ここのカラオケは3階建てで、建物のど真ん中に1階から3階までの吹き抜けがある。
2階の吹き抜けから1階を見下ろしていると、入り口の自動扉が開き、
高校の制服を着た少女が肩で息をしながら入ってくる。
しばらく、彼女は中腰で呼吸を整えると、携帯を取り出して電話をかけた。
と、俺の携帯の着メロが鳴る。しかし、そこかしこで音の鳴っている場所だから、
2階にいる俺の携帯の着メロに彼女は気づかない。
1,2,3。心の中でカウントしながら俺は階下の彼女を観察する。
こういう間が、人とのコミュニケーションでは重要な意味を持つことがある。
8,9,10と数え続けていると、携帯を耳に当てる彼女の顔がわずかに不安で曇る。
その変化を見届けて、カウント12で俺はようやくボタンを押す。
とたんに、彼女の顔は笑顔に変わる。
「明美、来たのか?」
「来たわよ……あんなメールだけじゃ許すわけないんだから」
携帯から聞こえる声は、とても不機嫌で苛ついている。
しかしはるか下に見える彼女の表情は、
まるで欲しがってた玩具を買ってもらった子供のように輝いている。
ホント女って生き物は生まれながらにして女優だな……
思わず心の中で舌を巻くが、こちらも声の調子を変えず答える。
「とりあえず、37番の部屋いるから急いで来いよ。
2人分で受付も済ませてるから、早くな。」
とだけ呟くと、突然携帯を切る。そして、
彼女が見上げても視界に入らないよう少し後退し回れ右して
そのまま37番の部屋へとゆっくりと歩いていく。急ぐ必要はない。
どうせ彼女は全力疾走で乱れた髪を化粧室で直すのに時間がかかるんだから。
結局彼女が部屋に来たのは俺が部屋に戻ってサンボマスターの歌を
2番まで歌い終わり間奏に入った後だった。
「遅かったな」
髪を整えた彼女は不満そうに答えた。
「ちょっと迷っただけ」
ふーんとさして関心なさそうに呟いて、そのまま歌を続ける。
が、突然彼女はリモコンを握って曲を止める。
「何だよ。まだサビあったのに」
俺が不満そうに呟くと、むーと短くうなって横に座った彼女が詰め寄る。
「さっきも言ったでしょ。あんなメールの一言で許すわけないんだから。
ちゃんと、あたしの前で謝ってよ」
彼女にしてはものすごく怒っているフリをしているのだろうが、
吹き抜けで彼女のほころぶ笑顔を見ている俺は、
彼女がもうすっかり自分のことを許しているのは判っている。
しかしまあ、ここは敢えて彼女の演技に乗っておこう。
「悪かった……だから、今日はここのカラオケでもう飯から何から全部おごるよ。
割引券山ほど持ってるから、何曲だって付き合ってやるし」
「本当?」
「ああ。だからその……許してくんねーかな、明美」
そう呟くと、少し頭を下げて上目遣いで呟く。
「うーんそっかー…じゃあ、まあ許してあげようかな……」
目をそらしながら、彼女……浅川明美は呟いた。
「許してくれるよな、な?じゃあ、仲直りの印だ」
そう言うや否や俺は明美の顎に手を伸ばし、顔の向きを自分の正面へ向けさせる。
と同時に一気に顔を近づけ、そのまま口付けをする。
唇同士が触れ合ったとたん、急な行為に驚いて明美は目を大きく見開く。
しかしその後口の中へ舌を差し入れそのまま歯茎や舌を舐めてやると、
わずかに目を細め負けじと俺の舌に自らの舌を絡め縺れさせることで必死に答える。
彼女もこういうことをするのは1度目ではない。
まだ慣れているとはいえないが、やり方は知っている。まあ、俺が教え込んだのだが。
両腕をお互いの後頭部に回し、少しでも唇が離れないようにして
貪りあうように舌を絡ませあう。ゆっくりと口を離すと、
透明な液が二人の間で橋を作る。
「……また、煙草吸ってた?」
「ああ。わりい、臭かったか?」
「うん、匂う。……でも、嫌いじゃない匂いかも……」
そう言うと、今度は明美のほうから顔を近づけてくる。
唇を噛み合うようにもう一度キスをする。
唾液を交換し合う中、俺は後頭部へ回していた手を少しづつ下降させる。
うなじ、首筋、背中、そして腰まで手を進めた時、
明美は唇を塞がれたまま目を見開いて
「うーんっ」
と必死に唸る。
ゆっくりと唇を離すと、
「ちょ……その先はダメだって……」
と抵抗する明美。しかし俺は下降する手を止めない。
「何でダメなんだ、この先は?」
「監視……カメラ……」
小さな声で天井を見上げながら呟く明美。
彼女の視線の先には、二人を写すレンズがあった。
それ以外にも部屋のあちこちに、計4台のカメラがあった。
しかし俺は明美の肌を揉みしだく手をとめず教えてやる。
「死角に行きゃ大丈夫」
「死角?」
「ここでバイトしてたことあるから知ってるけど、
どうしてもカメラに写らない空間があるんだよ」
そういうと、明美の腕を引っ張り、部屋の西側の壁際まで引っ張って行く。
「はい、ここで壁に手つけてお尻突き出す」
「え、……こんな所で?」
明美を壁向きに立たせ、後ろから両肩をがしっと掴み逃げられないようにする。
「こんな所だから気づかれないんだよ。ほら、早く尻こっちに向けろ」
「でも、ほら……体臭いし……」
「失礼だな。ちゃんと家出るとき洗ってきたぞ」
「や、そうじゃなくて……私、練習試合のあとそのまま来たし……」
顔を赤らめて伏目がちでそうつぶやく明美。
そこで俺は背中から明美の制服に鼻を押し当てくんくんとその匂いをかぎ始める。
とたんに体臭を嗅がれる恥ずかしさに身悶えしながら明美は悲鳴を上げる。
「やだっ、何してるの?」
鼻腔に広がる汗のしょっぱい匂いを堪能しながら、俺は当然のように答える。
「確かに臭いな……でも嫌いじゃない匂いかも、な」
俺の言葉に、明美の顔がさらに紅潮し、耳たぶまで朱に染まる。
髪の毛の匂いを嗅ぎながら、その耳たぶを俺はゆっくりと舐めあげた。
「ひぃやあぁ」
力の抜けた大きな声が漏れたので、俺は明美の小さな口を右手でふさぎ、
左手の人差し指を立てる。
そのまま、俺も明美も動きが止まる。
音の消えた部屋で、明美の荒い呼吸の音と隣室の客達が歌うオレンジレンジの曲が響く。
「な、幽かに聞こえるだろ、隣の奴らの声が。てことは、
あんまりお前が大きな声を出すと……聞こえてしまうかもな、隣に。
そうしたらまあ、覗きに来るかもなあ。まあ、一応扉の外からも死角だけどさ、
部屋間違えたふりして入って来たりとかする奴だっているかもな」
そう脅すと、口を押さえていた手を離す。
そしてまた明美の首筋を舐めあげても彼女は声を発さなくなった。
「いい子だ」
そう呟いて頭を撫でてやってから、俺は口と鼻を明美の背骨に沿って這わせながら
彼女のスカートの中へ両手を入れ、震える臀部にまとっているショーツを膝までずり下げる。
びくびくと体を振るわせる明美の肌の感触と匂いを制服越しに顔で堪能しながら、
彼女の肉穴の周りに指を這わせて優しく揉み解してやると
ふううぅという押し殺した声が漏れる。
しかし、明美は不安定な体勢で後ろに腰を突き出して
そのバランスを壁に着けた両手で保っているので、
口を手で塞ぐ事も出来ず声を出さないようにするのも一苦労なようだ。
そんな明美の口に後ろから左手を差し出す。
「舐めろ」
自分の臀部のすぐ上で発せられる俺の命令に従い、
明美は左後方を向きながら一心不乱に俺の指をしゃぶり始める。
声を出さぬよう何もせず耐えるより、
口を使って何かに集中していたほうが声を出さなくてすむのだろう。
爪の先から指の股まで丹念に舐め上げる明美。
指が十分唾液で濡れたのを確認してから今度は逆の指を差し出す。
すると、今度は右後方へ身をよじり俺の指を明美が舐め始める。
そしてついに、俺の顔が明美のスカートの上まで移動する。
薄い布地越しに発酵した乳製品のような匂いが漂ってくる。
「ここはまた、格別にいい臭さだな……」
あまりの恥ずかしさに、明美はぎゅっと目をつぶる。
「明美のここも、俺の指も準備は万端だな。じゃ、行くぞ」
そう呟くと、俺は人差し指をそのまま彼女の肉の洞窟へ侵入させる。
ふぅぅ、とまた切なそうな声が漏れる。
しかし、どれだけ明美が泣きわめこうが、俺は指の動きを緩める気はない。
そのまま指のスピードを速め、中指も加える。
そして膣口から垂れる愛液をくんくんと嗅ぎ、ぺろぺろと舐める。
それだけで、まるで狂ったかのように明美は腰をうごめかす。
しかし不安定な体勢のため、俺の攻めから逃れることは出来ない。
ついに膝のショーツのところまで愛液が垂れたのを確認し、
「もうそろそろかな」
と呟き、俺はジーパンのファスナーを下ろし猛り狂う俺自信を取り出す。
とその時、明美が掠れ声をあげる。
「だめえぇ……」
「おい、ここまで来てダメとか冗談はよせ」
「入れられたら……声……我慢できない……」
「……しょうがねえなあ」
俺はそう呟くと、明美のスカートの前半分をたくし上げる。
「ほら、これを噛め」
明美は言われたとおりおずおずと前屈するような体勢でその布地を口で噛む。
「こいつを噛み続けてれば、声を出すことはない。じゃ、入れるな」
後ろのスカートもたくし上げ、肉棒を明美の中へゆっくりとうずめてゆく。
それが深く沈んでゆくたびに、スカートで塞がっている明美の口から
柔らかい布地越しに吐息が漏れてゆく。
そしてついに俺は、陰茎を彼女の最奥まで沈めた。
もうそれだけで明美の腰はがくがくと震え立つ事もままならない様子だった。
上半身はきちんと衣服を身に着けているのに、
下半身のスカートは前も後もたくし上げられ丸出しの明美の姿は、
俺の中の射精感を早めるには十分すぎるほど卑猥で、
さらにその彼女の中はまるで蒸しタオルを何枚も重ねたように熱く湿り、
俺自身のものにひだ1枚1枚が生き物のように絡みつく。
あまり長時間耐えられない事を悟った俺は唇をかみ締めながら
挿入した後すぐさま腰を前後させ始める。
その前後して出入りする肉棒が前屈みで自らのスカートを噛む明美には丸見えで、
それが彼女の情欲を刺激するらしく肉壁が収縮し俺の肉棒の傘の部分をこれでもかと擦りあげる。
背骨や肉が溶け股間のさらに下へ流れ込んで噴き出てきそうになる感覚に俺は必死に耐える。
両手で押さえる明美の腰の角度を変えGスポットを貫くようにし、さらに突きの速度を上げる。
すると、Gスポットを貫かれためスカートを噛んでいた明美の口が開き、
「あっあぁぁぁああぁっ」
という泣きじゃくる赤ん坊のような嬌声が部屋中に響き始める。
壁についていた両手は少しづつずれ落ちてついには床に着き、
膝は力なく折れ跪きまるで動物のように四つん這いの体勢になる。
「イくぞ、明美っ、イクゾッ」
「出してっ、全部ッ、出してええぇぇっ」
二人の叫び声が重なった瞬間、俺の腰は痙攣して一瞬止まる。
そしてその後、内側で何かが通過してゆく感覚と
肉壁に限界まで搾り出される感覚が同時に俺の肉棒を襲う。
あまりの快感に一瞬俺の頭の中が真っ白になる。
弓なりの体勢で絶叫をあげた明美はそのまま床にうつ伏せで倒れ、動かなくなった。
二人の荒い呼吸と隣の部屋から幽かに聞こえる歌だけが部屋の中で聞こえる中、
突然扉の開く音がした。
「ウーロン茶とコーラお持ちしました…って蓮間?!!!!?
……ア、ごめんこれ36番だったマジ勘弁。
じゃあ、その、ごゆっくり」
そういってすぐに扉を閉めた元同僚の声を聞いて、
俺、蓮間亜季彦の頭はさらに真っ白になった。
(アーア、跡がきえてねー)
あれから数時間が経過し、家に帰って風呂に入って、俺は自室の鏡の前にいた。
鏡の中の無様な男の頬には、くっきりと赤い手形がついていた。
(ありゃ、本気で怒ってたかな……)
全く、せっかくのめでたい日だってのに、何でこうなるかね。
そう愚痴りながら、ベッドに腰掛けようとすると、携帯の着信音がする。
メールが一通届いていた。明美からだ。そこには、
『お誕生日おめでとう。でも亜季君のこと許さない。バカバカバカバカ』
とだけ書かれていた。
(こりゃ今度の喧嘩は長引きそうだな…)
そう心の中で呟いて、苦笑いを浮かべながら俺は部屋の電気を消した。
終わり