さらわれたヨーコを助けるために、部屋には大勢の兵士達が集まっていた。  
若い彼らは、話をしたり、体を動かしたり、とにかく黙っていられない様子だった。  
部屋の中は、そんな男達のむさ苦しい臭いで充たされていた。  
その中へ足を踏み入れるのを、男と接することが少ない彼女がためらうこと、それは仕方の無いことだった。  
 
 シーラが部屋に足を踏み入れた途端、部屋の中は静かになった。  
兵士達の視線が、王女一人に集まった。  
彼女が知る筈は無かったが、若い兵士達にとって、シーラは憧れの対象になっていた。  
それはこの国の王女であれば当然のことではあった。  
しかしそれ以上に、彼女の整った顔や体、あるいは清楚な雰囲気に、彼らは心を奪われていた。  
 シーラは戸惑いながらも、彼らの前に立つと、おもむろに話し始めた。  
「皆さん、今回、一人の少女を助ける為に集まってくれて、本当にありがとうございます―――」  
 
 兵士達は、誰も王女の話を聞いていなかった。  
背中に視線を感じたシーラは、話すのをやめて後ろを振り向いた。  
いつの間にか、彼女の後ろには一人の男が立っていた。  
皆の視線も彼に集まっていた。  
「D・S…」  
シーラはこの男が嫌いだった。  
その感情は、自分の存在を脅かす者への恐怖感も含んでいた。  
「貴様は一体何者だ! 無礼ではないか!」  
「シーラ様から離れろ!」  
「離れろ!」  
部屋の中が騒然となった。  
「静かに!」  
王女のその言葉に、兵士達は静まりかえった。  
「彼は、今回皆さんの先導を務めて下さる、D・Sという方です」  
「D・S!?」  
「D・Sだと!?」  
彼の噂は、誰もが一度は耳にしたことがあった。  
「シーラ様、そのような下賎な男に我々の命を預けて、ホントに大丈夫なのでしょうか?」  
その一言は、彼らの本音だった。  
「大丈夫です。私も皆さんと一緒に参ります」  
「シーラ様が!?」  
いったい何が大丈夫なのかサッパリだが、王女の言葉に兵士達は歓声を上げた。  
シーラには、そんな彼らの気持ちは理解できなかった。  
 
「さてと」  
それまで無言だったD・Sが、唐突に言葉を発した。  
部屋の中は静まりかえった。  
「今回、諸君らが一人の少女を助けるために集まってくれたことを、王女は感謝しておられる」  
慇懃無礼なD・Sの物言いに、兵士達は眉をしかめた。  
シーラはこの男が何を考えているのか、さっぱり分からなかった。  
「貴様、さっきから無礼ではないか! シーラ様から離れろ!」  
「そうだ、離れろ!」  
「離れろ!」  
部屋の中が騒然となり、シーラはその中で困惑していた。  
D・Sは平然としていた。  
「これは、日頃から国のために尽くしている諸君らへの、王女からのささやかな褒美と思ってもらいたい!」  
D・Sはシーラの両肩に手をかけた。  
そして、彼女のドレスの肩口を掴むと、そのまま腰までスッと引き下ろした。  
 
 兵士達の目の前で、17歳の王女の上半身が露わになった。  
「おおっ!」  
「なんと!」  
「なんと美しい!」  
兵士達は思わず感嘆の声を上げた。  
白く細い華奢な体に、形のいい乳房が実っていた。  
その頂にある淡い色をした小さな乳首に、兵士達の目は釘付けになった。  
 
 シーラは一瞬何が起こったのか理解できなかったが、兵士達の目線にすぐに気がついた。  
「きゃあっ!」  
王女は慌てて両手で胸を隠し、体を屈めた。  
 
「貴様!」  
「シーラ様になんてことを!」  
「殺してやる!」  
王女の叫び声に兵士達は我に返り、部屋の中は騒然となった。  
しかしながら、王女の肩越しに放たれるD・Sの威圧感に、彼らは身動き一つとれなかった。  
「君達、もっとイヤらしいものを見たいか?」  
「な…何を…?」  
シーラはそれしか言葉が出なかった。  
D・Sはシーラの手に自分の手を重なると、そっと彼女の体を起こした。  
そして、そのまま彼女の乳房をゆっくりと揉み始めた。  
「ふあっ!」  
シーラは思わず妙な声を出してしまった。  
兵士達は静まりかえった。  
 
 静寂の中で、シーラの乳房は静かに揉まれていた。  
自分の手の中で形を変える乳房に、彼女は見入られていた。  
今まで自分の胸を揉んだことが無かった彼女は、自分の胸が自分のものではないような、不思議な感覚に囚われていた。  
しかし、兵士達の視線に気がつくと、彼女はD・Sを見上げて睨みつけた。  
「や.やめなさい、無礼者! これ以上続けたら許しませんよ!」  
「何をやめるんだい?」  
D・Sは笑みを浮かべていた。  
シーラはなかなか言葉が出てこない。  
「な.なにって… 私の胸を…えっと… こ.こねないで下さい!」  
「こねる!? くくく…」  
D・Sの押し殺すような笑い声に、シーラは悔しくなった。  
「俺は何もしてないぜ。シーラが自分でやっているんだろ?」  
笑いながら、D・Sは両手を離した。  
「そっ! そんなイヤらしいコト、私、してません!」  
兵士達の前で恥をかかせるようなことを言われ、シーラは怒りをあらわにした。  
「ホントかなぁ?」  
その一言に、彼女はムキになってしまった。  
「本当です!」  
「じゃあ、その手を離してみろよ?」  
D・Sの挑発に乗り、シーラは目を伏せながらも両手を離してしまった。  
 
「どれどれ…」  
すかさずD・Sは王女の胸に手をあてると、再びゆっくりと揉み始めた。  
シーラの乳房に、他人の手の温もりが直に伝わってきた。  
「いやっ!」  
シーラは体を揺すったが、D・Sの手から逃れることはできなかった。  
「や、やめなさい! こ、こんなこと…!」  
シーラはD・Sを睨みつけたが、瞳の中の戸惑いを隠すことはできなかった。  
「もうやめちゃうのか? シーラだって気持ちいいんだろ?」  
シーラは、D・Sの優しい笑顔に心を傷つけられるような思いだった。  
「そ、そんな… そんなコトありません!」  
シーラは思わず目をそらしてしまった。  
「そうかな…」  
D・Sの人差し指が、シーラの乳首を捉えた。  
「あっ!」  
甘い刺激がシーラの胸を震わせ、彼女は思わず声を洩らしてしまった。  
「あっ、あっ、あっ」  
D・Sの指の動きにあわせて、シーラの口からは声が洩れていた。  
彼女の顔は、何かを訴えかけるように切ない表情になった。  
「そ…ソコは…」  
「気持ちいいだろ?」  
D・Sの顔に笑みが浮かんだ。  
彼女の心を見透かしたような笑顔に、シーラは思わず目をそらした。  
それでも彼女は、D・Sの手首を掴んで胸から引き離そうとしたが、無駄だった。  
体が崩れそうになるのを、彼女は必死に耐えていた。  
それを悟られないように、体に力を入れていた。  
彼女は棒立ちになったまま、その場で動けなくなってしまった。  
 
「だ…ダメ…!」  
シーラの目線の先で、乳首がむずむずと疼いていた。  
D・Sを掴んだ両手に力が入り、棒立ちのまま、彼女は体を小さく震わせていた。  
「お.お願い… 見ないで…下さ…い」  
嘆願も空しく、兵士達が目をそらすことはなかった。  
彼女が顔を伏せるしかなかった。  
彼らの視線が、王女の胸へと突き刺さっていた。  
D・Sの爪が、くすぐるようにシーラの乳首を引っ掻いた。  
 
「ああっ!」  
シーラの洩らした声が、部屋の中を響き渡った。  
D・Sの腕の中で、シーラは何度も体を震わせた。  
彼女の乳首は解き放たれた。  
 
「おおっ!」  
「シーラ様!」  
「シーラ様の乳首立った!」  
兵士達から歓声が上がった。  
その歓声は、王女の耳にも届いていた。  
「い.いやァ…」  
シーラは顔を伏せながら、晴れ上がった自分の乳首を見つめていた。  
 
 
「貴様らっ!」  
怒声と共に、一人の老兵が部屋の中へと入ってきた。  
D・Sはシーラの胸から手を離し、脱がせたドレスを着せ直した。  
王女の胸が再び覆われてしまい、兵士達から落胆の声が上がった。  
シーラは意識が朦朧としていた。  
「おい、シーラ。終わったぜ」  
「…えっと?」  
彼女の胸は確かに覆われていたものの、中央がまだ盛り上がっていた。  
慌ててシーラが胸に手をあてると、乳首が擦れて声が出そうになった。  
「貴様らには、出陣の用意ができたらワシを呼びに来いと伝えていた! 何をしておった!」  
老兵には、若い兵士達を束ねるという、面倒な役目が与えられていた。  
なのに自分がないがしろにされれば、腹を立てるのは当然だった。  
「何をしておったと訊いている!」  
兵士達は何も答えなかった。  
老兵は彼らを問い詰めようとはしなかった。  
胸を苦しそうに抑えている王女の姿が、彼の目に留まったからだ。  
彼らの士気が高くなっていることは、老兵はすぐに察することができた。  
 
(了)  
 

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