「後ろ向いて何をしてるの?早くして!」  
 
「見ないでください!男って結構デリケートなものなんです!」  
 
セルピコ君経験済み疑惑やらなにならあって  
結局彼はEDでは無い事を証明する為にファルネーゼ様といたす事になった。  
彼は今避妊の為にコンドームの付けようとしていたのだ。  
 
「ふ〜ん、触ってみていいかしら?」  
 
「やめてください!他の男はどうか知りませんが、僕は萎えます!」  
 
ファルネーゼ様が興味津々で覗き込むので  
セルピコ君は安心して装着出来ない。  
仕方ないので避妊は後にしようと思った。  
 
(最悪、外出しならなんとか…ああ、僕はどうしてこんな  
 下品な事考えなきゃならないんでしょう……)  
 
内心ぶつくさつぶやきつつファルネーゼ様の方へ向き合った。  
とりあえず服を脱ぐのは後にまわした。  
 
「ファルネーゼ様……」  
 
「え?」  
 
セルピコ君はファルネーゼ様を抱き寄せると軽くキスをした。  
 
「……女性がいきなり男性器を口にする様な真似はいけません」  
 
この時点で、言ってるセルピコ君の方が恥ずかしくなって赤面した。  
 
「塵は塵に、灰は灰に、くちびるはくちびるにって言うでしょう?」  
 
突然のキスに驚いているファルネーゼ様の眼をじっと見つめて  
セルピコ君としては、けっこうロマンチックな口説き文句を言ったと思った。  
 
「!?何訳の解らない事を言ってるのよ!  
 するなら早くしてっ!」  
 
「…………」  
 
今ひとつファルネーゼ様には伝わらなかった………。  
   
 
「セルピコ、なんか痛いわ  
 ゴムがこすれる様な気がするの」  
 
「最初から気持ち良くはならないんです。  
 ちょっと痛いかもしれませんが、少しの間我慢してください」  
 
即物的なファルネーゼ様のご希望に応えて  
今、二人はいたしている真っ最中である。  
しかし、ファルネーゼ様は初めての経験  
どうもうまくいかないのだ。  
 
「キスしてる時はちょっと気持ち良かった様な気がするけど……  
 痛っ、痛いじゃない!  
 カエルみたいに脚ひろげさせて  
 私になんて格好させるの!」  
 
「…こうしなきゃ入らないんです。いきますよ?  
 ファルネーゼ様の身体の中に初めて  
 え〜とまあ僕が入るんですから最初は女性は苦痛らしいです  
 申し訳ありませんが、はじめは少々我慢してください。  
 そのうち良くなる…ハズです……」  
 
自信なさげなセルピコ君の態度にファルネーゼ様は不満顔だ。  
 
「あ、そこ、気持ち良い、みたい……」  
 
「濡らさないと、キツいですし…」  
 
セルピコ君はファルネーゼ様の陰核を探って優しくこすりながら  
オナニーしなれてるからここの反応は良いんですね、と冷静に考えていた。  
ファルネーゼ様はそれなりに興奮してきた様子だし  
セルピコ君の指先に暖かくてヌルヌルした液体がまとわりついてきた  
……そろそろ本格的にいいかな。  
コンドーム装着していると場が白けるので  
セルピコ君は外出しを決意した  
 
「ん、ふっ……」  
 
愛撫がうまい事いったのかファルネーゼ様は  
頬がぽぅっとなって瞳が潤んできた。  
さっきは先端が入るか入らないかだったし  
ファルネーゼ様の入り口の方も柔らかくこなれてきた感じだ。  
 
「……いきますよ、力抜いててください」  
 
「ん……」  
 
頭がぼうっとなっているらしいファルネーゼ様はこくっと小さく頷いた。  
ファルネーゼ様の片足の裏に手を添えて入れる体勢を整えつつ  
セルピコ君はセクースっていっても  
必ずしも入れなきゃならない訳じゃないんですよねと頭の隅で考えていた。  
 
「う、くっ……」  
 
ファルネーゼ様はちょっと辛そうな顔をした  
オナニー癖があると言ってもさすがに処女  
入れてもキツくてなかなか全部中へ入っていかない  
処女膜ってこれかな……  
 
「いったぁーっい!セルピコ!  
 何するのよ!?ものすごく痛いじゃない!  
 全然、気持ち良くなんかならないわっ!  
 本や漫画ではイクって身体がふわ〜っとするくらい  
 気持ちよくなるって書いてあったのに全然駄目じゃない!?  
 お前、下手なんじゃないの!」  
 
ひどいわ、血が出るなんて!  
処女の初めての経験としては当然の様な出血に  
半泣きのファルネーゼ様の横で  
 
「下手っ!」  
 
と決めつけられたセルピコ君は唖然としていたが  
それでも下半身の身支度を整えるのは忘れなかった。  
 
セルピコ君はその時、机に向かって勉強に集中していた。  
ファルネーゼ様に  
「セクースがへたくそ!」と罵られても  
男としてのアイデンティティ・クライシスに陥らないのが  
セルピコ君の凄いところかもしれない。  
 
そんな所にファルネーゼ様がまたやってきた。  
 
「セルピコ、お前信頼出来る殿方の知り合い紹介してくれない?」  
 
「知りません。僕、友達いませんから」  
 
勉強に集中していたセルピコ君は背後のファルネーゼ様に  
振り向きもしないで返事を返した。  
聞き様によっては拳の効いた応えではある。  
 
「ちょっとした晩餐会にでも行くんですか?  
 ならロデリック様がいるじゃありませんか」  
 
「ああ、そうね!ロデリックが居たんだったわ!  
 セルピコ、ありがとう」  
 
珍しく機嫌が良さそうなファルネーゼの様子に  
セルピコ君は特になんの感慨も抱かなかった。  
勉強に出来る時にしておかないとマジでヤバい事になるからだ。  
 
 
うきうきとファルネーゼ様が出かけてから数時間  
夜の9時頃にファルネーゼ様の私邸が騒がしくなってきた。  
騒ぎは3LDK(先の3DKは間違い。ダイニングキッチンが三つもあってどうする?)の  
セルピコ君の部屋まで届いた。  
変だなとセルピコ君が勉強部屋から出ようとした所  
ちょうどファルネーゼ様付きのメイドさんと鉢合わせになった。  
 
「セルピコ、ファルネーゼ様がまだお帰りにならないの。  
 何処へ行かれたか知らないかしら?」  
 
「ああ」  
 
昼間のファルネーゼ様の様子を思い出す。  
 
「ロデリック様の所へお出かけになると言ってましたよ。  
 仮にも婚約者ですから、そう心配はいらないんじゃないですか?」  
 
「そうかしら…旦那様に一応お知らせしておいた方がいいと思う?」  
 
セルピコ君は仕事の鬼、大財閥ヴァンディミオン当主フェディリコの  
一見謹厳実直な顔を思い浮かべる。  
浮気して隠し子なんか作ったくせに。  
 
「いや、その必要はないんじゃないですか?  
 お知らせしてもお仕事を優先されると思いますよ」  
 
セルピコ君の一言でとりあえず騒ぎは静まった。  
 
 
深夜午前三時半、セルピコ君は明日が休みなので  
今日は遅くまで勉強をし、一息ついた処だった。  
紅茶を飲んだら、そろそろ寝ようかと思っていた。  
 
「セルピコv」  
 
「なんですか!?またこんな時間に」  
 
ファルネーゼ様がまた来訪したのだ。  
 
「如何でした?ロデリック様と楽しかったですか?」  
 
「ええ、とっても!」  
 
ファルネーゼ様は上機嫌である。  
 
「さすがロデリックは違うわ、黒光りしてすっごく太いのv  
 あの口でご奉仕するやり方ってフェラチオって言うんですって?  
 私、とっても上手だって褒められたの。  
 あんたは面白いなってロデリックも喜んでくれたわ」  
 
お約束で、セルピコ君は口にした紅茶を吹き出しそうになった。  
 
「それにとっても力強いのよ、お前とは大違いだわ。  
 もうずんずん頭まで響くくら突いてきて、身体が壊れそうだった。  
 時間も長いし、何回でもいたしてくれるのv  
 最初はちょっと痛かったけど、そのうち身体が熱くなって  
 ふわ〜っと浮きそうな感じなったわ。  
 あれがイクって事なのね……」  
 
興奮冷めやらぬファルネーゼ様の報告を聞くセルピコ君。  
僕はどうしてこんな話を聞かなければならないのでしょう……。  
適当に相づちをうちつつ、内心うんざりしていた。  
 
 
 
盛大で華やかな結婚式だった。  
新郎新婦も終始にこやかだった。  
招待客も笑っていた。  
ファルネーゼ様の母上も笑っていた。  
 
このお目出度い席で笑ってないのは  
ヴァンディミオン家の男ども(含むセルピコ)だけだった。  
 
「セルピコっ。お前が付いていながらこの有様はなんだね」  
引きつった顔のヴァンディミオン家当主フェディリコが  
声をひそめてセルピコ君を詰問する。  
「他人様の下半身、ましてや避妊方についてなど  
 私の手に余ります!」  
セルピコ君も負けずに返した。  
 
「セルピコ、レモネードないかしら。  
 何か酸っぱい物が欲しいの」  
「!」  
最近ファルネーゼ様ちょっと太ってきたかなあと思った時の事だった。  
一を聞いて十を知るセルピコ君は、その一言ですべてを理解した。  
 
「お目出度い事は早い方がいい」  
とかなんとかヴァンディミオン家当主フェディリコのゴリ押し  
等々あってファルネーゼ様高校在学中の結婚式が実現した。  
そう、出来ちゃった結婚なのである。  
今時、出来ちゃった結婚などたいして珍しい事ではないが  
家名を気にする見栄っ張りの御館様の面目丸つぶれだった。  
ファルネーゼ様のお腹はウエディングドレスでも  
カバー出来ないくらい大きくなっていた。  
それでも花婿ロデリックと花嫁ファルネーゼ様は  
へらへら笑っているのでそれなりに幸せなのだろう。  
 
「ヴァンディミオン卿、花嫁のお腹が大きい様ですが?」  
 
場の空気が読めないのか、皮肉なのかはわからないが  
祝辞をのべる為、マイクの前に立ったフェディリコに  
ついに言ってしまった貴族がいた。  
 
「あれは、幻覚です!」  
 
御館様、貴方はグレイトです……。  
へらへら笑っているバカップルを前に堂々と言い放つ父フェディリコ。  
セルピコ君は涙を禁じ得なかった。  
別にお父さんの実感ないけど。  
 
これが全国無差別級フェンシング大会の前の出来事である。  
 
 

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