二人っきりになっても視線を合わさないティキに、業を煮やしたマリアが自分の方を向かせようと強引に接近。
勢いあまってつんのめり、マリアはティキを床に押し倒してしまった。
全身にマリアの体温を感じたティキが真っ赤になって押しのけようとしたが、それを許さない少女の手。
「なっ!? は、離せよっ!」
「だーめっ! ちゃんとした理由話してくれるまで絶対に離さない!」
「ふっ、ふざけんな!! 離せ、離れろよっ!」
「ふざけてないっ! 何なのよその態度。あたしが何かしたの? これからまた一緒に旅するって言うのに、そんなんじゃやりにくいじゃない! さぁ吐け! 吐けーーっ!」
「ばっ…!」
馬乗りになり、服をつかんで揺さぶるマリアを、ティキは何とか起き上がって押しのけようとする。
だが、マリアの手に更に力がこもり、暴れ始めた足が容赦なくティキに蹴りを入れる。
必死の攻防。もみ合い、暴れるマリアをティキは体で押さえ込む。なんとか服から手を引き離し、細い両手首をまとめて片手床に押さえつける。
だが、今度は自分の下に感じる。今まで気にしたことのない、自分とは違うやわらかく細い肢体。
異性である、少女というマリアの存在。
怒った顔はまっすぐに自分を見ている。その瞳に自分が映っている。
一瞬で、その赤い瞳に魅入られた。
ティキの顔がマリアに近づく。触れるやわらかい唇と、自分の唇。
それがなぜか、とても甘く感じた。
果実のように瑞々しく、砂糖菓子のように唇の先で溶けそうな感触に、ティキの思考が麻痺する。
何度も重ね合わす唇。時に吸い上げ、時にはふっくらとした下唇を含み、柔らかく噛む。
もっと味わおうと舌を這わしていると、閉じられていた唇が開かれた。
何か言おうと開いた筈の少女の中へ、ティキの舌は滑り込む。
戸惑って息を呑んだ音が聞こえた気がした。だが構わず、ティキの舌が中で震えていた舌に触れ、絡め、強く吸う。
ふっと、押さえつけていた腕から力が抜けた。
ティキが唇を離して顔を上げると、驚いて見開かれた赤い瞳とぶつかる。
一瞬、いつもの冷静な自分を取り戻す。
しかし、意識してしまった想いに、感じてしまった甘美な味に、逆らうことはできなかった。
もう、止められなかった。
「ばかやろう…、お前が悪いんだぞ…」
自分を見つめたまま固まった少女の唇を、ティキは再び塞ぎ、深く重ねる。
そして、マリアの両腕を押さえている手とは反対の、もう一本の空いた手が服へと伸びた。