夢を見た。  
細部はよく覚えていないけれど、ひどく卑猥なもので  
――姉が艶然と自分に微笑みかける様だけが、脳裏に強く焼き付いていた。  
「……」  
股間に、温めた水糊をこぼしたような不快な感触があった。  
覚えのある臭い。  
これは、あの時、ジュリアのハンカチに染み込んでいたものの臭い。  
あの時のことは、姉が自分を思ってしてくれたことなのだから、と  
ただ彼女がそこまで自分のことを愛してくれているのが嬉しかった。  
そこには一点の曇りも無い、純粋な愛情が感じられたから。  
 
でも、これは。  
 
夢の中で、自分は姉ととてもいやらしいことをしていた。  
以前、なんとなくつけたテレビで見た、映画の濡れ場のようなことを。  
そして、たぶんあの時してもらったことを、やはり姉にさせていたような気がする。  
それは自分の願望なのかもしれない。  
それはなんだか、姉の自分に対する愛情をめちゃめちゃに汚す妄想のような気がした。  
ラウルにとって、ジュリアに対して性的な関心を持つことはとんでもない罪悪なのだ。  
というよりはむしろ、性的なことを想像したりすること自体いけないことだと思っていた。  
なまじ同年代の、そういう話のできる男友達がいなかったせいで、  
ここまで潔癖になってしまったのかもしれない。  
 
 ベッドから抜け出し、荷造りの済んでいたバッグから替えの下着を出す。  
時計を見ると、日付の変わる直前だった。  
 
 トイレに入り、後始末と着替えをした。  
明日(もう今日、と言うべき時間になったかもしれない)、自分たちは日本を発つ。  
世界大会も無事終了して、もうロメロのことを監督と呼ぶこともないだろう。  
 
……と。  
 
そのロメロが、部屋にいないことに気付いた。  
どうせ遊び歩いているのだろうとは思ったけれど、  
そうなると今、ラウルはこの部屋でジュリアとふたりきり、ということになる。  
なんとなく目を向けると、ジュリアは毛布をすっぽり頭に被って寝ている。  
寝顔が見えなくてよかった、と思った。  
あんな夢を見てしまったせいか、なんとなく後ろめたかった。  
「ん、ぅん……」  
 ジュリアが身じろぎをして、毛布が大きくずれた。  
むき出しのふくらはぎがわずかに露出し、  
薄暗がりに妙に白く浮かび上がるその様子は酷く淫らな感じで、  
ラウルは慌てて毛布をかけ直してやろうとする。  
それで、また自分のベッドに戻って、そうしたらいつも通りの朝がやってくるはずだった。  
はずだった、のだけれども。  
突然、全く前触れなく、まるでバネ仕掛けの人形のように勢いよくジュリアが起きあがり、  
その頭が丁度上に覆い被さるようにして毛布を直していたラウルの側頭部にクリーンヒットした。  
 
「い゙っ……!!!」  
予期しなかった激痛にラウルは呻き、危うく倒れそうになる。  
それでもなんとか踏ん張って、よろめきながらベッドの端に手をついた。  
見ればジュリアは寝ぼけているのか、  
からだを起こしたまま何のリアクションも見せずぼんやりしている。  
彼女だって別に格闘技を嗜んでいるわけでもなければ  
喧嘩の常習でもないのだから、痛くないはずはないのに。  
「……姉さん?」  
よくよく見てみると、ジュリアは少し汗をかいているようで、  
暗がりではよくわからないけれど顔も少し赤い気がする。  
熱でもあるのかもしれないと彼女の額に伸ばした手は、けれど触れることなくはたき落とされた。  
ジュリアの瞳が、ここにきて初めてラウルの顔をまっずぐ見た。  
なんだか彼女には似つかわしくないような、少し困ったような弱々しい瞳。  
ラウルは困惑した。  
やっぱり具合が悪いんじゃないだろうか。そう思って手を伸ばそうとして、  
でもまたはたかれるのが怖くて、結局何もできず固まってしまう。  
 
どうして自分はこうなのだろう。  
変わろうとしているのに、少しは何かが自分の中で変わった手応えを感じたのに、  
それなのにどうして、今こんなに怯えているのだろう。  
姉のことが本当に心配ならば、ここで強く出るべきなのに。  
 
「……なんでラウルがここにいるの?」  
ぽつりと、ジュリアの唇から漏れ出た言葉。  
ラウルは、その意味をはかりかねた。  
「ねぇ。なんで……なんで、よりにもよって、こんな時に、あんたがここにいるのよ!」  
腕を掴まれる。  
ジュリアの手の力があんまり強いことに驚いて、ラウルは何もできなかった。  
それに何より、ジュリアの思い詰めたような顔。  
初めて見る彼女のそんな表情に、胸が苦しくなった。  
 
ジュリアの手が、ラウルの腕から離れ、顔にまわされる。  
このシチュエーションには、覚えがあった。  
あったし、だからこの先の展開も予測はついたけれど、  
それでもラウルは動けなかった。  
自分が明らかにそうなることを望んでいることがわかって、悲しかった。  
「……だめだよ、姉さん」  
口先だけだ、とラウル自身がいちばんよくわかっている台詞。  
「何よ、だめだなんて口ばっかりじゃない!  
 ホントにダメだって思ってるならちゃんと抵抗しなさいよ…!」  
ジュリアは怒ったように言い、でもその表情は何かに追いつめられているようだった。  
「あんたがそんなんだから、だから、私は――」  
口をつぐみ、ジュリアはラウルに顔を寄せる。  
唇が重なる直前、聞こえるか聞こえないかの大きさで、呟かれる。  
「――だから、私は、我慢できないんじゃない」  
 
 食い付くような、がむしゃらな口づけ。  
唇の裏を丁寧に舐められ、歯茎をくすぐるように舌先でなぞられて、  
必死で食いしばっていた顎の力が抜ける。  
ささやかすぎる抵抗は無駄に終わり、ラウルの口内にジュリアの舌が侵入した。  
これは、あの時のキスとは全く違うものだ。  
優しくて、温かくて、甘かった、あの口づけとは。  
けれどそれでも、ジュリアとキスしているという事実はラウルを興奮させ、  
頭の中を真っ白にさせた。  
流れ込むジュリアの唾液を夢中で飲み込み、自分から唇を押しつける。  
 
 唇が離れ、ふたりの唾液の混じった糸が名残惜しげに糸を引いた。  
 
ジュリアが、ラウルの肩に手を乗せ――  
 
「わ、うわ……!」  
 
――そのまま体重をかけ、揃って床に倒れ込む。  
 
下敷きにされたラウルは、またしても頭をぶつけることになった。  
 
 ラウルに馬乗りになり、再び唇を押しつけてくるジュリア。  
どちらかの唇が切れたらしく、ぬるりとした、しょっぱい味がラウルの口の中に広がる。  
唇から出た血の味は、どこか涙の味に似ている気がした。  
今度のキスは、ただ唇を重ねるだけのもので、すぐに顔を離したジュリアは  
ちっとも抵抗しないラウルを苛立ちも顕わな表情で見下ろした。  
「ね、姉さん……」  
ラウルは何か言わなければ、と思ったけれど、結局何も言葉が出てこなかった。  
ジュリアは黙って、以前したのと全く同じ調子でラウルの股間を撫でる。  
「おっきくなってる……あんた、興奮してるのね」  
「ち、ちが……!」  
あまりにも冷静な声音で指摘されてしまった事実は、  
ラウルを自分への失望でいっぱいにした。  
柔らかい寝間着のズボンを押し上げて自己主張するラウルのものを、  
ジュリアの両手が握りしめ、刺激する。  
「ぅあ…姉さ、やめ……っ」  
押しのけようとする腕には、今回もやっぱり力が入らなかった。  
「興奮してるじゃない。あんた、私とキスして気持ちよかったんでしょ?」  
「姉さん、なんで、こんな……おかしいよ……」  
「おかしくないっ!」  
叫んで、そしてラウルを睨み付けるジュリアの瞳が、辛そうに揺れる。  
「何よ、口ではだめだとかおかしいとか言って、体はこんなに正直じゃない!」  
 
自分はなんて卑怯なんだろう。  
苦しげに呟くジュリアを見て、ラウルは強くそう思った。  
けれどもう本当に、どうすればいいのかわからなかった。  
ここで抵抗しても、それはそれでジュリアを傷つけてしまうような気がした。  
 
 ジュリアは床に手をつき、ラウルの顔を真上から見下ろした。  
長い髪が一房、彼女の肩口から滑り落ちてラウルの頬に当たる。  
そのままラウルの胸をまたぐ格好で膝立ちになったジュリアは、  
両手で自分の着ているネグリジェの裾を掴んだ。  
「……して」  
言いながら、彼女はゆっくりと両手を胸の前まで持ち上げ、  
白い太ももと、淡い色をしたショーツを露わにする。  
年齢に不釣り合いな姉の艶めかしい姿に、  
ラウルはただ口の中に溜まった唾を飲み込むことしかできなかった。  
して、というのが、これまでの彼女の行動からすると  
性器に触って欲しいということなのだろうという察しはつく。  
そうすることで、あの時の自分のように、彼女は慰められるのだろうか。  
考え、けれどラウルはあんな風にできる自信が無かった。  
晒された肢体に釘付けだった目線を、なんとかその上に向ける。  
ジュリアは怒っているような、泣いているような、とにかく辛そうな顔をしていた。  
「意気地無し! 私にできたことが、あんたはできないっていうの!」  
もういちど、唾を飲み込もうとする。  
けれど、口の中はからからに乾いていた。  
「姉さんは、ずるいよ……」  
そんな風に言われたら、もう選択の余地なんか無くなってしまう。  
その台詞はまるで、いつか彼女が自分に言ってくれた、  
あんたならできる、というあの言葉の裏返しのようにラウルには聞こえたから。  
ラウルは覚悟を決めて、ジュリアの脚、意外に肉感的な太ももに手を伸ばした。  
 
「ん……っ」  
ショーツの上から中心を恐る恐るなぞると、ジュリアは小さく身を震わせた。  
「…濡れてる……」  
指先に感じた湿り気に驚いて、つい口にしてしまった台詞。  
「そ、そんなの言われなくてもわかってるわよ!」  
怒鳴りつけられて、ラウルは慌ててショーツの両端に手をかける。  
目を瞑って一気に太ももの中程まで引き下ろした。  
 
「……!」  
 
初めて見た、ジュリアの女の子の部分。  
ラウルは息を呑んだ。  
いっしょにお風呂に入ったことは何度もあったけれど、  
こんな風に下から見上げたことなんて無かったから。  
改めて、ジュリアは女の子なんだ、と実感する。  
「……っん!」  
湿り気をおびた割れ目を直接指で撫でると、ぬるっとした感触があった。  
またジュリアが小さな声を上げる。  
一旦離した指を、ラウルは口に含んで唾液で濡らした。  
乾いた手で触るのは、もしかしたら痛いのかもしれないと思ったので。  
ほんの少しだけ、舌を刺すような不思議な味がする。  
これが女の子の味なんだ、と思った。  
唾液に濡れた指を、割れ目に沿って何度も這わせる。  
ジュリアが小さく声を出すたび、そこは熱を増すような気がした。  
 
意を決して、指を2本使って割れ目を開いてみた。  
 
にちゃ、という、少しグロテスクな粘性の水音がした。  
「ああっ」  
ジュリアが小さく悲鳴を上げて、背を仰け反らせる。  
もっとよく見たくて、ラウルはジュリアの両脚を抱えるようにして、  
彼女の股の真下に頭を滑り込ませた。  
両手を使って、開いた割れ目の内側を刺激する。  
「あ、ふあうっ!」  
前の方に小さな突起を見つけて、そこを指でつついた途端、  
ジュリアの体が大きく震えた。  
ラウルの触っている場所も、ひく、と可愛らしく震える。  
自分でもジュリアを気持ちよくさせてあげられるんだという思いは  
ラウルを強く興奮させた。  
「あ、ふ、くぅ……っん!」  
ジュリアの手が、握りしめていたネグリジェの裾から離れ、  
柔らかい薄布がラウルの頭に被さる。  
女の子のスカートの中に頭を突っ込む格好。  
今していることに比べれば可愛いものだけれど、充分に卑猥なシチュエーションだ。  
その上ジュリアは腰の力が抜けたらしく、ラウルの顔の上にへたりこんでしまう。  
おしつけられたジュリアの秘所に、ラウルは躊躇いなく舌を這わせた。  
 
 ひくひく震えるジュリアの内ももを両腕でしっかり抱え、  
ラウルは濡れた割れ目を何度も舌でなぞる。  
「あ、ゃ、あん、ひゃ、くっ……」  
薄い布越しに聞こえるくぐもったジュリアの嬌声に、どうしようもなく興奮してしまう。  
 
鼻腔に広がる、女の子の匂い。  
 
口内を満たす、女の子の味。  
 
より深いところまで味わいたくて顔を押しつけると、鼻先が小さな突起に触れる。  
「あっ、ぃやっ、いやっ!」  
ジュリアは体を痙攣させて悲鳴を上げているけれど、  
溢れ出る蜜がそれは快感から来るものなのだとラウルに的確に伝えてくれる。  
だからラウルは、ジュリアにもっと気持ちよくなってほしくて、そこを重点的に攻め始めた。  
抱え込んだジュリアの太ももを顎に引き寄せ、鼻先なんかじゃなく舌で刺激する。  
「あ、やっ、はぁ、ひぁっ、あっ、うあ、ああ!」  
敏感な尖りを唇に挟み、舌で撫でるたびにジュリアは喘ぎ声を上げる。  
ジュリアが自分の性器を強く吸ってくれた時とても気持ちよかったことを思い出し、  
ラウルは同じように彼女の敏感な場所をちゅうっと吸い上げた。  
「ぃ…っあああ!」  
鋭い悲鳴と共に、抱え込んだ脚が強く痙攣を始める。  
女の子が、もうすぐ果てるサイン。  
本能でそれを察知したラウルは、更に強くそこを吸い上げ、舌でこね回した。  
ジュリアはラウルの舌のほんのわずかな動きにも過敏に反応し、声を張り上げる。  
逃げようともがいているらしく、けれどその動きはむしろ  
ラウルの顔に秘所を強く擦りつけることにしかならなかった。  
 
数秒後、ジュリアは声にならない悲鳴を上げて絶頂を迎えた。  
 
 
 絨毯の上に倒れ込んでしまったジュリアを、ラウルは寝転がったままぼんやりと見つめた。  
頬を赤らめ、肩で息をしている様子や、中途半端にショーツを下ろしている姿は  
あまりにも扇情的で、まるで夢でも見ているようだった。  
けれどこれは現実に起きていることなのだと、  
顎にまでべったり付いた彼女の愛液がラウルに証明している。  
「……姉さん……」  
ジュリアの、怒っているような泣いているような辛そうな表情が脳裏に浮かぶ。  
自分の愛撫で、彼女は辛い気持ちを忘れることができたのだろうか、と思う。  
本当は、彼女の苦しみを理解して、共有したかった。  
けれど、きっとそうできるのならジュリアは最初からこんなことはしなかったはずで。  
どうしてか、拒絶されているような気持ちになった。  
 
ジュリアが、大儀そうに身を起こし、太ももに引っかかったままのショーツを両手で掴んで引き下ろす。  
てっきり履き直すものとばかり思っていたラウルは、脱ぎ捨てられたショーツと  
四つん這いになったジュリアとに交互に視線を送った。  
ジュリアは黙ったまま、ラウルの寝間着のズボンに手をかける。  
下着ごと引き下ろされたその時になってようやく、ラウルはこの話がまだ終わっていないのだと気付いた。  
「ね、姉さん!」  
再び馬乗りになろうとするジュリア。  
彼女が何をしようとしているのかを察して、ラウルは慌てて逃げようとする。  
けれどジュリアはそんなラウルの急所をきつく握りしめた。  
優しく愛撫してくれた時とは違う、渾身の力で。  
「ぅあっ!」  
激痛で一瞬意識が飛ぶ。  
動けなくなったラウルにまたがり、ジュリアは最前きつく握りしめたものを、今度は優しく撫でだした。  
「あ……」  
青痣ができた部分を撫でてくれているような、優しい手つき。  
痛い目にあったばかりなのに、その部分にまた血液が集中していくのをラウルは感じた。  
性器を撫でられる快感と、痛いところを撫でられる安らぎ。  
同時に感じる別種の気持ちよさに、頭の芯が痺れ、視界がぼやける。  
 
 先端に感じる、柔らかく湿った感触。  
ラウルははじめ、ジュリアがまた口で咥えてくれているのかと思った。  
けれど視線を安定させると、自分を見下ろすジュリアと目が合う。  
「な……っ」  
ジュリアの性器と、ラウルの性器が触れ合っている。  
つまり――ジュリアは、自分とセックスしようとしている。  
ようやくそのことにラウルが気付いたときには、もう遅かった。  
ぐい、と強く押しつけられて、ラウルの性器が、ジュリアのなかに入り込んだ。  
「ぐっ…」  
ジュリアが苦しげに呻く。  
めり、ぶちぶち、という肉を引き裂くような感覚。  
さすがにそんな猟奇的なことにはなっていないかもしれないけれど、  
ラウルはジュリアのなかに刺さった部分にそういう感覚が走ったような気がした。  
「ね、ねぇ、さ……っ」  
「く、ううっ!」  
ジュリアはラウルの胸に手をつき、苦痛に顔を歪めながら更に腰を落とす。  
下手に抵抗しようものなら更に彼女に痛みを与えてしまいそうで、ラウルは動けない。  
 
これが本当に、セックスなのだろうか。そんな疑問が、ラウルの中に生まれる。  
ジュリアはただひたすらに痛そうで、苦しそうで、とても気持ちよさそうには見えない。  
映画や小説で見るようなセックスと、これは全く違う行為のように思えた。  
 
こんなに近くにいるのに、こんなに触れ合っているのに、ジュリアがとても、遠い。  
 
「う、ぐっ…!」  
ジュリアがかなり強引に腰を押しつけて、ふたりの体は完全に繋がってしまった。  
ものすごく、きつい……むしろ、固い、と表現した方がいいほど。  
でもとても熱くて、きついのに柔らかくて――気持ち、いい。  
 
悲しくなった。  
 
こんなことになってしまう前に、本気で拒もうと思えば  
そうできた場面はいくらでもあったのに、ラウルにはそれができなかった。  
ジュリアのことを思ってとか、そんなものは建前だ、自分への。  
結局、こうなることを――姉とセックスすることを――望んでいたのだ、  
心のいちばん深いところで。きっと。  
そして、今だって。  
ジュリアがこんなことをしたのが自分と同じ気持ちだったら嬉しいと思っている。  
自分に都合のいい解釈をしようとしている。  
 
自分という人間を、ラウルは殴り飛ばしてやりたくなった。  
 
震える腕と膝でなんとか体重を支え、ジュリアが腰を浮かす。  
半分くらいまで結合部が抜けたところで、また腰を落とす。  
「ううっ!」  
最初、ジュリアの呻きだと思ったそれは、ラウル自身が漏らした声だった。  
ジュリアはものすごく苦しそうな顔で同じ動きを繰り返す。  
その度ラウルは快感と自己嫌悪の混じった呻きを漏らした。  
 
「嫌だ……姉さん……」  
 
ようやく呟いたラウルの台詞に、ジュリアはぴたりと動きを止めた。  
下半身を繋げたまま、頭をラウルの顔をまっすぐ見下ろせる位置まで動かす。  
「……嫌だよ、姉さん……こんなのは、嫌だよ……」  
「……何よ…何、泣いてんのよ……」  
言われて、ラウルは初めて自分が涙を流していることに気付いた。  
むしろ泣くべきなのは、痛い思いをしているジュリアのはずなのに。  
「そんな、今になって、そんなの……遅い、わ……」  
苦しそうな、掠れ声。  
確かにラウルはジュリアとこうなることを望んでいたかもしれないけれど、  
こんな状況を望んでいたわけでは決して、無い。  
ラウルは、ただ、そう、ただ――  
 
「僕は、ただ、姉さんのことをもっと、愛したかったんだよ……」  
 
――ただ、もっと深く、ジュリアと愛し合いたかっただけ。  
 
 
ジュリアの瞳が、驚きに見開かれた。  
 
 
 その感情は恋なのかと聞かれたら、わからないとしか答えようがない。  
けれど愛なのかと聞かれたら、胸を張って言える、肯定の言葉を。  
そしてやっぱり、ジュリアを女性として愛しているのかと聞かれたら、  
ラウルはきっと、わからない、としか答えられなかっただろう。  
わからないから、自信が無いから、  
ラウルはジュリアを性的な対象として見てしまうたびに自己嫌悪に陥った。  
いっそ肉親だとか姉弟だとか取っ払って、  
ジュリアのことをひとりの女の子として見ることができれば  
こんな錯綜した気持ちにはならなかったのかもしれない。  
けれどラウルにとって、女の子である以前に、ジュリアは自分の姉だった。  
「お姉ちゃん」ではないジュリアはラウルの中に存在のしようがなかった。  
なのに確かに芽生えている、姉に対して持つべきでない感情。  
捨てようとしてもできなくて、日々膨らんでいくその気持ちは――恋なのかもしれない。  
だったら恋心というものは、自分が夢見ていたような微笑ましいものではない。  
もっと、本能に直結した、欲望の塊みたいなものだ。  
そしてそれは結局のところやっぱり、愛なんだろう、と思う。  
 
愛しているから、姉としてのジュリアも、女の子としてのジュリアも欲しい。  
 
愛しているから、全部欲しい。  
 
……こういう気持ちというのはきっと、きちんと口で言わなければ伝わらないのだろう。  
これまでのようになんとなく感じ取れ確信できる類の感情ではないのだろう。  
 
呆然とした表情を貼りつかせたままのジュリアの顔を、手のひらで撫でる。  
 
「愛してるんだ、姉さんのこと……だから、姉さんの気持ちも、教えてほしい」  
なんて恥ずかしい台詞なんだろう。そう思ってももう止まらない。  
「僕は……もし姉さんが、僕と同じ気持ちでこんなことしたんだったら、嬉しいよ」  
ジュリアはラウルの寝間着の布をぎゅっと掴み、ラウルの顔を睨み付けた。  
「…何よ! 嫌だって、ついさっき言ったくせに!」  
確かに言った。けれど嫌なのは、こうすることが嫌なのではなくて……  
どう言えば、この気持ちが伝えられるのだろうか。  
ラウルは必死で頭を回転させた。  
「だって……気持ちがお互い一方通行なのは、僕、悲しかったんだよ」  
「……」  
「姉さんと僕が、もし、おんなじ気持ちなら、僕は姉さんと、もっと、こうしたいよ」  
きっともっと簡潔にわかりやすく伝えられる言葉も存在しているのだろうけれど、  
これが今のラウルの精一杯だった。  
「……バカ」  
目を逸らすジュリア。  
「うん、ごめん。僕がバカだからきっと、姉さんのこと傷つけてる」  
「ちがうっ…」  
ジュリアが首を横に振るたび、長い髪がぱらぱらとラウルの胸をくすぐった。  
「なんで、わかんないのよ……! 私は……愛してるからラウルの全部がほしいの!  
 愛してるから、こんなことまでするの! それくらい、言わなくてもわかりなさいよ…」  
暗がりでも、ジュリアが顔を赤くしているのはわかる。  
見えなくたって、触れた手のひらに伝わってくる熱が増していたし、それに何より、  
彼女の性格からして、こんな台詞を口にして平常心でいられるはずなんて無い。  
ラウルは、そんなジュリアがたまらなく愛おしかった。  
それに彼女も同じ気持ちでいてくれたことがはっきりして、嬉しかった。  
「姉さん…!」  
腹筋を使って上半身を起こし、ジュリアを強く抱きしめる。  
身長差が無いせいで、抱きしめるというよりは抱きつく格好になってしまったけれど。  
繋がったところが擦れて、ジュリアが呻いた。  
「僕、嬉しいよ、姉さんが僕と同じ気持ちで、すごく、嬉しい!」  
それから体を引き剥がし、ジュリアの目を見て言う。  
「……姉さん、愛してる」  
 
「………たぃ」  
「え?」  
ジュリアが何か呟き、その声は小さすぎて間近にいるラウルにすらよく聞こえなかった。  
「いっっっっったぁーい!」  
聞き返すと、今度は大音量で叫ぶ。  
「ね、姉さん……」  
「……セックスって、こんなに痛いのね」  
辛そうな顔で言って、ジュリアは小さく笑った。  
「それとも……無理矢理しようとしたからかしらね」  
思い出す。繋がったときの、肉を引き裂くような感触。  
それは一体どれほどの苦痛なのだろうか。ラウルには想像もできない。  
「い、今、抜くから…」  
「だめっ」  
ジュリアの腰を掴んで抜こうとしたけれど、彼女はそれを制止した。  
「で、でも、そんな、痛いのに……」  
「嫌よ私、あんたが終わるまで抜かないから」  
「そ、そんな…」  
「ラウル…せっかく気持ちが通じ合ったんだから、最後までしたいの……」  
彼女らしからぬ、殊勝な物言い。  
こんな状況で、こんな風に言われたら、ラウルだってこのまま続けたくなってしまう。  
「……なら、姉さんは、無理しないで……僕が、動くから…っ」  
言いながら、ジュリアの腰を抱き寄せ、揺さぶる。  
「ん、く…っ!」  
ジュリアは歯を食いしばり、ラウルの首に腕を巻き付けてきた。  
 
彼女のためを思うなら、すぐに果ててしまう方がいいに決まっているのだけれど、  
少しでも長く繋がっていたいというのがラウルの本音だった。  
ジュリアの呼吸に合わせて、ゆっくり結合部を揺らす。  
「うぅ……くっ…ふぅ、んん…っ」  
耳元に感じるジュリアの苦しげな喘ぎ。歯を食いしばるギリギリという小さな音が聞こえる。  
「ね、姉さん、か、肩っ……僕の、肩、噛んで、いいよっ」  
このままではジュリアの奥歯が砕けるのでないかと心配で、ラウルは声を上げる。  
「バカっ、あ、あんたの、肩は、ワインダーを引く肩なのっ! ケガ、させるわけ、いかなっ…あぁ!」  
自分が痛いときに、何だってこの人は弟の心配なんてしているんだろう。  
ラウルは感動してしまった。  
ジュリアの苦痛をなんとか和らげられないかと、抱き寄せた背中をそっとさする。  
「…っはぁ……あぅ、んっ」  
何度か背中を撫でながら揺すり上げていると、だんだんジュリアの声に甘い響きが混じってきた。  
幾分か固さのとれた気がする秘所を突き上げる。  
「あっ、は、うあぁ!」  
ジュリアが苦痛混じりの嬌声を上げ、ラウルにすがりつく。  
本当はもっと優しくしてあげたいのに、抑制が利かなくなってきた。  
「ね、姉さん、僕……!」  
強くて優しくて憧れだった姉が、自分の動きに可愛らしく喘ぎ、悶えている光景は、  
ラウルの男の子にしてはちっぽけすぎる征服欲を充分に刺激した。  
繋がったところからびりびりと快感が伝わってきて、  
それがもっと欲しくてラウルは大きくジュリアを突き上げ、揺すり上げる。  
自分だけ良くなって申し訳ないという気持ちも、このたまらない快感の前に霞んでしまった。  
 
「あはぁっ……ラウル…っ、ラウル……うあっ、あっ…!」  
抱きつかれ、押し付けられた胸の膨らみに顔を擦り寄せる。  
やけどしそうなほど熱い快感と、温かく柔らかな安心感に包まれて、  
ラウルはジュリアのなかで、果てた。  
 
 
 ラウルの荒くなった息が落ち着いた頃、ジュリアはそっと腰を持ち上げた。  
「ん、痛……」  
繋がりが解かれて、ジュリアの内ももを黒っぽい筋が数本伝い落ちていく。  
明るいところで見たらきっとそれは、白ばんだ赤色をしているはず。  
女の子は初めての時血を流す場合が多いというのは知っていたけれど、  
それにしたってこれは結構な量のような気がした。  
ラウルは申し訳なくて、けれどここで謝るのはなんだかマナー違反のような気がして、  
だからジュリアをそっと抱き寄せて、唇を重ねた。  
「……姉さん、僕だけ気持ちいいのはずるいから……姉さんのことも、よくしてあげたい」  
「な、何言ってんのよ……私はもう、充分……」  
「だめだよ、だってあれは、気持ちが一方通行だったんだから」  
「……」  
俯き、肩を震わせるジュリア。  
「姉さん? もしかして……泣いてるの?」  
まさかと思い覗き込んだジュリアの頬は、確かに濡れていた。  
「姉さん……」  
「き、気がゆるんだだけよ! すっごく痛かったんだから!」  
まあ、それもあるのだろうけれど。  
なんとなく、ラウルには察しが付いてしまった。  
 
ジュリアが流す涙は――嬉し涙、というやつだ。  
 
「泣き虫だね、今日は」  
「うるさい! ラウルのくせに生意気よ!」  
顔を上げたジュリアの頬に唇を寄せ、目尻に溜まった涙を吸う。  
自分の涙とは、少し違う味のような気がした。  
 

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