「くすぐったいわ、マルコ」
情事の後、妻の体にもたれながらぷにぷにと妻の胸で遊ぶ夫の右手にプッチー・・・
オリンは自らの手を重ねた。
「触られるのはいやかい?」
「ううん、嫌いじゃないわ」
空いた夫の左手を、同じく空いたもう片方の乳房に導いてやる。
妻の返答に安心したマルコは妻の体の上に乗ると、今度は両手で胸を揉み始めた。
その夫のしぐさに、オリンはうふふと笑い声を上げる。
「マルコったら子供みたい。そんなに、そこが好きなの?」
「うん」
悪びれもせずにマルコは答える。
「だってプッチーの胸って柔らかくて、まるでふかしたての饅頭みたいだ」
「もう、マルコったら・・・」
結婚してから、今まで夫からもらったほめ言葉を思い出してオリンは苦笑した。
饅頭のように白い肌だ、饅頭のように甘い匂いがする、饅頭の皮のように
すべすべしている・・・等々。
とにかくこの夫は世界中で一番饅頭が大好きなのだ。
色気も何もない話だが、オリンは夫のそんな子供じみたところは嫌いではない。
むしろいつまでもこのままでいて欲しいと思う。
「ふかしたての饅頭はすごくおいしいんだ。うちの饅頭はじいちゃん直伝の特製なんだよ」
情事の最中に、こんなきらきらとした目で饅頭について熱弁をふるう夫がオリンには
愛おしくてたまらないのだ。
「そうだ、明日プッチーに作ってあげるよ。一緒に食べよう?」
「約束よ・・・?」
「うん、約束だ」
マルコは起き上がり、妻に鳥のようなキスを交わした。
軽く音を立てて唇が離れると、マルコがいたずらっぽくオリンの顔を覗き込む。
「だけど先に、プッチーの食べちゃっていいかな?」
「あら、さっきいっぱい食べたでしょう・・・?」
オリンは指先で夫の鼻をつついた。
「だって、また食べたくなっちゃったんだ。ねえ、だめ?」
我慢することが苦手な夫は悲しそうに眉を寄せる。本当に仕方のない、だけど愛しい夫。
「いいわよ」
妻の承諾にマルコはにっこりと笑うと、“饅頭“を十分に賞味すべく、顔を妻の胸にうずめる。
オリンはそんな夫の髪をなでた。そしてふと考える。
(明日の朝までに、おなかいっぱいになるかしら?)
――食べたりないかもしれないわね。
しかしやがてそんな雑念もやがて甘い刺激にかき消されていくのだった。