彼女を手に入れたならば、きっととてもとても気持ちが良いのだろうと、そう思った。
彼女は自分にとって何よりも美しく気高くそしていとおしい存在であり、
また、一つになりたいと本心より希う唯一の対象であった。
幼い頃より慕い、支え、慈しんできた。
初めて出会ったそのときから確実にこころの奥底に巣食い始めた想い、『欲しい』
それは決してうつくしい感情などではなく、寧ろ変色した果実のように醜くどす黒い欲情。
(今、この柔らかい口唇を奪ってしまえば、)
(今、この白い首筋に噛み付いてしまえば、)
きっと今から自分が起こす行動によって、全ては変わる。
ヨーコを己のものに出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。
何もかもは、自身の判断によって流れが左右されるのだ。
堪らない。
ヨーコの数瞬後の運命を、己が握っているのだ。
風呂場の床に組み敷かれた体勢のまま、ヨーコが小さく震えている。
やめて、だとかダメ、だとか、ありきたりな拒絶の文句を口にしながら。
(さて、如何したものか。強引に求めようか、否、懐柔するか?)
「……、ヨーコさん、」
名をわざとゆっくりと低く呼んでやると、ヨーコは怯えたように目を瞬かせた。