小さな女の子が語りかけてくる。  
「……丈………君?」  
年は10歳ぐらいだろうか。  
よく聞こえない。彼女の姿もよく見えない。でも、知っている子だ。  
君は誰?そう問いかけたいのに、声が出ない。  
「ご………。……せい………」  
そういうと、その女の子は近づいてきて、俺の額に顔を近づける。  
一点の曇りも無い硝子玉のような瞳に吸い込まれそうになって、  
俺の体の動きが止まり、一瞬視界が何かに塞がれる。  
そして……しばらくして、彼女は顔を遠ざける。  
その口の端から、白い液体を零しながら。  
そして耐え切れなくなったようにそれをごほっごほっと吐き出す。  
 
そこで、いつも目が覚める。  
 
 
それはちょっとした奇跡だった。  
「いや、まさかユージ君が勝つとはね」  
「うーん、県ベスト8の実力は伊達じゃないっことか」  
キリノ先輩もサヤ先輩も驚いている。  
いや、先輩たちだけじゃない。ミヤミヤも栄花君も先生も、  
……そして俺と試合をして敗れたタマちゃんと、彼女に勝った俺自身も……。  
 
「何で?タマちゃん!」  
勝った後しばらく放心していた俺はようやく道場の掃除時間になって自分を取り戻し、叫んでしまった。  
勝った……おそらく一分にも満たぬ勝率のはずなのに。  
でもそれは起こった。納得できない形で。  
 
その試合は、コジロー先生の能天気な一言でセッティングされた。  
「タマとユージ、どっちが強いんだ?」  
最初は、先輩たちが先生を  
「だって先生に教わるよりタマちゃんに教わったほうがいいし」  
とか言ってからかっていた。それで反論できない先生が、  
「そんなこといっても、タマの強さは特別だからしかたねえだろうが」  
などと情けない言い訳をし、そこからなぜか室江剣道部最強の人は誰だという話になった。  
そこでどう考えても最強なタマちゃんと、中学のとき県大会で一応そこそこの成績を残した  
俺のどちらかがおそらく最強だろうから、実際に試合をしてどちらが強いか試してみようという話になったのだ。  
 
俺は全力を出し何処まで食い下がれるか……自分の実力を試すつもりでタマちゃんへ挑んだ。  
たとえ自分の勝率が少ないと知っていても勝つつもりで。  
しかし、いざ勝負をすると、ありえないことが起こってしまったのだ。  
彼女の放った面への一撃はあまりにも遅く鈍く、  
簡単にかわせてその後俺の繰り出す胴への一撃を簡単に彼女は食らった。  
 
彼女が手を抜いてわざと負けたのだろうか?  
でもそれはありえない、と思う。  
子供のころ川添道場で何度も彼女が竹刀を振る姿を見ていたが、  
たとえ相手がどんなに自分より弱かろうが加減はしてもわざと負けることはしなかった。  
 
それになにより、負けたタマちゃん自身がショックを受けている。  
……少なくともそう思えた。  
「今日はちょっと、調子が悪かっただけ」  
いつもの表情の薄い顔で彼女は答えた。  
でも、そのわずかな仕草や口調の中に、彼女自身が納得しない何かがある。  
幼馴染の俺にはそう思えた。  
「じゃあ、あたしは帰ります」  
そう呟くと、掃除を終わらせた彼女はすばやく女子更衣室へ消えてしまった。  
 
「珍しいね、タマちゃんが具合悪いなんて」  
「体調悪いのかしら……」  
栄花君もミヤミヤも心配そうに話している。  
そりゃそうだ。タマちゃんが剣道で戦う姿を見た者なら、  
彼女が負けるなんて想像すらできないだろう。  
「でも、少し体調が悪いぐらいじゃハンデにもならないよ。  
どっちかというと俺のほうが体調悪いぐらいと思うし」  
そういって俺は眠い目を擦る。  
「そういえばユージ、近頃目の下の隈がひどいけど大丈夫?」  
「うん……剣道部に入ってからよく眠れないんだ。なんだかわからないけど、ここの所同じ夢ばかり見て」  
生欠伸をかみ殺し答えた。  
 
 
小さな女の子が語りかけてくる。  
「……丈夫………−ジ君?」  
やはり年齢は10歳ぐらいだ。  
まだよく聞こえない。彼女の姿もよく見えない。  
でも少しずつ、夢を見るたびに鮮明になってゆく。  
しかしまだ感覚器官が薄い膜に閉じ込められたかのように映像も音声もはっきりしない。  
「ご……い。あ……せい………」  
そういうと、その女の子はすっとした正しい姿勢で近づいてきて、背伸びして俺の額に顔を近づける。  
一点の曇りも無い硝子玉のような瞳に吸い込まれそうになり  
動くことのできない俺の視界が何かに塞がれ、俺の体の力が抜ける。  
そして……しばらくして、彼女は顔を遠ざける。  
その口の端から、白いねっとりとした液体を零しながら。  
そしてしばらくして耐え切れなくなったようにそれをごほっごほっと吐き出す。  
「…………い味」  
 
「もうお前、家に帰れ。朝練どころじゃねーぞその顔」  
武道館に入るなり顧問直々に帰れといわれた。  
いや、確かに人相が悪くなってるのは自分でもわかってるけど……。  
「……そんなにやばくなってますか、顔つき」  
「なんつーかなあ、減量1ヶ月目のボクサーって顔だぞそれ。  
しかも確実に絞るの失敗してるボクサーのつらだ。どうかしたのか?」  
うーん、一応この人も先生だしなあ。夢の事話してみようか。  
「なに、変な夢?……やらしい夢とかじゃねーよな?」  
……やっぱり話すのやめようかな。  
 
「やっぱり淫夢じゃねーか!」  
ああ、やはり話したのは失敗だ。  
うんざりして無言で更衣室へ入ろうとする俺に、後ろから慌てて先生が話しかけてくる。  
「いや、だってそう考えるしかねーだろ」  
「なにがですかどこがですか!全然いやらしい描写なんか無いじゃないですか」  
「……でもよお、落ち着いて考えてみろ。  
別にその夢見て苦しかったり怖かったりするわけじゃないだろ?」  
「それは……そうですね」  
「だから悪夢って奴じゃねーだろ」  
まあ、たしかに。恐ろしくて飛び起きたりしたことは無いな。  
「でそこにだ、一人の女の子が出てくると」  
「でも、その……普通の小さな女の子ですよ?」  
たとえばその、やらしい格好ではなかったし、……何より、小学生ぐらいの女の子だ。  
そういった対象として見ることもでき無いほどに。  
 
「そう。だからお前がそんなになってるんじゃねーか。  
いいか、夢ってのは無意識に思っていることが表面に出てこようとして見ることがあるんだよ」  
「それって……どういうことです?」  
「つまりお前は、小学生の女の子に欲情しているんだよ、心の奥底で。  
薄々気づきながら、理性がそれを止めようと葛藤して、夢を見た後にやたらと疲労しているんだよ」  
そんな馬鹿な。  
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ人をロリコンみたいに」  
「……お前も高校生ならわかるだろ。……その女の子の口から零れていた白い液体の正体が」  
思わず思考が止まった。  
 
俺が中学校時代所属していた剣道部の男子の先輩は個性的な人たちが多かった。  
まあ室江校剣道部面々のキャラクターの濃さには負けるが。  
そしてその先輩が卒業前に俺に押し付けて行ったものがある。  
それが今俺の手の中にあるラベルの剥がれたビデオだ。  
『ユージも中学3年生になるし、ちゃんとこういうの見て勉強しなきゃな』  
そういって1年ちょっと前に無理矢理手渡されたビデオを自分の部屋でゆっくりとデッキへ入れる。  
『被虐戦隊ドレープレイバー 〜ピンクレイバーの悲劇〜』  
というタイトルが映し出された。  
 
俺は早送りのボタンを押す。  
きゅるきゅるとテープが早回しされる音がして早送りされる映像は、  
どこかの特撮ヒーローに良く似たコスプレをした女の人が悪役に捕まり  
少しずつ戦闘服を脱がされて肌を顕わにされてゆく様が映っていた。  
そして彼女が悪の戦闘員二人に両肩を抑えられ、怪人の前で無理矢理マスクを剥がされる。  
そこで、早送りを止める。  
あれ、この人……。  
仮面の下から出てきた顔を見て、あることに気づく。1年前見たときにはなんとも思わなかったが、  
今改めて見るとその顔は誰かに似ている。  
ちょっと眉が太くて長く、肩までかかる少し癖のある髪。  
そして怪人に組み伏せられながらも、屈することなく見上げ睨み付ける凛々しい少年のような目。  
この人、サヤ先輩に似てる……。  
そう思った瞬間、とたんにユージにはそのコントのようなお芝居がとても生々しいものに思えてきた。  
『私の命を奪いたいのならそうしなさい。だけど、私の仲間が必ずあなたを倒しに来るわ!』  
うわ、なんか声までそっくりだ。なんていやな偶然。  
しかも心なしか胸もサヤ先輩のように大きいような。  
 
『ふはははは、残念だがそれは無い。これを見よ!』  
と、怪人がマントをひらめかすと、後ろのモニターに橙色と青緑の戦闘スーツを半脱ぎにされた  
二人の女性が捕まっている映像が映る。  
マスクこそ脱がされていないが、その二人は壁に貼り付けにされ、その体を10数人の戦闘員にまさぐられている。  
『いや!!』  
『たすけてえええぇぇぇぇ』  
そこでモニターはぷつんと切れる。  
『オレンジ、シアンッ』  
サ、じゃなくてピンクの悲鳴がこだまする。  
『くっくっくっ、奴らの命はこのデバアーマー様が握っている』  
『そ、そんなあ……』  
『だがしかし、私も鬼ではない。もしお前が私の言うことを聞くのなら、奴らは自由にしてやろう』  
『本当に!?』  
『そうだ……お前がこの私にフェラチオをして高貴な私の精液を飲み干せばなあ』  
『そ、そんな…………そんなこと…………できない…………』  
唇を噛み、うつむくサヤ……じゃなくてピンク。ダメだ。もうサヤ先輩にしか見えない。  
 
『ふふふ……ならば仕方ない』  
そう言うと、デバアーマーはぱちっと指を鳴らす。  
と、さっきのモニターにもう一度二人の姿が映り、その体に怪しげな振動する器具が迫る…。  
『くくく、太さ10センチ、長さ30センチはある長物だ。こいつを突っ込んだら、  
お前の仲間はどうなるかな』  
自分たちの股間に殺人的な機械が押し当てられる感覚に女達は絶望の悲鳴を上げる。  
『『いやああああっ』』  
ぎゅっと目をつぶり、泣きそうな顔で呟くサヤ先輩。  
『わかったわ、するから、してあげるから、早く止めて!』  
『してあげる……?』  
また、デバアーマーが指を鳴らす。  
すると、「長物」を持った戦闘員たちがまた捕らわれの二人へ機械を押し付ける。  
『待って、やります、します、させてください!』  
その声を、楽しそうに聞くデバアーマー。  
『では早速、私の『ファイヤーブレード』を舐めてもらおうかな……』  
そういうと下半身の甲冑を外し、凶器を露出させるデバアーマー。  
『くっ…………』  
悔しそうに従うサヤ先輩には、もうさっきまでの凛々しさは無い。  
潤む瞳で、ただただ目の前の肉棒を眺める。  
そして、おずおずと舌を出すと、陰茎にゆっくりと舌を這わす。  
まるで螺旋を描くように、桃色の肉の上をはいずるサヤ先輩の舌。  
『くくっ……なかなかうまいではないか……だがぬるいなあ……もっと口全体を使え』  
 
少し上目遣いで怪人の顔を脅えた様に見上げるサヤ先輩に対して余裕の顔で命じるデバアーマー。  
ますます泣きだしそうな顔になりながらサヤはついに口全体で彼の物を含み、しごき始める。  
顔全体を上下し、舌だけでなく口内の粘膜で快楽を供給するサヤ先輩。  
しかし、わずかに眉を上げデバアーマーは激昂する。  
『だめだだめだ。そんなものではまだまだ仲間たちは救えんぞ。おい、お前、手本を見せてやれ』  
デバアーマーが命令すると、彼の背後からドレープレイバーに良く似た  
赤と青の戦闘スーツを着た男達があらわれた。  
『ふふふ、こいつはお前達の戦闘スーツを解析してわが組織が作り上げた陵辱戦隊ドレーブレイパーだ。  
もちろんパワー、スピード、全ての面でお前らの戦闘スーツを上回る』  
偽者登場か……王道だよなあ……。  
 
『くっ、ふぁにを?』  
『お前に直接舐め方や咥え方を教えてやる。行け、レッド!ブルー!』  
命を受けたレッドレイパーは、サヤ先輩の下半身に飛び掛りマスクの下半分から覗く口でその下半身を舐め始める。  
『ああぁっ、私には、咥えられる物なんてないぃっ』  
『ふふふっ、ピンクよ。人は生まれる前に母胎にいる時はまだ性別がはっきりしない時期がある。  
しかしある時期を過ぎると、胎児のある器官が男ならペニスに、女ならクリトリスになる』  
レッドの舌が、サヤ先輩の陰核を舐め上げる。  
『ひいいいぃぃぃいいっ』  
上ずった声をあげて悶えるサヤ。  
『だから、レッドのクリトリスを舐め上げるテクニックを模倣すればいいんだよ。  
簡単な話だろう?さあレッド、お前の持つ技術できっちりねっちりねぶり方を教えてやれ』  
『ああぁ、そんな、ダメ、口にふくんじゃ……』  
『オヤオヤ、仲間を救うことより自分の快感をむさぼるほうが大事かね?正義の味方も唯のメスだな。  
全くお口が留守になったじゃないか。しかたない』  
 
そう呟くと、デバアーマーはサヤの口に自らのファイアーブレードをつき立てて  
彼女の頭を掴み、腰を自ら突き立て始めた。  
『いぁ…………ぐほっ…………げほっ…………ふああぁぁ…………』  
口の中へ無理矢理肉棒を前後され、喉の奥や口の粘膜をめちゃくちゃに突かれるサヤ。  
しかしその下半身はレッドの精密な舌の動きで攻められて、  
背後からはその豊満な胸をムチャクチャに揉みまわされている。  
苦しみと心地よさと痛みと戦慄きが全て同時に襲ってくるなかで、  
サヤはわずかに背を反らし肉棒で邪魔されたくぐもった絶叫を上げる。  
『さあゆくぞ、全部飲み干せっ』  
デバアーマーが騒ぐと、彼の腰の動きが止まりサヤの口の中へ大量のアトミックを放つ。  
それと同時に、肉の芽を攻めるレッドがその敏感な器官を舌で押しつぶし、  
ブルーが両胸の乳首をすりつぶすように摘み上げる。  
『ふうああぁぁぁぁっ…………ぅえほっげほっ苦いぃっあついっ』  
絶頂へと押し上げられた体で精液を飲み干すことなどできず、  
半開きになった口の橋から泡立った精液を零すサヤ。  
 
確かに言われてみればそれは白くてねっとりとしていて、なんだか夢の中のあの液体に似ている気がする。  
でも違う。っていうか違わなければ、自分は無意識で幼女を求めるロリコンということになる。  
 
『いやーっだめえぇーっ』  
『裂けちゃう、あそこが裂けちゃうっっ』  
とたんにデバアーマーの後ろで巨大な機械に貫かれた女戦士二人の哀れな姿が浮かぶ。  
『そんな……、デバアーマー……あなた約束を破ったわね……』  
『ふはははは。私は飲み干せといったのだ。そんなに私の貴重な子種を口から零しておいて、  
約束を守ったといえないな。行け、レッド、こいつらを性奴』ぷちっ  
 
ユージは停止ボタンを押した。  
「約束……?」  
 
俺は何か約束したのを忘れている。そして、それを思い出さなきゃいけないはずなんだ。  
俺の心身の疲労は、それを思い出せないことから来ている……焦燥?  
 
でも……なんだろう。  
俺はあの少女と何を約束したって言うんだろう。  
 
 
 
小さな女の子が語りかけてくる。  
「大丈夫…の…−ジ君?」  
あたりの光景はセピア色で埋め尽くされて、色彩はわからない。  
聞こえてくる音声は一定の高さの音で、抑揚が存在しない。  
でもやはり、少しずつ鮮明になってきている。  
「ご…さい。あ……せい……い目に」  
そういうと、その女の子はすっとした正しい姿勢で近づいてきて、背伸びして俺の額に顔を近づける。  
一点の曇りも無い硝子玉のような瞳に吸い込まれそうに……いや違う。  
その目はわずかに、本当にわずかだが悲しみに曇っていた。俺にはそれがわかった。  
俺の視界が何かに塞がれ、体の力が抜ける。  
そして……しばらくして、彼女は顔を遠ざける。悲しげな瞳のまま。  
その口の端から、白いねっとりとした液体を零しながら。  
色彩は無くても、セピア色の濃淡からそれが白いと分かった。  
そしてしばらくして耐え切れなくなったようにそれをごほっごほっと吐き出してから呟いた。  
「…苦い味」  
 
 
そこで、目が覚めた。  
苦い味。確かに女の子はそう語っていた。  
そして自然と、その言葉は昨日見たアダルトビデオの1シーンの台詞と重なる。  
 
最悪だ……。  
 
「大丈夫?ユージ君」  
ピンクレイ…………じゃ無くて、サヤ先輩が心配そうにやつれた俺を見つめる。  
結局あのビデオを一年ぶりに見た後、俺はそれを学校まで持ってきて焼却炉に捨てた。  
……もちろんビデオテープが燃えないごみだってのは分かってる。  
でも家のゴミ箱に捨てて家族に見られたくは無いし、  
先輩に良く似た女優の出ているビデオをいつまでも持っているのはなんだか後ろ暗い気がして、  
そして俺の中のモラルのようなものが壊れそうな気がして、  
結局どうしていいのか分からなくなって学校に持ってきて捨てた。  
でも、普通の健全な判断力を持つ人間ならこんなことしないよなぁ……。  
 
「ええ、多分。……大丈夫じゃないと思います……」  
「何だお前まだ淫夢見て……あ」  
コジロー先生の余計な一言で楽しい武道館での昼食タイムが一気に凍りつく。  
「じゃ、俺用事思い出したんで……」  
空気を変えた本人はすぐ逃げる。あの人はいつもこうだ。  
 
そして全員の視線が俺に集まる。  
「……あの、違うんですよ。あの人が勝手に勘違いしてるだけで」  
「ま、しょうがないよね、若いうちは結構あるよね、うんうん」  
そのフォローだと俺がひっきりなしに淫夢見てるみたいじゃないですかキリノ先輩。  
「うん……男の子なら普通?だよね……」  
そういいながらサヤ先輩はすこーしずつ俺と距離を開け始めている。  
「ねーミヤミヤ、インムってなに?」  
「後で教えてあげるね、ダン君」  
……教えるってどうやって?  
「………………」  
タマちゃんは……ボーとしてる。なんか俺に負けてからいつも心ここにあらずといった感じだ。  
まあ、聞かれなくて良かったと思っておこう。  
 
と、タマちゃんは突然俺の見ている前で手にしていたお弁当箱を落とす。  
「あっ」  
「……あ!」  
俺とタマちゃんは二人同時に手を伸ばす。そして自然と二人の顔が近づく。  
お互いの吐息が届くほどに。そして、俺の瞳にタマちゃんが映り、タマちゃんの瞳に俺が映る。  
こんなに近い位置でお互いに見つめあったのは、あの時以来だ。  
 
 
ああ、そうか。……あの少女はこんなに側にいたんだ。  
 
 
「アテッ」  
不意に、手に痛みを感じた。  
それは、タマちゃんの持ってきたお弁当にあった、フランクフルトの串だった。  
あまりにも突然に、素早く手を出したから、その串の先で偶然触れた俺の手の肉がえぐれている。  
いい角度で刺さったようで、一気に床に赤い水たまりができる。  
「あっ、大変!サヤは奥から救急箱を!  
ミヤミヤと栄花君はとりあえず先生呼んできて!  
あたしは床拭く物探してくるから!えーとタマちゃんは……ユージ君見てて!」  
キリノ先輩の指示でみんながぱっと散る。  
そして俺はタマちゃんと二人きりになった。  
 
タマちゃんは俺の手を握ると、  
その手の甲に描かれた赤い筋を、  
 
ぺろりと舐めとった。  
 
小さく  
「ごめんね」  
と呟きながら。  
 
 
まるで体中の力が抜け落ちるような感覚の中で、俺は全てを思い出した。  
 
 
『中田の傷、気持ち悪いよなー』  
『なんかさ、カノウっていうんだぜ、あの膨れたところばい菌の死骸で一杯だってよ』  
『うわ、きしょっ、バリアはろーぜ、バリアー』  
タマちゃんが俺を万引き犯から救ってくれて自分に向かって投げられた石を棒切れで弾き飛ばし、  
それが俺の目の上に偶然命中して1週間経ったころ。  
自分で言うのもなんだが小さな男の子に『怪我をしてるからじっとしなさい』と言い聞かせるのは難しく、  
まだ幼かった俺もそれは例外ではなく目の上の視界を邪魔する大型のバンソコーを剥がして遊んだりしたせいで、  
その怪我は化膿してそれこそお岩さんのように晴れ上がった。  
そしてそんな異質な存在を放って置く事など多感な時期の小学生がするわけも無く、  
俺はすぐ一時的なクラスのいじめの対象となった。  
 
俺一人なら耐えれなかっただろう。そんなクラスの雰囲気に流されない友達がいてくれたのもありがたかった。  
でも、クラスのいじめっ子グループはもう一人の子供をいじめの対象にしはじめた。  
『あの中田の傷ってよー、川添がつけたらしーぜ』  
『うわっ、まじかよ。ひでー事するなー川添』  
『やべーな、川添もバリーアな』  
そう、次の矛先はタマちゃんだった。  
 
いま少しだけ大人になってあのときを振り返ってみると、そのころの俺は本当に子供で、  
タマちゃんに、女の子に守ってもらった自分を少しかっこ悪いとか思っていた。  
だから、タマちゃんに対してモヤモヤとした複雑な感情を抱くようになってしまった。  
見栄、嫉妬、畏怖、脅威、憧憬、後悔。  
子供の俺にそんな沸き上がる感情達をうまく処理できるはずが無く、  
彼女がクラスで孤立している時も俺は少しも彼女の助けになろうとしなかった。  
 
俺はあの時タマちゃんに助けてもらったのに。  
 
そしてある日、目の上を腫らした俺は、彼女と二人っきりになった。  
タマちゃんが語りかけてくる。  
「大丈夫なの、ユ−ジ君?」  
校庭の片隅。遠くに見えるのは鉄棒、ジャングルジム、滑り台。  
「別に大丈夫だよ、心配してくれなくたって」  
違う、言いたいのはそんな言葉じゃない。  
そのときクラス内では、俺はタマちゃんのせいで被害をこうむった怪我人で、  
タマちゃんは俺に怪我を与えた加害者という図式が出来上がっていた。  
「ごめんなさい。あたしのせいでひどい目に」  
そういうと、タマちゃんはすっとした正しい姿勢で近づいてきて、背伸びして俺の額に顔を近づける。  
「……近づかないでよ」  
せっかくもう苛められなくなったのに。今クラスで無視されてるタマちゃんと一緒にいたら、  
また苛められる側になってしまう……俺はそう思った。でもそんな自分を情けないと思うもう一人の自分がいる。  
そんな二つの自分に挟まれ俺は動けなかった。俺の視界が何かに塞がれ、俺の体の力が抜ける。  
いや抜けたのは力だけではない。何かが俺の体から排出されたのだ。  
そして……しばらくして、彼女は顔を遠ざける。悲しげな瞳のまま。  
その口の端から、白いねっとりとした液体を零しながら。  
それは、俺の目の上の傷口に溜まった膿だった。  
そしてしばらくして耐え切れなくなったようにそれをごほっごほっと吐き出してからタマちゃんは呟いた。  
「…苦い味」  
 
 
今から考えれば、それはとても不衛生で、正しい処置とはいえない。  
口を使って体内の膿を取り出すなんて、あまりにも原始的だ。  
 
 
でも、子供の俺でも分かった。タマちゃんが、俺の傷を癒したいという気持ちがどれほど強いのか。  
そして膿を取り出すことで、子供社会の中でもう俺がのけものにされないようにするため、彼女はそれを吸ったのだ。  
その、純粋で気高い気持ちが俺にはタマちゃんの行動でよく分かった。  
自分が傷つけた男の子が少しでも苦しまないようにする。そんなヒーローのように気高い信念が。  
それに比べて、俺はとても卑怯者だ。タマちゃんと同じ標的になることを恐れて、  
彼女が苛められるときに、フォローも何もせずむしろ彼女に近づかれないよう、  
仲間と思われないよう逃げて見ないフリをした。  
 
俺は叫んだ。なんでか良く分かんなかったけど走った。  
そしてそのまま教室まで着くと、タマちゃんの机の中に雑巾を入れているいじめグループの姿が見えたから、  
1対5のケンカを始めた。そんでボコボコにされたけどそいつらもボコボコにして、先生に呼び出されて怒られた。  
 
でも、けんかの原因が机の中に雑巾を入れようとしてたのを防ごうとしてたってのが判明したせいと、  
今まであんまりいじめを快く思わなかったクラスメイトたちが口添えしてくれたおかげで  
それからタマちゃんへのいじめはぴたりとやんだ。  
 
 
そしていじめが止んでから俺は思ったんだ。  
川添道場をやめようって。  
 
 
 
「すいません、先生。わざわざ病院まで送ってもらって」  
「まあ顧問だしな。とりあえず学校着いたし、教室に荷物取りに行って今日はすぐ帰れ」  
俺は遠目に武道館入り口にタマちゃんの靴が入っているのを確認した。  
「実は、先生に頼みがあるんですけど……武道館の鍵貸してくれませんか」  
「はぁ?なんでだよ」  
「実は……その、タマちゃんと話したいことがあるんです。できるなら二人っきりで」  
「……いや、それはだめだろう、武道館にタマを監禁するつもりか?」  
「そうじゃないんです。ていうか内側からは鍵閉まんないでしょうあそこ。  
唯、落ち着いて二人だけで話がしたいんです。その後、鍵は返しますから」  
「でもなあ、さすがに男子生徒と女子生徒を二人っきりってのはちょっとよお……」  
俺は、渋る先生に耳打ちする。  
「近頃タマちゃんが心ここにあらずな状態なのは知ってますよね。  
このままだと、練習試合、……負けるかもしれませんよ」  
ぴくっと体が動く。そしてため息。  
「分かったよ、ほら鍵だ。話し合い終わったら、守衛室に持ってけ」  
そう言ったあと、ちょうど校舎から出てきたキリノ先輩たちが俺らを見つける。  
「あっユージくーん、手―だいじょーぶー?」  
遠くの先輩たち4人に包帯で包まれた手を振り、俺は鍵を握ると武道館へ歩き出す。  
そんな俺の背後から、先生が声をかける。  
「ユージ、タマキの不調はお前の夢に関係あるのか?」  
振り返り、黙って頷く。  
「そうか。じゃあ、タマキの事よろしく頼むぞ」  
先生が何かキリノ先輩達に説明する声を遠くに聞きながら、俺は武道館の扉を閉めた。  
 
水音が聞こえる。……よりによってシャワー中か。  
でもなあ、もしこのままシャワーが終わるのを待ってそのまま着替えさせたらタマちゃんは逃げてしまう。  
そんな気がする。だから、シャワー室の外から呼びかける。  
 
今言わなきゃダメなんだ。今ここで。  
 
「タマちゃーん、聞こえるー?」  
 
扉越し、シャワーの音、そして……彼女が抱えるトラウマ。  
邪魔するものはいくらでもある。  
 
でも、とりあえず呼びかけるのをやめないつもりだ。  
 
しかし、予想に反し彼女はすぐに答えた。  
 
シャワーの音が止まり、いきなり更衣室の扉が開く。  
そこには、バスタオルを一枚巻いただけのタマちゃんがいた。  
「え、ちょっと?」  
驚く俺に近づき、手に巻かれた包帯を取って心配そうに見つめる。  
あの、硝子玉のような瞳で。  
「傷,深いの?」  
「え、いや、そんな事は無いよ、うん、ほら全然大丈夫」  
俺は動揺を隠すのに必死だ。ぶらぶら手を振って健全振りをアピールする。  
「そう、よかった……」  
やはり、タマちゃんは恐れている。それは、たぶん子供のときのあの体験のせいで。  
「「ごごめめんんね、、タユマーちジゃ君ん!」」  
いきなり、俺は謝る。タマちゃんと同じタイミングで。  
 
お互いに顔を見合わせ、困惑する。  
「「何どでうタしマてちユゃーんジが君謝が?」るの?」  
また、ほぼ同時。  
一泊呼吸をおいて、俺は人差し指を立ててタマちゃんに言葉を発さないよう  
ジェスチャーで指示しながら尋ねる。  
「どうして、タマちゃんが謝るの?俺はその……謝られる覚えないよ?  
今日のことだって事故だし、その……小学生の時のあのことだって、  
俺は全然怒ってなくて。むしろタマちゃんを傷つけたぐらいだし」  
 
「嘘だよ……だって、ユージ君は怒ってたから、あたしと同じ道場通うの、いやになったんでしょ?  
あたしが跳ね返した石で怪我させたから……」  
「それは違うよ。道場をやめたのは、タマちゃんより……強くなりたかったからさ。  
そう自分自身に誓ったんだ。自分自身と約束したんだ。  
いつかタマちゃんより強くなり、タマちゃんを守れるようになるって。  
だけど、同じ場所で同じように稽古をしてたら、タマちゃんより強くなれないんじゃないかって。  
そう思って、川添道場をやめたんだ。……馬鹿だよね、同じ道場にいても強くなれたかもしれないのに。  
でも、あの時は、タマちゃんの近くにいる資格が無い……うまく言いえないけど、そう思ってやめたんだ」  
そう、あのころの卑怯で弱い俺にとってタマちゃんは眩し過ぎたのだ。  
一から自分を鍛えなおしてから会いたかった。  
たとえ学校や街中で出会うことがあっても、  
剣道着を着たときは卑怯や軟弱ではない生まれ変わった自分で会いたかった。  
だから、タマちゃんと同じ場所で練習することを拒んだ。……子供なりの意地だったんだ。  
「そうだったん……だ……」  
「うん。でも、まさかその事で、タマちゃんを俺が嫌ってるなんて  
誤解させてるなんて思わなかった。その、なんていうか、……ごめん」  
「別に、ユージ君は謝る必要ないよ。  
それに最初にユージ君が別のことであたしに謝ってたけど、そっちの方もあたしにはぜんぜん検討つかない」  
きょとんとした顔で、タマちゃんは尋ねる。  
「忘れていたんだよ。あの怪我の後、ここが膿んだことも、それをタマちゃんが吸いだしてくれたことも。  
それは俺の心の弱くて卑怯な部分につながる記憶だから、俺は忘れたんだ」  
 
「いいよ、そんなこと。あたしもユージ君のどこに怪我を負わせたかなんて細かいこと忘れてたから」  
俺はゆっくりと首を振る。  
「それはないよ。ちゃんと憶えてたんだ。だから俺と勝負したあの日にタマちゃんは負けた」  
だからあの日。タマちゃんの俺の面への一撃は、まるで別人のように遅く、鈍くなった。  
俺の面への攻撃は、あの傷を思いださせるから。  
「でももういいんだ。なぜなら、すっかり怪我は治ってるんだから」  
そう言うと俺は前髪をあげ、ポケットに忍ばせていたお昼の残りのゆで卵を額の古傷へぶつける。  
ゆで卵の殻はぱっかり割れた。  
「ね?だからもう、タマちゃんが罪悪感を感じる必要は無いんだ」  
そうタマちゃんに笑いかける。  
 
しかし、俺はぎょっとする。タマちゃんの体がいきなり力をなくし崩れ落ちたから。  
「どうしたのタマちゃん!」  
驚く俺にタマちゃんはちょっと恥ずかしそうに笑って答える。  
「うん、分かってた。ユージ君の傷が治ってたことも。分かってた。  
……でもあたしは臆病になってた。ユージ君に竹刀を向けたあの瞬間に。  
もしあのまま勝負したらユージ君が道場からいなくなった時みたいに、  
またあたしの前からいなくなる想像ばかり沸いて。  
そんなこと無いって頭では分かってるのに全然打ち込めなくなった」  
わずかに、バスタオルがはだける。でももう俺は、目のやり場に困らない。  
なぜなら、もうタマちゃんははだけたバスタオルを元に戻そうとしないから。  
 
「ごめん、あたし変だね。……なんか、ユージ君に嫌われてないって分かったら、  
なんか……体が震えてきちゃった」  
でも、それは全然不思議なことでもおかしなことでもない。  
タマちゃんが、俺の面に打ち込めなかったことも、  
誤解が解けて、タマちゃんの体が震えることも。  
俺も同じように、自分の脳が自分の意思を離れ記憶を捻じ曲げ、あの事実を忘れていたのだから。  
 
 
ただ一人の人間に嫌われることを恐れて、本能は記憶の改ざんも、運動の制御も行う。  
化膿のことを忘れていた俺の症状も、面に打ち込めなかったタマちゃんの症状もきっと根っこは一緒なんだ。  
 
 
それはきっと、その人物に否定されるのを恐れるから。  
その人のことが、何よりも大事だから。  
 
だから俺達は今ここで、あることを確認した。  
お互いがお互いを誰よりも必要にしているということを。  
 
 
どちらからとも無くお互いに唇を重ねあう。  
俺は舌を差し入れる。彼女はおずおずと舌を差し出し答える。  
その仕草が、いつものどこか控えめな彼女の性格を現しているようで、俺の中の情欲を煽る。  
二人の舌はやがてひとつの空間になった両者の口の中で、ヌラヌラともつれ合う。  
 
そして俺は、そのまま彼女の体を床に敷いたバスタオルの上に押し倒しながらその胸の控えめな膨らみを揉みしだく。  
彼女は痛いのか気持ちいいのか分からない、ああぁっという声を上げる。  
 
いつもの彼女なら上げない音階の声に、俺の鼓膜から全身に熱い血流が流れ始める。  
その血流が、俺の中のもっとも濃い体液の分泌を促す。  
だが、まだ早い。  
こんな時、頭の中にはあのビデオの映像が浮かぶ。  
俺は、片腕をタマちゃんの下半身へと忍ばせる。そこは毛が一本も生えてなくて、  
探索はあまりに容易だった。  
 
そして俺は、タマちゃんのもっとも敏感な器官を一発で探し出し撫で上げる。  
「ひやああぁぁぁぁあっ」  
音階がさらに上がる。  
 
中学の先輩に、礼を言うべきかな。  
 
俺はそんなくだらないことを一瞬考えてしまったけど、  
目を潤ませた頬を赤く染めたタマちゃんの顔を見てそんなくだらない考えは吹っ飛び、  
とたんにどうやって彼女の肢体を味わいつくせるかだけを考えるようになる。  
 
ダメだ,焦るな、焦るな!  
心と体の連携が取れない。  
ろくに濡れていない指で肉の芽をつまみあげる。  
「ぁっっ………っっ」  
音階が、人間の可聴域を超え、タマちゃんの視界から焦点が消える。  
 
その小さな体のどこからそんな声が出るのか不思議なぐらい高く大きな声で喘ぐ。  
「あぁぁぁぁっひあぁぁぁぁっっっ」  
彼女の体はびくびくと痙攣して絶頂を迎える。  
しかし、俺の体はさらに暴走する。  
目の前のかけがいの無い少女を壊すために動き出す。  
 
だめだ、もっと舌や指で愛撫しろ!  
しかし肉体は、そんな心を裏切りあまりにもあっさりと彼女の純潔を奪う。  
たけり狂った肉棒が、小さな少女の膣へと無理矢理侵入する。  
「いいぃぃぃっ」  
 
とたんに押し殺した悲鳴のような声が漏れる。  
しかしそんな小さな今にも折れそうな体で痛みに耐える姿さえ、  
まるで救いを求めるように見上げる瞳さえ今の俺には新たな欲望のエネルギーとなる。  
その儚げな体は、まるで小学生の子を犯しているような錯覚を与える。  
確かに俺は、ロリコンかも……。  
 
もっと、もっと。俺の律動で何かを与えたい。たとえ与えるものが苦痛だとしても。  
 
その中はあまりに狭く、まるで俺を押しつぶすかのように締め上げてきて、  
気を抜けばすぐにでも発射するだろう。  
 
 
「ユージ君っ……」  
「ごめん、タマちゃんっ…。でも止まらない、止まれないんだ」  
 
「ちがう、あたし……」  
腰を打ち付けられるタマキは、喘ぎながらろくに喋れぬまま何かを訴えるように自らの左手を見る。  
そこには、血痕がついていた。しかしそれは、破瓜の血ではなかった。  
 
俺の腕の傷をタマキの左手が苦痛のあまり偶然えぐったのだ。  
包帯は取れ、そこからはまた新しい鮮血が流れ出していた。  
しかし、腰の動きを止めず俺は、なるべく優しげな口調でタマキに語りかける。  
「いいんだ、俺はっ、初めてだから優しくしてやれない。  
でも、タマキの、肉を裂かれる痛みを少しでも共有できるならっ!」  
 
それを聞いて、苦痛に歪む彼女の顔が少し和らいだ気がした。  
「……嬉しいっ」  
「出すよ、出すぞ!」  
吼えるとともに俺の下半身が爆ぜ、熱い濁流が少女の中に撃ち込まれた。  
陰茎を通過する熱い流れと目の前で叫ぶタマキの姿で、  
俺は下半身がタマキと溶けあうような甘美な快楽を味わった。  
 
 
行為が終わった後、自分の左手を見た。  
鮮血が流れ、傷が広がっている。  
 
これは、化膿するかな。  
すると横から、  
「化膿したら、また吸い取ってあげるから……」  
と言いながらタマちゃんが俺の血を舐め取った。  
 
 
 
 
 
 
おまけ  
 
 
「まあ、武道館には掃除道具もあるし、洗濯機もあるし。  
大丈夫だとは思うけどな」  
「先生、なんの話っすか?」  
「うん、ああ、いや、独り言。ていうかあれだ、何でお前ついてくるわけ?」  
キリノはワラって答える。  
「いやー、なんかタマちゃん近頃調子悪いから、先生んちでタマちゃん元気付け作戦の作戦会議やろーかなーと」  
「うーん、そうだなー、さっき焼却炉で拾ったこれなんかどうだ」  
「えーただのビデオじゃないですか。それなにが映ってるんですか?」  
「エーとな、ラベル剥がれてよく分からんけど、なんかブレードブレイバーって書かれてるっぽい」  
「めちゃくちゃ怪しいんですけど……それってアダルトっぽくないですか。  
ははーん、さてはあたしと二人っきりになるのをいいことに、変なのもの見せて……」  
「いやいや、何でだよ。これはれっきとした特撮物だろ、確か」  
「ああ、あのタマちゃんがファンの」  
「そうさ、こいつを見てブレードブレイバーマニアになれば、タマとの共通の話題もできるだろう」  
「なるほどーそれはいい作戦ですねー、ほんとにブレードブレイバーなら」  
「しつこいなあ、お前自意識過剰だな。  
もし変なビデオだったら好きなだけ俺を突いていいぞ」  
 
 
 
 
次の日、コジローが全身打撲で学校を休んだのはいうまでも無い。  
 
 
終わり  
 

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