凹凸のないのっぺりとした体。  
未熟で、不完全で、できそこない。  
誰にも見られたくないし触られたくなかった。  
誰にも見せることはないだろうし、触れられることもないだろうと思っていた……な  
 
のに。  
 
触れることを望むやつがいる。  
触れて欲しいと願ってしまう自分がいる。  
綺麗な指が肌を這うたび、生まれる熱がある。  
じわじわじわじわと、それは広がり。やがて耐えることなどできなくなって。  
 
ぴくんっ……。  
「あうっ……」  
 
抗えない衝動。  
抑えきれない嬌声に慌てて、瞳と唇をかみ締める。  
だって何か嫌だし。  
やつとその行為に及ぶのは初めてではないけれど、こんな自分を見せるのは恥ずかし  
 
い。  
 
「マリア、恥ずかしがらないで」  
 
しっとりとした唇が足の指に触れた。  
キス。軽く吸う。甘く噛まれる。  
お風呂上りとはいえ足だよ、足。  
 
「……変態」  
 
くすぐったいんだけど。  
何か凄いぞわぞわするし。  
不快感とはちょっと違う。  
止めて欲しいような、それでいて止めないで欲しいような。  
 
口づけは尚も続く。  
ゆっくりと優しく、激しく。  
 
「ていうかさ。君、好きだよね。その、あちこちにキスするの。この間いっぱい痕つ  
 
いていて恥ずかしかったんだけど」  
 
まるで所有の証のように。  
必ずといっていいほど、その後にはキスマークが沢山残されている。  
 
「そりゃあネ。やっとマリアに触れれるようになったんだから、隅々まで独占したく  
 
なるのは当然だろう?」  
「しなくて結構!ばか」  
 
普段の服装は露出がまったくといっていいほどないけれど、だからといって油断は出  
 
来ない。  
私服で出掛けるときもあるし。  
ユリカとサフィニアと一緒にお茶をした時は、何も意識すること無く手袋を外して愕  
 
然とした。……手の甲に痕が残されていたから。食べにくいのを承知で、慌てて手袋  
 
を嵌めたものだった。  
 
「いくらマリアの頼みでもそれは聞けないヨ」  
「…………っ!」  
 
脇腹。背中。うなじ。耳たぶ。  
触れられるのが苦手なところを的確に攻めてくる。  
今度は声を洩らさないように。唇を噛んで、口をふさぐ。  
 

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