…自分はどちらかというと、そういう行為には淡泊な方だと思っていた。  
 いつも、自分の上で腰を振る男どもをどこか冷めた視線で見ていた。  
 でも…。  
「…んっ」  
 身体が熱く疼く。  
 ねぇ、バカラさま、あたし最近、あなたを見ているだけで…。  
「こんなに、なってる…」  
 ベッドの上、シーツを頭からすっぽりかぶる。少しでも声が漏れないように。  
 ネグリジェの裾から手を差し込み、下着の中に指を入れる。  
 くちゅっと湿った音が確かに聞こえた。  
 焦らすように濡れた肌をなぞる。  
 太股まで伝う、熱い滴。  
 入り口の周りを、堅く尖った肉芽を、ゆっくり自分で慰めて行く。  
「…バカラ、さまぁ…っ」  
 そぅっと指をさしこんでいく。一本、二本…、三本。  
 どんな男に抱かれたときより、あなたのことを思う方が身体が火照る。  
「…んぅっ、あっ…」  
 しっかりと自分の指をくわえ込もうと、足をキュッと閉じる。  
 そして、左の手のひらで胸の膨らみを揉みながら、先の尖りを指でつまみ上げる。  
「はぁっ、はぁっ…」  
 指なんかじゃ、足りなくて…。  
 部屋を見回すと、化粧水の瓶が目に入った。  
 指より長さに勝るそれを、舌で軽く濡らしていく。  
 ぺちゃぺちゃと瓶を舐めていても、ガラスの冷たさが辛い。  
「ん…」   
 まだ新しいきれいな瓶なのに、使うたびに思い出しちゃうんだろうな。  
 
 鏡台の前に座って、改めて自分を見る。  
潤んだ瞳、赤く染まった頬、乱れたネグリジェ。  
今まで相手にしてきた男どもなら、むしゃぶりついてくるだろう。  
「…バカラさま、どうして、してくれないの…」  
 あたしは目の前に並んだ化粧品をどけると、空いた場所に足を乗せた。  
椅子に座ったまま、大きく足を広げると、当然恥ずかしい場所が丸見えになってしまう。  
 濡れそぼり、ぱっくりと開いた、いやらしいあたしの割れ目。  
 こんなに濡れてるんだ…、こんなに、こんなに…。  
「バカラさまが、ほしいのに…」  
 化粧水の瓶を押し当て、一気に挿入する。  
 背中がぞくぞくするような快感。  
 涙が溢れてくる。浅ましくて。悲しくて。  
 それでも、手は激しく瓶を出し入れするのをやめない。  
「…はぁんっ、バカラさまぁっ…」  
 こんな淫らなあたし、見られたらどう思われるんだろう。  
 足を開いて、自分のいやらしいところを見ながら、必死になってソコをかき回しているあたし。  
 気が付くと、鏡の中のあたしは、手だけではなく、腰も動かしていた。  
 右手は必死で化粧水の瓶を出し入れし、左手は胸をきつく揉み込んでいる。  
 あたしはふと気づいて、自分の胸に口を近づけ、自分の乳首を吸い立ててみる。  
「んっ…」  
 舌でぬるぬるにして、きつく吸ってもあんまり気持ち良くはない。  
 でも、指でするより、余計にいやらしくてイケナイことをしている気がして、感じてしまう。  
 
「…バカラさま、バカラさまぁっ…」  
 頭によぎるのは、ただ一人の主のことだけ。  
 大きく逞しい身体。あたしを軽々と抱え上げる盛り上がった筋肉。  
 あの汗の匂い、低くて優しい声、熱い体温と吐息…。  
「…して、してほしいの…っ」  
 大きな手で、ゴツゴツした指で、分厚い舌で、そして感触も知らないその唇で、身体中に触れてほしい。  
 それから、あの底無しの体力で、思う存分、可愛がってほしい。  
「…あぁぁっ、バカラさまぁ…っ」  
 そして、あたしはバカラさまのことを考えながら、絶頂を迎えてしまった。  
 ふらふらとベッドに倒れ込む。涙は止まらなかった。  
 欲求不満。  
 もう、したくてしたくて、欲しくして欲しくてたまらないのだ。  
 しかも、バカラ様は、まるで誘っているかのように、あたしにその身体を見せつける。 わざとじゃないのはちゃんと分かってる。わかってるのだけど…。  
「…バカラさまぁ」  
 あたしはどんどん切なくなって来て、枕を抱きしめた。  
「…抱いて、欲しいの…」  
 こんな気持ち、初めてだった。  
 こんなに男を欲しいと思ったことなんかなかった。  
 一緒に住んでいるのに。  
 あたしはいつでも手の届くところにいるのに。  
 なのに、あの方は自分に触れてくれない。  
「バカラさま、バカラさま…、好き、大好きなのに…」  
 

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