トビラ [後編]  
 
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ここは、どこだろう。  
体が動かない。  
何も聞こえない。  
何も見えない。  
まばゆいのだ。  
 
目をこらすと。  
光の中に人影が写る。  
 
だれだろう。  
 
揺らめく長い髪。  
 
きれいな人だ。  
 
夢かな。  
 
夢だな。  
 
 
そうしてまた、目を閉じた。  
 
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「……ふぁぁっ、んんっ……」  
バンプは突然ずるずると君主の側に強引に引きずられた。  
肩が玉座に座っている君主の膝とぶつかる。  
両膝を床に付き、後ろ手に縛られたまま、頭だけ持ち上げられる。  
目隠しされたバンプの頬に、ひたりと柔らかい何かが押し当てられた。  
 
「わかるでおじゃろう。殿方の喜ぶ事をしておあげ。」  
巫女の声が神託のように頭に響く。  
 
しかし、バンプにはその言葉の意味がわからない。  
呆然としていると、後ろ手に縛られた腕が締め上げられた。  
「……うあっ……うあああああああっっ………」  
ぎりぎりと骨がきしむ。  
 
「ほら、こうやって……」  
音も無く側に寄ってきた明星の細い指がバンプの髪をかきあげる。  
「お口のなかに、のう……」  
「ふっ…うむっ……」  
あごを上げられ、頬にあたっていた何かやわらかい物をバンプの口の中に押し入れる。  
「こうするのは、はじめてかえ?魔女どの。」  
「…ふむっ……うむぅっ…んっ……」  
ぐちょぐちょと巫女はその細い指で異物をバンプの口中で蠢かす。  
「ううっ……うむぅぅっ…」  
口の中で異物はむくむくと質量と強度を増していく。  
「んんーーー……ぅむんーー……んんんっ…」  
バンプの小さな咥内に収まりきらず、呼吸がうまくできない。  
息が止まりそうになる。  
 
「そろそろでおじゃるな」  
明星が指を離すと、十分におおきく固くなった異物が、バネのようにはじかれて、  
「ぷあっ……」  
バンプの口から飛び出した。  
「あぐっ……はぁっ……はぁ……はぁっ……」  
 
「よかったのう、ピーターどの。君主様はお喜びでおじゃるよ。」  
息を整える間もなく体をぐい、とつかまれて、今やそそりたつ熱い異物に唇を触れさせられた。  
「さあ、今までおとろしの鎧にしてもらった事をしておあげ。」  
(されたこと…)  
明星のその言葉に思い至り、舌をのばし、異物の側面をぺろりとなめてみる。  
唇で食み形状を確かめる。今触っているのは根元のようだ。舌で稜線をなぞっていく。  
べろ、ぴちゃ、…ぺろっ…、ぺろ……。  
 
円柱状のそれは熱を帯びて、脈うっている。  
そそりたった先端は太くやわらかいものでできていて、  
そのまんなかは縦すじ状に窪んでいる。  
……ぺろっ…、ぺろっ……ちゅくっ…ちゅるっ。  
縦筋を愛撫し、やわらかい先端をちゅう、と吸い上げる。  
バンプの紅い唇が自然と開き、ますます大きくなった異物を頭から銜えた。  
「……んんっ……」  
口のなかで先端をちろちろと舐めまわす。  
先端から何かにじんで来たのを感じた。  
 
魔界生物たちはおおいに喜び、女の蜜壷への侵入を再開した。  
「……ふぁっ!!」  
びくんと体がはね、異物への愛撫が中断される。  
それを咎めるかのように体を縛る舌がぎりぎりと締め付ける。  
「あああっ……、くぅぅぅっ……」  
痛みと快感に耐えながら、異物をくわえ、舌を動かす。  
 
一本の舌が頭を強引に押し、喉の奥まで異物をくわえさせた。  
「……うぐっ……!」  
そのまま髪を引っ張り、また押し込む。  
「…ふぐっ…、ぐむっ……、ううっ……、」  
じゅぽじゅぽと咥内が無理矢理犯される。  
痛みと息苦しさに涙がにじみ、朦朧としながら、思う。  
 
ああ、たすけて……  
 
だれか、たすけて……  
 
目隠しの下から涙が溢れる。  
 
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呼ぶ声が聞こえた。  
否。  
ずっと前から。  
眠る前から、聞こえて、いた。  
 
ゆらめく髪の女性を見やる。  
やはりまばゆくて輪郭もおぼろげだ。  
 
泣いているのだろうか。このひとは。  
 
そんなに泣かないで。  
その涙を拭おうと。  
手をのばした。  
 
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のばした、その手に。  
 
おぞましい魔界生物の舌が纏わりついて、肘から指先のその先まで細く長く、ぐるぐると覆う。  
長い鞭そのものとなった彼の腕が、しなりながら自分の雄を銜えていた女の胴を絡めとる。  
 
「ぷはっ……」  
 
女は持ち上げられ、口から異物が抜かれた。  
唇と異物の間には唾液が名残惜しそうに糸を引いている。  
「……はぁっ、……はぁっ、……はぁっ……」  
 
君主は青い瞳を半ば開け、  
ぐったりとして、息を整える女の肩の向こう、宙空を虚ろに見ている。  
一時、宙空に浮かした後、ゆっくりと女の体を下ろしはじめた。  
十分にそそり立った、自分の雄の上に。  
 
「ふぁぁぁぁっっっ……!!」  
 
太腿を固定され、足を開かれた体制のまま、ずぶずぶと下ろされる。  
舌達が入念に責め立てた蜜壷は、十分に濡れそぼって君主をゆっくりと飲み込んでいく。  
 
「……ふ……あ……はぁぁぁぁぁっ…!!!!……」  
舌たちとは比べ物にならない程の質量。  
深く深く串刺しにされ、膣から脳髄に電撃が走り、足先まで総毛立つ。  
 
胴を縛る君主の腕が、女をすうっと、持ち上げる。  
しかし、少し浮いたかと思うと、また勢いをつけて下ろされる。  
ぱちゅん!  
「あぁぁぁぁっ!!」  
肉がぶつかる音が響く。  
 
浮かされ、  
下ろす。  
ぱちゅん!  
「あぁぁぁぁっ!!」  
 
ぱちゅっ!ぱちゅん!ぱちゅん!ぱちゅっ!  
「ひゃぁぁぁっ…!!…あぁぁぁっ!!…ぁぁぁぁっ!!…ぁぁぁぁっ!!」  
何度も何度も打ち下ろされる。  
すっかり敏感になってしまった女体は、一差しごとにぶるぶると絶頂に達す。  
まるで外界と自分を隔てる壁がすべて取り払われて、敏感な神経だけが残されているかのようだ。  
じゅぷっ!!じゅぷ!!ぱちゅん!!じゅぷっっ!!  
触れられる度、突き上げられる度、むき出しになった快感が隅々まで駆け巡る。  
 
「ああああああああああああああああああっっ!!!」  
のけぞって乳房を揺らし、髪を振り乱して、泣き叫ぶ。  
もう、何も考えることができない。  
女はただ嬌声を発し、痙攣しつづける人形に成り果てた。  
 
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なぜ。  
 
このひとは泣き止まない。  
なぜ。  
このひとは震えている。  
なぜ?なぜ?なぜ?  
 
問えば問うほど。  
意識が明瞭と、なる。  
 
行かなければ、そう思う。  
助けなければ、あのひとを。  
 
この暗い闇が邪魔だ。  
この目の前の見えない扉が邪魔だ。  
 
『『ひらけええっっ!!!』』  
 
理力をこめて、切り裂いた。  
亀裂からほとばしる閃光。  
 
とたん、こわばって冷たくなっていた手に、足に  
血が通いだし。  
 
揺らいでいた輪郭は  
遠くで震えていた音は  
くっきりと形を結び。  
 
重かった瞼は完全に見開き。  
まばゆかった視界は明度が下がり。  
今いる部屋の様子まではっきりと見えるようになった。  
それは変哲もない、暗くて湿った石壁。  
 
まばゆく美しく感じたのは……  
 
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「俺が闇の中にいたからだ。」  
「あああああああああああんんんっっ!!!」  
 
覚醒した君主は目を見開いたまま、動けない。  
今までの出来事が頭の中に洪水のように襲い来る。  
視界が揺れる。星が瞬き、炎がぐるぐると巡る。  
 
知らず、両の掌はわななき啼く女の尻に添えられ、  
上下の動きに力をくわえ、一層激しく責め立てた。  
じゅぷっ!!じゅぷっ!!じゅぷっ!!!じゅぷっ!!!  
「あっ!!……ふぁぁぁんっっ!!!……はぁぁぁんっっ!!……ああああっ!!」  
これまでとは比べ物にならない程の乱暴な動きに喉をのけぞらせ、体をわななかせる。  
「あああん!!……はげ…しいっ……いい……っっ、ふぁぁぁぁ…!!…あああんっ!!」  
きゅうううっっ、と膣が収縮し、男根を締め上げる。動きはますます加速していく。  
「…ふぁぁぁぁ!!……おっきいっ……ああぁぁっ!!……いい……いいよぉっっ!!!」  
 
女のひときわ狂おしい叫びが、君主の鼓動を高める。  
……どくんっ……  
雄が大きく律動した。  
……どくどくっ…どく……っ。  
君主の精が女の再奥に勢い良く放たれる。  
「あああああああああああああああああああっっっ!!」  
女は緊縛された肢体をびくびくとつっぱらせ、何度も痙攣した。  
注ぎ込まれる濃い魔性の熱が体の中で暴れだしそうだ。  
 
「……あふっ……あついっ……うう………」  
何度も何度も精を流し込まれる。  
やがて、呪いのような注入の時間が終わり、君主の男根はずるりと引き抜かれた。  
女の手足を縛っていた舌達も彼女を解放し、しゅるしゅると君主の鎧に戻って行く。  
女は体を支えるものがなくなって、床にどさりと投げ出された。  
 
精を吐き出し終えた君主は呆然と玉座に座ったままだ。  
夢と現実のはざまに居る若者に、星の装束の巫女が近寄る。  
「おお、おお、お目覚めか、わらわの君主殿。」  
若者の青い瞳に光が宿る。自分は今までいったい。  
見えていたはずなのに、見えていなかったものが次第に像を結ぶ。  
正面には、無造作に床に打ち捨てられた人形。  
否、人形ではない。  
あれは、夢で見た。揺らめく長い髪。  
あれは、もしや、おれが。  
 
女の顔を覆っていた最後の舌がするすると移動し、憔悴した素顔がさらされる。  
見覚えのある顔立ち。  
あの。  
あの、おもかげは。  
 
「ぐあ」  
頭に激痛が走る。  
「俺はっ……俺はなんてこと………ぐ、おお……」  
纏っていたおとろしの鎧が雄叫びをあげ、彼の意識を喰い始める。  
もう十分に力をつけたのだ。  
 
「うおお、ぐうおおおおおおおおお…………」  
「ほほほ、ほほほ、ほほほ、ほほほほほほほほほほほ」  
暗い暗い部屋の中に、巫女の笑い声が響く。  
 
わらわのちからはそもじのものに  
そもじのちからはわらわのものに  
あさとよるを  
ぜんとあくを  
うつつとゆめを  
じざいにつかさどる  
 
われらが君主様のおなり  
 
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!」  
バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ  
咆哮、大地を揺らす。  
ずっと蓄えてきた、負のエネルギー。世界に響き渡る雄叫び。  
 
 
「扉さえ、開いてしまえば」  
巫女は、装束の袖の下で唇の端を歪めた。  
 
 
 
 
トビラ [後編 おわり]  
 

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