セイは完全にダウンしているが、ジョウとしてはまだまだこれからのつもりだった。この泥棒猫が二度と馬鹿な考えを起こさないように、徹底的に仕込んでやらねばならない。  
無論、その後でメグにもお仕置きが必要だろう。もっとも、メグは無理矢理セイに抱かれたのだろうから、その点は割り引いて考えるつもりだった。しばらくメグを『アメとムチ』で可愛がってやったら、あとはセイを二人に奉仕させるペットにしてやる───  
そんなところか、と大体の思案を決めると、セイの上にゆるりと覆い被さる。そして、自分の五倍はありそうな双乳を揉み始めた。  
 
「まったく、何をどうすりゃこんなにでかくなるんだか?」  
 
ジョウははっきり言って貧乳だが、それは彼女にとっては都合のいいことだった。こんな大きさのものを持っていたら、戦いの祭に邪魔でしょうがないだろう。  
となれば、セイやメグの不合理にでかい乳は、ジョウの楽しみのためなのだろう。とにかく、揉みがいのある大きさなのだ。世の中は意外とうまく出来ている、と、彼女は妙に納得した。  
 
「う……あぁ……あふぅ……」  
「なんだ、結局また感じてるのか? どうしようもない牝豚だな、お前」  
 
セイはまだ眼を閉じ、意識は明瞭でないようだが、快楽を司る神経だけは24時間営業であるらしい。その商魂のたくましさに応え、ジョウは手に気合をこめた。力をこめるごとに柔肉がうねうねと躍動し、爪先で横から弾いてやると左右にふるふると震える。  
まるで別の生き物のようだ。大口を開けてむしゃぶりつき、舌で固くしこった乳首をころころと転がしながら、前歯で乳肉をソーっとこするように刺激してやる。  
 
「んふ……ん、あ、あぅふ……ん」  
 
上体をよじるようにして感じているセイの様子を見て、ジョウは自分の観測が間違いでなかったと感じた。このまま、セイを自分に抱かれる悦楽だけで生きていくような女に仕上げてやる。そう思った時───  
 
「うっ?」  
 
チクリとした痛みの後、奇妙な感覚が襲ってきた。臓腑がカッと熱くなったと思ったら、急に冷え込むような異常な体温の変動。さらに何か膨大な重量の物質が、奔流のように湧き出してくる異物感。  
ジョウは反射的に、かすかな痛みを感じた左腿を手で押さえようとした。が、身体の自由が一秒刻みごとに利かなくなってきている。  
 
「オマエ、いま……なに、を、した?」  
 
舌までが回らなくなったきた。それまで自分の下で甘やかな声を上げていたセイはその質問に答えずさっと立ち上がる。そしてベッド脇に設置されたインターホンを押し、何か二言三言話した。  
痙攣する身体を両腕で抱きながらその様子を凝視するジョウの後ろでドアが開く音。必死の努力で首をねじ曲げると、そこに立っていたのはメグだった。この状況で、なぜセイがメグを呼ぶのかとっさに理解できなかったが、その謎が解けるのに時間はかからなかった。  
メグは横たわるジョウに覆い被さると、その首筋から乳房を念入りに舌で愛撫し始めたのだ。  
 
「メ、グ……どういう、つもり……」  
「ごめんなさいね、ジョウ。でも、こうするのが一番いいの」  
「な、ぜ……」  
「ジョウはあたしを可愛がってくれるけど、あたしだってジョウを気持ちよくさせてあげたいの。でも、ジョウっていつもあたしをいじめるだけだから……これでジョウも、いつものあたしみたいにエッチな子になってくれるよね?」  
 
欲情に濡れた狂気を宿した瞳。その尋常ならざる輝きは、一つの可能性を示唆していた。  
 
「セイ……まさ、か、きさ……!」  
「ジョウ、あなたは自分の力に自信がありすぎるのよ。だから、こういう罠を見抜けないのね」  
 
そういうことか、と感づいた時は遅かった。あの“ブラスター”が、なぜ新興の合成麻薬としては短期間にああも流通したのか。それは、この強力な催淫作用にあったのだ。その効果がかくも劇的であったればこそ、麻薬常用者ではない一般人にまで広く受け入れられたのだろう。  
その淫魔の薬が、メグをセイの意のままに動く忠実な下僕に仕立て、今またジョウをその無慈悲な顎で食いちぎろうとしている。  
 
「この薬は中毒者の粘膜から再分泌されるわ。だから中毒者とキスをしたりすると、健常者の相手にも少しづつ浸透してゆくのよ。あなたは何度もメグとセックスしていたから、今では立派な中毒患者。  
そして、さっきのがトドメというわけ。念を入れて、常人ならショック死しかねないほどの量を打ったんだけど、あなたにはちょうど適量だったみたいね」  
「グ……ク……アゥ」  
「大丈夫よ。その症状は一時的なものだから。身体全体が凍りついたみたいな感じになるでしょう?でも、寒さが消えた後は、たまらないエクスタシーが襲ってくるのよ」  
「や……め」  
 
秩序だった思考ができなくなったジョウの眼前には、自分を組み敷いたメグの、邪気のない笑顔があった。その時、ジョウは初めてこの頼りないパートナーに恐怖を感じた。  
 
「私を肉体的快楽だけで支配しようだなんて、甘いわよジョウ。でもさっきのプレイ、けっこうよかったわ。ちょっと乱暴だったけど」  
「…………」  
 
もはや口も利けないジョウを、メグは嬉しそうに嬲りだした。自分よりよほど小さい乳房を指先で弾き、くりくりとつまみ、甘噛みする。それに飽きると、ジョウの鍛え抜かれた両腿の間にある、唯一鍛えられない部分を弄る。  
ジョウの反応あるなしを無視して、無邪気な欲望のままにその身体をいたぶるその有り様は、子供が捕まえた昆虫を意味もなく虐待する姿に似ていた。  
 
「あははは、ジョウのここ、エッチな汁がいっぱい出てるよ〜ねえねえセイ、見てこれ。ジョウったらいやらしいんだぁ」  
「ふふっ、そうね。あなたにされて感じてるのよこの娘。もっと気持ちよくさせてあげなさい」  
「うん、もちろん。さあてジョウ、覚悟はいいかな〜?」  
 
ジョウを抱きしめたメグは、飢えに苦しんでいた者が与えられた食事を食器から少しも余さず舐め取るかのように、くどいほどにその口を舌で犯す。  
舌と唾液が忙しくししたり合う音が淫靡な響きを帯びてもつれ、とても15,6歳同士のものとは思えない。セイは、その光景に小さく背筋を震わせた。  
 
(この分だと、経験豊富な成人同士なら、セックス以外何も考えられない狂人同然になるでしょうね)  
 
恐るべき薬だ。やはり、こればかりはいかなる手段を用いても撲滅させねばならない。そう、いかなる手段を用いても……  
 
「う、う……く……」  
「あれ、そろそろ治ったジョウ?」  
 
ジョウの肌に赤みが差し、凍りついた表情に色彩が戻ってきた。四肢が、ゆっくりと動かせるようになってくる。しかし、頭に霞がかかったように働かない。その奥から次々と湧き出してくるのは、ただ一つの衝動───  
 
「あ、ああ……」  
 
───肉欲。  
 
ただ、それだけだった。二人に蹂躙される恐怖感が、なぜかそれと矛盾する、暗く湿った喜びに圧殺されてゆく。そうだ、もう自分はこの二人の玩具にされつつあるのだ。抗いようのない力に、あえて抗う意味がどこにあるのだろう。  
強い者が生き、弱い者は死ぬ。その原則を、自分は十分すぎるほど知っているはずではないか……  
 
「セイ、ちょっと手伝ってね」  
「ええ、いいわよ」  
 
メグはジョウを抱き起こすと、その右脚を持ち上げた。一方セイは左脚を抱え、壁際の大型スタンドミラーに向ける。メグがジョウの右乳を、セイが左乳を舌で転がしている間、ジョウだけがその光景を見ていた。  
 
「ひゃあっ、ん、あぅんっ!……」  
 
時折メグとセイが、彼女の股間を指で弄りながら楽しそうに言葉を交わしている。その感覚によって身体をよじらせながら悶える自分の、なんと浅ましい姿か。これが、ついさっきまで二人を自分の慰み物にしようと思案していた者の姿であろうか。  
 
「うふふ、悔しいジョウ? でも、今までジョウがさんざんあたしにしてきたことなんだからね。あきらめてもっとエッチなジョウを見せてね」  
「ああんっ!……め、メグ……ああぅ……!」  
「あら、もうこの娘は悔しがってなんかいないわよ。それどころか、嬉しくてたまらないみたい」  
「ああもう、ジョウったら……ああ、なんだかあたしも変な気分になってきちゃったじゃない」  
 
メグは目線でセイとコンタクトすると、ジョウの脇から離れる。そして鍛えられて皮膚の弾みきったジョウの脛を幾度か舌で舐めるように愛撫し、自分とジョウの割れ目をピタリと接合させ、リズミカルに腰を使い出した。  
 
「いゃァ、ひゃんぅっ!! らめぇっ!!」  
「あっ! んあぁっ!! いいっ、ジョウ、そこがいいんんっっ!!」  
 
ベッドのスプリングが耳ざわりな軋みをあげ、ふたつの桃尻がバウンドするほどに腰を揺らす二人の嬌態を、セイはさすがに持て余した。  
ジョウを捕まえておくのが精一杯である。必死に腕に力をこめ、ようやくその律動が静まった頃には、ジョウの身体は病人のように火照っている。  
 
「あ、あぅふ……ぅ」  
「ジョウ……」  
 
普段のクールな無表情さからは想像もつかないような、嬌態の残り香をその顔に浮かべるジョウ。ふと、自分の選択は正しかったのか不安になる。少なくとも、彼女たちは何とかして助けるべきだったのではないか。  
あるいは、肉欲の奴隷と化す前に楽にしてやるべきだったかもしれない……が、セイにそれ以上考える暇は与えられなかった。快感の頂点から帰還してきたメグは、まだ脱力しているジョウを抱き起こすと、容赦なく言った。  
 
「ねえセイ、アレ貸してよ」  
「……あれを?」  
「うん、やっぱりジョウをもっともっといじめてあげるには、アレがないとね〜」  
 
愉快でたまらない、といった風に笑うメグを、深い諦めと共に見つめながらセイは『あれ』をキーカード付きの引き出しから取り出した。その間メグは、ベッドに這いつくばったジョウの尻を高く上げさせ、その中心に指を差し挿れている。  
 
「ううっ、あぁ……もうゆるしてぇ、メグ……んぁっ」  
「あら、あんなこと言ってるけど、どうする?」  
「うーん、そうね。許してあげてもいいかも。でも、その前に、っと」  
 
指の濡れを舌で舐めとったメグは、セイからそれを受け取り、装着した。  
 
「許して欲しかったら、これに聞いてね、ジョウ♪」  
「んぐっ、んちゅっ、あぷっ……」  
 
ジョウは目の前に突き出されたそれを、気が狂いそうな快感の中で頬張った。そして、いつもメグに命じていたのと同じ行為を反射的に行なう。  
 
「うっ、んんっ……あっ、す、すごいよジョウっ……! あたしのそこ、か、感じちゃうっ……」  
「あなたには、まだちょっと早いと思ったんだけど……」  
「あ、ちょ、ちょっと……んんっ!!」  
「んぐ、むぐっ……!」  
 
メグは、股間の感覚の急速な高まりと共に意識が飛んだと思った。そしてジョウの口内に自分の愛液が放射され、腰を退いた瞬間に残りが顔に飛び散ったことを理解した。膝をついてぜえぜえと息をつく彼女に、セイは甘い声でささやく。  
 
「どう? 新型の味は」  
「はあっ……はあっ……す、すごいよ、これ……攻めてるあたしの方も、ものすごく感じちゃうもの」  
 
それは一見すると普通のバンド固定タイプの双頭式ディルドーだったが、中身が違っていた。  
神経医学とバイオ工学が駆使された製品で、分かりやすく言うと双方のディルドーが腰使いや膣内の動きに合わせて最適な変形・変動を行い、受け攻め両方が最大の快楽を楽しめるように設計された、性生活用のハイテクマシンなのである。  
 
「うふふ、まだ試作品ですもの。それでメグ、もうギブアップかしら? なら私が替わってあげるけど」  
 
色めいた声音で、さりげなく挑発する。効果はたちまち現れた。  
 
「いーえっ! ジョウを可愛がるのはあたしの仕事なの!」  
 
自分とメグの体液の海の中で、ぐちょぐちょになって放心しているジョウを起こすメグ。  
 
「さあジョウ、もっとしてあげるから、これであたしのモノになってね……んしょっと」  
「ひゃっ……」  
 
さんざん攻めたてたジョウのそこに、容赦なくハイテクマシンを突き立てたメグは、後背位の体勢から一気に押し入れた。  
 
「ひいぃっ! あぐぅぅっ!! もうあたし、んぐぅぅ!! こわれるうぅぅっっ!」  
「ううんっ! あっ、いいわジョウ! こわれても……あうっ! ジョウの、ぜんぶ、あたしにちょうだいっ! あはぅっ!」  
 
後ろに妙な感触を覚えたメグは、セイが自分のアナルに悪戯をしているのを知った。そのしなやかな指が、菊門のヒダをゆるやかにまさぐっている。  
しかしそれをやめさせるどころではなく、むしろ増大した悦楽の雪崩に巻き込まれた彼女は、気が違ったように腰を振り続けるしかなかった。  
 
「ああ、あたしのがジョウの中に入ってる……! 今ジョウは、あたしに犯されてるの……っんふっ! わかるジョウっ!? ああんっ!」「あたしもうダメ……イク、イクぅっ!あっあっ、メグあたし、イクぅぅぅぅっっっ!!」  
「あふっ、あっダメ! んっんっんっ、あっうぅっ、きゃああああっっっ!!」  
 
限りない肉欲の果てに、繋がったまま昇天してしまった二人。全ては、計画通り。セイの冷厳な眼差しは、もはや揺るぐことはない。  
 
(あとは、最後の仕上げね)  
 
再び自分の体液をジョウの中に注ぎいれた満足感から、失神同然のメグを引き離すと、その腰に装着された器具を剥ぎ取り、己の腰に再装着した。これで、この空間の支配権は彼女が握ったことになる。  
そして、一思案の後に、意識を失って重くなった二人を横に並べるように寝かせた。  
 
「さあ、起きなさいあなた達。お楽しみはまだこれからよ」  
 
ぴたぴたと頬を叩いてやる。メグがうーんとうなりながら薄目を開けると、自分の頬を叩いていたものがセイの手ではなく、虹色に光る短いバトンであることに気づいた。  
 
「う……あう。なに、それ……? セイ」  
 
ジョウもまた回復して目を開けたのを見て、セイは言った。  
 
「二人とも、脚を開きなさい。でないと、これが挿れられないじゃないの」  
「へ……?」  
「メグはもっと気持ちよくなりたくないの? ほら、ジョウはちゃんと分かってるみたいよ。じゃあ、ジョウだけにしてあげるわ」  
 
怪訝な顔をして隣を見たメグは、ジョウが忠犬のような素直さで両脚を大きく開き、その太腿を自ら両手で支えている姿だった。その横顔には、新たなる悦楽への期待に彩られた笑みがはっきりと浮かんでいる。  
セイが手にしたその物体が差し入れられると、崩れた表情と相まってに淫靡な嬌声が部屋を満たした。  
 
「ちょっ……セイ! なにしてるのよ!?」  
「あっ、うんっ、あふぅっ……」  
「わからないの? ジョウはもっともっと気持ちいいことをしたいから、私の言う事を聞いてるのよ。あなたがそれは嫌だって言うんなら、自分で自分を慰めるといいわ。  
もっともこのままだと、ジョウはあなたより私に可愛がってもらう方がいいと思うようになるかもしれないけど、ね……?」  
「冗談じゃないわよ!」  
「もしあなたがエッチなジョウを満足させたいなら、あなた自身がもっとエッチにならないと、無理なんじゃない? 自分の知らないことを、人に教えるなんて無理ですものね」  
 
それだけ言うとメグを無視して、口の端からヨダレを振りまいて悶えるジョウを攻めるセイ。勝負は、その時点で決した。  
 
「……わかった」  
「え、なに? いまちょっと取り込み中なんだけど……ほら、ここはどうジョウ?」  
「んっ、あんぅっ!そこおっっ!!」  
「あ、あたしにも……」  
「もう、そんなにイイの? ジョウったら」  
「セイってば!」  
「なによ、大声出して」  
「あ、あたしにも……してよ……」  
「何の話かしら?」  
「だ、だから……あたしのここにも、それを挿れて……」  
「そう。でも、なにか一言足りないんじゃないかしら」  
 
セイの勝ち誇った微笑を受け、唇を噛みしめるメグ。ややあって、うなだれつつ言った。  
 
「おねがい、します……ああ、はやくぅ……」  
 
大きく開脚し、まだ成長しきっていない花弁を、指で広げてみせるその姿。薬の作用なのか、あるいはまた自らの意志によってか。メグもジョウに続き、この淫獄に囚われたのだ。支配者は、その欲してやまない口に、最初の果実を与えてやった。  
 
ちゅぷっ……じゅぷるる……  
 
「あ……あふぅぅぅんんっ……はぁぁ……」  
「どうジョウ? メグがあなたと同じように感じてるわ。これでね……」  
「んぁっ……メ、メグぅ……いっしょに……ああっ!」  
 
絶え間なく流れる秘蜜によって、ぬめる股間を大きく露出させ、並んで横たわりつつ喘ぐジョウとメグ。例えようもなく浅ましく、そして淫らな極彩絵図。セイが手にしたバイブの動きを速めてフィニッシュをかけると、二人は相次いで絶頂に達する。  
 
「あああんぅぅっつ!! あっあっあっあっあっんああんぁ───!!」  
「きゃはあぁぁっっ……」  
 
あまりのオルガスムに正体もなく倒れ臥す二人。力を失って通常より重くなった身体を、セイは極めて事務的に起こすと、突き出した尻が向かい合った姿勢にさせる。そして今まで使っていた短いバイブを根元で繋ぎ合わせ、メグの秘部に挿入した。  
アタッチメント式バイブの一端が、まるで抵抗なく呑み込まれてゆく。さらにその淫具のもう一端を、ジョウの腰を押し付けるようにして彼女の中に挿入する。これで、二人はひとつになれたわけである。  
しかし、お互い力が入っていないために、一人の腰が折り崩れそうになると双方とも具合が悪い。  
 
「……やっぱり、安定が悪いわね」  
 
少し考えたセイは、クローゼットの中から黒色の革紐を取り出し、二人の太腿を縛りつけて固定した。これなら二人が腰を動かしてもバイブが外れることがないし、また陰核を責めさいなむ快楽から逃れる事もできない。この場合、理想的であろう。  
 
「さ、起きなさい」  
 
両手で、山脈のように盛り上がった尻肉をピシャッと平手打ちする。メグとジョウは、小さく叫んで目を覚ました。  
 
「う、これは……」  
 
下半身の不自由さに気づいたジョウが、身をよじるが当然動けない。メグとしっかり繋がってしまっている。  
 
「ちょっとセイ、これどういうつもり? ほどいて……んうっ」  
 
同じく動こうとしたメグが、膣に走る細かな快感を感じて状況をほぼ把握したらしい。がっくりとベッドに顔を埋めると長い栗色の髪がその上に降り落ちた。  
 
「分かったみたいね。じゃあ、その顔を上げて脚ももう少し広げなさい。私が入れないじゃないの」  
 
その指示の意味を正確に理解したかどうか、メグは自分の下に脚を入れてくるセイを迎え入れるように、身体の位置を微妙にずらす。ジョウも同様にするところを見ると、すでに命令に逆らう気力も萎え果てたらしい。  
その様子に満足したセイは、仰向けのままじりじりと女体で構成された鳥居の下をくぐってゆき、おおよその見当をつけて位置取りを決めた。  
 
「ジョウ、あなたの目の前に何が見える?」  
「黒い……長くて……太いものが……」  
「そう。なら、あなたがすべきことをしなさい。いいわね?」  
「……はい」  
 
ややあって、セイは股間に疼きを感じた。ジョウが、口で彼女の腰に装着された淫具に奉仕を始めたらしい。あえて具体的に命令せず、セイの意を汲んで動かせるという手法が、見事に図に当たったのだ。セイは、ジョウの行為によって体温の高まりを感じ始めた。  
男が同じことをさせたら、ほぼ同じように得られるはずの悦楽が、人工の性器を通して痺れるように伝わってくる。  
 
「ううんっ……いいわよジョウ。うまいじゃない……っ」  
「ああ、ジョウ……そんな」  
 
メグの哀調を帯びた切なげな声が、頭上から降ってくる。ジョウをセイに取られてしまったように感じているらしい。こっちの手当てもしてやらねば、と思ったセイは、首を反らせて後ろ上方を見る。  
メグの大きな双乳が、物欲しげにぶら下がりながらぷるんぷるんと揺れていた。腕を伸ばしてそれを握り、愛撫してやる。  
 
「あっ、あぅんっ……やっ」  
 
下から来た快感に、メグは甘い吐息を漏らしながら腰を揺らした。振動で二人のその部分が連動して刺激され、蜜壷からは蜜がぽたぽたと垂れてきてセイの顔を濡らした。  
ふと直上を見上げると、沼地の岸に生える葦のような恥毛が水分を含んで前後に乱れ、バイブの中央連結部分が、生物のようにうごめくふたつの秘肉から出たり入ったりしていた。  
女のセイから見ても、呼吸が止まるほどに淫猥な光景である。なかば衝動的に、セイはバイブの根元にある、愛液でべとべとの振動スイッチをひねった。  
 
「「きゃあっ!?」」  
 
ジョウとメグの叫びが、ほぼシンクロして聞こえた。出力最大であるため、二人の中で突然猛獣が暴れだしたようなものだろう。  
押し付けあうふたつの尻がぐねぐねと形を変え、さっきまで水漏れ程度だった淫液が、今はパッキンの締まりが悪いシャワーのように顔面に降り注いでくる。  
 
「んぐっ! んんむっ!! はあっ……んっ!」  
「ああ、そうよジョウ! もっと、もっと激しくしゃぶって! ああっ、いいわっ!」  
「あっ、うっ、んんっく、ああっ!! そんなに動かしたらだめえジョウ! イっちゃう! イっちゃうよおっっ!!」  
 
ジョウとメグはもとより、セイもまた淫行の渦中にあって理性を喪失し、本能に任せて快楽を求め続けた。上になった二人は、ブラスターの効き目が最高潮に達したのか、解読不可能な言葉の切れ端を紡ぎ出しながら、狂ったように尻を叩かせ合う。  
顔から胸までびしょ濡れにされたセイは、唇の周りに垂れる淫液を舐めとりながら腰を突き上げてはジョウの口内を犯し、二人の充血したクリトリスを交互に指で弾いてやる。  
すると、二人はまた狂おしいげな叫びを上げ、セイの身体を濡らすのだ。三人の情交には、終わりがなかった。理性より獣性に支配された、三匹の美しきけだものども。地獄というところが本当にあるとすれば、ここはさしずめ色欲地獄なのか。  
いや、本当の地獄はこれから始まるのだ。  
 
(これが最後の選択? 我ながら馬鹿げてるわね。でも私は人でなしにはなれても、卑怯者にはなりたくない。さよなら、今までの私……)  
 
際限もなく快楽を貪る二人を眺めるセイの右手には、いつのまにかあのアンプルが握られていた。と、そこで予期せずドアが開く音。振り向くと、あっけにとられたエイミーが戸口に立っていた。  
 
「せ……セイ? それにみんな、いったい、なにして……?」  
「エイミー……」  
「ねえ、なんだか最近、みんなおかしいよ。こんなの、どうかして……」  
 
また、モニターで見ていたのか。そして、三人のあまりの異常な淫蕩ぶりが、理解の域を脱してしまったのだろう。しかし、その言葉の最後をエイミーは呑み込んだ。二人の下から頭を反らせ、逆さまな顔になって自分を見るセイの眼。その口元に浮かぶ、アルカイックな微笑。  
 
恐い。  
 
あれは、自分が知っているセイではない。  
 
そう、本能が悟った。  
 
そして、ゆっくりとセイが口を開く。  
 
「見てたのね、あなた」  
「ひっ……」  
 
恐怖に凍りつき、小刻みに震えるエイミーの顔。セイの、その眼が泣いている。しかし、唇はむごいほどに歪んだ笑いを作っている。  
 
「あなたは、まだ子供よ。このことは、忘れなさい」  
「わ、わすれ……って」  
「いいのよ」  
 
すっと視線をそらすと、ジョウとメグの嬌声でかき消されんばかりの声でつぶやく。  
 
「堕ちる者は、必要最低限でいいの。あなただけは、無事でいて。その方が、何かと効率的だから……」  
 
その言葉の意味を理解したかしないか、エイミーは脱兎のごとく逃げ出していた。後ろも見ずに、これから始まる、絶望と快楽と破滅がせめぎ合う三人の運命を想像しながら……  
そしてセイは、彼女が“外の世界”に脱出してくれることを心から願いつつ、あらゆる体液を放出してよがり狂うジョウとメグの下から、死神のような口調で言った。  
 
「二人とも、知ってる? 科学実験というのは、実験体が多いほど正確なデータが取れるってこと」  
 
セイの言葉など耳に入っている様子もなく交合する二人の下で、彼女は自らの二の腕にアンプルを当てがい、注射ボタンを押した。  
 
 
その部屋は、日本から遠く離れた国の超高層ビルにあった。  
 
「で、これが結末というわけかね」  
「どうやら、そのようだな」  
 
『んっ、あぁっ……!! そう、そこよセイ! そこがいいの! もっとぉ……』  
『はぁ、ふぅ……ああ、最高よ。もう私の中にも入ってるわ……メグったら、まだ満足してないの……?』  
『ううっ、メグぅ、もっとあたしをいじめて……あんぅっ!!』  
 
薄暗く、大きな部屋の壁に設置されたモニターには、理性のタガが外れたジョウたち三人が、ベッドの上で悩ましく絡み合う映像が映っている。  
 
「一体、この始末をどう申し開きするつもりだ? 」  
「それは……なんとか解毒処置を……」  
「あの薬の解毒薬が、一体どこに存在するというのかね? あれは重度の中毒患者だ。短く見積もっても一年はかかるだろう。しかも、元通りに治癒するという保証がどこにある。後遺症でも残ったら、我らはラオパンに八つ裂きにされるぞ」  
 
口髭を蓄えた中年男が、汗ばんだ顔を下に向けて沈黙した。今となっては、あの狂った計画の遺産である銀髪の殺人機械と、その連れの栗毛娘の口を封じるという自分達の選択が誤りであったことを、苦すぎる現実と共に認めざるを得ない。  
さらに、その実行役の選定が最大の失敗だった。目に入れても痛くない孫娘が、黒社会のルールをわきまえない馬鹿のばらまいた薬のせいで、商売女も裸足で逃げ出すような淫売になったとラオパンに知れたらどうなるか。  
自分を含め、この部屋に参集している連中の首は、知れたその日のシンデレラの魔法が解ける時間までに、みな胴体から離れているに違いない。  
 
「まあ、なってしまったものは仕方がない。策は、考えてある」  
「どんな策だ? いかに誤魔化そうとも、いつかはお耳に入ることだぞ」  
「これを見たまえ」  
 
画面が切り替わり、参集者たちにとって見覚えのある人物が映し出された。カメラがズームすると、洒落たスーツに縁なし眼鏡の若い人物が、複数の男と話している。相手は、どうも見ても堅気には見えない日本人。恐らく、ヤクザであろう。  
アタッシュケースに詰められた多額の現金と、澄んだ液体のケースとを交換し、楽しげに笑いながら握手を交わしている。  
 
「あの愚か者め……まだ懲りていなかったのか」  
「しかも、尻尾を出した。奇貨居くべし、だ」  
「どういうことだ」  
「別段の事もない。かの男は、あの通り過去の失敗を教訓とする習性がない者だ。それが故によ、性懲りもなく再び日本で例の薬を売ろうと謀ったところが彼女らに露見し、取引を持ちかけると見せて口封じのために薬を打ち、売り物にしようと目論んだわけだ。  
その結果が、あの悲しむべき有り様というわけよ」  
「よくも絵空事を並べたものよな……全てを奴に押しつけるつもりか」  
「問題は真実ではない。人に信じられる事実だ。それともなにかな、真実を生のままラオパンに知らせる選択を是とするか?」  
 
しばしの沈黙。  
 
「……どうも、近々棺桶が一つばかり必要になりそうだな」  
「左様さな。その棺桶が、ここにいる我々のために使われないという結末をもって、この汚らわしい一件の幕としよう。各々、それで異存はないか」  
 
“ある”という返事は、誰の口からも発せられなかった。彼らは、それぞれの前に置かれた冷め切った高級茶に手を付けぬまま、部屋から出て行った。  
 

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