旅の途中に天然の温泉を見つけたガッツ一行のお話(妖精はウザいので死亡という設定)。
一人岩に腰かけるガッツの元に、手ぬぐいを脇に抱いた汁気が駆け寄る。
お湯の下見の際に湯気を浴びたのか、濡れた前髪が額にしんなりと張り付いていて、どことなく艶っぽい。
「あれ、ガッツさんは入らないんですか?」
「ああ、俺はいい。コイツを脱ぐと落ち着かなくてな。お前らだけで入って来たらいい」
「でも傷にも良さそうですし・・」
「先生〜!早く入りましょう〜!」
ファルネーゼが大岩の向こうから顔を出していた。
温泉は、一ヶ所がガッツのいる場所から大岩を挟んで向こう側に存在しており、そちらが女湯という事になっている。
「ほら、ガキんちょはさっさと温もってこい」
ガッツはそう言うと、ペシッと汁気の尻をはたいた。
やましい気持ちの無い何気ない行為であったが、ローブの薄い生地越しにブルンッと肉厚な感覚が指に伝わった事に、ガッツは少々驚いた。
「きゃ、きゃッ!・・・も、もぅーーッ・・」
頭から湯気を出しながらも、しぶしぶ諦めた汁気。
「・・じゃあ、私たちだけで行って来ますからっ」
「ああ、そうしろ」
「くしゅんっ」
焚き木の爆ぜる音の中、一際大きくくしゃみが響いた。
「どうした、シールケ?湯冷めしたか?」
隣で寝ていたガッツが、シールケの方に寝返りを打つ。
「あ、ガッツさん・・す、すみません、起こしてしまいましたか?」
必然的に二人の顔が近づき、シールケは気恥ずかしさから顔の半分までシーツを被ってしまった。
「そんな事はいい。明日の朝は相当冷えるぞ。湯冷めしたんなら今からでもさっさと入り直して来い」
「そ、そうですね・・・では、ガッツさんのお言葉に甘えさせてもらいます」
シールケはいそいそとシーツから抜け出ると、手ぬぐいと松明を手に温泉の方に向かった。
「月明かりがあるとはいえ気をつけろよ」
・・やがてシールケの姿が見えなくなる。
「・・・」
やはり一応念の為、とガッツは立ち上がった。
大岩に辿りつくと、ガッツは聴覚を集中して岩越しにシールケの安全を確かめた。
闇の静けさの中に、シールケの、ずず、ずず、と鼻をすする音が響いている。
(あの馬鹿、まだ入って無いのか・・)
やがて、鼻をすする音の合間に、しゅる、しゅる、と衣擦れの音が加わりだした。
(ローブは比較的スムーズに脱げたようだ。下着は・・足首で絡まって苦戦しているようだ)
(・・・・・・・・・・・)
(何やってんだ、俺は・・・)
音の主を探ろうとする余り、いつしか衣擦れの音からシールケの脱衣シーンを思い描いていた自分に呆れる。
ちゃぽ・・・ん
ようやくシールケが湯に浸かり、ガッツも大岩の下に腰を下ろして休む事にした。
「よっこらせっと・・っと・・・・しぇ・・しぇ・・・しぇっくしゅん!・・・・・・・」
不意に飛び出たガッツのくしゃみ。口を抑えるが既に遅い。
「だ、誰ですか!?・・ガ、ガッツさんですか!?」
ばしゃばしゃと音が立ち、岩の向こうからでもシールケが動転しているのが分かった。
「・・・・ああ。俺だ」
「えー・・・・と・・・あの・・・」
「流石にお前一人で行かせるのも無責任だと思ってな。見張り役だ」
「そ、そうでしたか。・・ガッツさんも一度に温泉に浸かってないせいですね、私と一緒で風邪をひいちゃったみたいですね」
くす、と微かな笑い声が響いた。
そして、僅かな沈黙の後。
「・・・あーーあの、ガッツさんが宜しかったら、い、一緒に温泉に入りませんか?」
「・・はあ?」
「あ、あの、あの、もちろん背中合わせですから!私もガッツさん見ないですしガッツさんも見ちゃいけませんから!それで、あの!」
湯にのぼせるまでもなく茹蛸になっているシールケの姿が頭に浮かんだ。
「・・・じゃ、そうさせてもらうか。二人が別々じゃ見張りどころじゃないしな」
「は、はい・・・・・っっ!」
がちゃり、がちゃり。
ガッツの鎧が重々しい音を立てて、一つ一つガッツの肉体を解き放っていく。
がちゃり。
そして最後のパーツが外れ、隆々としたガッツの筋肉、その肉体全てが露わとなった。
ガッツは、傍らに綺麗に折りたたまれたローブとズロースをちらりと見やると、そのまま温泉へ向かった。
大岩の陰からガッツが現れるやいなや、ばばっと背を向けて俯くシールケ。
一方、お湯から生えた白く幼い背中を視界の隅に捉えつつ、無言でガッツはお湯に浸かった。
・・・・ちゃぽん。
少し傷に染みるが、悪くない。ガッツはそう思った。
ちょうどシールケと3,4mほど離れた場所で、ガッツは腰を下ろし、シールケに背を向ける。
後は目を瞑り、ただ身体を癒す事に集中・・・する筈だった。
ちゃぷ・・・ちゃぷん・・・
情欲をかき乱すかのように絶えず撥ねるお湯の音、
そして、耳を澄ませば確かに聞こえる、背中越しに聞こえるシールケの「はあ・・っ・・はあ・・っ」とどこか期待に荒げたかのような息遣い、
それらが月夜に照らされた静かな温泉内に官能的に交じり合って響く。
またその一方で、温泉の倒錯的な硫黄の香りが鼻腔をくすぐり、肌を撫でるように揺らめく熱い蒸気が、絶え間なくガッツの理性を吹き飛ばそうと責め立てる。
くらくらとした頭の中、ガッツは、自身のすぐ背後に全裸で佇む幼い少女、彼女を押し倒すまいと何とか理性を保っていた。