ったくもー、イイ大人なら配慮ってモンがあるでしょうに…。   
 まあね、陰に隠れてたのをうっかり覗いちゃったのはあたしよ。   
 だけどさあ…。   
 あのオバハンと筋肉バカ。いくら離れてたからって…。   
 『宿命の悪魔様』が死んだと思ったあのオバハンに、あたしだって同情したわ。   
 日ごろバカだバカだと思ってたおバカラだって、立派だったもの。   
 でもさ、いくら辺りが暗くなったからって、いくら勝利の宴会だなんだで二人っきりになれないからって…。外で…その、えっちすることはないんじゃない?   
 もし湯浴み天女様に見つかってみなさいよ。   
 温泉につかってる怪我した人たち、みんなゆでダコか氷漬けじゃない…。   
「アイシテル、か…」   
 ちょっと前まで、悪魔の口から、そんな言葉出てくるなんて考えもしなかったのにね。   
 壁に手をついて、後ろから突かれてた。   
 苦しそうなのに、どこか甘えたような声。   
 崩れ落ちそうになる身体は、しっかりと相手に支えられてて、…ちょとだけ羨ましいって思った。   
 あたし、マッチョで暑苦しいのは全然タイプじゃないけど、やっぱり男の人って頼りがいがある方がいいなーなんて。   
「…だけどさあ」   
 さっきから『だけど』ばっかり。   
 何でイイワケしてるかっていうとね。   
 そーゆー現場に直面した、純情可憐なあたしはどーすればいいかわかんなくて…。   
 それから…、   
「んっ…」   
 スカートの中に潜り込んで行く自分の手の、止め方がわかんなくって…。   
  
 ショーツの上から、そっと指で触れてみる。 
 そこはさっきから、汗と違うもので湿っている。 
 布地が濡れてはりつき、気持ち悪い。 
 それに…、とても熱い。 
「…どうすれば、いいんだろう?」 
 当然の疑問に突き当たる。 
 セックスという行為はわかる。何となく。 
 しかし、彼女のその場所は、未だ排泄行為以外で使われたことはない。 
 仕方なく、もぞもぞと木綿地越しに指で撫でてみる。 
「…ここに、いれるんだよね…」 
 密やかな割れ目にそって、指を這わす。 
「で、ここが…、クリトリス…」 
 耳年増な彼女は、名前だけは知っていた。 
 その場所が『敏感な場所』ということも。 
「あ、あれ?」 
 特に気持ちよくない。少しくすぐったいくらい。 
 自分の知識を確かめようと、指を動かしてみる。 
 すると、不意に予想外の快感が訪れた。 
「う、あぁっ…」 
 自分の口から、こんな声が出るなんて…。 
 ポーチは思わず指を引っ込めて、ドキドキする胸を押さえた。 
「…これが、感じるってことなんだ…」 
 他人のことのように感心する。 
 未知の体験への恐怖と好奇心。 
 そして、小さな意地。 
「あたしもう、おこちゃまじゃないもん…」 
 ポーチは思い切って、ショーツをずり下げた。  
 

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