「だ、誰だよ!? おまえ!!」
山田とのHを妄想しつつ、オナニーしていた小須田の目の前に、見知らぬ男が立ってこちらを見つめていた。
『よ! オレ、お前のエロ神だよ』
前にもそう名乗る使えない奴が現れたが、どうやらそいつとは違う奴のようだ。
「こないだまでいた奴とは違うような気がするんだけど……」
『あいつ成績が上がらないから、事務方の方へ移ったよ。オレその代わりに来たんだ』
エロ神の中でも配置転換があるらしい。結構厳しい世界のようである。
「じゃあ、これからはお前が俺のエロ神ってわけ?」
『そう言うこと。まあ、オレが来たからには大船に乗ったつもりで、ドン! とまかせといてくれよ』
自信満々に言うが、前の奴よりはましなのだろうか? 小須田は少し不安になりながら言った。
「大丈夫なのか?」
『引き継ぎはちゃんとしてるから、大体のことはわかってる。で、お前山田とかいう女とヤりたいんだろ?』
「えっ……? い、いや……ヤりたいというか……恋人として付き合いたいというか……」
エロ神のあけすけな質問にしどろもどろになる小須田。まぁ、色々言っても目的はひとつである。
『ヤりたくないのか?』
「いや、まぁ……ヤりたいです……」
『じゃあ、これだな。『やらせろ!』と言って押し倒す』
って、それじゃあ、前の奴と一緒じゃん──小須田はそう思いながら答えた。
「それが出来りゃあ苦労しないんだって!!」
小須田の返答を聞き、少し考え込むエロ神。ややあってこう言った。
『なるほど……じゃあ、これしかないな。スキルを上げるんだ』
「はぁ?」
『つまり、経験値を上げるんだよ。RPGでもそうだろ。皮の服とこん棒でラスボス相手に戦えねぇだろうが』
「まぁ、それはそうだけど……つまり山田はラスボス?」
『もののたとえだけどな。しかし、このままじゃあ、連載中にはヤレそうにないぞ』
「……どうすればいいんだ?」
『だから、経験値を上げてレベルアップだって』
「つまり、どうすんだよ!!」
『わからねぇ奴だな。色んな女とヤルに決まってるだろ!』
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
『まず最初はスライム辺りから攻略して経験値稼ぎだ。手近に簡単にヤレそうな女いないのか?』
「そんなのがいたら、童貞じゃねぇよ」
『じゃあ、風俗か……』
「金が無いって!」
『……全くどうしようも無い奴だな』
「悪かったな。どうせ俺は一生童貞だよ!」
『嘆くな、嘆くな。とりあえず家の中に居たって仕方ない。外に行くぞ。きっと出会いがあるんだから!!』
「──って、外には出たものの、これからどうすんだよ?」
『まぁ、犬も歩けば棒に当たるだ。きっといい出会いが……って見ろ! 前方にいい女発見!!』
エロ神の言う方を見る小須田。とそこには……
「なんだ……竹下か……」
『知り合いか?』
「知り合いも何も、クラスメートで山田の親友だよ。しかも、彼氏持ちだし」
エロ神はしばらく竹下を見つめると、ニヤリと笑みを浮かべた。
『安心しな。あの女に憑いてるエロ神は知り合いだ。っていうか、セフレだ。待ってな、ちょいとナシつけてくっからよ』
「えっ!? ちょ、ちょっと……」
小須田の制止も聞かず、新任のエロ神は竹下の元へと近づいて行くのだった。
『よう! 久しぶり!!』
竹下のエロ神たち──竹下には(+)と(−)の二人のエロ神がいる──に小須田のエロ神はそう話かけた。
『あら、ケンジじゃない。久しぶりね』
『アケミ(エロ神+)も元気そうだな』
どうやら小須田に憑いているエロ神は『ケンジ』竹下の(+)の方のエロ神は『アケミ』という名前があるようだ。
『いつもながらエロい躰だなぁ。アケミは』
そう言いながら、豊満な胸のふくらみを揉む小須田の新任エロ神──通称ケンジ。
『あン……ああ〜ン……え、エッチなんだからあ〜ン』
ケンジの愛撫に答えるように甘い吐息を漏らす、竹下のエロ神(+)──通称アケミ。
『ちょいと頼みがあんだよ。オレの宿主とお前の宿主とヤラせてくんないか?』
『え? ケンジの宿主って……まさか、あの小須田?』
『そうなんだよ。少し経験値を上げさせようと思ってさ。いいだろ? オレとお前の仲なんだし』
『うふっ、そうね。ちょっと面白いかも……』
話がほぼまとまりかけたと思った瞬間、一際甲高い声が響いた。
『ダメよ!! 美春には松尾さんっていう、いい人がいるんだから! 浮気は人の道に外れる行為よ!!』
もちろん、竹下のもう一人のエロ神──エロ神(−)であった。
『けっ、カズミかよ。いつもながらおカタいねぇ』
『ホントよ! ケンジの頼みなんだから少しくらい協力してあげなよ』
エロ神(−)は通称『カズミ』と言うらしい。
『ケンジの頼みだろうとなんだろうと、ダメなものはダメよ。人として浮気は許せないわ』
『あんた、カタすぎるのよ!! 硬いのはオチンチンだけで充分!!』
『アケミはお下劣すぎるわ!!』
『なんですって!!』
二人のエロ神が言い争っているところに、ケンジが割って入ってきた。
『まあまあ。美女二人が喧嘩してるのは見ていて忍びないよ。なぁ、カズミもそんな堅い事言わないで協力してくれよ。お前だって硬いオ
チンチンは好きなんだろ?』
ケンジのその言葉に急に赤面してしまうカズミ。アケミはそれを見逃さなかった。
『あれあれ? カズミどうしたの? なに赤くなってんのよ?』
『ば、バカ! どうもしないわ!!』
『あれ? どうもしないの? 「ああああン! ケンジのオチンチン硬いよーーーー!! 突き上げないでぇぇ!! カズミどうにかなっ
ちゃうぅぅぅ!!」』
『きゃぁぁぁぁ!! い、言わないでぇぇ!!』
ケンジの台詞に焦るカズミ。アケミはニヤリと笑みを浮かべ口を開いた。
『あれ? おカタいカズミちゃん、ケンジとヤッちゃってたの?』
『ち、違う……あの時は無理やり……』
『おいおい、無理やりって……「ケンジのオチンチン大好き! 一生離れない!」っておフェラしてくれたのって誰だっけ?』
『ああ〜ん……ごめんなさい、ごめんなさい……それ以上言わないで!!』
『協力してくれるよな?』
ケンジはそう言いながら竹下のエロ神(−)──通称カズミの股間へと手を差し入れた。
『あっ……だ、だめぇ……や、やめてぇ』
『その割りにえらく湿ってるじゃないか?』
『そんな……そんなことない……』
『うふふ、カズミったら真面目な顔して実は淫乱なんじゃないの?』
『そんな……そんなぁ……あはぁぁン』
『協力してくれる?』
ケンジはカズミの秘所を弄びながら耳元で囁く。
『する……きょ、協力する……だ、だから……』
『ふふ、じゃあ、続きはホテルでお互いの宿主のエッチを見ながら3Pといこうか』
ケンジはそう言って淫猥に口元を歪めた。
『話つけてきたぜ』
エロ神ケンジは、小須田の元へ帰って来ると彼の耳元でそう囁いた。
驚いたのは小須田である。話をつけてきた、と言うのは、当然『竹下とヤル話』をつけてきたと、言う事だろう。
「マ、マジ……?」
小須田は思わずそう言った。なんと言っても竹下は山田の親友なわけだし、松尾さんという彼氏もいる。
そんな女の子とエッチを出来るわけがない。
「や、やっぱり、無理だよ」
エロ神ケンジにそう言って断ろうとする小須田。しかし、ケンジは小須田に向かって言った。
『バカ野郎! そんなだから目当ての女とヤレないんだよ。いいか、あの女とヤルのは予行演習だと思え!
山田という女とヤル為の必要なステップだと考えろ!』
「い、いや……でも……」
『ここで尻込みするようなら、おまえは一生童貞のままだ。それでいいのか?』
ケンジは半分脅しとも取れる台詞で、小須田を追い詰めていく。
『深く考えることなんかないんだよ。とりあえず、普段通り話し掛ければいいんだから。あとはこっちに任せときな』
話し掛けるだけでいいのか……そう考えると少し気が楽になってくる。
小須田は意を決して竹下へと声を掛けた。
「よ、よう……た、たけ、竹下……」
『小須田誘っちゃいなよ』
エロ神(+)アケミが竹下の耳元でそう囁く。当然竹下としては、「何バカなこと言ってんのよ」と完全拒絶の構えだった。しかし……
『でも、最近松尾さん忙しくて逢ってないんでしょ。溜まってんじゃないの?』
「バ、バカ!!」
いつもならここでエロ神(−)カズミが、正論を説くところなのだが今日は違った。
『そ、そうね。欲求不満は身体に毒だわ。すっきりした方がいいと思うけど』
彼女の理性とも言うべき、エロ神(−)カズミにまでそう言われ、竹下の心は揺れ動いていた。
実際、このところ松尾とはエッチどころか、デートすらしていない。ゼミが忙しくて時間がどうしても取れないというのだ。
『絶対浮気してるね』
確信を持ったように、エロ神(+)アケミはそう言う。無論確証も何もないが、竹下の心を揺さぶるには充分だった。
「そ、そんなことあるはずないよ……」
そう否定するが、それは弱々しいものだった。もう一押しで墜ちそうだ。エロ神(−)カズミの言葉が止めとなった。
『男って浮気症だから……美春も楽しめば?』
『そうだよ! やっちゃえやっちゃえ!!』
エロ神二人に煽られては、もうどうしようもない。竹下は意を決して小須田へ声を掛けようとした。
とその時、相手の方が声を掛けてきたのだ。
「よ、よう……た、たけ、竹下……」と──
(はっ!! な、なんで俺こんなところにいるんだ!?)
小須田は心の中で叫んだ。
記憶が飛んでいる。今現在の状況が把握できていない。竹下に声を掛けたところまでは覚えていた。
しかし、その後の記憶が曖昧なのだ。気がつくとこんなところ──そう、ラブホにいたのだ。
『よう、小須田君。いよいよ童貞卒業だね』
エロ神ケンジがそう話し掛けてくる。小須田はまだ夢の中をさまよっているような感覚だった。
それはそうだろう。つい二、三時間前までは、自宅でオナニー三昧だったのだから……。
(いいのか……あの竹下だぞ……山田の親友で、松尾さんっていう彼氏もいる……あの竹下なんだぞ……)
バスルームからシャワーの音が聞こえてくる。どう考えても竹下がシャワーしているとしか思えない。
(な、生々しすぎる……今から竹下とエ、エッチを……)
小須田は思わず水着姿の竹下を思い出してしまう。
高一の夏、四人で行ったプール。あの時は山田の事ばかり見ていたが、竹下の水着姿もかなりセクシーだった記憶がある。
そう──胸がデカかった。
その胸が……いや、それ以外の箇所すらも、少し勇気を出せば手に届くところまで来ているのだ。
『ほら、なにぐずぐずしてんだよ。早く服脱いで、シャワー浴びようぜ』
「えっ? えっ……? で、でも竹下がまだ……」
『馬鹿野郎! シャワー浴びながら、裸で抱き合う、ラブホに来たら常識だろうが。あの女もいつ来るのかと待ってるよ』
「そ、そうなの? で、でも……」
『でもじゃないの。いいか、あの女だってお前と山田の事を思ってここに来たんだぜ。いいか、自分の身を犠牲にして、
お前と山田が結ばれるために協力してくれてるんだ。その心意気に応えろよ! 男だろ!!』
エロ神にそうまで言われては仕方なかった。小須田は服を脱ぎ、シャワーを浴びに行く。
(さ、最悪、竹下の裸を目に焼き付けとけば、後でオナニーのオカズに出来るかもしれないし……)
この期におよんでもネガティブな小須田だった。
(なんであたしこんな事してるんだろう……?)
シャワーを浴びながら竹下は思った。
今このホテルの一室に一緒にいるのは、恋人の松尾ではない。かと言って街でナンパされたイケメンでもない。
“あの小須田”なのだ。
このままではどう贔屓目に見ても、彼とエッチをしてしまうのは必至だ。
いいのか? いいのか美春!?
自問自答する竹下だったが、ここに誘い込んだのは確か自分自身だったような気がする。冗談でした、では済まないのではないか?
『いよいよねぇ〜』
エロ神(+)アケミが話しかけてきた。
「や、やっぱりダメよ。こんなこと……。大祐にも山田にも顔向けできないじゃん!」
『ダメだよ。美春はもっとエロさを開放しなきゃ』
「でも、山田に悪いし……宮野ちんにだって……」
そう言う竹下に今度はエロ神(−)カズミが話し掛ける。
『美春、そうじゃなくて小須田を鍛えるためだと思いなさいよ。山田や宮野さんの気持ちを小須田がわからないのは、
あの男が女慣れしてないからだと思わない? 小須田とのエッチは友人たちのためにすることなのよ。
決して自分の快楽のためにするんじゃないわ。松尾さんだってわかってくれるわよ』
(確かにもう少し小須田が女慣れすれば、二人の気持ちにももっと敏感に察せられるようになるかも……山田や宮野ちんのためにもなるかしら……)
女は自分の納得できる正当な理由さえあれば、結構大胆になれるものである。今の竹下がまさにそうだった。
「そうよ! これは山田や宮野ちん。ひいては小須田のためでもあるのよ。きっと大祐さんも許してくれるわ」
その時バスルームのドアが開いた。はっとして振り返る竹下。
そこには小須田がいた。全裸で……
バスルームを開けた瞬間、全裸の竹下がシャワーを浴びる姿が目に入った。透けるように白い肌。
腰からなだらかな盛り上がりを見せる丘陵。白磁のような臀部。
そして、こちらを振り向いたとき、ついに露わになった母性の象徴ともいうべき胸のふくらみ。
小須田は思わず生唾を飲み込んだ。
無論、股間のものはかつてないほどに硬くいきり立っていた。
特に恋愛感情もなにも持っていなかった女の子だ。とは言え竹下が魅力的な少女であることは間違いない。
ヤリたい盛りの年齢の男子──しかも童貞──がそんな女子の裸を見れば、こうなることは必然である。
『でっけぇな、おまえ!! 色々見てきたが、オレの知ってる中じゃ三本の指に入るぜ。
これを今まで使わなかったとは……宝の持ち腐れだぜ』
エロ神ケンジは小須田の股間のモノを指して言うが、小須田にその言葉は届いていなかった。
そう、すでに、彼は肉欲に支配された単なる獣と化していたのだ。
「た、竹下……」
うわごとのように呟きながら、目の前の少女の元へと近づく小須田。股間のものはギンギンのゴンゴンである。
「あっ……こ、小須田、ちょ、ちょっと待って……」
僅かな抗いを見せる竹下に構うことなく、小須田は強引に彼女の唇を奪った。