スパイクが目を覚ますと、そこはいつもの定位置、ビバップ号のソファの上だった。  
( 寝ちまったのか・・・)  
このところ賞金首探しが難航していた。  
獲物自体はたいしたものではなかったが、逃げ込まれたところが悪かった。  
スパイクの古巣、火星のチャイナタウン。  
勝手知ったるところだけに、踏み込むリスクもまた高い。  
正直、自分は降りてほかのメンツにどうにかしてほしいところだったが、  
久々の確実なターゲットだ。駄々をこねて逃げるのも気が引けた。  
それに、獲物はレッド・ドラゴンとも関係がないことがわかっている。  
ここでリタイア宣言をするのもプライドが許さない。  
かくして、気が進まないながらもメシのタネを追いかけることになったスパイクだった。  
(それにしても…疲れる仕事だった)  
昨日は、ホシが根城にしていると思われる場末のバーに一日張り込んでいた。  
スパイクが昨日一日張り込んでいたが、結局ホシは現れず、今はジェットが代わりに張り付いている。  
きっと今日は姿を現すだろう。そうすれば、当座の生活は保障される。捕獲はジェットだけでも充分だ。  
安堵と疲れが、スパイクを再び眠りの淵へと誘おうとしていた。  
 
「たっだいま〜」  
眠りの女神に身をゆだねようとしていたスパイクの耳に、気だるげな女の声が届いた。  
うっすらと目を明けるとフェイが空いたソファにどかりと腰掛けるところだった。  
「…どうだ?」  
呂律の回らない寝ぼけ声でスパイクが尋ねると、  
「今さっき現れたらしいわ。あと2時間くらいでカタがつくわね」  
と、同じく気だるげな声でフェイが答えた。  
スパイクとは別経路でホシを追跡していたフェイだ。スパイクと同じく、相当疲れているはずだ。  
「そうか。じゃ、ジェットに任せて大丈夫だな…」  
そう言って再び眠りに落ちようとしたスパイクの意識を、暖かい吐息で阻んだものがいた。  
 
「よせ、馬鹿犬」  
目を瞑ったまま、スパイクがアインの鼻先のある辺りを払うと、濡れた犬の鼻ではない、弾力のある柔らかなものが指先に触れた。  
「あ〜、何すんのよ、お金とるわよ」  
驚いて目を開けると、スパイクの右手はフェイのあいた胸元にすっぽりとはまり込んでいた。  
「わ〜!!何だお前!」  
眠気もすっかり吹き飛んでスパイクが飛びすさると、開いたスペースにフェイが身を進めた。  
すでに息の触れ合う距離にフェイの唇がある。  
「な〜に。こんないい女を前にしてその反応はないんじゃない?」  
フェイの言葉とともに、あまい香りがスパイクの鼻腔をくすぐった。  
「…おまえ、酔ってるな?」  
「あらぁ。酔ってなんかないわよ。私はいつでもシ・ラ・フ♪」  
「…ってお前、そんな赤ら顔で言われても説得力ねえぞ」  
「なーによ!わかんない男ね。このフェイさまがお相手してあげようって言ってんのよ。ありがたく頂戴するのが男ってもんじゃない。それともアンタ男じゃないっていうわけ?」  
フェイが酔っていることを微塵も感じさせないすばやさでスパイクの分身を鷲?みした。  
 
「…!!」  
身をよじって逃げようとするスパイクを裏切るように、分身はビクっと反応した。すでにズボンの上からもわかるくらいに成長している。  
「ほ〜ら、しっかり男じゃない」  
そう言うと、なす術もないスパイクの腰を抱えこんで、あいた右手でじらすようにスパイクのチャックを下ろした。  
さらに大きくなっていたスパイクの分身は、フェイの手に導かれて、ずるんと姿を現した。フェイはわずかに目を細めると、最初は優しげに、そしてすぐ激しくスパイクの分身を舐り始めた。  
 
「…ッ」  
どうして俺は逃げられないのだろう。いや、どうして逃げないのだろう。どうして…。  
快感にヒクつきながら、スパイクの混乱はとどまらない。普段は、女とも意識しないようなこんな女なのに…。  
「…逃げないの?」  
いたぶるような、その裏に、拒否されたくないと願う切なる思いがこめられたフェイのか細い声に、スパイクの抵抗はすべて飲み込まれてしまった。  
このまま、最後まで行こう。最後までいってしまおう。  
まなうらにちらつくブロンドの影は遠のいていく。  
その代わりに、目の前で夜空のように揺らめく黒髪のかすかな煌めきがスパイクを占めていった。  
 
フェイの愛撫はさらに熱を帯びていった。目の前の、ずっと愛していた男が自分を拒まない。その奇跡とも言うべきシチュエーションが、いつもよりさらにフェイを情熱的にさせた。  
いつものようなおざなりさはそこにはなく、丁寧に根元まで咥え、ゆっくりと、時に激しく裏筋をなぞりながら先端に光る透明な汁を優しくなめとっていく。  
口の中で、大きくなるのを確かに感じる。口での愛撫も難しくなるほどに。  
大きな手のひらがフェイの頭をなでる、優しく。  
( ああ、いいんだ。私がもらっても)  
酔ったふりで気持ちをぶつけてみたものの、拒否されても仕方がないと思っていた。  
フェイの捨て身な愛情に応えてくれた、その手のひらは回答だった。  
 
ふと力を失ったフェイの唇を不審に思い、目を開けて伺うと、柔らかな黒髪でスパイクの腹を優しくくすぐりながら、フェイが細かく震えていた。  
(どうした?)  
声には出さず、手のひらで頬をすくうと、指先に濡れた感触があった。  
そのまま顔を向かせると、透明な一筋がフェイのほほに流れている。  
 
フェイの濡れた瞳が、スパイクの視線と絡みあう。  
 
本当の。引き金だった。  
 
とまらないフェイの涙を唇ですくう。  
薄く開いた唇を、優しくついばむ。  
かすかにもれる嗚咽に、我慢できなくて深く口づけた。  
舌を絡ませ、吸い尽くす。  
服の合せから手を差し入れて脱がせ、ツンと起った乳首を揉みしだく。  
激しい動きに、わずかにずれた唇から、フェイの熱い吐息が漏れた。  
 
長い、ながい口づけの途中で、スパイクの手がフェイの膝からするすると上にすべって行く。フェイがかすかに揺れる。スパイクはそれを無視してさらに手を進めた。  
スパイクの手を、やや固めの毛先がつついた。その茂みの奥を探る。  
ぬるりとした潤いがあった。  
指先でくるりと円を描くと、口づけたままの舌先がびくりと離れた。  
うっとりと閉じていた目が薄く開く。指先に触れたものと同じように潤んだ瞳が。  
スパイクの色違いの瞳をしっかり捕らえる。  
 
スパイクはさらに指を奥に進めた。すでに、フェイの体はスパイクを欲している。  
それでも、しばらくじらすように指先でまさぐった後、熟女のように肉感的で、しかし少女のようにか細い、フェイそのもののようなアンバランスな肢体をつぶさないように覆った。  
 
壊さないように、ゆるゆる差し入れる。びくり、全身と、熱い箇所と、両方で締め付けてきた。先ほどからフェイに言葉はない。ただただ、短く熱い吐息がスパイクの耳朶をくすぐるだけだ。少し苦しげな吐息を無視して残りを一息に突き入れる。  
「あぁ…っ」  
図ったように、二人同時に声が上がった。  
 
その声を引き金に、それまで緩やかだった流れが急流となって奔り出した。  
激しい突き上げに応えるように、フェイも腰を突き上げる。  
はじめは微妙なずれがあったリズムも、5回、10回と回数を重ねるうちにリズムが合うようになってきた。  
吐息が激しくなる。先端に、そして奥部に、熱がじわじわと集まってくる。  
額には汗が、見交わす目にはうっすらと涙が。  
言葉はなくとも、相手のリズムがわかった。もうすぐ…!  
 
「っあ、…ぁあああぁ…っッッ!!」  
 
つよく、強く抱きしめあったまま、押し寄せる快楽に二人は意識を失った。  
 
「よう、俺だ」  
おんぼろのディスプレイに満足げなジェットの顔が映し出された。  
「…んああ」  
「なんだ、おまえ寝てたのか?ったく、人が頑張っているって言うのに薄情な奴だ」  
スパイクの寝ぼけ顔をみてジェットが大げさに嘆いた。  
「例の賞金首、捕まえたぞ。これからISSPに寄って引き渡してくる。夜はご馳走だからハラすかして待ってろよ」  
得意そうに言い残すと勝手に通信は切れた。  
覚めきらない頭で周りを見回す。自分以外誰もいない。  
もちろん、フェイの姿も。  
(夢…、ってことにしとくか)  
そのほうが、前と変わらずいいケンカ相手でいられるしな。  
本当だったとしても、自分の中にそんな願望があったと認められるわけがない。  
「…よっ、と」  
まだだるさの残る体を腹筋だけで起こすと同時に、夢よりも暖かな感触を振り切って、スパイクは来るべき晩餐のためのスペースをあけるため、トレーニングをするべく艦橋へ向かった。  
 
 

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