しない自信は今のオズにはあった。
「ありがとう・・・オズ。」
鎧を脱ぎ捨て、オズの目の前に立っているセレンスの姿は皮膚の色が緑であることを除けばいつも肌を重ねているものだった。
「さあ、始めよう。」
いつもどおりのオズの言葉にセレンスはいつもの様に微笑むとオズの胸に体を預けた。
オズはセレンスの重みを感じながら軽くキスをした後優しくセレンスを両腕で包み込むとセレンスもオズの体の温もりを求めるように抱きついていた。
「オズ・・・お願いがあるんだわさ・・・。」
オズがセレンスの好きな正常位に体位を変える為にセレンスを自分の隣に置くとセレンスは安心した顔を見せた。
しかし、このセレンスの笑顔に嫌な予感を感じたオズは即座にセレンスの足を開くと秘所に指を走らせた。
オズとの抱擁によってジンワリと愛液を出していた秘所はオズの慣れた愛撫によって泉のようになり、セレンスはただオズの思い通りにくぐもった嬌声を上げていた。
「セレンスやはり君は天使だ。仮に心も悪魔になったとしても、私はヘッドロココ様のように君を求め続けてみせる。」
オズがしみじみとセレンスの顔を見てみると肌の色こそ緑であるものの、その顔はセレンスそのものだった。
「綺麗だよ。セレンス。」
オズは秘所への愛撫を止めると乳房に手を伸ばして両手で鷲掴みにした。
心地よい反応とセレンスの秘所を弄っていたときとは違う嬌声に心を躍らせていた。
セレンスの乳房は存在感はあるものの、体全体のバランスを崩さないほどの大きさである。
オズが見る限りセレンスの乳房はベイギャルズで一番だという確信があった。乳房と体のバランスが一番取れているからというのが主な理由である。
しかし、当然のことながらこの評価は偏見が占めている割合も大きいので公平性に欠けることははオズ自身も認めていたし、検証する気にもならなかった。
今はセレンスに何も喋らせたくない。そう思えば思うほど乳房を揉む力が強くなりセレンスの嬌声もまた違うものへと変わっていた。
この時、オズはこのまま時間が止まればいいと生まれて初めて思った。しかし、時間を止めることなど絶対にあってはならないことであることもわかっていた。
「オズ・・・そろそろあいつが戻ってくるだわさ。」
「わかった。」
その言葉の意味を嫌でも理解せざるを得なかったオズは乳房への愛撫を続けながら覆いかぶさるように濡れそぼったセレンスの秘所に自身をあてがった。
彼女の体を好きにしていいのは自分だけだ。にもかかわらず、今は間男のようにセレンスと愛し合わねばならない。
本来ならば間男はあいつのはずで、自分にはあいつを成敗する権利さえあるはずなのにだ。
オズはクライシスフッドに対する天使らしからぬ強烈な憎悪が沸いてくるのをひしひしと感じた。
「オズゥ・・・。」
それでも、セレンスの中はいつもと変わらずにオズの自身を包み込み、この体が本当にセレンスのものであるとオズは実感できた。
そもそも因子とはいったいなんだ?
なぜセレンスがこんな目にあわなければならないのだろうか?
繰り返し出される悲鳴のようなセレンスの嬌声を聞いたオズはもう考えることが嫌になった。
もはや何を考えたところで形になることはひとつもない。今はただこの一時に全てを捧げよう。
オズは考えることを止めて自分の思いをセレンスの中に押し込めるようにより硬く膨らんだ自身を叩き付けた。
「オズの・・・すごく熱いだわさ」
考えることを止めてひたすらにセレンスの秘所に自身をたたき付けるオズの脳裏にはこれまでのセレンスとの思い出が走馬灯のように思い浮かんできた。
子供のころの幼いセレンス、時の塔で一緒に働いていたときのセレンス、同じ旅路を行き、戦ってきたセレンス・・・その全てがオズにはかけがえのないものとなっていた。
ひたすら駆け抜けるように二人が快楽に浸る中で、セレンスが快感に身を震わせながらもセレンスはオズの胸元で再び涙を流しながら呟いた。
「オズ・・・終わったらすぐ私から離れるだわさ。」
「君はどうなるんだ。セレンス!!」
オズは全裸のまま叫んでいた。
「私はあいつの心の中であんたが助けてくれるのを待ってるだわさ。」
「それでも・・・もし・・・私がワンダーマリアになれそうになかったら・・・そのときはオズに殺してほしいんだわさ・・・。」
「何を言ってるんだセレンス!!」
そう叫んでセレンスを見たオズの目に残酷な現実が襲い掛かってきた。
セレンスが投げ捨てたはずのクライシスフッドの鎧が少しずつではあるがセレンスに忍び寄ってきたのである。
「土下座したとき、オズが言ってくれた言葉すごく嬉しかった。私もオズに殺されるなら本望だわさ。」
「だから・・・今は逃げるだわさ・・・。」
「わかった・・・絶対に君をあのクライシスフッドから取り戻してみせるから・・・もう何も喋らないでくれ・・・。」
セレンス、君を絶対にクライシスフッドから取り戻してみせる。また恋人として体を重ねよう。
オズはセレンスの乳房の上に水滴を落としつつ、心にそう誓ってセレンスの中に白濁を放つと甲高い声と共に昇天したセレンスは一瞬微笑んで眠るように意識を失ってしまった。
「・・・オーストルーザー!!」
行為を終えたオズはすぐさまオーストルーザーを呼び出し、セレンスをちらりと見ると服を抱えたままセレンスを背にしてその場を離れた。
言われたままに走っていたオズがやっと体の寒さを感じて服を身に着けると後方から
「ウォォオオオオオオオ!!!!!!!!」
というクライシスフッドの雄叫びが突き刺さったが、オズには助けを求めるセレンスの悲鳴にしか聞こえなかった。
「セレンス・・・。」
涙を枯らしたオズは一刻も早くこの事実をコッキー達に伝えるべく、何が起こっても何一つ変わらぬ土の大層マッドーチェを憎らしく思いながらオーストルーザーで駆けていった。
完