「今日は私の誕生日なのに…」
あたしは1人でシャンパンを傾けてつぶやいた。
隣の部屋ではメルクリンが眠っている。
一本釣さんの因子を引く、形見のような存在のメルクリン。
最近になって成長が楽しみになってきたのだが…
やっぱり一本釣りさんがいないとさみしくて。
メルクリンのふとしたしぐさを見るたびに、一本釣りさんと重ねてしまう。
誕生日は必ずいっしょにいてくれること、それが2人の約束だった。
なのに彼は虹層球に溶けて消えてしまった。
あたしは、一本釣りさんがしてくれたように、
服の中に手を入れて、自分の胸を触ってみた。
あたしは、少しだけ自分の胸をもんでみた。
柔らかい感触が伝わるけど…それ以上は何も感じなかった。
一本釣さんに触られるとあんなに……
と自分で考えて、赤面してしまう。
それでも…誕生日だから…いっしょにいてくれるはずだったから…
目を閉じて、一本釣さんの顔を思い出す。
一本釣さんがあたしを抱きしめて触るのを想像しながら、
自分の手で胸を動かしてみた。
だんだん感触が変わっていく。
それを感じながら、あたしはおそるおそる、直接触ってみた。
一本釣さんが触ってくれたように、胸の先端をつまんでみる。
だんだんと、変と言うか不思議な気分になってきたから…
床に座って、下着の上からそこに触れてみた。
「あ……」
ちょっとだけ湿り気を感じて、自分のしていることが恥ずかしくなる。
でも、一本釣さんにしてもらいたいと思ったことだから…。
「あぁ、いっぽ・・・・・・んつ・・・りさんっ!」
布越しでは我慢できなくて…直接指で触れる。
差し入れた指がたりなくて…本数をふやして…。
指の出し入れする速度があがっていって…
「ああっ、い、いいっ………もう……あ、あ、あっ!!!」
波に身をゆだねて…そのまま床にあたしは倒れこんだ。
自分自身の行為ではやっぱり代わりにならなくて…
さびしくて切なくて…
「一本釣さん…」
あたしはもう一度呼んでみた。
すると…
「なに、オアシス?」
とやさしい声が返ってきて…あたしはびっくりしてしまった。
今のは一本釣さんの声…。
でも彼は…虹層球に融けて消えてしまったのに。
ううん、今までのが悪い夢だったのかも知れない。
それとも、誕生日だけの、都合がよすぎる夢なのかしら?
どれでもかまわない、一本釣さんの声がしたから。
そう思って立ち上がって駆け寄ろうとして…
あたしは今まで自分が何をしていたのか気がついてしまった。
一本釣さん…こんなあたしを見てしまったの?
きっと一本釣さんはこんなあたしを軽蔑して嫌いになっちゃう。
どうしよう…
「ごめんなさい」
近寄ってきた一本釣さんにかけた第一声はそれだった。
「………あたしのこと軽蔑しちゃうよね、あたしのこと嫌いになっちゃうよね?」
嫌われたくなくて、あたしは涙声になっていた。
「あたしのこと、いやらしいって思っちゃったよね」
もう、誕生日の奇跡でも夢でもよかった。
一本釣さんに嫌われちゃった、あたしにはそれだけしか考えられなかった。
「ごめんなさい」
そう小さく言って、一本釣さんに背を向ける。
きっと彼はあたしのことなんて嫌いになっちゃったから。
黙って消えてほしい、ううん、あたしが消えたいと思った。
しばらくして空気が動いた。
そしてあたしは一本釣さんに抱きしめられていた。
「そんなことない」
一本釣さんが耳元でささやいた。
「オレ、オアシスがそんなにオレを…ってうれしかった。
だから嫌いになんてならない」
そして、一本釣さんはあたしを正面に向けさせて、キスをしてきて…
そのままあたしはお姫様抱っこでベッドに連れて行かれた。
一本釣さんはあたしに強く深く口づける。
彼の熱い舌が、あたしの舌をからめとって…
そのくちびるがだんだん下に下りてくる。
そして、彼のくちびるがあたしの胸の突起を吸っているのを見て…
さっきあんなことをしていたせいか、あたしは切なくなってきた。
「お願…い」
そう口走るあたし。
「まってろ」
あたしは、一本釣さんが服を着たままだということに今頃気がついて、
彼が服を脱ぐのを黙って待っていた。