大晦日。  
 運悪くよりによって真夜中の警備担当責任者になってしまった聖O男ジャックは、人気の絶えた町を見回りしていた。  
「くそ、ついてねぇな。皆今頃ぬくぬくとあったかく正月待ってるというのに」  
 吐く息も白く、震えながら愚痴ってる彼の視界の片隅に突如光がはしる。  
「何だ?!」  
 振り仰げばとある部屋の窓からきらきらと綺麗な光の残滓が零れてるのが見えた。  
「…ありゃヤマトの部屋だよな」  
 確か今日は早くあがって恋人と一緒に過ごしてるはずだ。首を傾げてるうちに光の欠片は消え、他の家同様の小さな明かりが窓から見えるだけになる。  
「…とりあえず別に事件てわけでもなさそうだ」  
 首を捻りつつ男ジャックはその場を離れた。  
 
 翌日。夜番だったので夕方に顔を出した男ジャックはヤマトを見て声をかけた。  
「お前昨夜何してたんだ?」  
「え、何って、」  
「見回りしてたらお前の部屋からパァッと光がはしったのが見えたんだが、騒ぎが起きるでもないし光も消えたしで見間違いか何かと思ったら、他の警備してた奴も何人か見たって言うんだ。ありゃ何の光だ?」  
「えーと、いや、なかなかうまく元に戻らなくて・・・」  
「は?なんだそりゃ?まあ、別に怪我してるって訳でもなさそうだし…」  
 そこまで言って男ジャックは気がついた。本日の親友は何故かやたら疲れて、というかやつれていた。  
「何だ、その目の下のでかい隈」  
「ちょっと徹夜で…あ、な、何でもないよ!じゃ、僕ロココ様に呼ばれてるんで!」  
 不自然に明るく、しかしよろめきつつ去っていくヤマトを見送ってると背後から声をかけられた。  
「おめでとうですの!男ジャックさん」  
「おう、ストライク天使…」  
 …彼女はたった今見た彼女の恋人と対照的だった。元気いっぱい幸せたっぷり、ふくふくつやつやとしてる。  
 男ジャックは何となくすべてが見えたような気がしてドッと疲れた。  
「…ああ…今年はヤマトと年越したんだっけ?楽しかったか?」  
「はいの。大晦日から一緒ですごく幸せに新年を迎えましたのよ。来年もこうして迎えたいですの」  
「…それは…」  
 ヤマトが無事ですむんだろうか。  
 男ジャックは心の中でこっそり呟いた。  
                                
end  
 
 

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