その日、市立武道場では合同練習会が開かれていた。朝からは練習、  
そして昼からは練習試合となかなかにハードなスケジュールであった。  
 
 着替えを終えて、さぁ帰ろうかと駐輪場にやってきたユージを呼び止める声があった。  
 
「あ、あの、室江の中田くんですよね。」  
「えっと、そうだけど、何か?」  
「あ、あの、以前練習試合でお邪魔した成明の小川芽衣って言います。」  
「はあ、で、小川さん。僕に何か」  
「あの、以前お邪魔したときに中田くんを見て、強くて、剣道のかたちがきれいで、  
かっこいいなと思って、それで、今日あらためて中田くんを見て、その、自分の  
気持ちが止められなくなって、その、すすすす・・・・・・・」  
「す?」  
「好きです!わわわ、わたしとつきあってくださいっ!!」  
「へ?」  
 
 ユージの間抜けな声に、しばらく空気が止まる。何秒たっただろうか。  
メイの背後から声がかかる。  
 
「あー、いたいた、田中くん見つけっ!」  
「いえ、中田ですが。どちら様でしょうか?」  
「ああ、そうそう、中田くん、中田くん。えーと、東城の青木です。」  
「青木さんですか、初めまして。で、なんでしょうか。」  
「あ、こりゃ初めまして。えっと、単刀直入に聞くけど。」  
「なんでしょう?」  
「中田くんって今つきあっている女の子いるの?」  
「いえ、そんな、つきあうなんて。」  
「そう?それじゃ、お願い、わたしとつきあって!」  
「え?」  
「いやー、前、ウチと試合があったときに、男の子だけど、一生懸命女の子の  
世話をしている姿を見て、『あーこんな、優しい彼氏が星いなー』と思ったわけ。  
そして今日あらためて見たら、剣道も強いし、あらためて惚れ直したのよ。」  
「そ、それはどうも。」  
「どう!年上のお姉さんは!甘えさせてあげるよー?」  
 
 たじたじとなるユージは、思わず後ずさりする。すると、誰かにドンとぶつかってしまった。  
ユージは振り向いて、頭を下げる。  
「あ、すいません。えーと、鎌崎の・・・」  
「近本成海よ。大丈夫。気にしないで。」  
「スミマセン。あれ、でも、鎌崎の人たちって、さっき一緒にバスで帰ったんでは?  
乗り遅れたのですか?」  
「いや、中田くんに用事があったから、わたしだけ残ったんだ。」  
「え?」  
「うん、中田くん、さっきの話からすると、つきあっている子はいないと。」  
「はぁ、まぁ。」  
「室江のあの大将の子とはどうなんだ?」  
「タマちゃんですか?ただの幼なじみですよ?」  
「本当にそうなの?」  
「ええ、タマちゃんとは、つきあうとかどうとかと言うよりも。」  
「じゃぁ、わたしとつきあってくれないか?」  
「え?でも、近本さんは、鎌崎の部長さんと・・・」  
「岩堀か?あいつはダメだ。いつまでも世を拗ねて。でも、室江の人たちは違った。  
どこまでもまっすぐで、純粋で。自分を信じていて。中田くん。特にあなたのあの気迫。  
わたしが欲しいのはそのハートなの。」  
 
 近本の気迫にたじたじとなるユージに背後から声がかかる。  
「あ、あの、わたしが最初に話をしていたのですがっ。」  
「そーよ、後から来たアンタはひっこんでいてよ。」  
 負けじと近本からも、  
「後先なんて関係ないでしょ?この気持ちは裏切れないから、引けないよ。」  
 
「な、中田くん、やっぱ同じ一年生がいいよね。」  
「お姉さんがいろいろ教えてあげるよ。」  
「フン。わたしが一番つくすタイプなんだ。」  
 
三人のタイプの異なる美少女に囲まれたユージの明日はどっちだ?  
 

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