シールケは周囲を見回すと、こっそりと納屋の扉を開ける。
奥まったあたりにはオレンジの香りのする藁が積み重なっていた。
その上に身を投げ出し、大きくシールケはため息をついた。
トロールから逃れようと農民たちは何もかもそのまま置いていったようだった。
旅の途中の村は無人で、一行は空いた家を借りて休んでいる。
その家をそっと抜け出したシールケは、こうして一人になれる場所を探していたのだ。
(疲れた…)
シールケは自分のか細い体を自ら掻き抱き、藁に顔を押し付けた。
昨晩は久々にベッドで休んだはずの体は、妙にけだるい。
理由は自分でもわかっている。
シールケはそっと指をスカートの中に滑り込ませ、下着の上から股間の膨らみをなぜた。
「んっ…」
霊樹の館にいた頃からの習慣だった。
霊的な力を保てるよう自分の体と対話するために。
性魔術を操るために。
魔女としての力を保つためにはは性的な刺激が必要なのだ。
少し指でなぜるうちに、下着はじっとりしめってきた。
ご無沙汰だったせいだ。
(早く終わらせて戻らないと……みつかっちゃう)
声が出ないように服の襟のあたりを引き寄せ、噛みしめる。
そして拙い指つきで、刺激を続けた。
すぐに下着の上からでは物足りなくなってきた。
期待をこめて下着の隙間から指を差し入れると、そこはすっかりとろけきっていた。
(どうしよう……こんなになってる……)
ぬるつく自らの愛液にシールケは興奮し、ますます指を深く差し込んでいく。
割れ目のあたりに指の腹を這わせて、敏感な突起を探す。
(んんぅ……)
クリトリスに指が触れ、シールケはびくりとからだを痙攣させた。
(やだ、もうイっちゃいそう……)
早く終わらせなければ、という焦りもあったが、久々の自慰を十分に楽しみたいという
欲望もあった。
大丈夫、まだ大丈夫……みんな眠ったのは明け方だから、まだ寝てる。
シールケは自分にそう言い聞かせ、目を閉じて意識を股間に集中させる。
自らの敏感な突起をつまみ上げ、こすりあげながらシールケは妄想モードに入った。
自分の体にタッチする男の姿を思い描く。
霊樹の館にいた頃は、特に誰というわけでもなく、理想の男性とのセックスを思い描いていた。
例えば、森の中で出会った逞しい狩人に陵辱されつつ感じる自分や、
時には若々しい貴族の青年と豪奢なベッドの上で抱き合う自分。
でも今は違う。
シールケの心に浮かぶ男はただ一人。
(ガッツさん……)
空想の中で彼は激しく自分を弄る。
か細い腕を握り、押し倒し、乱暴に服を捲り上げてまだ成熟しきらない体を舐める。
激しく、時にやさしく。
逞しい体に組み敷かれて、愛撫される自分の姿を思い浮かべてシールケは息を荒げた。
クリトリスをいじる指先は自然に動きを早め、足先にも力が入る。
(はあっ……だめ、ガッツさん……激しすぎます……)
くちゅくちゅといういやらしい水音が耳に届き、ますますシールケは興奮していく。
絡みつくローブがもどかしい。
(どうしよう、脱いじゃおうかな……下着だけでも……)
一度自慰を中断し、シールケは下着を膝までずりおろして、ローブを捲り上げる。
そして四つん這いになって股間に手をのばした。
今誰かが納屋の扉を開ければ、大事な部分を全て見られてしまうだろう。
一瞬躊躇したが、体の中でくすぶる欲望の方が勝った。
(大丈夫だよね……まだ、平気だよね)
火照った尻にひんやりした外気が気持ちいい。
(うぅ……ガッツさん……)
シールケは頭を伏せ、尻を突き出し、腰をくねらせながら自慰を続けた。
クリトリスだけでは物足りない。
もう一方の手でそっと愛液のにじみ出る膣口の入り口のあたりをこねて、さらに快感を高めていく。
(ガッツさん、入れてください。もう我慢できない、ガッツさんのおちんちんが欲しいです)
妄想の中のガッツは、犬のような姿勢のシールケの腰を掴んで、
逞しいペニスを股間にあてがう。そして貫く。
同時にシールケは指を差し入れ、中の刺激もはじめた。
「うあぁ……ん……」
思わずいやらしい喘ぎ声が漏れる。
まだ成熟しきっていない性器は、指一本でも狭く感じる。
(本物のおちんちんが入ったら、どうなっちゃうんだろう…)
(欲しい、ガッツさんのが……欲しい)
ますます愛液の量は増してきて、太ももを伝い始めた
腰をのの字を描くようにくねらし、周囲に気を配るのも忘れて、
シールケは思う存分妄想に浸りこんだ。
(もっと、もっと突いて下さい、ガッツさん……)
「はあん……うっうっ……すごい……ガッツさん」
ヌルつく中で指をくにくにと折り曲げ、感じる部分をつつく。
もう片方の手ですっかり固く勃起したクリトリスをつまみ、愛液を塗りつけるように
こすりあげると、背筋から続々と快感が駆け上っていく。
「んんっ……も、もうだめっ……イッちゃう……」
激しくガッツに突きまわされるイメージで、ついに達した。
どっと全身の毛穴が開いて汗が噴出す。
「はあっ……はあっ……」
荒い息が漏れ出し、シールケは藁の上に身を投げ出した。
「早く戻らないと……」
その時、急に納屋のドアがわずかに揺れた。
閉めたはずなのに!
凍りつくシールケ。そしてドアの向こうから現れたのはつい今まで
妄想の中で体を重ねていたガッツその人だった。
不意の侵入者にシールケの血の気が引いた。
汗が急激に冷えた後、今度は血圧があがり、顔全体に熱が襲ってくる。
「み、みないでください!」
慌ててシールケはめくれあがったローブを押さえ、
自分の体を抱きしめてうずくまった。
恥ずかしさのあまり顔を上げることが出来ない。
このまま消えてしまいたい気分だった。
黙ってガッツは納屋の扉を閉めた。
出て行ったわけではない。
彼はゆっくりシールケに近づいてくる。
「あ……あの、出てってください!」
顔を伏せたままシールケは叫んだ。
目の前に何かが突き出された。
反射的に顔を上げると、それはシールケの帽子だった。
「あいつらが目を覚ます前に戻った方がいいんじゃねえか」
「……」
シールケはわななく手で帽子を受け取る。
恐る恐る見上げると、ガッツはいつもどおりのしかめっつらで、
まるで何も見なかったかのような様子だった。
起きたばかりなのか、鎧はつけていない。
去ろうとするガッツの背中に、ついシールケはとげのある口調で言葉をぶつけてしまった。
「いつから……いたんですか」
気恥ずかしかったのもある。
でも、少しだけくやしかった。
シールケは酷く重大な秘め事を見られて、穴があったら入りたい心境だ。
それなのにガッツは人の……恥ずかしい行為を見て、平然と、いつも通りで。
ガッツは首だけ振り返って、少しだけ口の端を上げて笑った。
「さて……下着を下ろしたあたりからかな」
「わ、割と最初の方じゃないですか。ひどい……」
じゃあ、うっかりガッツさんの名前を口にしていたのも聞いていたの?!
それに気がついたシールケは再び血の気が引くのを感じた。
再びシールケが頬を染めてうつむくと、ガッツは黙って少女の方に向き直った。
そして羞恥のあまり小さく震えるシールケの頭に優しく手をおき、
「気にすんな。誰だって―そんな気分になる日もあるさ」
シールケは唇をかみ締め、胸元に帽子を掻き抱いた。
「ガッツさんは。あるんですか……そんな気分になる事」
思わず口にした後、急に後悔の念が襲ってくる。
「べ、別に変な意味じゃないです。……どうしてるのかって……思っただけで。
あ、あの!違うんです、どうしてるのか聞きたいんじゃなくて!」
どんどん墓穴を掘っているのに気がついて、シールケはくしゃくしゃに握りしめた帽子で顔を隠す。
「もうやだ……恥ずかしい」
もう恥ずかしくてガッツの顔が見れない。
思考が停止した空白の一瞬。
そして、体が急に温かい何かに包まれ、藁の上に再び寝転ばされた。
「え!」
何が起こったのかすぐにはわからなかった。
帽子がむしりとられる。
ガッツの顔が目の前にあった。
そしてすぐ強引に押さえつけられ、唇をふさがれる。
「んー!」
シールケは反射的にあがいたが、圧倒的な対格差にはかなわない。
すぐに両手首を押さえつけられ、身じろぎできなくされてしまった。
ガッツの舌が、唇を割り広げて進入してくる。
初めてのキスだった。
しかし本能はその唇の受け止め方を知っているかのようで、シールケは素直にその舌を
口腔に素直に受け入れ、自らも舌をからめて、拙いキスを返した。
「んっんっ……」
ガッツは素直になったシールケの手首を話し、義手ではないほうのの手で
ローブの下に手を差し込む。
「えっ……だ、だめですっ……!」
暖かな手の感触に、今まで感じたことのない鳥肌が立った。
あの間抜けな少年に触られたのをのぞけば、そんな部分を男に触られるのは初めてだ。
「俺だってそんな気分になる日があるさ」
「……」
言葉に詰まるシールケだったが、ガッツの目は真剣で、冷酷だった。
本気なんだ。
シールケの背中にぞくぞくと恐怖と、そして再びせいの快感が駆け上る。
「俺の名前を言っていたな。まんざらでもないんだろ……」
ガッツは手の動きを再開する。
「うう〜…っ」
(どうしよう……まさかこんな事になるなんて)
嫌なのか、嫌じゃないのか。
自分でもよくわからない。
再びガッツは覆いかぶさってきた。
か細い首筋に唇を押し付けられ、シールケは吊り上げられた魚のように激しく体を震わせた。
「やあ……!やだ、くすぐった……いっ!」
一方ガッツの指はたやすくシールケのぬれた秘部に到達した。
「あっ……ぅああ!」
生まれてはじめて他人に触れられた。その衝撃は強かった。
しかも自慰でイッた直後のせいか、酷く感じてしまう。
「ぬるぬるだな」
耳元で囁かれ、シールケは恥ずかしさのあまりガッツの肩に額をうずめて目を閉じた。
「やだ……恥ずかしい」
消え入りそうに囁くシールケに、ガッツはそっと告げた。
「今はそんなこと忘れちまえよ。やめるか?」
くちゅ。
ガッツの指がシールケの狭いヴァギナに差し込まれた。
「あっ……!」
「無理やりする気はねえよ」
ぷちゅり。
膣内で太い指が折り曲げられ、シールケの敏感な部分をこすりあげる。
くちゅ……ぷちゅ……。
粘り気のある淫猥な音。
「あ……あ!んんう……」
すぐにシールケは他人から受ける刺激にめろめろになってしまった。
全身から力が抜け、恥ずかしさよりも快感を求む欲望がかってしまった。
「どうする?」
ガッツのどこか面白がるような目。
シールケは目をそらす事ができず、甘い声で答えた。
「……ふうっ…、…続けてください……」
シールケは着衣を全て脱いだ状態で、藁の上に横たえさせられた。
ガッツは少女の股間に顔をうずめ、舌で念入りにクリトリスを刺激している。
舌先で小さな肉の蕾をつつくたび、少女の体は波打ち、あふれ出す汁の量も増す。
「ガキだと思ってたけど感度がいいな」
「……私っ……魔女ですから……」
息も絶え絶えシールケは答え、帽子のつばをかみ締めてあえぎ声を押さえる。
「指も入れるぞ」
「うあ……あん、ふうっふうっんぐぐぅ……」
思わず嬌声を上げてしまったが、慌てて帽子を噛んで耐えた。
喘ぎ声を聞かれるのが恥ずかしかった。
声を上げてよがるのはあまりに淫らだし、ガッツにそう思われるのは耐えがたかった。
ガッツの指は面白がるように抜き差しされ、シールケのまだ未成熟な膣を気遣いながらも、
なかでくねくねと壁をこすりあげる。
「やっやぁぁ……漏れちゃう」
指を抜き差ししながらクリトリスを舌で転がされると、お漏らししそうな感覚に襲われる。
「いいぜ、漏らせよ」
「や、やだ……」
ガッツはそのまま手を緩めずに刺激を続け、ついにシールケはぞくぞくと絶頂が
せまっているのを感じた。
「い……いきそうです……んっ……ううう〜」
ガッツの唇がそっとクリトリスをはさんだとたん、シールケの快感は頂点を迎えた。
「ふわあ……ぁ!」
ぶるぶると痙攣し、股間からは少量の愛液が噴出した。
意識が飛び、シールケはのけぞったまましばらく動けなかった。
(自分でするより……気持ちいい。それに……人の肌って、暖かい……)
ふと気がつくと、ガッツも服を脱いでいた。
その股間にそそり立つものをみて、シールケは息を呑んだ。
「はじめて見るって顔だな」
「う……本では見たことありますけど……」
シールケはまだ絶頂感冷め遣らぬ震える指先をそっとのばす。
「……あ、熱い」
「俺もイかせてもらいたいからな。少しハードになるぜ」
ガッツもすこし興奮のためか息を荒げつつ、シールケに迫り、座った状態の
シールケの顔にそそり立ったそれを突き出した。
「舐めてくれ」
「えっ……!な、舐めるんですか?!」
フェラチオに関する知識はあったが、それがどういうものか知っている程度だ。
そそり立ったそれを目の前にしても、どうしていいのかよくわからなかった。
「ああ、頼む」
「う…」
抵抗感はあったが、一度いかせてもらったためかそれ以上抗う気はなかった。
素直にシールケは舌を出し、そっとガッツの亀頭の先端に舌を押し付けた。
「う……」
ガッツはわずかに声を上げ、少しだけ腰を折り、シールケの頭をそっと押さえた。
「ん……」
シールケは黙ってそのまま舌先をちろちろと先端を刺激する。
(気持ちいいのかな)
そのまま唇を開いて、そっと亀頭の先をくわえ込んだ。
「んぐっ……」
「いいぞ、手も、使ってくれ」
「ふぁい」
シールケはガッツのものを咥えたまま、手で竿を握り締め、そっと手を上下させる。
(ガッツさんが感じてる……変な気持ちだわ)
シールケは熱心に口の中で舌を動かし、唾液でとろけきった口腔全体で
亀頭全体を愛撫する。
唾液を唇ですりこむように動かし、ちゅうっと先端を吸い上げる。
「うっ……」
ガッツの吐息がますます荒くなってきた。
ますます口技に熱を入れ始めた少女だが。不意にガッツの手がシールケの頬を押しのけた。
「もういい」
「ふえ……?」
亀頭から唇を離すと、ねばつく唾液が淫らな糸を引いた。
その蕩けた顔をみて、ガッツもついに辛抱たまらずシールケを押し倒す。
シールケが疑問に思うまもなく、少女は藁の上で横たえられてしまう。
「あ、あの……」
「いかせてもらうぜ」
ガッツは息の乱れた余裕のない口ぶりでそういい、
今までにない荒っぽい手つきでールケの両足を開かせ、その間に割入ってきた。
「え、まさか……」
ガッツの意図を理解し、シールケは思わず体をよじって逃げようとした。
「大丈夫、入れやしねえさ。ただ、ちょっとここを使わせてもらうぜ」
ガッツは淡々と少女の抵抗を押さえつけてしまい、その唇を唇でふさぐ。
「んっ」
熱く、短い、荒っぽいキスの後、ガッツは自らのペニスをシールケの股間におしつけ、
足を持ち上げて閉じさせる。
そしてペニスを少女の太ももに挟み込んだ状態でゆっくりと腰を遣い始めた。
素股という行為だが、シールケは混乱していてよくわからなかった。
だが、濡れそぼったヴァギナに、固いものが擦れてふたたび体がじれてくる。
「ぅうっ……、ガ、ガッツさん……気持ちいいんですか?」
「ああ……」
(なんだか可愛い)
これだけ体格さもある、逞しい戦士のことをそう思うのは変だと思う。
だがシールケは、熱心に腰を遣い、自分の体を貪る男が妙に愛おしかった。
(もっともっとめちゃくちゃにされたい)
「いくぞ……」
「は、はい……」
ガッツの片目は射抜くように鋭い。
その目に見据えられ、シールケは身も心も支配される快感を感じた。
ガッツの体が震え、ペニスの先端から白い液が吐き出された。
断続的に噴出すそれはシールケの腹の上におちた。
ガッツはシールケの足を手放すと、シールケの上に覆いかぶさってもう一度熱っぽいキスをする。
恋人のような熱いキス。
ガッツさんも寂しかったのかな。
シールケの知る凶戦士に寂しいなんて言葉は似合わないはずだ。
だけど、今のガッツはシールケの知る彼のどんな時より人間らしい感じがした。
熱いキスが、抱擁が。
(泣いているみたい)
(でも、ちがうんだ……)
行為が終わった後の冷めた感覚がシールケを襲う。
(ガッツさんにはキャスカさんが……)
でも、今だけは。
シールケはガッツの背中に腕を回し、負けじと熱くキスに応える。
これが何なのか。どんな意味があったのか。
そんなのわかりっこない。でも今だけでいい。もっと、もっと。もっと欲しい。
(終)