「ふぅ……」
メルクリンは、溜息をつくとベッドにごろんと横になった。枕もとの時計を見ると、
もうすぐ、お昼になろうとしていた。
今日は、クリスマスイヴ。毎年この日は、恋人のいる者達は皆、どこかぼうっとして
仕事にならないということで、次界ではほとんどの職場は休日としている。
ヤマトウォーリアの管理する時の城とて例外ではなく、数人の警備兵を置くだけ
となっていた。
そう、メルクリンも今日は非番なのである。
今までクリスマスイヴには、ベイギャルズは5人そろって遊びに行っていた。
しかし今年は、違う。セレンスはベリー・オズと、ボルカンヌはディオ・コッキーとデートへ
出かけたし、ベスタニャはデートではないが、朝から通信室を借り切ってPアンノとおしゃべり
しっぱなし。
「あ〜あ。恋人のいないあたしにとっては、意味のない休日じゃん……」
外へ出かけてもきっと恋人達で溢れかえっていて、目に毒だろう。なので、朝からパジャマのまま
着替えもせずに、自分の部屋にいたのであった。
それに。
そう、さっき見たものがとてもショックで。
とてもじゃないけれど、遊びに行く元気など、なかったのだ。
「ヤマトウォーリア様……ミネルンバと今頃きっと……」
実は、ベイギャルズ達のいる女子寮は、時の城内でヤマトウォーリアが住居として使っている
スペースと向かい合う形で建っている。ちょうどメルクリンの部屋の窓から、ヤマトウォーリアの
ベッドルームの窓が遠目にだが見えるのだ。
三十分くらい前だろうか。そのヤマトウォーリアの部屋を何気なく見ると、彼はなんと、
メルクリンの同僚であるミネルンバと、抱き合っていたのだった。そしてしばらくすると
ヤマトウォーリアが窓の方へ歩み寄り、カーテンを閉めてしまったのであった。
―――きっと今頃、服なんか脱いじゃって、ベッドでよろしくやってるじゃん……。
メルクリンの目から、ぽろりと涙がこぼれた。
どうしてなのかは、わからない。
彼氏いない同志のミネルンバに先を越されて悔しい?
わからない。
ミネルンバにヤマトウォーリアを取られたことに嫉妬してる?
わからない。
それとも、ヤマトウォーリアにミネルンバを取られたから?
わからない。
わからないけれど。
―――なんか、寂しいじゃん……。
ふわり。ベッドの上、メルクリンの足元で水色の物体が2つ、浮かび上がった。
「ギョンちゃん……」
メルクリンが生まれたときから一緒にいる、謎の生命体・ギョンボウである。
自在に形や数を変えられるらしいが、普段は2体の、トビウオのような姿でいる。
メルクリンは起き上がってぎゅっとギョンボウを抱きしめた。ほのかに暖かかった。
小さい頃から、いつも一緒だったギョンボウ。
嬉しい時も悲しいときも、楽しいときも辛い時も、ずっとメルクリンのそばにいた。
メルクリンが一人でいるときにしか姿をあらわすことはないのだことけれど、いつも存在を感じていた。
何かしゃべるわけでもないけれど、そして正体すらわからないのだけれど、ギョンボウに触れていると、
悲しさや寂しさは不思議と消えていくのであった。
―――ああ、でも。今日はだめ。あの二人のことを考えると、胸が苦しくなる……。
ギョンボウを離し、再びベッドに横になる。
涙が、止まらなかった。
ぴしゃん……。
1体のギョンボウがメルクリンの頬に触れた。流れる涙が、すうっとギョンボウの体の中に吸い込まれていく。
ギョンボウがまたふわりと浮き上がって、くるくると部屋の中を旋回すると、吸い込まれた涙の粒は、
部屋の灯りに反射してキラキラと光っていた。
「きれい……」
その神秘的な光に、メルクリンが目を細めた時、そのギョンボウが勢い良く跳ねた。
「え!?」
しゅるん。パジャマの襟元から、素早く中に潜り込まれた。戸惑っていると、もう1体も続けて
パジャマの中に飛び込んできた。
「やっ、ギョンちゃん、何するじゃん!?」
2体はメルクリンの脇の下や、腹を撫でるように、パジャマの中で動き回った。
「あは、やめっ、く、くすぐったいじゃん!!あっははははは!」
くすぐっているのではない、と気付いたのは、メルクリンの胸の上でギョンボウがぴたりと動きを止めた
時だった。
「え……?」
つん。
メルクリンの、薄桃色の二つの突起を、ギョンボウ達の小さな口がつついた。
「な、なに?」
つん、つん。
さらに数回、続けてつつく。
「や……なに、これぇ……」
つつかれたところが熱くなって、じんわりと全身に熱が広がっていくような気がした。
「ギョンちゃん……?」
わけがわからず、メルクリンはされるがままになっていた。
「あ……熱い……じゃん……」
熱いのと同時に背中がゾクゾクして、体がふるえた。
「あ、あぁん……っ」
思わず、喘ぎ声が出てしまった。初めて自分の口からそんな声が出たことに驚いて、反射的に
両手で口を押さえる。両隣はセレンスとボルカンヌの部屋なので二人が不在の今、そこまで気に
することはなかったのだが。
「!?」
いつの間にか、ギョンボウはパジャマの中でもう1体ふえており、それがメルクリンの下着の、
ウエストのゴムの部分に頭を突っ込んでもがいていた。中に侵入しようとしているのだ。
「だ、だめ!そこは……!」
がばっと起き上がり、ギョンボウを阻止するためにパジャマのズボンを脱ぎ捨てる。そして自分も
下着の中に手を入れて、ギョンボウを捕まえようとしたのだが。
「ひぅっ!!」
間に合わなかった。
ギョンボウはメルクリンの入口を、全身でにゅるんと微妙な力加減で、撫でた。同時に、乳首をつついて
弄んでいた2匹が、強めに吸い付いたものだから、メルクリンはへなへなとくずおれ、膝をついてしまった。
「あ……、や、あぁ……っ」
ギョンボウ達の愛撫はまだ続いている。メルクリンの体中をぞくぞくとした何かが駆け巡る。
これが恥ずかしい行為であることはわかっているのに、抵抗する気が段々と消えていく。
「だ、め……じゃん……。これじゃ、あたし、ほんとに……ただの、寂しい奴、に、なっちゃうじゃん……!」
―――でも……、でも……!
つぷん。
秘部を撫でていたギョンボウが、自分の尾を細く変形させて中に侵入してきた。
「ひ………!」
メルクリンの体が強張り、足はがくがくとふるえ出した。
ゆっくりと、優しい動きではあるが確実に、奥へ奥へと、入ってくる。
「や……め……、あっ……」
少し、怖い。一番奥まで行ったら自分はどうなってしまうのか。
けれどもそれは同時に、好奇心と期待でもあった。
―――だって……気持ち、いいんだもん……。
とうとう一番奥まで到達すると、尾は器用にくねくねと動いて、メルクリンの尾一番敏感なところを
刺激し始めた。
「ああああぁぁぁ……っ、ギョンちゃん、ギョンちゃん……!!」
下半身が、熱い。下着の中が妙に湿り気を帯びていくのがわかる。
もう、メルクリンの耳には自分の喘ぐ声と、ぴちゃぴちゃという淫らな音しか聞こえなかった。
「はぁ……んっ、い、いぃ……よぉ、ギョンちゃん……。もっとしてぇ……っ!」
自分がこんな声を出せるなんて、こんな声でそんなことを言うなんて。
今まで、思ってもみなかった。
「あ、たし……おかしいじゃん……でも、あ、だめ、止められない…の……!!」
ギョンボウ達の動きは、相変わらず優しい。しかし確実に、メルクリンの弱いところを集中して刺激していた。
「あああぁぁ……っ、あ、あ、…………っっ!!!」
メルクリンは体をびくん、と大きくふるわせて、絶頂を迎えた。
じわり、と、下着に小さな染みが出来たのに気付かないまま、彼女はゆっくりと脱力し、シーツに身を沈めた。
ギョンボウはいつの間にか2体に戻り、メルクリンの顔を心配そうに覗き込んでいた。
「ギョンちゃん、おいで」
両手を広げて呼ぶと、嬉しそうにその胸に飛び込んできた。メルクリンは彼らをいとおしそうに
抱きしめる。
―――あたし、結局わかんないままじゃん。あたしのほしいものは、本当にこれだったのかな……。
「でも、約束して。ギョンちゃんだけはずぅっと、あたしのそばにいてくれるって……」
《END》