「しかしすげーな、マジで胸だけでイったのか?」
平静を装っているが、そう尋ねる岩佐の声は震えていた。
「そりゃこいつは驚くほど淫乱だからなぁ。
ブラジャーしてないと服と乳首がこすれて勉強もできないぐらいだからな」
「まじかよ」
「だれの……せいで……こんな風になったと思ってるのよ……」
何十時間と乳房を舐られ性感を開発されたことを思い出しながらサヤは反論する。
しかし、軽くとはいえ人前でイかされたためいつもの元気さはなく、
弱弱しく頬を赤らめながら半裸でうつむく姿は暴走する男の本能を刺激するだけだ。
「誰のせいかだって?それはお前が好き物だからだろ?
普通の女だったらどれだけ教え込んだって胸だけでイけるようにはならねえし、潮も吹けねえ」
「え、まじで?桑原潮吹いたことあるのかよ!?小便漏らしただけじゃねーの?」
驚きだけでなく、外山に対する尊敬の念すら抱く岩佐。
もしその話が本当なら、外山の性技もかなりのものだ。
どれだけ女の身体が淫らであろうと、凡庸な技術ではまず潮を吹かせることはできない。
「俺もそう考えて大抵こいつにトイレ行かしてからHやってたけど、
いつもベッドに染み作るんだよこの淫乱女は」
「そ……そんなに……吹い……出してないもん!」
ムキになって否定するサヤ。しかしその恥ずかしげな態度が
実際に何度か吹いた事があることを雄弁に物語っている。
「まあ、それは後で証明させてやるさ。
とりあえず今は、お前の小説の添削してやんなきゃな。
全く、俺も良くできた彼氏だ。そうだろう?」
「うう……」
胸元をはだけ、後ろからなおも胸や腰に愛撫を受け続けるサヤはもうか細い声で唸るしかない。
「じゃあ次はこの表現だな。おい、こいつをどう思う?」
放り投げられた原稿用紙の、赤いラインの引かれた文章を読み上げる岩佐。
「えーとなになに、『自ら膣内を捏ね回した少女のそこからは甘い蜜の香が立ち上った』……
ひょっとしてお前これ、ギャグかなんかか?」
思わず苦笑いがこぼれる。
「リリカルにもほどがあるだろ」
「別に……いいっあぁ」
視線をそらしながらそれでも反論しようとするサヤのズボンの中に外山の指が侵入する。
〈おいおい!俺の前でそこまでやんのかよ!)
びびる岩佐の前でサヤのズボンが内側の外山の手により怪しく蠢く。
「だめぇ……」
そんな押し殺した声など無視して、一通り『甘い蜜の香』がする場所を捏ね回す外山。
ズボンの中の指が動くたびにサヤの少し太めの眉は悩ましげに歪むが、
岩佐を意識してか快楽を否定するようにその表情はすこし強張っている。
そんなサヤの心中を察しながら、外山は言葉嬲りを続ける。
「おいおいどうした、いつもみたいに腰振ってサカッた犬みたいに喘がねーのか?」
「……っ!だれが、ぁ、あっぁぁ」
襲い来る快楽と第3者の目による羞恥の板ばさみとなったサヤはろくに言い返すことなどできず、
快楽におぼれる表情を岩佐に見られぬよう、顔を下へ向けるのが彼女にできるかすかな抵抗だった。
しばらく汗まみれの顔であえいでたサヤが、突然今までとは違う調子の鳴き声を上げる。
「ひぃぃぃっ、ほんとだめ、ほんとだめえぇぇっ」
富山の腕がさらに深くズボンの中へと潜り込むのが岩佐にも分かった。
ちょうど、指1本分ぐらい。
「入り口はいぃの、でも、中はだめえええぇぇぇ」
震えながら吼え続けるサヤ。もはや正気を半場失っているように見える。
手に持ったビールを飲み干すことすら忘れ、サヤの下半身から目の離せない岩佐。
しかし岩佐の期待まじりの妄想は裏切られ、サヤの声はすぐに弱まる。
サヤの体内から抜き出した指をズボンから取り出し、その指をサヤの鼻先に突きつける外山。
「これが『甘い蜜の香』がするのか、もう一度よーく匂ってみな」
「する……」
「ああ?」
「するもん!するんだもん !外山君にはそう匂わなくても、あたしにはそうなんだもん!!」
「ちっ、聞き分けの悪い馬鹿だ」
しかしそんな口ぶりとは裏腹にその顔に恐ろしい笑顔を浮かべる外山。
桑原は罠にはまった。岩佐はそう思った。
突然、外山はサヤの腰をがしっと掴み、持ち上げる。
度重なる羞恥と絶頂で精神も肉体も参っていたサヤは、あっさりとその導きに従いベッドの上で立ち上がる。
「まあ仕方ねえわな。『いきなりクリトリスを剥きだしにされコリコリと摘み上げられイきました』
とか『胸を弄り回され、その刺激だけでイきました』とかはてめえの身体で検証できるが、
匂い方や聞こえ方なんてのは感じ方しだいだ」
外山はサヤの背を押しベッドから二人で下りる。
そしてすこしずつ岩佐のほうへ近づいてくる。
そのことに気づいたサヤはいやいやと顔を振り力の入らない足で踏ん張ろうとするが、
途端に後ろから外山に耳たぶを傷つけられない程度にかじられ、抵抗する気力をなくす。
「そこら辺は表現の違いって奴だ。……まあ、こんな時のために岩佐を呼んだんだからな」
(俺……?)
結局、手を縛られシャツの前をはだけさせられ胸を丸出しにした状態のまま
涙目で岩佐の前へと歩かされていくサヤ。
そのあまりに扇情的な姿に、岩佐の下半身の一部に血液が集まってゆく。
「で、多数決というわけだ。二人だといつまでも結論は出ないが、3人なら別だ。多い方の表現に従えばいい。
岩佐、こいつの股から垂れてる涎が甘い蜜の匂いしてるかどうか」
ついに、岩佐の20センチ手前までサヤは押し出されてきた。
椅子に座った岩佐のまさに目と鼻の先に、同級生の少女の下半身があった。
そして、外山は彼女のズボンのジッパーの金具に手をかける。
サヤの体が、びくっと震える。
「最後の一票を入れるのはお前の仕事だ」
それはつまり―――――
「俺が匂うっていう事かよ!」
「そうだ」
外山は、ジッパーを下へとずらす。
いやらしい女の匂いがファスナーの隙間から漂い始めた。
「いや、いやっ、いやあぁぁっ」
平然と彼女の性器を外気に触れさせようとする外山にサヤが泣きそうな声で抗議の声を上げる。
しかしそんな絹を裂くような悲鳴も、ズボンの中に外山が手が差し込めば途端に甘い嬌声へと変わる。
「ぃやぁ……いやぁぁぁ……」
長く性感を開発されてきたサヤの体は、理性よりも欲望に従う。
たとえそれが他人同然の男の目の前であったとしても。
僅かな水音とともに何かが出入りする音が聞こえる。
そしてその音が強く大きくなれなるほど、漂い始めた匂いも比例して強くなる。
暗闇の中の蠢く手はまるで岩佐の視線からサヤの恥部を守るかのようでいて、
しかしサヤの他人には見せるべきではない表情を引き出すには十分なほど気持ちよくて、
理性と欲望と羞恥と快楽の激しい綱引きの中でサヤの肉体と精神はぐちゃぐちゃに歪み狂ってゆく。
「ひぃぁぁぁぁ、だめ、つまんじゃやーー」
突然に弱弱しかったサヤの様子が一変する。
たとえズボンの中の様子が見えなくても、何を摘まれてサヤが叫び声を上げたのか岩佐には分かった。
「だめ、だめえ、だめだめだめええぇぇ」
嫌がりながらも、けして嫌悪感だけで叫び声を上げているのではないということも。
「いや、でちゃう、ひとまえででひゃうよ、いやああぁぁ」
その声の中に、何度も絶頂を知った女の悦びが漂い始めたことにも岩佐は気づいていた。
「いやいやいやいやだめえええっっあぁぁっ………」
それまで小刻みに震えていたサヤの体が突然静止し、その反動に覆われるかのように一泊置いてから
その全身がひと際大きくわななく。
「あ………………………ぁ………ぁぁ………………」
真後ろの外山に体重を預けながら、力を失ってゆくサヤのズボンから指をゆっくりと抜き出し、
少女の温かな体液にまみれるそれを匂いながら岩佐に外山は促す。
「お前も匂えよ」
「……ぁあ……」
答える岩佐の声はわずかにかすれていた。
どうも間抜けなことに、しばらく口をあけたまま二人の変態的行為に見入っていたらしい。
(二人の……?違うな……)
岩佐は、ジッパーの5センチ前まで顔を近づける。
その様子を見て魂の抜けたようなっていたサヤに恥ずかしさが蘇り岩佐の行為から顔をそむけようとするが、
外山は液まみれの手でサヤのあごを掴み目をそむけさせないようにする。
そんな恥辱に顔を夕日のように赤くしたサヤの目の前で、岩佐は鼻を鳴らしながら雌の香を嗅いでいた。
(俺も立派な変態だ)
「チーズじゃねえの、これ。うん、賞味期限が1日過ぎたチーズの匂いだわこれ」
そういやつまみ勝ってくるの忘れたな、と思いながら岩佐は缶に入ったビールを全て飲み干した。
「ほお、俺とおんなじ感想だな。決定だ、
『自ら膣内を捏ね回した少女のそこからは腐りかけのチーズの香が立ち上った』……これだな」
(いや、チーズはもともと腐ってるだろう)
と思ったが、岩佐はあえて指摘しなかった。
肩で息をする長身の少女は、もう何も答えなかった。
彼女の体内から流れ出たのは体液だけでなく、心の中の矜持や人間性までもが流れ出ていたのだから。
そしてその流れ出て空いた場所に、燃えるような淫欲が獣性が生まれ、少女の心を支配し始めていた。
そのままいざなうように力の抜けたサヤをベッドに座らせ、またも原稿用紙に目を走らせる外山。
「問題は次だな」
(まだ次があるのかよ)
げっそりとした顔で岩佐が心の中で毒づく。
「『少女の泉からはピチャピチャと愛液の湧き出る音が響き渡る』。
このピチャピチャってのはどうだ?」
「いーじゃんピチャピチャ。俺はそれでいいと……」
しかし、岩佐の言葉はそこで止まる。
まるで刺し殺すかのような外山の視線に気づいたからだ。
「……あー、でもピチャピチャよりクチュクチュがいいかもな」
長い付き合いの岩佐はその視線にこめられた意思を肌で感じ、前言を撤回する。
すると外山はにやりと笑い、そいつは困ったと呟いた。
「俺はジュプジュプがいいんだ。
……こいつは想定外だな。3人とも票がばらばらだ」
話し合いでもするってのか?と疑問に思った岩佐は、まだこれが外山の演出と気づいていない。
「しょうがないな、4人目に聞くとするか」
「?おいおい、また誰か呼ぶのか?」
正直こんな時間呼んで来てくれる友達俺らにいないだろ、と思ったが空しくなるので岩佐は口にはしなかった。
「そんな必要はないだろ。別に『見て』もらうんじゃなくて、『聞いて』もらえばいいんだから」
岩佐は外山が取り出したものを見てようやくその趣向を理解した。
携帯電話を耳元に寄せる外山の顔はますます嗜虐の喜びに歪む。
そして、長い沈黙と携帯の呼び出し音が部屋を支配する。
相手がいつまでも出ないことに苛立ちを見せ始める外山。
新しいビールの蓋を開け成行きを見守る岩佐。
後ろの外山に体を預け肩で息をしただただ放心するサヤ。
3人はこの異常な空間と状況に飲まれ、一言も言葉を発さないまま3分が経過した。
「ひさしぶりだね、外山、君」
静かな部屋に響く声を聞いたとたん、サヤがびくりと体を揺らし怯える顔で背後の外山を振り返る。
―――嘘でしょう―――
とても小さな声だったが、確かにそう呟いたようだった。
「よう、出るのが遅いじゃねーか」
「……ごめんごめん、ちょっと今、その、食事中だったんだよ、あたし」
いつもより歯切れの悪い喋り方ではあるが、その声は3人が良く知る人物のものだった。
「なんだ、こんな夜中に飯か?太るぞ」
「あたしは、ちゃんと毎日部活でカロリー消費してるもん!
……新入生が4人も入部したのに、誰かさん達全然部活出てこないから……あたしやサヤの負担が増えてるんだからね」
「ダイエットになっていいじゃねーか、キリノ」
最後の1票を投じるのは、今電話のすぐ前で半裸になりながら顔を真っ青にしているサヤの親友だった。
「っていうかこんな、夜遅くに何の用?」
「夜遅くにわりーな。お前の親友の小説が駄作になるか名作になるかの瀬戸際なんだわ」
「小説……?あ、やっぱサヤ、外山君ち行ったんだ。もー心配したんだよ。
何も言わずあたしが買い物行ってる間に、出て行っちゃうんだもん。今サヤ近くにいる?」
外山はニヤニヤ笑いながら紐で両手を縛られ抵抗できないサヤの胸をその手の平で荒々しく揉む。
彼女はただ唇を噛み締め声を上げないようにするしかない。
電話の向こう側にいる親友に、その喘ぎ声が聞かれないように。
「……んなことより、聞きたいことがあるんだよ。しばらく黙ってこっちの音を聞いてくれ」
キリノにそう頼むと外山はサヤの股間の前に携帯電話を置いた。
動くことも、喋ることも禁じられているサヤは、泣きそうな目で携帯と外山の顔を交互に見る。
その外山の顔にいつもの蛇のような笑いが浮かんでいるのを見たとき、
サヤの目にわずかに残されていた希望の光が消える。
いつの間にか後ろから絡めとられるようにしてサヤの両足は外山の足でグラビアアイドルのように両開きにさせられていた。
絶頂の後しばらく呆けていたサヤはようやくその事実に気づくがもう遅い。
そしてズボンの開かれたファスナーの10センチ前に携帯電話が置かれたのだ。
その携帯電話が何の音を拾うためのものかは、岩佐にもサヤにも簡単に理解できた。
そして外山の左手がズボンの中へ侵入し泉の入り口へと触れる。
「ぁ……………………………………………ぃゃ……………………………………………」
その少女のか細い拒絶など受け入れられるはずもなく、
やがて電話の向こう側に聞こえるほどの大きな水音が少女の肉壷から漏れ始めた。
ズボンの生地の上に内側から浮かび上がる外山の手の陰影が次々と姿を変えていく。
そのたびに、ただ顔をいやいやと左右に振ることしかできないサヤの顔の角度が右へ左へ変わり、
苛められっ子の様にその瞳は涙で潤む。
「ぃゃ……………………………………………………………………
ぃゃぁ……………………………………………………………………
やあっっっ!!!」
外山の左手に目をつぶって耐えていたサヤは、突然右胸の頂を責める右手の感覚に完全に虚をつかれ、
大きな声を上げしまう。
「っっーーっ…………………………………………」
携帯電話の向こう側にいる親友が聞き耳を立てている今、
サヤは不意をついた右手のことを怒ることもできず、後ろを振り向いてすがるような表情で外山を見上げることしかできない。
そんなサヤに鼻で笑うような笑みを返し、外山はサヤの性感をさらに刺激するかのように右手で乳房を、左手で膣内をまさぐりまわし始める。
「どーよ、この音はどんな擬音で表現する?」
電話の向こうへの外山の問いかけに、キリノは答えない。
「おい、ちゃんと聞いてるのか?」
「あ、ごめん……なんか、お腹ものすごく空いててさ、ご飯食べな、がら電話してるから
聞いてなかっ、た。もう1回お願い」
「しょうがねえな。……じゃあ、もちょっと音を大きくしてやるか」
水音と小さな喘ぎ声が外山の左手の速さと強さに連動するように大きくなってゆく。
「ぃゃ…………………………………………
ぃゃぁ…………………………………………
ぃやぁ…………………………………………
ぃやあ…………………………………………
いやあ…………………………………………」
彼女の下肢から立ち上る異臭はもはやベッドから1メートル以上離れた場所にいる
岩佐の鼻腔すら刺激し始め、液体が掻き回される音も高く大きく響き渡る。
そして、官能を隠すことのできない声が2重に聞こえる。
……2重に聞こえる?
(あれ、なんでだ)
空耳や幻聴の類ではない。
確かにサヤの喘ぎ声に混じり、女が一人しかいないこの部屋でもう一人の喘ぎ声が聞こえてくるのだ。
(ああ、そういうことか……)
すぐに岩佐は納得する。
外山も気づいたのか、舌打ちをして携帯電話をにらんだ。
どうやら自分が趣味のため人を利用するのは好きだが、人に趣味で利用されるのは好きではないようだ。
もう一つのあえぎ声は、電話の向こうから聞こえてくる。
「キリノてめー何食ってるんだ?」
というかまあ、食事ですらないことをしているのだろう。
「別に……、ただ……、あんっだめぇ」
あんっじゃねーだろあんっじゃ。
「何が『だめ』なんだよ」
「……外山君、あんまり、サヤに、ひっ……
ひどぃこと、しちゃだめぇぇ、や、そこは……
あんまり、くちゅくちゅ、したら、こわれちゃうからあ……
だめだょ……先」
そこで、なにかの物でキリノの口が塞がれたのか、
突然キリノの声は途切れモゴモゴという音しかしなくなる。
なにやってんだこいつら……岩佐はあきれた。まあ俺らも大概だけど。
つーかうちの部、部内で関係持ちすぎだろ。
つまらなさそうに電話を切る外山。
どうやら彼が思い描いていた展開にはならなかったらしい。
「とりあえずクチュクチュでいいらしいぞ。
……しかしお前も友達に恵まれねーな。
キリノはお前の小説より『食事』のほうが大切みたいだったぜ」
……まあ、キリノの電話をしながらの『食事』も、
猥褻教師に無理やり強制させられていたんじゃないだろうかと岩佐は妄想する。
……もしそうだとしたら変態だらけの部活だなあおい。
なんだか馬鹿馬鹿しくなって、岩佐は缶に残ったビールを一気に飲み干した。