ぶんぶんと頭を振って、やくたいもない考えを頭から追い出した。
妙な事を考えないように注意しながら、ガッツさんの枕元に戻る。
今の私はちょっとマヌケなところが可愛い純情清純派キャラっ。
焼死体欲情自慰放火魔プリンセス路線からは、もう卒業したんだもの。可憐に頬染める愛らしさが売りなんだから、いやらしいことなんて考えたらイメージが壊れるわ、気をつけなきゃ。
(…でも、路線変更で私のファンは激減したみたいね……。フフ…、シールケさん、いいわね、専用ファンの板があって…。
そしてセルピコ…、お前も主人をさしおいてファンの板があるのよね…。フフッ、…まったくいい度胸してるわよね…、私にはないのに…。フフフフフフフ…。)
…何か意味不明の言葉が頭をよぎった気がしたが、気にしないことにした。
ちゃんと看病して、一日も早くガッツさんが元気になるように、今の私にできる事をしようっ。
…ふと、何かほかにできることはないかしら、と思う。気休めでもいいから。
ガッツさんを見ていると、…もしも、このままずっと同じ状態が続いたら、どうしよう、と思って怖くなる。
ほとんどの時間を眠り続けて、たまに眼を開いても、ガッツさんだけの夢の世界にいる。意思の疎通が、できない。眠っているのと同じ。
もう三週間も、そんな状態が続いている。…慣れたく、ない。
…ちゃんと目を覚まして安心させて欲しい。夢の中の世界から、こっちに戻って来てほしいな。…私を幽霊扱いせずに、きちんと見てほしい。
…ガッツさんの、元気な姿が見たいな、と思う。
この人は、眠っているのより、減らず口叩きながら剣を振っている姿の方が、似合う人だもの。
時間が、傷を回復するのを待つよりしょうがないとは分かるんだけど…。
ふいに、子供の頃にセルピコが読み聞かせてくれたおとぎ話を思い出した。
呪いの眠りに陥った騎士が、目を覚ますお話だ。勇敢な騎士と、健気な姫様の物語。
『昔々、あるところに、悪い魔物に拉われて、囚われの身になったかわいそうなお姫様がいました…』
高い塔に閉じ込められた囚われの姫は、塔のてっぺんから、美しい水晶のような歌声で嘆きの歌を空に向けて歌っては日々を暮らす。
歌声は風に乗って空を飛び雲を越えて、放浪の騎士の耳に届く。
…騎士は、その美しい歌声の主に一目会いたさに、遠くから微かに響く水晶の声のきらめきを追い求め、平原と砂漠と密林を乗り越えて、一路、塔を目指して旅をする。
まだ見ぬ歌姫の面影を心に宿し、長い困難な冒険の旅をくぐり抜け、遂に騎士は、囚われの姫と悪い魔物の住まう高い塔まで辿り着く。
艱難辛苦の戦いの末、勇敢な騎士は見事魔物を討ち果たし、囚われの姫は救い出される。
…姫は、自分のために命懸けで戦う騎士の勇姿に胸打たれ、たちまち恋に落ちる。
でも、騎士は魔物の末期の呪いを受けて、呪いの眠りに就いてしまう。
百年の歳月が流れるまでは、どんな方法を使っても、決して解けることはない呪い。
…百年後に騎士を心から愛する女性の口づけだけが、騎士を呪われた眠りから解放できるのだ。
嘆き悲しむ姫は、引き止める父王と母妃と家臣を振り捨てて、森の魔女の棲家を訪ねる。
姫は魔女に頼んで、百年の歳月が過ぎ去るまでは、自分の時の流れを止めてもらう魔法をかけてもらう。
そうして、姫は、森の中の小屋で眠り続ける騎士と共に、百年の歳月を過ごす。
お城も両親も姫の位も召使達も、きれいな服も豪華なベッドも、なにもかも捨てて、…ただ、恋する騎士の傍にいたい、焦がれる想いを伝えたい一心で、姫は百年の歳月を待ち続ける。
そして百年の歳月が流れたその日の朝、姫は、騎士に口づけする。
最初で最後の、ただ一度だけの口づけ。騎士が目を開き、姫とまなざしを交わしあい、互いの瞳に百年の愛をみつけあったその瞬間、魔女の術の期限が終わる。
姫の身の上には、塞き止められた百年の、その十倍の歳月が一挙に流れ込み、たちまち姫の体は砂と化して崩れ落ちる。
…騎士は、姫の亡骸の砂を集めて森に撒き、その上に一粒の涙をこぼして再び放浪の旅に出る。
騎士が去った後、森の中では美しい薔薇の花が誰知ることもなく咲き誇り、まるで騎士の訪れを再び待つかのように、風に揺れて歌声のようにさざめいたという。
…おしまい。
『めでたし、めでたし』ではないのだけれど、子供心にそのお姫様はとても幸せだったんじゃないかな、と思った。
ガッツさんの顔にちらっと視線を送る。…無意味に顔が赤くなって、目を逸らす。
…トロールやエルフや魔女が平気で存在するのだったら、おとぎ話の中の出来事が本当に起こったりしても、いいんじゃないかしら?
キスで呪いが解けて、姿が元に戻ったり、眠りから目覚めるというのは、おとぎ話の定番なんだし。
私は、貴族だから一応『姫』の資格はあるし、…ガッツさんは、私にとっては間違いなく絶対に、私を助けに来てくれた勇敢な騎士だ。
なんだか顔が綻んでしまった。「私の騎士さま」と小さく呟く。
胸の中で、蜂蜜の瓶を倒して転がしたように、甘いものが広がり、溢れる。
…私の、私だけの、騎士さま。
…おまじないぐらいには、なるかも。
もしかしたら、ガッツさんがちゃんと目を覚ますのかもしれないんだし。
「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」とも言うんだし。…それはちょっと違うか。
『騎士を、心から愛する女性』。
…耳のつけねまで顔が真っ赤になった。…顔が、熱い。…今私の頭の上に薬罐を乗せたら、お湯が沸騰してたちまち蒸発するんじゃないかしら。
…あはは、別にそーゆーんじゃないのよ、私は。
ガッツさんのことは、もっと真面目な気持ちで、敬意とか、尊敬とか、そういう種類の……、………………………………………………好き…、大好き……。
………………………………。
………そんなに、深い意味は、…ないのよ、うんうん。
…ただ、ガッツさんが目を覚ましてくれたらいいなあ、ってそう思う。
…それで、目が覚めて、枕元にいる私を最初に見て、…そうして、私をみつめながら「ファルネーゼ」って言ってくれたら………私は死ぬほど嬉しい。
ガッツさんの顔をぼ−っと眺めた。
心臓がとくん、と脈打ち、胸が暖かくなる。…不思議な気持ち。
寝台に身をかがめてガッツさんの顔を上から覗き込む。
…ガッツさんは、怖い顔だけど、角度と光線の具合によっては、…時々結構ハンサムに見えると思う。
『ガッツさんは、絶対、世界でいちばん、誰よりも、カッコいい!男らしくて強くて勇敢で素敵だーっ!!』…って、本当はこっそり心密かに思っている。
…一度でいいから、誰に憚る事なく、大声で太陽に向かってそう叫びたい…。
…百歩譲って、仮にハンサムじゃなくても、でも絶対絶対絶対!…カッコいいと思う。
辞書の定義。「かっこいい=感覚、趣味を反映していて素晴らしい」。
…だから、顔とは関係なしに「死ぬほどカッコいい人」って成り立つのよーっ。
はっ、と気付く。駄目だわっ、それじゃまるで、八割方はガッツさんの顔って客観的に見たらコワイ顔、と認めてるようなものだわっ。…ガッツさん、褒めるつもりが裏切ってしまって、ごめんなさい…。
でも、ガッツさんの、爽かさのかけらも無いワイルドな悪党笑いとかって…すごく好きなんだけどな…。あと、アルビオンで私の口の中にナイフ突っ込んで脅迫した時の怒ってる顔とか…。………ぐっと、来る。
他にガッツさんが、私から見てとてもカッコいいと思えるとき。
…トロールの巣で獣鬼達に取り囲まれ、私の手から銀の短剣がはね飛ばされて、「絶対もうダメだ」と思った瞬間。…間一髪でこの人が駆けつけて来て、助けてくれた時。
…こんなに格好いい人知らない、今まで見た事ない、って思った。涙が出そうなくらい、頼もしくて堂々として立派で素敵で……胸が、どきどきした。
…時々ハンサムに見えるのが目の錯覚なのかどうか、他の人にも聞いて確かめてみたいのだけど、気軽に言える相手がいないので、まだ誰にも言ったことがない。
…だって、目を剥かれて、まるで突然おかしな事を口走りだした人を見るような目つきでじろじろ眺められて、警戒しつつ後退りされたりしたら、…嫌だし。
前髪降ろしてる時の方が、ハンサムに見えると思うんだけどな、と思いながらガッツさんの降りてる髪をつつく。硬くて、こわい髪の毛。指に絡まない。
白髪になってしまった部分についつい目が向いてしまう。
…ガッツさんには悪いんだけど、己の心に嘘をつかず、正直に言ってしまうと…、
『老けたっ!!』
…と、やっぱり思ってしまうわ、この若白髪…。(…そして、大声では決して言えないけれど、昔図鑑で見たとある動物を連想してしまうのよね…。その動物の名は、スカンク…。口が裂けても絶対にガッツさんには言えないわ…)
ガッツさん…、確か私とたいして年が変わらないと聞いたんだけど、まだ二十代前半なのに…、かわいそう…。どう見ても三十代にしか見えないもの…。
あの呪いの怖い鎧を使い続けていたら、ガッツさんはそのうち総白髪になってしまうんじゃないかしら。
…その時って呼び方に困るわね…。『頭だけ白い黒い剣士』とか?…言いにくいわ…。
髪をつついている指を滑らせ、先の尖った耳をなぞる。
この人の耳って、ちょっと野生動物っぽく見える。…なーんとなく地獄耳っぽいと思う。うっかり悪口言ったら離れてても絶対聞こえてそうな。
濃い眉根に触れ、中央を小さな瑕が横切る太い鼻梁をたどって、厚い口を撫ぜる。
…顔の部品の一つ一つが、男の人のものだなあ、と思う。彫り込まれている線描が、太くて力強い。同じ男性でも、私の見知った貴族の青年達とは、材質からして違うもので造られているように思える。
…顔で職業判定するなら、一目で「戦士」と判断できる風貌。
剛毅、とか不撓不屈という言葉が似合う、厳しくて甘さのかけらもない顔立ち。
…でも、知ってる、この人結構優しい。私だけじゃなくって、イシドロさんやシ−ルケさんへの態度を見てると、なんとなくわかる。…わかりやすい優しさじゃないけど。
…間近で顔を見つめていると、胸がきゅうっと締めつけられるような気持ちになる。
…今、突然目が覚められたりすると、…すごく困るなあ…。『人の顔じろじろ見て、何が面白いんだ』って言われそう…。
………あなたにみとれているのです。私は。
…この人の顔は、いつも傷だらけだ。古いのや新しいの。
戦う人の、勲章の跡。
私には想像もつかない境遇を、くぐり抜けて戦ってきた人の顔なのだと思う。
唇の端に、小さくキスした。
火傷したような熱を感じて、慌てて唇を離す。
心臓が、早鐘のように高鳴った。触れた唇を指で押さえる。…ひどく熱い。
そっとガッツさんの顔を覗き込んだ。
…ガッツさんは、眠ったままだ。…ちょっとがっかりしたような、ほっとしたような。
…やっぱり、おとぎ話はおとぎ話か…。
(…もう少しだけ…)
ガッツさんの体に体重をかけないように気をつけながら、寝台の柄を掴み、屈み込んでその頬に自分の頬を擦り寄せた。
…深い吐息が胸からこぼれた。…ざらざらする…。
早く目を覚まして元気になって欲しいけど、…今だけは、もう少しの間眠っていて欲しい。
目を閉じて枕に顔を埋め、合わせた頬の感触と伝わる体温に陶酔する。
ガッツさんの規則正しい寝息の音に聴き入りながら、触れ合う肌の温りをとても貴重なものに思う。
…男の人の頬は、ざらざらして、ちくちくするんだな……。
よく頬擦りしてくるキャスカさんのほっぺは、すべすべして柔らかい。
まるで違うその感触に、この人は男の人なんだ、と改めて思う。
…そして、私は女だ。
…初めて会った時、本当はこの人がとても怖かった。
返り血で全身を赤黒く染めて、巨大な剣を振り回し、その度に兵士逹の胴がまっぷたつに生き別れ、臓物と血しぶきの旋風が巻き起こる。
…地獄の悪夢から抜け出してきたような凶々しい怪物。
…人間には見えなかった。
凶暴な野獣が、無理やり人間の姿に化けて猛り狂っているように見えた。
虚勢を張って怒鳴り、部下を叱咤しながら、…私は、本当は怯えていた。
…今でも、この人のことが私は…怖い。
ガッツさんは、厳しくてもどこかで優しい人。救ける必要なんてまるでない時にも、何度も私の命を救ってくれた人。
…でも、ガッツさんの中にいる凶暴な黒い獣は、きっとそんなことはしないだろう。
その獣は、いつ顔を出すのかわからない。
…こんな風に頬を合わせているのは、夜の森の中で眠る獰猛な人喰いの猛獣の隣で、こっそりとその毛並みを撫ぜるのを密かに堪能しているような気持ち。
…目が覚められれば、きっと食べられてしまう。
恐怖の鋭利な細い糸が、背骨の髄の芯を貫いて、一本ピンと走っている。
…この人が、怖い。
……怖いから、惹きつけられる。
……この人に、体を引き裂かれたら、どんな気分になるのだろう、と時々想像する。
…痛いのかな、苦しいのかな、…死んでしまいそうな気持ちになるのかな、って。
脱走したこの人に拉われて、夜の闇を騎上で駆け抜けていた時、きっと、犯されて殺されてしまうのだと思っていた。
その時は、屈辱で腸が煮え滾っていた記憶が…今は、途方もなく、甘い。
もしも、もう一度、この人の力強い腕で抱き上げられて、馬の鞍に乗せられて、どこか遠い、誰も知らない場所に二人だけで連れ去られてしまったら…、きっと目眩がするほど幸せだろうと思う。
私は小さくて弱くて無力で、この人は大きくて強くて逞しい。
私の中に張り巡らしていた、秩序と信仰で築き上げた堅固な塔は、この人の手でいともたやすく崩壊させられた。
塔が崩れて雪崩落ち、縋れるものが何一つない、何もできない、弱くて無力な素の自分が取り残されて。
瓦礫の山に座り込み、崩れた塔の外に広がる世界に初めて触れて、薔薇色の朝焼けの空を見上げながら、頬を撫でる柔らかな微風を感じた時、……初めてわかった。
私が心の中で、闇への恐怖に駆られて築き上げたあの塔は、私を守る代わりにがんじがらめに縛り付け、閉じ込めていた牢獄だったのだと。
暗闇を遮る代わりに、…私は、世界のすべてから締め出され幽閉されていた。
…あなたは、哀れな虜囚の私を、高い塔の牢獄から救い出してくれた勇敢な騎士。
私はずっと、誰かが私を救い出してくれることを夢見て、囚われの塔のてっぺんから嘆きの歌をうたっていたの。
……私は、私を閉じ込めていた。
本当は、無力で弱い、怯えるだけの自分の存在が、許せなかったから。
塔に住まう悪い魔物は、私自身。神の威光の名を借りて、弱者を虐げ、生け贄を要求し、暴虐の限りを尽くして荒れ狂っていた醜悪な怪物。
…それでも、その怪物は、誰かが私の中の哀れな子供を見つけだして、救い出してくれることをずっと願っていたわ。
………あなたが私を救い出してくれた。それだけは、おとぎ話じゃない、本当のこと。
外の世界の闇夜は、相変わらず恐ろしい。怖くて怖くて、恐怖で足が竦みそう。
…でも、暗闇を照らす最初の炬火を、あなたが私に与えてくれた。
恐怖に立ち向かう事を、あなたは私に教えてくれた。
…夜は明けるわ。そして、その世界にはあなたがいる。
巡り会えたことが、私には、奇跡だったから。
…あなたの後を追いかけて、旅をして追いついて、あなたの隣にいるのが今の私。
……私には、まだ、あなたの手で、壊すことのできる場所が、残っていると思う。
……塔に住まう悪い魔物は、自分を退治してくれた勇敢な騎士に、恋に落ちたの。
ガッツさんの肩に触れ、指を滑らせる。…鋼のような筋肉のうねる、逞しい肩。
…体の奥が、震えて疼き、熱くなる。胸がわななき、合わせた頬が熱を帯び、呼気が乱れて瞳が潤んだ。
…またもう一度、この人の力強い手で揺さぶられて、世界が瓦礫のように崩れて雪崩落ち、自分の纏う虚飾の殻が全て引き剥がされて、剥き出しにされたとしたら。
そうしたら、どんな私が出てくるのだろう?
どんな私に変わるのかしら?
……知りたい。
この人の手で、『私』を破壊されたい。
壊れたかけらの中から私の性髄を掬い取られて、粘土を捏ね上げるようにまた違う私に造り変えられたい。…あなたに、そうされたい。
目を閉じて、伝わればいいな、と思いながら心の中で語りかけた。
…どうか私を、どこか遠くへさらって、ねじ伏せて力づくで奪ってください。
与えられるものがあるのなら、一つ残らず何も彼もすべてあなたに捧げたい。
すすり泣きながらあなたにしがみついて、あなたの広い胸の中で、小さな子供のように泣きじゃくって甘えたい。
無力で弱い私を、受け取って欲しい。
あなたの黒い嵐に呑み込まれて、ひとつになって、溶け合いたい……。
…名残惜しい気持ちで頬を離し、立ち上がった。
胸が締め付けられるように苦しかった。足のつけ根が、馴染み深い疼きで脈打っているのが、苦痛に思える。
眠ったままのガッツさんをみつめる。
…この人は、そんな風に私を求めてくれることは、きっとないだろうな、思う。
私が受け取って欲しい贈り物は、…この人には、いらないものだとわかるから。
…だから、苦しい。…それから、悲しい。
溜め息をついて、替えの包帯を卓上から手に取った。
寝台の横の椅子に腰掛け、ガッツさんの重い右腕を持ち上げる。
身を屈めて武骨な手の甲にそっとキスしてから、包帯を延ばして巻きつけようとしたその時。ガッツさんの右手の親指がぴくりと動いた。
彼の右手に包帯を添えていた私の指が、大きな手で強く握り締められる。
『え?』と思った瞬間、その手が私の手首を掴み、物凄い力で引っ張られて、寝台に引き倒された。
私の手から飛び出した包帯が、リボンのようにひらひらと帯を伸ばし、円弧を描いて床に落ち、床の木目の上を転がる様子が視界の隅に映った。
…気がつけば私は、ガッツさんの体の上に重なり、彼の腕の作る輪の中で強く抱き締められていた。
<to be continue>