今、膝の上に頭を乗っけて眠っている彼。  
その白く、しみ一つない美しいとしか形容できない肌に唇を寄せて……  
(キスをしたい……)  
思ってからサユカは赤面した。主に対して何て不埒なことを、と。  
彼はいつも熱烈なキス(吸血)をサユカに与えてくれたが、サユカから  
ということはなかった。それは当たり前だ。自分たちは主従の関係なのだから。  
 
しかし、こうして午睡を楽しんでいるゼルマンの寝顔を眺めていると  
(下品なことだが)どうしても顔を近づけて口付けしたい欲求に駆られる。  
ゼルマンの鋭い眼差しを放つ瞳をサユカは愛していたが、今のような無防備で  
年相応の少年の顔をして寝入ってる彼の寝顔もとても好きなのだ。  
(ああ、キスしたい)  
自制する疲れからか、ため息が漏れた。  
 
誘惑に耐えながらサユカは思う。  
 
駄目、こんな不意打ちのような形では駄目だ  
彼に、ゼルマン様に心から望まれてのキス  
そういうキスがいい  
真っ赤になった自分が微笑む彼にそっとする、一瞬の口付け  
そんなキスができたなら……いいな  
 
(そう、いつか……きっと……。その時は…)  
その時はきっと、自分は幸福に満ち足りているだろう、  
できるなら彼にも同じ気持ちでいてほしいと思う。  
いつかそんな穏やかな時がやって来ますように、祈りながらゼルマンの赤い髪をそっと梳いた。  
 

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