「アクセプト《受諾せよ》」
囁くように、少女は呪文をつむいだ。
開封の儀式。
儀式の相手――ルーシェ・レンレンは、少女の言いつけどおり、ベッドの
うえにちょこんとおとなしく座っている。
子犬を思わせる大きな瞳も、今は少女の注文どおり、しっかりと閉じ
られていた。
かわいらしいくちびるは“ん”のかたち。なにをするのかはわかってる様子。
(るーしぇくんったら………)
術者の少女――ティア・ノート・ヨーコは、少年の無邪気な様子を
すこしうらめしく思う。
(ボクは何度やっても恥ずかしいのに、自分だけ……ずるいよ)
見慣れているはずのルーシェのくちびるを、変に意識してしまう。
胸の鼓動が高まる。
それでもなんとか、ヨーコは呪文に意識を集中させた。
「し、親愛なる愛と美の女神イーノ・マータの名において………」
ふたりの距離が狭まる。
どきどきどきどき。
「封印よ……退……け」
最後の呪文は、ルーシェくんのくちのなか。