『くそっ、なんだこいつ!?』  
 
聖鉄鎖高校、放課後の部活風景である。  
中でもフェンシング部は全国大会に毎回出場の高いレベルを誇っており  
時々、大学でも活躍しているOBが手合わせしにくるくらいである。  
 
今、部員に稽古をつけているのはさる王族の王子ロデリック卿である。  
あのファルネーゼ様が聖鉄鎖大学を卒業したら結婚する筈の婚約者だ。  
ちなみに、聖鉄鎖高校、ガキ…いやまだ十代のくせに  
爵位持ちのおぼっちゃまばっかりである。  
ロデリックの様にさる王家という高貴なお方も珍しくない。  
 
今、ロデリックの相手はフェンシング部副部長のセルピコ君。  
彼も平民出身ながらヴァンディミオン財団取締役フェディリコ氏が  
後見人のおかげで爵位持ちだった。  
だが彼の同級生および部員は平民出だの  
ヴァンディミオン財団が背後にいるだのは気にしない。  
 
むしろフェンシング部で「引き分けのセルピコ」で有名である。  
それに「ファルネーゼ様の腰巾着」という事で嫌われているくらいだ。  
 
ロデリック卿は聖鉄鎖高校在学中、部長をつとめていたくらいの腕前だ。  
しかし今相手のセルピコ君の太刀筋は鋭く、殺意さえ感じるくらいである。  
表情は白いマスクをかぶっているのでお互い表情は見えない。  
相手の身体を一回突けば仮試合は終わるのだが  
セルピコ君は一向にその隙を与えないのだ。  
 
『ち、喰えねえ奴だよ』  
 
思った瞬間、ロデリックの感情を読み取った様に  
互いの剣先が身体に触れて引き分けと決まった。  
 
ロデリックは試合中のセルピコはどんな顔をしているのか  
見てみたかったが、マスクを外した彼の顔はいつもの細目の  
一見、人がよさそうな穏やかな顔である。  
金髪で身のこなしに品はあるが、イケメンという程でもない。  
十人並だよなあ???  
 
「先輩、手合わせありがとうございました。  
 いつもながらお見事です」  
 
「おい、ちょっとまてよ」  
 
 ロデリックは、一礼をして更衣室に向かおうとするセルピコ君の  
肩に手をかけて引き止めた。  
 
「何か御用でも?」  
 
「おい、お前。単刀直入に聞くけどな  
 俺がファルネーゼと結婚するのが面白くないんじゃないのか?」  
 
「まさか」  
 
 満面の笑みでセルピコは否定した。  
 
「確かに僕はファルネーゼ様を御幼少からお世話して参りましたが  
 まずご身分が違います。  
 それに血筋だけ良くでも、あんなおつむは足りない性欲は強い  
 他にはなんにも出来ないお姫様なんてこちらから願い下げですね。  
 その点、ロデリック様はご身分、血筋とも申し分ないお相手。  
 私が嫉妬などする理由がありません」  
 
「………」  
 
 ロデリックは微妙に馬鹿にされた様な気がした……  
 はっ!  
 
 うっすらと開いたセルピコの目をロデリックは見てしまった。  
顔は微笑を浮かべていたが、目は笑っていなかった。  
 
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル  
 
ちなみにエロパロ板だけあってセルピコ君の発言は  
いつも以上に辛辣であった……。  
 
 
「やれやれ、と」  
深夜、やっと「ファルネーゼ様のお世話」等から解放された  
セルピコ君は自室の勉強部屋にこもって  
昼間DVDハンディカムで撮った映像を再生していた。  
セルピコ君もお年頃、性少年向きのナニかを見るのかとおもいきや  
画面に映し出されたのは鷹の羽学園フェンシング部の練習風景であった。  
 
これがセルピコ君の「おかず」なのか?  
早とちりしてはいけない。  
ファルネーゼ様の「おかず」目的の他に  
敵情視察もぬかりなく行っているのが彼である。  
 
ちなみに彼の勉強部屋は勉強の参考書以外は  
比較的マヂメでお堅い本ばかりである。  
彼の部屋を掃除するヴァンディミオン家の使用人さん達は  
セルピコ君の部屋やベッドの下で青少年向きエロ本その他を発見した事がない。  
わかりやすいティッシュのゴミも無い。  
 
「ああいう、一見真面目で大人しそうな子が  
 いきなり人を斬りつけたりするのよ」  
 
比較的なにもわるい事はしていないのだが  
彼の評判は聖鉄鎖学園でも世話になっているヴァンディミオン家でも  
散々であった。  
 
実はセルピコ君、一人の時間取れる事がなかなか難しいのだ。  
たとえ深夜であってもファルネーゼ様に用を言いつけられて  
パシリに出されたり、生徒会の運営などで散々こき使われている。  
 
3DKの自室でほっとくつろげる時間がとれる様になったのは  
ファルネーゼ様に「おかず」を提供するようになってからだった。  
いつも激怒するものの、ファルネーゼ様はマッチョなガッツの半裸や  
毛深いロデリックの半裸写真で一週間くらいはご飯何杯でもイケるらしい。  
その間、夜は静かなものである。  
 
前記述に「セルピコ君の自室は3DK」とあるが  
ヴァンディミオン財閥の私邸からすればささやかなものだ。  
ファルネーゼ様専用のお屋敷などかるく椿○荘規模の敷地に館で  
さしものシロガネーゼも驚きのお金持ちっぷりである。  
敷地内には林や川などもあり大富豪の面目躍如たる様相だが  
小さい頃、ファルネーゼ様に、犬に追いかけ回されたり  
川に突き落とされたりとセルピコ君にとってはあまり良い思い出がなかった。  
 
セルピコ君がファルネーゼ様に「おかず」を提供する様になったのは  
色気づいたファルネーゼ様に全裸で迫られた事件があったからだ。  
 
性欲が一番強い時期の青少年からすれば  
驚異の自制心でファルネーゼ様の誘いを拒否した  
(ファルネーゼ様は知らないが半分血が繋がっている理由もある)セルピコ君  
青少年的(;´Д`)ハァハァより  
どうして自分に縁のある女性は廚ばかりなのだろうと  
萎えてしまったのも理由の一つである。  
 
『生の女性は母様とファルネーゼ様でお腹いっぱいです……』  
 
セルピコ君の偽らざる心境である。  
 
当のファルネーゼ様はガッツのマッチョ半裸写真や  
ロデリックの生写真で散々  
 
(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ  
 
(*´Д`*)アアッ・・・・  
 
堪能した後、虚しくなって  
 
「セルピコが悪いのよーっ!」  
 
と号泣するのがいつものパターンであった………。  
 
 
さて、当初のセルピコ君が鷹の羽学園のフェンシング部の  
練習風景の映像から対鷹の羽フェンシング部戦略を練る場面へ戻ろう。  
 
「この方が主将のグリフィスさんですか……」  
 
液晶TVの画面(36インチ)には美しい銀髪を軽やかに揺らせて  
華麗に相手を翻弄するグリフィスの姿が映し出されていた。  
一度ならず練習相手の両手剣の上に乗る、という驚異的な  
荒技も見せてくれた。  
 
「我流の太刀筋ですね。よくもここまで腕を磨いたものです。  
 得物はサーベルか……。僕のレイピアでなんとかなるかな…」  
 
次は今回の無差別級フェンシング大会で密かに  
優勝候補とされているガッツの手合わせ場面である。  
画面の中のガッツは長さ2mもあろうかと思われる  
幅広の両手剣、通称「ドラゴン殺し」をかまえている。  
 
「いやっー!」  
 
ばっちーん。  
 
気合い虚しく、相手はドラゴン殺しの平たい部分でぶん殴られていた。  
 
「おう、ガッツ。俺も手合わせ頼むぜ!」  
 
「おう、かかってこい!」  
 
だまし討ちのコルカスもばっちーんと引っぱたかれて平たくなっていた。  
 
「俺も頼むぜ」  
 
「よし、来いよ」  
 
投げナイフの達人ジュドーも、ナイフはガッツの鎧を貫通できず  
やはりばっちーんであった。  
 
無言でモルゲンステルンで挑んだ巨漢のピピンもばっちーんであった。  
 
「やっぱりガッツにゃかなわないぜ。  
 なにせ百人斬りだもんな」  
 
「はっ、お世辞はよせよ」  
 
「飲め」  
 
ピピンがポカリスエットを差し出した。  
 
部活動の後は和やかに語らう鷹の団とその仲間達の姿があった……。  
 
 
「……………」  
 
ドラゴン殺しはいくらなんでも反則だろうとセルピコ君は思ったが  
無差別級という事で協会も承認しているらしいのだから仕方がない。  
ちょっと気が重くなるセルピコ君であった。  
 
   
この私立聖鉄鎖高校と鷹の羽学園のある都市を紹介しておこう。  
若獣市というちょっと珍しい名前の市であるが  
小さい市であるにも関わらず、ストリートファイトで有名な地域でもあった。  
 
鷹の団が幅をきかす隣の地区では  
エア○スターという有名な女性のストリートファイターがその名を轟かせていた。  
そしてその隣の地区には神代ユウという不良狩りで有名なストリートファイターいた。  
 
他に有名な人物に  
ひときわ目立つマンションにはふたりでえっちで頭が一杯の  
有名な夫婦が住んでいたし  
 
中年で妄想が暴走する編集社契約社員や  
女装趣味でナルシストの男子高校生  
 
時々、純情なダッチワイフロボットが徘徊し  
職業・殺し屋も存在するらしい  
 
荒れた都市の様だがそれぞれ接点はなかった  
 
若獣市の所在は日本(?)らしいのだが  
鷹の羽学園や聖鉄鎖高校には何故か外人が多い  
インターナショナルスクールみたいな学校なのかもしれない  
また馬で登校してくる生徒も両高校かなりいる  
魁!ク○マ○ィ高校を笑えない現実がここにあった  
 
そして驚くべき事に、この若獣市から古代ローマの拳闘場の遺跡が発掘されている。  
生ける伝説女神として名高い美貌のポッパエアのサビーナや  
歳若い拳闘奴セスタスという人物の名前が判別している  
ベスビオ火山の噴火で壊滅したポンペイに酷似した  
それもローマ帝国の遺跡が何故この場所にあるのかは  
今後の調査の結果を待たなければならないだろう  
 
ちなみに浮気の調査やストーカー夫と別れたい時などは  
お手頃価格の探偵事務所があるのでそこをご利用されたい  
 
若獣市の簡単な紹介はこれくらいにして  
セルピコ君の勉強部屋に戻ろう。  
彼は鷹の羽学園フェンシング部への対策は切り上げて  
自分の勉強をするため机に向かっていた。  
 
?何故だろう、蛍光灯の光が強くなったのか  
セルピコ君の机の周囲がだんだん金色に光り輝いてきたのだ。  
 
「おっと、早慶クラスの問題で地が出てちゃ僕もまだまだですね。  
 せめてオックスブリッジかサマーセッチュ工科大レベルじゃないと」  
 
そういうセルピコ君の今の顔は、普段の糸目地味顔から  
何かあったのかと思うくらい超絶美形王子様顔になっていた。  
 
実はセルピコ君の地顔は周囲に金の粉をふりかけた様な  
超絶美形王子様顔なのであった。  
しかし彼が普段、糸目地味顔でいるのは彼の人生が苦労続きだったからだ。  
この若獣市ベルセルク区は、ほものおじ様がうようよいるのだ。  
幼少の頃生活苦に苦しめられた、ファルネーゼ様に拾われたものの  
鞭でしばかれたり川に突き落とされたりしたうえ  
ほものおじ様に目をつけられておかままで掘られるなんてまっぴらです。  
普段の地味顔は、その為の自衛手段であった。  
 
時々、一人で安心した時など、つい金髪の眩しい  
王子様系イケメンが出てしまう。  
 
「でも僕、本当に御館様の隠し子なんでしょうか?  
 御館様はもとより義理の兄上達にも顔は似てないし…。  
 母様にいたっては人外レベルだったもんなあ」  
 
セルピコ君の哀しい述懐であった…。  
 
 
「……」  
 
さして楽しい事もなかった思い出にふけっていたセルピコ君だが  
自室に誰か忍び込んでくる微かな気配を感じ取っていた。  
今、深夜AM2:00  
 
セルピコ君が後ろも振り向かずペーパーナイフを投げつけたのと  
ファルネーゼ様の小さな悲鳴があがったのは同時だった。  
 
「どうなさったんです?こんな夜中にご婦人が男の部屋へくるなんて」  
 
入り口の壁に突き刺さったペーパーナイフの横で  
ファルネーゼは怯えて立ちすくんでいた。  
服装はといえば白いレースのネグリジュに  
ガウンを羽織っただけという無防備な格好である。  
そんな扇情的なシチュエーションでも青少年的(;´Д`)ハァハァな  
激情が湧いて出てこないのが彼であった。  
 
「恥を忍んでやっとここへ来たのよ。  
 もう私、あんな虚しい事に耐えられない!」  
 
「?」  
 
確かに今日のファルネーゼ様は様子が違う。  
いつもだったら夜でも呼びつけて  
「ロ○エを買ってこい」などパシリにされるが常だったからだ。  
 
「もう妄想で '`ァ,、ァ(*´Д`*)'`ァ,、ァ するだけの夜なんて耐えられないわ。  
 一番好きな人とじゃなくてもいい。  
 せめて初恋の人といたしたいの。  
 セルピコ、お前はこんな私を軽蔑してるわね……。  
 でもあの時は愚かなりに真剣だったのよ!」  
 
……僕は何番目くらいなのかな?  
ファルネーゼに抱きつかれたセルピコ君は頭の隅でそう考えた。  
 
「ファルネーゼ様、早まってはいけません。  
 ロデリック様とご結婚の暁には『ふた○エッチ』の様な  
 めくるめく新婚生活がまっています」  
 
「あんなサルみたいなえっちは嫌ーっ!」  
 
「セフレだったらみたむらさんでも呼んで…」  
 
「私がいくら愚かで罪深い女でも、あんなのは嫌ーっ!  
 私に自殺しろって言うの!?  
 なんだかんだ言ったって、女は若くて綺麗な男の方が  
 断然いいに決まってるでしょ!?」  
 
ファルネーゼ様のそれなりに真剣な様子にも  
セルピコ君はクールに『僕って都合のいい男なんですね……』と思った。  
でもガッツさんやロデリック様と先に「いたされる」よりはいいかな……。  
 
「わかりました。  
 ファルネーゼ様のお望みのとおり  
 今夜は嫌というほどお相手して差し上げます」  
 
「えっ?ほんとう?・」  
 
またセルピコ君の周囲が金色に光り輝いた。  
背景に星や花くらい飛んでたかもしれない。  
地顔の超絶美形王子様顔になったセルピコ君は  
ファルネーゼ様をぐっと抱き寄せた。  
 
「セルピコ…私、嬉しい…・」  
 
ファルネーゼ様はセルピコ君の超絶美形王子様顔は  
セルピコとは「こういう顔」と免疫があるのであまり有り難味は感じていない様子である。  
下々ではめったにお目にかかれない  
とんでもないレベルの美形男子なのだが  
今のファルネーゼ様は「いたせる」方に感激しているご様子である。  
 
「…生の男は怖いものですよ……」  
 
そんなセルピコ君の台詞にも、ファルネーゼ様の目は「はぁ〜と」であった…。  
 
 
ひしと抱き合う美男美女の姿は傍目から見れば  
愛を確かめあおうとする美しい姿と思えたが  
片や顔も頭もイケてるのに人生いい事無し続きの  
十代にして人生に疲れちゃったな〜もうどうにでもなれと  
はんばヤケ気味のお兄ちゃん  
片や日頃のフラストレーションをセクースで解消しようと  
期待に胸膨らませるお嬢様にして妹  
 
ファルネーゼ様が知らないとはいえ  
半分血が繋がっている兄妹同士の  
非常にデンジャラスな事態に陥っているのだが  
そこはエロパロなのでスルーだ  
セルピコ君が「妹萌え〜」なのかどうかは神のみぞ知る  
でもベルセルクの神だからたぶんロクデモナイ答えしか返ってこない  
 
目が「はぁ〜と」になっているファルネーゼ様に  
密かにため息をつきつつセルピコ君はネクタイを緩めた……  
 
「ちょっ、ちょっと何してるんですか!?ファルネーゼ様!」  
 
「え?お前EDではないの?  
 やる気のない殿方にはこうやるんだって  
 本に書いてあったわ」  
 
ファルネーゼ様は今まさにセルピコ君のパンツの  
ジッパーをおろしてナニをどうしかするつもりらしい  
 
   
ファルネーゼ様の「ED」発言にセルピコ君は  
目眩がする様な脱力感を覚えた。  
どこでそんな知識を拾ってくるんでしょう。  
あ、TVのCMでもそんなのあったっけ………。  
 
「ああっ!ごそごそ変なとこ触らないでください!  
 僕のどこがEDなんですか?さすがの僕もまだそこまで枯れてません」  
 
「だってお前…」  
 
ファルネーゼ様は頬を染めて横を向いた。  
 
「私が裸になってもナニもしてくれなかったわ。  
 殿方ってそういう時、抑えが効かなくなるって聞いたもの。  
 だからお前、EDなんじゃないかって……」  
 
そんな時は女性が口でご奉仕すればいいのよね?  
ファルネーゼ様の表情は真剣そのものだ。  
 
「………」  
 
セルピコ君は気絶しそうだった。  
お館様、僕は初めて貴方をお恨み致します。  
どうしてきちんと性教育そのた他をご自分の娘になさらなかったのですか?  
 
「あの、男女が『いたす』までいろいろあるでしょう?  
 いきなり裸の女性が迫って来たらある程度まともな男性は  
 ナニがどうにかなる前に驚きますよ」  
 
「お前はあの時驚いただけだったの?  
 私が嫌いだった訳じゃないの?」  
 
「ええ、まあ、そうです……」  
 
他に理由もありますけどね……。  
セルピコ君の心の声だ。  
 
「前振りも無しに裸の女性が迫ってきて  
 ”その気”になる様な男は気をつけた方がいいですよ。  
 そういう男はファルネーゼ様を大事に思っている訳ではないんですから」  
 
「そうなの?」  
 
ファルネーゼ様は今ひとつ納得がいかない素振りだ。  
 
「だいいちその場の雰囲気でいたしてしまって  
 病気がうつったり、子供が出来たらどうするんです?」  
 
「子供が出来たら産めばいいじゃない」  
 
「育てるのはどうするんです?」  
 
ちょっと考えてファルネーゼ様は答えた。  
 
「お父様」  
 
「子供が出来たらまずいでしょぉぉぉぉぉっ!」  
 
僕との間に子供が出来たらものすごくマズい  
とってもマズい事なんです!  
でも理由を説明したら、ファルネーゼ様は僕よりパニック状態になるな…。  
セルピコ君はやっとの事で『私たちは異母兄妹なんです』  
との言葉を飲み込んだ。  
 
「僕たちはまだ学生の身分じゃないですか?  
 子供が出来て育てるには仕事を持って経済的な基盤ないと」  
 
「お前が学校やめて働けばいいじゃない」  
 
「僕の将来、棒に振れって言うんですか!  
 それにファルネーゼ様はロデリック様という婚約者がいらっしゃるでしょ?  
 子供は結婚してからつくっても遅くないんです」  
 
「……ねえ、お前は今晩私の相手してくれるって言ったわね?」  
 
「はい」  
 
「そんなに今妊娠がいけないなら、お前はこれからどうするつもりだったの?」  
 
「もちろん避妊するつもりでした。  
 ほらこういうモノご存知ですか?」  
 
セルピコ君は財布を捜してコンドームを出した。  
ファルネーゼ様はそれを凝視する。  
 
「……お前、どうしてこんなモノ持っているの?」  
 
「はい?」  
 
ファルネーゼ様は変なところで勘が鋭かった。  
 
「今夜私といたそうと思って持ってた訳じゃないでしょう?」  
 
「いえ、これは男のたしなみですから…」  
 
重低音のファルネーゼ様の声が下から響いた。  
 
「お前、もう経験済みだわね?」  
 
「いえ、まあ、いろいろと…」  
 
「相手は誰?誰なの!?  
 聖鉄鎖は男子校だからまさか男って事はないわよね?  
 ずるいわ!  
 私が迫った時は何もしてくれなかったくせに自分だけ。  
 私ってものがありながら、ひどいわよ!  
 相手は誰なの?何人経験済みなの?  
 正直におっしゃい!白状なさいってばっ!」  
 
半泣きのファルネーゼ様に首を絞められて  
ぶんぶん頭を揺さぶられながらセルピコ君は  
 
(僕はファルネーゼ様の彼氏でも旦那さんでもないじゃないですか……)  
 
と考えていた。  
 

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