窓から入ってくる夜の町の明かりが、暗い部屋の中をぼんやりと照らす。
「…スレッド…」
俺は目の前にある現実が、本当に現実であるか確かめるために、彼女を抱きしめる。
いつも羽織っている青いバスタージャケットが無いので、黄色いノースリーブからむき出しになった肩が冷たい。
日に焼けて少しバサバサとしているが、石鹸の香りのする青い髪が、頬にあたる感触が心地良い。
「良いのか?俺と寝て」
「…ん」
彼女は俺の胸の中で小さく頷き、背中に手をまわして弱い力で抱きついてきた。
少し身体を離して顔を覗く。眉頭を寄せて茶色の瞳を揺らしながら、俺を見上げている。
薄暗いのでハッキリとは見えないが、顔はほの赤い。肩においていた右手を離し、彼女の頬に触れる。
「よ……いや、ポアラ」
<嫁さん>と呼びかけるのを訂正する。そうじゃない。今は、彼女は俺の腕の中に居る。今、この時は他の誰のものでも無く、俺のものだ。
ゆっくりと顔を近づけると、ポアラは目を閉じた。それほど長くは無いが、量の多い睫がうっすらと濡れているのが判る。
柔らかい唇に自分の唇を重ねる。軽く吸って唇を離し、再び深く口づけをする。
「んむ…ん……」
ポアラの声が俺の口の中で響く。下唇を甘噛みし、薄く開いた歯の間に舌を差し込む。
中の舌に自分のそれが触れると、少し逃げてからおずおずと嘗めかえしてきた。キスも初めてなのか、動きはつたない。
弱々しく動く舌を吸い、形を探るよう舌先から奥まで嘗めあげる。
絡みとってポアラの小さな舌をしだく。
「ふっ…んむっ、ん」
キスだけでは物足りない。
唇を重ねたまま、片手で服の上からゆっくりと胸を揉む。
「……んっ、ぅ…」
ビクッと一瞬ポアラの身体が跳ねる。
「ふぅ…ん……」
ポアラは慣れない快感から耐えようと、俺の背中をつかむ力を強くした。
銀糸をのばしながら唇を離してポアラの顔を見つめる。
切なげに細めている目と視線が絡むと、ポアラは恥ずかしげに俯いた。
柔らかいが弾力に富む大きい胸に、俺の指が埋まる。
「…はぁ…あ…ぁ」
生地の上から乳首を人差し指と中指で挟むと、俯いていた顔が一瞬上を向く。
「あっ…!」
そのまままた視線が絡み、今度は目を離せなくなった。
ポアラの微かに熱を帯びた吐息。肌が服に触れる音。
それ以外には鼓膜を震えさせるものは無いはずだが、胸から耳の奥へと鼓動が鳴り響く。
「…俺につかまれ」
ポアラを抱き上げ、部屋の端にあるベッドに降ろした。
窓から入る明かりが、ポアラの全身を照らす。頬を紅潮させ、潤んだ目で見上げてくる。
女にしては筋肉がある方だが、大きな胸、細い腰、丸く適度に締まったお尻。締まるべき処は締まった肉感的なスタイルをしている。
愛しい。ほとんど無意識に、火照ったポアラの頬を撫でる。
「スレッド……」
吐息混じりに名前を呼ばれ、理性とゆう蓋が外れそうになるのを抑える。
ポアラの頬を撫でていた手を、首から鎖骨へ、鎖骨から胸へと下ろしていく。
上着のボタンをはずし、ブラをスルリとはずす。ストラップが無いので簡単に脱がせれた。
こぼれそうな豊満な乳房を、両手ですくい持ち上げて舌を這わす。
「んんっ…ふぅ、ん…」
乳首を軽く吸い、歯と舌で挟む。片方の胸は唾液で濡らした指で摘む。
「はぁ…っあ、スレッ…ドぉ…」
僅かに開いた口から嬌声が漏れ、ポアラが俺の髪を震える指先に絡ませて添えてくる。
勝ち気な性格が表情と仕草に表れ凛とした普段の姿と、快感に喘ぐポアラの艶やかな今の姿。
両方の姿を見たのは、俺だけだろう。
「はぁぁ…ん…」
仰け反った白い首に甘く咬みつき、鎖骨から胸へ、胸から腰へ、そして腰から足の付け根へと唇をずらして愛撫してゆく。
スカートの下の黒い下着は秘所の辺りが濡れ、そこだけ下着の色が濃くなっている。
布越しに秘裂に沿って、指を触れるか触れないかの間隔でゆっくり動かす。
「あっ!」
ビクリッと身体が跳ねる。そのまま指を這わしていくと、下着の色は秘裂を中心にどんどん色を濃くしていく。
指を往復させて弱い刺激を与え、人差し指を突起に押しつける。
「やあ!あっ、ああん!」
ポアラの身体が大きく跳ね、布は秘所の形がハッキリ判るほど濡れて張り付いた。
「もうイったのか?随分と感じやすいんだな」
「!やっやだ…!」
ポアラは耳まで真っ赤にして、横を向いて手の甲で視界を閉ざしてしまった。
「恥ずかしがる事は無いだろ」
可愛らしい反応に少し笑みがこぼれる。
「もぅ、からかわないで…」
忍び笑いが分かったのか、もごもごと呟くポアラ。
「…からかってはいないさ」
もっとポアラの声を聞きたい。もっと感じている姿を見たい。
太股に軽くキスを落とし、スカートと一緒に下着を脱がす。
ポアラは一糸纏わぬ姿になった。それを淡い月光と弱く入り込む町の薄暗い明かりが、上気した肌を照らしてことさらに艶めかしく映しだす。
「綺麗だな…」
視線を全身から秘所に落とし、左手で片足を持ち上げて自分の肩に掛けさせる。
薄桃色の花弁は流れる蜜で光り、茂みはしっとりと張り付いているのが判る。
花弁を右手でぬちっと音をたてて開き、ぷっくりと充血した花芯を舌先でつつく。
「あっ!」
蜜壷から流れる蜜を指で掬い、ぬるぬるする入り口を撫でる。
「……あっ…っ、くっぅっ……」
浅く蜜壷に人差し指と中指を入れ、侵入を阻もうとする壁に指の腹を擦り付ける。
少しづつ壁を押し広げ、ゆっくり指を第二間接まで埋めてゆく。
「やっ、ぁあっ……っ」
ポアラは身をよじってじわじわと襲い来る快感から気を取り戻そうとしているようだ。
しかし逃げられぬよう、肩に掛けさせた太股を掴み、もう片方の足を肘で押さえ込んでいるので、ポアラの小さな抵抗も意味を成さなくなる。
内壁に擦りつけていた指を曲げてみる。
「はぁっ!あっ」
胎内で一番感じる処を刺激され、ポアラは身体を震わせている。
それに追い打ちをかけるように、花芯を口の中に含み、唇で挟みながら舌で蹂躙する。
「やあっ!…ぁぁあっ…ああ!」
身体を弓のように反らしてかすれた声を挙げるポアラ。
張りつめたその姿は、早くポアラの胎内に入りたいとゆう欲求と、もっと乱れた姿を見たいとゆう相反する衝動を煽り、胎内を探る指をかき回させ、花芯を吸いしだかせた。
「いやっあっあ!やああぁぁ!!」
ポアラは身体を反らして痙攣し、一際大きい声を上げ脱力した。
唾液と愛液で濡れた自分の口元を拭い、両腕で身体を支えてポアラを見おろす。
ポアラは顔を横に傾けて両手を目の上で交差し、視界を閉ざしている。
「ポアラ、こっちを向け。お前の顔が見たい」
目を塞ぐ細い手首を掴んでどかし、顎に手をかけてこちらを向かせる。
眉頭を寄せ、涙を浮かべた眼。今にも泣き出しそうな表情。俺がポアラにそうさせた表情。
罪悪感が胸に広がると共に、俺にしか見せたことが無いだろうその姿態に満足感が湧きおこる。
「─…、─…、」
薄く開かれた唇からは熱い吐息が漏れている。
自分の欲情をぶつけたい衝動を抑え、軽く唇を唇に触れさせてから、甘い息を呑み込むよう深く口付ける。
「ん…む……んん……」
合わせた唇と唇の隙間と、小さい鼻から、うわずった可愛い声が漏れる。
自分の頬に、ポアラの手が添えられた。
二人の吐息を感じ合える、僅かな隙間を空けて顔を離す。
「…スレッド……好きよ…」
初めて逢った日と同じ笑顔。あの時と同じ心に食い込む言葉。
あの日と違うのは、ポアラは俺の胸の中に居るとゆう事。
そして
「俺もだ。…愛してる」
素直に今の気持ちを口に出せる自分。
ポアラは目を閉じて、きゅっと背中を抱いてきた。
速くなる鼓動。速くなっている鼓動。
合わさった二人の心臓音が溶け合い、どちらがどちらのものかは判らなくなる。
「……きて」
囁くような声が首もとから聞こえた。
膝立ちになってズボンと一緒にトランクスを脱ぐ。
痛い程腫れた自身が解放されると、身体を起こしていたポアラの目に入ったようで、顔を正面に向けながら目は逸らした。
「こっちに寄れ」
努めて平静に呼びかける。が、切羽詰まってきているのを隠しきれず、少し強い口調になってしまった。
細い腰を掴んで引き寄せ、ベッドに寝かせる。
太股を擦り合わせて閉じていた足を開き、下半身を割り込ませる。
「あっ…やだ…」
足を閉じようと力を込めているが、俺の身体に阻まれて隠せない。
「…大丈夫だ。怖ければ俺につかまっていればいい」
ポアラの身体から少しづつ緊張が解けていく。
愛液と唾液で濡れた秘所に、自身を当てがう。
ビクッと身体を震わせるポアラ。
「いくぞ」
一気に貫きたい衝動をこらえて身を沈めてゆく。
「くぅ…っん、う…」
胎内は熱く狭い。吸いついては奥に導こうとする肉壁。
半ばまで進入すると、より狭い箇所があるのが判った。
ここまできたら逆に時間を掛けぬ方が良い。一気に腰を深く打ちつける。
「────!!」
ポアラは身を固くし、背中にまわされた腕がきつくなる。
爪を立てぬよう、固く手を握りしめているのが判る。
「つう、ぅ…っ、…!」
涙をポロポロとこぼし、歯を食いしばって破瓜の痛みに耐えようとするポアラ。
「ここでやめるか?」
あまりに辛そうにする様子に、胸が痛む。
「だい…じょう…ぶ、大丈夫よ……動いて…」
無理に笑顔を作り、俺を安心させようとするポアラ。
しかし、きつく締め上げてくる膣はまだ痛みを訴えている。
「我慢せずともいいからな。辛ければ言え…」
ゆっくりと最奥から引き抜き、小刻みに腰を動かす。
「くぅ…ぅ、…っん、んん…」
少しづつ、声に甘さが混じってきた。
握りしめていた手も、俺の背中に指の腹を食い込ませるようになっている。
腰を掴んでいた片手を離し、残っている痛みから気を反らせるよう花芯を刺激する。
「あ!」
膣壁が嬌声より一瞬早く収縮する。
もう大丈夫だろう。
腰を激しく打ちつけ始める。
「あぁっ、あ、んぅ、っあ」
律動に合わせて、乳房が上下に揺れる。
ポアラの腰を持ち上げ、より深く結合する。
「ひぅっ、あぁ、ん、スレッ…ドぉ…、はぁ、あっんんっ!あっ!!」
下半身を押しつけ、一緒に花芯を擦る。
ビクビクと痙攣するポアラ。既にイってしまっているのを更に突かれているので、快感の波が退かずに力が抜けてしまっているようだ。
元々きつい膣が更に締まり、俺の限界を誘う。
だがまだ果てぬよう限界を押し退ける。もっと感じたい。もっと感じさせたい。
肉と肉がぶつかり、弾ける音が激しく響く。
「やぁっ、あっ、あ、あぁ、だめ…ぇっ、はんっんん!」
激しく突き上げたままポアラを抱き起こし、俺の上に座らせる。
「スレッドぉ!スレッドぉ!」
何度も突き上げられ、俺の名前を叫ぶ。
ポアラの全体重を俺の上に落とさせ、最奥を貫くように強く突く。
「はあ!っひぁあっ、あっ…あぁぁ…」
酸欠になっているようだが、息が整う暇も与えず、口を口で塞ぐ。もう俺に余裕は無い。
「んむっんんっ」
呼吸で冷えた口腔を、再び熱を持たせようと、舌や唇で蹂躙する。
俺の舌に絡みつき、応えてくるポアラ。
飲み下せない唾液が二人の口の端から垂れ、短い銀糸は胸に落ちる。
目の前で大きく弾む形の良い乳房を鷲掴み、親指と人差し指でコリコリと摘む。
「ひぅっ!んん!」
欲望の波が押しよせてくる。吐き出したい。しかしギリギリまでポアラを感じていたい。
結合したままポアラの背中をシーツの上に寝かせて、被いかぶさる。
「スレッド…だめぇ…もぉ……いく…っ」
「っ…ポアラ……出すぞ…!」
膣に出す訳にはいかず、腰を引こうとする。
が、ポアラが足を締め付け、離れられなくなる。
「!?……くっ」
「ぁ…ぁぁああああ!!」
熱い波が昇り、タイミングを逃してポアラの胎内に吐き出される熱。
真っ白になる頭。
「はぁ…はぁ……んんっ」
余韻にしばらく浸り、お互いの肌をまさぐり合う。
ポアラの柔らかく滑らかな肌の感触を全身で感じる。
「ポアラ……悪い」
胎内で果ててしまった。不覚すぎる。
ポアラはクスッと笑うと、ちゅっ…と軽く唇を吸ってきた。
「いいの。あなたが好きよ。スレッド」
返事をする前に、ポアラは俺の首と肩の間に顔を埋める。
「………フ」
俺も返事の代わりにポアラを抱き返す。腕に少し力が入った。
「さあ、風邪をひくぞ」
腕を解いて身体を起こし、ベッドの端に押し退けられたシーツを引っ張り上げる。
「そうね……明日は早いんだっけね」
シーツを掛けて横になり、少し恥じらいながらポアラは俺の腕の中で寝る。
「ふふ…おやすみなさい、スレッド…」
「ああ…」
目を閉じて穏やかに寝入る。可愛い寝顔だ。
「………」
恋い焦がれてやまなかった女性。
既に他の人間のものであったため、手を出せなかった。
だから彼女を<嫁さん>と呼び続け、自分の中で距離を置いた。
彼女と二人だけで夜を過ごすのは、多分、これが最初で最後になるであろう。
「……ポアラ」
返事はなく、もう深く眠り込んでしまったようだ。
彼女を起こさぬよう身を起こし、ベッドから降りる。
足元に散乱した服を拾い集めて身なりを整える。
「……ぉ……」
後ろでポアラが眠りながら、誰かの名前を呼んだ。
誰の名前かは確かめず、俺は扉へと歩を進める。
ドアを開き、後ろを振り返る。
「おやすみ。……嫁さん」
ドアを閉め、俺は暗く長い廊下を歩き、自分の部屋へ向かう。
終