「うふー、これでよし、っと」  
 礼美は自室のベッドに腰掛け、満足げに頷いた。その隣でねこも頷いている。  
 その目前には165cmの人影がそびえ立っている。  
 厳しい表情に、真新しく光沢のある防具。握り締めるのは三尺八寸の竹刀。  
 宮崎都――の、等身大パネルである。  
 写真部の部室で製作し、便利な男達の中の一人に運ばせたそれは、無事に礼美の部屋に飾られた。  
 そしてそこからさらに一時間かけ、礼美はベッドから一番良い角度で見えるよう念入りにセットしたのだ。  
 ベッドに倒れこんだ礼美を、都パネルは射殺すような目で見ている。  
「ああもう……綺麗で可愛くてかっこいいなぁ……」  
 うっとりと、そしてじっとりと見返し、毛細血管が切れそうなほど熱い鼻息を吹く。  
 今鼻血を噴いたらせっかくのパネルが汚れてしまうため、細かく息をして慎重に冷ます。  
 しばし見とれた後、礼美はねこを窓から放り捨て、もそもそと制服を脱ぎ始めた。  
「えへ、脱ぐとこ都ちゃんに見られてる……恥ずかしい……」  
 心底嬉しそうに呟くと、下着まで脱ぎ捨てた。  
 全裸になっても替えの下着を取る素振りも見せず、ベッドの上で四肢をぐっと伸ばす。  
「じゃ、始めるね都ちゃん」  
 甘い囁きと共に、自身の胸をそっと撫で始める。  
 指の動きに呼応して、程よく膨らんだ乳房の中央、ピンクの突起がむくむくと立ち上がる。  
 焦らすように乳輪だけを撫で回し、快感とも言えないくすぐったさに微かに身悶えする。  
 その様子を、都のパネルの視線が微動だにせず見守る。  
「うふふ……部屋に押し入ってオナニー見るなんてストーカーみたいだね都ちゃん」  
 ちょっと怖いけどそこがいいや、と自分のことを完全に棚に上げて呟く。  
 
 乳首がピンと天井を向いたのを目で確認すると、摘みやすくなったそれを左右共に指で挟む。  
「んっ……!」  
 明らかな快感が胸全体に染み渡る。  
 いつもより強く感じるのはやはりパネルのせいだろうか。  
 パネルの、特にしなやかな手元を凝視しながら胸を弄り続ける。  
「……これは都ちゃんの手、これは都ちゃんの指……あぁ……都ちゃん上手ぅ……」  
 目の前にパネルがあるおかげでいつもより鮮明に妄想が形になる。  
 礼美の頭の中では、同じく裸の都が背後から乳首をこね回している。  
 肩口をくすぐる自分の髪すら都の髪のように感じられ、礼美は幸せそうに顔を紅潮させた。  
「気持ちいい、気持ちいいよぉ……」  
 指がくにくにと乳首を歪ませる度に股間が潤いを帯びていく。  
 都に愛撫される妄想のままに礼美は気持ちを昂ぶらせ――パネルを見て、ふと正気に戻った。  
 パネルの都は、こんな優しい愛撫などしそうにない、むしろ責めるような目をしている。  
 手を止め、礼美は唇を軽く噛んで反省の表情を浮かべた。  
「ごめん都ちゃん、こんなこと考えちゃって……都ちゃんはこんなことしないもんね」  
 しゅんとして乳首から手を離す。  
 その手は壁にかかっていたハンガー、それに付いていた洗濯ばさみを取った。  
 礼美の目に再び熱が宿る。  
「……都ちゃんならあんなまだるっこしいことしないでこれぐらい強くするもんねっ」  
 そして、洗濯ばさみで乳首を挟んだ。  
 
「痛っ……あっ!」  
 悲痛な、しかしどこか嬉しそうな声を上げて礼美はベッドの上で悶え転がる。  
 弱めの洗濯ばさみではあったものの、敏感な箇所を挟んでも痛くないようにできているはずがない。  
 何度か挟み直し、乳輪ごと摘むような形にして手を離した。  
 痛い。痛いが、我慢できないほどではない。そんな痛みが間断なく性感帯に襲い掛かる。  
「ひぅっ……都ちゃ、激し……!」  
 涙すら滲ませ、それでも外そうとしない。  
 それどころかもう片方の乳首に爪を立てると、刺すように思い切り指をねじ入れた。  
「うぁっ……!」  
 柔らかな乳房が窪み、その中央に爪が更なる痛みを与えてくる。  
 閉じそうになる目を必死に開き、都の顔だけをじっと見つめる。  
 パネルの都は当然表情を変えるはずもなく、冷然と礼美の狂態を見守っている。  
 それを見て、痛みに歪んでいた礼美の顔がにへら、と緩んだ。  
「もう……都ちゃんってば本当にサドだね」  
 愛する人がそういった趣味ならば、それに応えなければならない。  
 礼美は鋭い痛みの中から、必死に性感だけを掻き集めて集中する。  
「くっ……あっ……ちょっと、気持ちよくなってきた……」  
 自分に言い聞かせるような言葉ではあったが、証明するように性器からの体液の滲みが再び始まった。  
 乳首を強引に抓り上げる都、歯を立ててくる都を妄想し、さらに気分を高める。  
「凄っ…あっ……! 都ちゃん見てる? 私、都ちゃんにならこんなことされてでも大丈夫だよ……!」  
 痛みと微かな快楽が全身に汗を滲ませる。  
 べとついてくる乳房を潰すようにこね回し、汗とそれ以外の液体が垂れ落ちた腿もそっと撫でる。  
(……うん、ちゃんと濡れてる)  
 それに満足すると、洗濯ばさみを外し、もう片方の胸を弄るのも止めた。  
 外してからも乳首はじんじんと痛み、いくらか腫れたようにも見える。  
「はぁ痛かったぁ……じゃ、そろそろ本格的にいこうっと」  
 そう呟くと、体を起こし、ベッドの傍らに置いた通学鞄から一つの袋を取り出した。  
 
 袋には『都ちゃん袋』と綺麗な字で書いてある。  
「むふー。楽しみ楽しみ」  
 先ほどまでの自虐行為による疲れも見せず、気分よくその中に手を突っ込む。  
 取り出したのは何の変哲もない黒い靴下だった。ただ、小さく室江高の校章が入っている。  
 室江高の、学校指定の靴下。  
 礼美はそれを目を輝かせて食い入るように見つめた。  
 手にした靴下からは、はっきりとした湿り気が返ってくる。新品のものでは有り得ない。  
「都ちゃんの汗だぁ……」  
 感動のあまり礼美の声は震えていた。  
 今手にしている靴下はまさに、数時間前まで宮崎都が履いていたものに他ならない。  
 遊びに行った室江高剣道場の更衣室、その都のロッカーから礼美が無断で拝借したものである。  
(ちゃんと新品の靴下を買って入れといたから都ちゃんも嬉しいよね、うん)  
 少しも悪びれる様子なく、うんうんと頷く。  
 都の足のサイズなど自分のサイズよりよく知っているため、替わりを用意するのは簡単だった。  
 こうして都の足を一日包んでいた靴下は礼美の手の中にある。  
 体温こそ残っていないが、足から溢れ染み付いた汗は残り、黒い靴下をさらに濃い色に染めている。  
「……梅雨だもんね。いくら都ちゃんでも蒸れちゃうよね……やらしい」  
 荒い呼吸混じりの声で呟くと、軽く靴下を握る。僅かに汗が滲み出てきた。  
 既に礼美はそれを性的な目でしか見ていない。  
「もう我慢できない! いただきます!」  
 ねっとりとした声で叫ぶと、礼美は躊躇いもなく都の靴下に顔を押し付けた。  
 濃い汗の匂いが礼美の鼻腔を満たす。  
「はぁぁ……都ちゃんの匂い……」  
 陶然としてそれを吸い込むと、体に触れてもいないのに礼美の性器がさらに湿った。  
 
 目を輝かせ、礼美はひたすら都の靴下を嗅ぐ。  
 嗅覚はちゃんとそれを汗の匂いと認識しているが、一旦脳のフィルターを通ると甘美なフェロモンでしかなかった。  
「都ちゃんぐらいになると、普通に過ごすだけでこんな気持ちいい匂いを出せるんだねぇ」  
 言ってパネルの下半身に目を移す。  
 袴に隠れて美しい脚線美こそ見えなかったが、裸の足先はしっかりと細部まで写っていた。  
 都の足は贔屓目を抜きにしても綺麗だった。  
 足先の形も整い、甲から踵から爪先に至るまで芸術的な美しさを醸し出している。  
(あんなに綺麗な足にこんな凄い匂いまとわりつかせてるなんて……都ちゃんいやらしい)  
 呼吸が難しくなるほど夢中で匂いに溺れ、息苦しさを感じるに至ってようやく顔を離した。  
 ぜーはーと息を切らしながらもその目は爛々と輝き、すぐにでも同じことをしでかしそうだった。  
「ぷはぁ。ええわぁ……ほんっと都ちゃんの物を使ったオナニーは格別だわぁ……」  
 こういった行為の常習犯であることをパネルに対して自白し、改めて靴下を眺める。  
 当然靴下は二足ある。今日のメインディッシュであるこれを嗅ぐ以外にどう使うか。  
 礼美は真剣に考え込んだ。  
「うーん……食べちゃいたいぐらいだけどそういわけにもいかないし……うん、こうしよ」  
 一つ頷くと、礼美は履きっぱなしだった自分の靴下を脱ぎ捨て、やはり汗に濡れた足をさらけ出した。  
「汚しちゃうけど……ごめんね都ちゃん。やっぱり靴下はこう使うものだし」  
 そう言って自分の足を都の靴下の片方に突っ込んだ。  
 礼美のものより一回りサイズの大きいそれはぶかぶかだったが、足も靴下も濡れていたため肌にぴったりと張り付いてくる。  
「ああ……私の汗と都ちゃんの汗が混ざってるぅ……」  
 濡れた感触に身を震わせる。  
 足を手で揉み、丹念に靴下の繊維に染み込んだ汗と、体内から滲み出る汗とを混ぜ合わせる。  
 飽和した水分と体温で湯気さえ立ちそうな足を愛おしそうに眺めたかと思うと、礼美はその足へ顔を押し付けた。  
 
 座ったまま、上に向けた足の裏に口付けるという柔軟体操のような滑稽な姿だったが、礼美はまるで気にしない。  
 都の靴下の奥に、自分のものではあるがしっかりとした足の形が存在することで、気分はさらに高まった。  
「んぁっ……! 都ちゃんに踏まれるとこんな感じ、なのかな……?」  
 再び生々しい匂いを感じながら、礼美はその状況に思いを馳せる。  
「違う。都ちゃんが踏んでくれるならもっと、こう……」  
 手で掴んだ足を動かし、顔面に強く擦り付ける。  
 次第にその動きは荒々しくなり、生地が顔を擦る音が部屋に響きだした。  
「っくぅ……私のは臭いけど、都ちゃんのはすごくいい匂い……」  
 さして違いのない二種類の匂いを自信ありげに嗅ぎ分ける。  
 それを逆手に取り、自分の靴下を履いた都が顔を踏みつけているという妄想にのめり込んでいく。  
「もっと……もっと踏んで都ちゃん……!」  
 顔を蹂躙する足の裏越しに都の顔を見て、懇願する。  
 蔑みの表情を浮かべて自分を踏みにじる都。  
 靴下越しに指で鼻を挟んでくる都。  
 そんな妄想を自分の体で再現し、興奮と喜びでますます体温が高まっていく。  
 妄想の都が唾を吐きかけたら自分で口から唾液を溢れさせ、足の裏でそれを塗りたくる。  
 顔と都の靴下の間に立つ粘っこい音に聞き入り、礼美の体温は際限なく上がっていく。  
「変態でごめんね都ちゃん……! ああ、でも都ちゃん大好きぃ……!」  
 性的興奮は既に声が掠れるほど激しいものになっていた。  
(そろそろイッちゃってもいいよね?)  
 自己踏み付けを続けながら、この興奮にどう収拾をつけるか思案を巡らせる。  
 性器を弄るか、それとも思い切って後ろの穴を使うか。  
(都ちゃんならどうするかな……また失礼な勘違い妄想したらいけないし……そうだ!)  
 制服のポケットから慌てて携帯を取り出すと、アドレス帳すら使わず目にも留まらぬ速さで番号をプッシュした。  
 
 足先をしゃぶり、そのしょっぱさに目をとろんとさせながら応答を待つ。  
 六コール目で携帯から望みどおりの声が響いた。  
『はい、宮崎です』  
(都ちゃんの声だ――――――!!)  
 足を吐き出すと、瞬時に正座して傾聴する。  
 電話口に出る声はさすがに柔らかで優しげだ。普段向けられることのない声質に礼美の頬が緩む。  
 聴覚をくすぐる快感の余韻が消えるのを見計らい、礼美は一気に思いの丈をぶち撒けた。  
「都ちゃん都ちゃん! 今都ちゃんを想ってオナニーしてるんだけどね、都ちゃんならお尻とアソコどっちを虐めてくれる!?」  
『くたばれ』  
 つー。つー。  
 当然の結果として即座に電話は切られた。  
 なお、都の携帯には着信拒否されているため、かけたのは宮崎家の固定電話である。  
 携帯を投げ出し、しかし紅潮したまま礼美は都の仕打ちの意味をよく考えた。  
 結論。  
「『くたばれ』って『イッちゃえ』って意味だよね都ちゃん! 私なんかが気持ちよくなるのを許してくれるなんて優しい! 嬉しい!」  
 一片の疑いもなく叫ぶと、履いていない方の靴下を左手に持った。  
(都ちゃん恥ずかしがって教えてくれなかったけど、頑張って都ちゃんのしてくれそうなエッチ考えないと)  
 決意も新たに、その靴下を乳房に擦りつけ始めた。  
 まだ痛みの残る乳首が目の細かい繊維で擦れ、体が震える。  
「……でも都ちゃんならそういうとこ重点的に踏んできそうだよね」  
 そう思い、何度も何度も靴下の湿った部分を擦り付ける。  
 痛い。気持ちいい。痛い。気持ちいい。  
 相反する感覚が引き立てあい、胸だけとは思えない性感を生み出していった。  
 感触に慣れて醒める前に腹から腿へと愛撫を移す。  
 事前の行為で敏感になっている皮膚はどこを触ってもくすぐったく感じるほど敏感になっている。  
(それも都ちゃんの靴下で……ううん、足で触られたりなんかしたらもう……)  
 腿をなぞっただけで、そこと繋がっているように性器から分泌液が垂れる。  
 それを拭くように、手の中の靴下を股間に押し当てる。  
「ひぁっ……!」  
 靴下にじわりと染みが広がり、礼美の口からは喘ぎが漏れた。  
 
「ふわぁぁ……電気あんまっていうんだっけ、すごく気持ちいい……」  
 靴下越しに膣口をまさぐりながら、股間を踏みつける都を想う。  
 両足を掴んで持ち上げ、無防備な股を汗ばんだ足で摩擦する都。  
 想像するだけで鼻血が出そうな光景だった。  
 口の端から涎すら垂らし、性器から全身へ伝わる性感に浸る。  
(あ……いけないいけない。また気持ちよさだけもらおうとしちゃってる。虐めてもらわないと)  
 頭を小突くと、自分の体をどう痛めつけようかという常軌を逸したことを考えた。  
 その妄想にはやはり等身大パネルが一役買った。  
 礼美の視線はその手に握られた新品の竹刀に向けられた。  
(あの竹刀でぶたれたいな……都ちゃんも振ってるとき楽しそうだったし)  
 人を叩くのが好きなら、ひょっとすると頼めば叩いてくれるかもしれない。  
 今度土下座してでも頼んでみようと決意すると、それも妄想に組み込んだ。  
 陰部での自慰は続けたままうつ伏せになり、尻を高く持ち上げる。  
 都に肛門まで見られているという実感を得て赤面するが、それも一瞬のこと。  
 右腕を背中側に大きく振り上げると、肉付きのいい尻へと掌を叩き付けた。  
「きゃぁっ!」  
 高い破裂音が鳴り、臀部に電気が走ったような衝撃が広がる。  
 想像する竹刀での痛みとは違ったが、都がしたと思い込むには十分な強さだった。  
 二度。三度。部屋の中に高い音が響き、白かった尻に赤い跡が刻まれていく。  
「うふふふ……もっともっとぶっていいよ都ちゃん……あっ、やぁっ!」  
 興奮で加減の効かないまま何度も打ち据え、その度に股間の靴下を濡らす。  
 豪奢な部屋の中、少女が少女のパネルに尻を突き出し、自分の尻を叩きながら自慰に耽る。  
 異常な光景ではあったが、指摘されることのないまま礼美は快楽に溺れていった。  
「うぁ……気持ちい……都ちゃんにぶたれたり踏まれたりするの、すごく気持ちいい……あんっ!」  
 既に十分すぎるほど濡れた性器は淫猥な水音を絶え間なく響かせ、顎は涎にまみれている。  
 性感は体の隅々まで行き渡り、それに耐えるように全身の筋肉が張り詰めている。  
 痛々しく腫れた尻を最後に思い切り叩くと、とどめに性器と乳房を乱暴にまさぐった。  
「ふわぁぁぁっ! み、都ちゃん……! 都ちゃん大好きぃぃぃ!!」  
 脳の焼け付くような絶頂の快感の中、礼美はひたすら都の名を呼び続けた。  
 
「はぁ……今日も都ちゃん激しかった……」  
 膣をひくひくと震わせながら、礼美はよろよろと体を起こした。  
 自慰に使った靴下はひどく濡れそぼっており、舐めてみても都の味は薄くなっている。  
「……都ちゃんの匂いは私の体に染み付いたってことだよね。えへへ」  
 少しだけ惜しむように口付けると、それも自らの足に装着した。  
 おぼつかない足取りでベッドから降り、ぐちゃぐちゃと音を立てながら都のパネルへ歩み寄る。  
 身長が高めの都の顔の位置は、礼美からは少し遠い。  
 少しだけ背伸びをして視線を合わせると、そのまま写真の唇へ自分の唇を押し当てた。  
 返ってくるのは無機的な感触だけだったが、間近に都の顔を見て、それを唾液で汚すだけで礼美は幸せな気分になれた。  
「……さすがにちょっと疲れちゃった」  
 再びベッドに戻り、ふにゃりと倒れこむ。  
 全身には快感の余韻と、ひりつく痛みがへばりついている。  
「あ、そうだ」  
 礼美は携帯を取り、先ほどと同じ宮崎家の番号を押した。  
『はい、宮崎です。ただいま留守にしております。ご用件の方は――』  
 留守電になっていた。礼美を警戒してのものなのだが、当の礼美はそんなことは考えもしない。  
 ピーッという電子音の後、事後に恋人に語りかけるような安らいだ声で伝言を残した。  
「都ちゃん、今日も都ちゃんのおかげで最高に気持ちよくオナニーできたよ。見たかったらいつでも見せるから言ってね、っと」  
 満足し、電話を切る。と、それから一分と立たずに電話がかかってきた。  
『レイミ! あんたあんなイタ電しやがって姉貴とかが聴いたらどうしてくれんの!?』  
「あ、都ちゃんから電話だ。わーい。でも何で居留守してたの?」  
『ほんっとこいつだきゃぁ……!』  
 憎憎しげな声と共にすぐに電話は切れた。  
「あ。もっとお話したかったのになぁ」  
 ま、直接話す方がいっか、と気楽に呟く。  
 それより明日はどうしようかと考える。  
 また下着か何かを新しいのに取り替えてあげるのもいい。  
 パネルの表情張り替え用の写真を取ってもいい。  
「……そうだ。この靴下」  
 自分の欲望の捌け口になった二束の靴下を見下ろす。  
「この私の唾と汗と恥ずかしいお汁の染み付いたのと取り替えて、もし都ちゃんが気づかずに少しでも履いたら……」  
 想像し、満面の笑みを浮かべた。  
「うん、明日も楽しくなりそ。都ちゃんラブ」  
 最後にパネルへ微笑みかけると、礼美はそのまま幸せそうにまどろみ始めた。  
 

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