「ねえ、男ジャック〜」
「なんだよ、メリー天使」
森の中、いつものように遊ぶ二人。
メリー天使の他愛ない一言から、それは始まった。
「大きくなったら、私のこと、お嫁さんにして!」
「え?お、おヨメさん?」
天子男ジャックはとまどった。年頃の男女がほとんどいない聖遊源で、彼は「ケッコン」という言葉の意味をおぼろげにしか知らなかった。
「べ、別にいいけど…」
「ホント?わーい、やったぁー」
「でも、おヨメさんって何するんだ?」
男ジャックの一言で、メリー天使の動きが止まった。
「えー?お嫁さんはぁ、えーとぉ…」
よくよく考えてみれば、メリー天使もその意味を正確に理解しているわけではない。
ただ大人たちの使う言葉を、真似して使ってみただけだった。
「えーとえーと、お嫁さんはねえ…」
首をかしげていたメリー天使は、思いついてポンと手をたたいた。
「あのね!お嫁さんは、キスをしてもらうのよ」
「キスぅ?」
男ジャックは困った。キスとは一体、なんであろう?
「うん!口と口をつけて、チュッてするのよ」
メリー天使は、自分の唇を指さすと、男ジャックの方を向いて目を閉じた。
「へ?だって、その…」
「早くぅ、男ジャック」
メリー天使に頼まれると、なぜか逆らえない。
男ジャックは言われるまま、メリー天使の顔に唇を近づけた。
そのまま、ちゅっ、と軽く唇を吸う。
メリー天使の唇は柔らかく、なんだか甘い香りがした。
キス、ってのも悪くないな。男ジャックは思った。
「あ、そうだ!もっと良いこと考えた」
メリー天使はニコニコと嬉しそうに笑う。
「あのね、二人で、体を暖め合うの」
「へ?」
「すごーく愛し合ってる二人は、そうするのよ」
男ジャックは再び困惑した。
「そ、それがおヨメさんってことなのか?」
「うん、そうよ」
メリー天使は、真剣な目でじっと男ジャックを見つめた。
その澄んだ瞳を見ると、男ジャックは何も言えない。
「…わかった。暖めるよ」
そういうと男ジャックは、自分の両手にハーッと息を吹きかけ、ゴシゴシこすった。
「違うの、男ジャック。手で暖めるんじゃないのよ」
「えっ?じゃあ、どうやるんだ?」
「…こうするのっ」
メリー天使はいきなり男ジャックに飛びつき、首に腕をからめた。
「わわっ、何するんだよっ!」
男ジャックは仰向けにそり返り、抱きついていたメリー天使ごと一緒に倒れた。
「うふふっ」
メリー天使はくすくす笑っている。
「危ないなあー、もう!」
「だって男ジャックがわかんないんだもん」
「わかんないのはお前だよ!」
男ジャックが怒鳴ると、メリー天使はぐいぐいと体を押しつけてきた。
「な、何やってるんだ?」
「ね、男ジャック。こうしてくっついてると、暖かいでしょ?」
たしかに、メリー天使の体は暖かかった。
柔らかい腕やおなか、足。
そして、密着した胸からはうっすらと弾力のような物も感じられ…
それに気づいた瞬間、男ジャックの中に、妙な感覚が湧き起こった。
「ねえねえ、男ジャック」
男ジャックの変化に気づいた様子もなく、メリー天使はのんきに話しかけてくる。
「なっ、なんだよ?」
「服、脱がせて」
「………え?」
男ジャックの顔に、カーッと血がのぼった。だがメリー天使は気づかない。
「服、脱がせて。愛し合う二人はそうするのよ」
「お、お前の服を、オイラが…?」
こくん、とうなずくメリー天使。
男ジャックの胸の動悸が早くなった。
こんなに胸がドキドキ鳴っていたら、メリー天使に聞こえるのではないかと心配になる。
考えてみれば、幼い頃は、共に裸で水浴びをしたこともあった。
いつも側にいて兄妹のように育ち、ほとんど意識したことがなかった。
なのになぜ、今日はこんなに動揺しているのだろう?
たっ、たかが、メリー天使の裸ぐらいで…
「わかった。脱がせてやるよ」
男ジャックは言うと、メリー天使のワンピースに、そっと手をのばした。
ぎこちない手つきで、胸のリボンをほどく。
メリー天使の髪と同じ、ピンク色をしたリボンだ。
リボンをほどくと、ワンピースの胸元が大きく開いた。
「っ……」
メリー天使が、小さく息を吸った。頬が、ほんのり桜色に染まっている。
白い、なめらかな胸があらわになった。
まだ豊かとは言えないが、二つの小さなふくらみが、
柔らかい曲線を描いて盛り上がっている。
その頂点に、可愛らしいピンク色の蕾が、ちょこんと尖った顔をみせていた。
それを見たとたん、男ジャックは吸い寄せられるように、
その蕾に顔を近づけていた。
「え…男ジャック?一体何を…」
自分でも、なぜそうしたのかわからない。
だが気づくと男ジャックは、メリー天使の胸に唇をつけていた。
「あっ……!」
舌で蕾を転がすと、メリー天使が小さく喘いだ。
そのまま舐めつづけながら、男ジャックはそっと、
メリー天使のワンピースを腰までずり下げた。
胸と同じく腹も、なめらかで透けるように白い。
メリー天使の、キュッとしまった腰と、形のよい臍が姿を現した。
さらにワンピースを下げ、足元まで落とす。
細い足がむきだしになった。
今や、メリー天使の体を隠しているのは、
お腹の下半分を覆っている、白い下着一枚だけだ。
男ジャックはメリー天使の胸から顔をあげ、あらためて彼女を見つめた。
メリー天使の顔は赤く上気し、瞳がうるんでいる。
「メリー天使…」
「ん……」
男ジャックがささやくと、メリー天使はじっと男ジャックを見つめ返した。
しかし視線にはさっきまでの力がなく、妙にとろんとしている。
「下着…とっていい?」
男ジャックの声が、緊張のあまりかすれた。
メリー天使の体がほとんどすべて裸にされた今、
残された一箇所を見たい。それだけが男ジャックの頭を支配していた。
メリー天使はぼうっとした瞳で男ジャックを見上げると、
小さく頭を動かしたようだった。
それがイエスなのかノーなのか、その判断をするより先に、
男ジャックの手は動いていた。
腰の両脇で蝶の形に結ばれたひもの、端を持ち、手を下にひく。
スッと、それは拍子抜けするぐらい簡単に、あっけなくほどけた。
そのまま男ジャックは、布の端を下げた。
メリー天使のやわらかな下腹と、閉じられた両足の奥へと続く
小さなきれこみが、男ジャックの前に姿を現した。
「ん…」
とまどうような小さな吐息が、メリー天使の唇から流れた。
メリー天使の呼吸に合わせ、なめらかな胸と腹が、
男ジャックの目の前で上下する。
それを見ているうちに男ジャックは、今まで感じたことのなかった衝動にかられた。
男ジャックはいきなりメリー天使のひざに手をかけると、
ぐいっと大きく彼女の足をひらいた。
「えっ!?」
いきなりの行動に驚いたのか、メリー天使はびくんと体を震わせると、
足を閉じようと力をこめてきた。
だが男ジャックは、さらにメリー天使の足を押し広げる。
「ああっ…」
白いふとももの奥、桃色の秘所が、男ジャックの前にあらわになった。
「いやぁ…」
メリー天使は恥ずかしさに耐えきれず、身をよじった。
しかし男ジャックは、魅せられたようにメリー天使の秘部を見つめ続けた。
足を開いたことで、桃色のスリットが左右に押し広げられ、
花びらの奥の部分、甘い蜜の湧く穴が、男ジャックの目の前にさらされている。
もっとよく見ようと、男ジャックは指で穴にふれた。
「ぁんっ!」
メリー天使が足を浮かせ、体をくねらせた。
(動くな、メリー天使…)
男ジャックは上半身を使ってメリー天使を体の下に押さえ込んだ。
いつのまにか、男ジャックの頭の中は熱く燃え上がり、言葉が出てこない。
頭だけではない。体中がほてっている。
だがそれがなぜなのか、考える余裕もすでに無くしていた。
男ジャックは再びメリー天使の花弁に手をのばした。
「あっ…」
指がふれた途端、メリー天使がびくっと動き、唇が軽くひらいた。
だが何か言おうとした瞬間、男ジャックが花びらを左右に押し開いた。
「はあ…んっ!」
メリー天使は身を固くした。
彼女の一番敏感な部分に、男ジャックの指が触れている。
自分でもほとんど触れたことのない場所に、男ジャックの指は侵入しようとしていた。
「やめて…」
思わず声が漏れた。
いつの間にか先ほどまでの高揚感は消え、メリー天使の心に、
今まで感じたことのない恐怖が入り込んでいた。
しかし男ジャックは、メリーの態度の変化に気づいた様子はない。
そのまま彼は、ずぶっと指をメリー天使の穴に差し入れた。
「あっ、あぁ!!」
メリー天使は、男ジャックの体の下で、せいいっぱい身をよじった。
しかし男ジャックは、指を抜くどころか、ますます奥へと侵入してくる。
「い…ぃや…」
メリー天使はか細い声で、弱々しく抵抗した。
男ジャックの耳に、その声は届かない。
まるで熱に浮かされたように、彼はメリー天使の内部をかき回した。
ぬるぬるとした感触が男ジャックの指にからみつく。
メリー天使の身がビクッとすくむたび、キュッと男ジャックの指がしめつけられる。
男ジャックは夢心地で、その感触を楽しんでいた。
「やだ…やめて」
メリー天使の声が涙声になり、初めて男ジャックはメリー天使の異変に気づいた。
「どうした?メリー天使…」
「いや。こわいの」
メリー天使の瞳に、うっすら涙がにじんでいる。
男ジャックは、メリー天使の秘部からゆっくりと指を抜いた。
愛液が指にからみつき、暖かい糸になって滴りおちる。
「なんで…。オイラ、ただ…」
男ジャックは呆然としてつぶやく。
一瞬の間のあとで、メリー天使は小さく首を振った。
「ちがうの。男ジャックは悪くない。ただ…」
「ただ?」
「…ごめんね。ちょっと、びっくりしただけ」
そう言うと、メリー天使はぎこちなく笑顔を作ってみせた。
男ジャックは黙った。メリー天使に、何を言えば良いのかわからない。
彼の体には、まだ燃えるような熱があふれていた。
男ジャックは、メリー天使の顔にそっと唇を寄せ、
彼女の頬にこぼれた小さな涙を吸った。
「…塩っぺえ」
ぽつりと男ジャックが言うと、メリー天使は照れくさそうに笑った。
ふと男ジャックは、何かが変わったことに気づいた。
昨日までは、ただの幼なじみだったメリー天使。
だが、明日からもう、同じ目で彼女を見ることはできないだろう。
メリー天使も多分そう思っているはずだ。
なぜなのか、男ジャックはハッキリと説明できない。
でも今、メリー天使の涙の理由が、なんとなくわかった気がした。
「…メリー天使」
「ん?」
「服、着ろよ」
男ジャックがささやくと、メリー天使は顔を真っ赤にした。
「やっ、やだぁ、男ジャックったら。自分が脱がせたくせにっ」
「あははっ」
メリー天使はあわてて服を着はじめた。
男ジャックはそれを見ながらごろんと寝転んだ。
ほてった体を冷まそうと、なるべく静かに息をしながら仰向けになる。
頭上には、どこまでも澄んだ空が広がっていた。
その青空を見ながら、ふと男ジャックは考えた。
(旅に、出ようかな…)
このまま聖遊源にいれば、きっと二人は境界線を越えてしまう。
そう遠くない未来に。おそらく、明日にでも。
「大きくなったらお嫁さんにしてやるよ。でも、今は…」
まだ、このままで。
「なぁに?何か言った?」
メリー天使がキョトンとして振り返る。
「なんでもねーよ!」
男ジャックは言い、青い草をちぎってメリー天使に投げつけた。
(完)