「・・う・・あ・・」  
 両手を鎖で繋がれたジョウが小さく呻くと、ジョウの頬に舌を滑らせていたセイは薄い笑みを浮かべた。  
「・・・・やめろ、セイ・・」  
 両足も繋がれているために、ジョウが自由に動かせるのは頭ぐらいしかない。ジョウは頭を引いてセイを睨み、張りのある声を放った。  
 しかしセイは、自分の唾液で濡れているジョウの頬を撫でて、酷薄さしか感じられない笑みを浮かべる。  
「駄目よ、ジョウ。やめるわけにはいかないの」  
 そう言って、セイの手がジョウの胸に触れる。  
 ジョウはいつもの服を着ていたが、肌に張り付くようなその服はセイの手の温かみを敏感に伝えるのか、唇を噛み締めて顔を顰めた。  
 セイの手は、ジョウを弄ぶように僅かな膨らみを撫で、もう片方の手はジョウの頬をさすっている。  
「・・・・よせ・・・・・・」  
 ジョウの口からか細い声が上がるが、それはセイの笑みを増長させるものでしかない。  
 セイの指が、膨らみの中央に浮いている突起を撫でると、ジョウの瞳が微かに揺らいだ。  
「可愛い反応するのね」  
 ジョウの口が、セイの口によって塞がれる。  
 必死に抵抗しようとしているジョウを笑うように、鎖は耳障りな音を響かせた。セイは唾液でも送ろうとしているのか、口の中をもごもごと動かしている。  
 
 長い口付けが終わって微笑むセイの唇と、怒りを窺わせる表情とは裏腹に目を潤ませているジョウの唇を、唾液の糸が繋いだ。  
「・・・・何故、こんなことを・・」  
 ジョウの問い掛けに、セイが溜息を吐く。  
「ジョウ、あなたのせいで、私がどれだけ迷惑を被っているか、知らないでしょうね」  
 言うことはそれだけとばかりに、セイは再びジョウの唇を塞ぐ。  
 ジョウの喉が不規則に動いた。微かだが、ジョウの目の下に朱が差している。  
 口を離したセイは、細長い指をジョウの体に這わせながら下ろしていき、手を股の間に差し込んだ。  
 それだけで何か感じるものがあったのか、ジョウは息を呑んで、セイを睨みつける。  
「駄目よ、そんな顔をしても。それに──」  
 セイが指を立てて手を細かく動かすと、ジョウは顔を俯けて体を震わせ、食い縛った唇の端から咳のような吐息を漏らす。  
 それを面白がるように、セイは体を屈めてジョウの顔を覗き込み、そして手を細かく、激しく動かし、ジョウの敏感なところを擦り上げる。  
「・・っ! ・・やめ、ろ・・・・!」  
 ジョウの口から漏れる言葉は、セイを楽しめるためのものでしかない。  
 
 セイはジョウの露出している首に舌を這わせ、左手でジョウの脇腹をさすりながら、右手でジョウの股間を擦り続ける。  
 その行為は時間が経つにつれ、ジョウの肌を赤く染めていき、漏れる吐息を熱っぽいものにしていき、股間から水っぽい音をさせるようにしていく。  
「・・・・っ、よ・・! ・・せ・・・・! ・・・・セイ・・!」  
 ジョウの肩の辺りが大きく震えて、唇から唾液が落ちていく。  
「・・イクのね。いいわ、ジョウ。イッても」  
 セイが囁き、程なくすると──ジョウは全身を大きく震わせて、口の中から吐息の塊を吐き出すように、大きく息をした。  
 ジョウの股間を隠している布地は、そこだけ色を変えていて、セイの指まで濡らしている。  
「ちょっと待ってて」  
 喘ぐジョウの頬に唇を寄せたセイは、ジョウから離れ、その部屋の端の台に置いてあるバイブを手にして、再びジョウのもとに戻る。  
 セイの白い手には似合わない、黒くて太い、ごつごつとしたバイブを、セイはこれ見よがしにジョウの顔の前で振る。  
「お仕置きだから、気持ちいいだけじゃ駄目なのよ」  
 
 そう言って、セイはジョウの頬にバイブの先端を押し付ける。  
 汗の浮くジョウの頬が、無骨なそれによって窪む。ジョウは悔しそうに歯を食い縛り、セイを睨む。  
 だけどセイは、全く意に介さず、バイブを下げていく。ジョウの首や胸、お腹を撫でていた先端が、濡れているそこに触れると、ジョウは体を震わせた。  
 セイはジョウの股間を隠している部分を脇にずらし、露になったそこにゆっくりとバイブを入れる。  
 先端が入っただけでジョウの体は大きく震えたけど、セイは止めることなく、ゆっくりと入れていき、奥まで差し込んだ。  
「・・・・う・・! ・・っ・・・・!」  
 喘ぐジョウを笑って、セイは脇にずらしていた布地をもとのように直す。そうすると、バイブが抜け落ちないように固定された。  
 すっかり赤く染まったジョウの頬に唇を走らせながら、セイはあっさりと、バイブのスイッチを入れる。  
「・・ぅ・・・・! く、ぁ・・!」  
 ジョウの口から声が漏れて、バイブの振動音を打ち消す。  
 セイはそんなジョウの髪を撫でて、溜息を吐くように言った。  
「しばらく、そうしてなさい」  
 体中に汗を浮かせて喘ぐジョウを置いて、セイは部屋を出て行く。  
 一人になったジョウは、だけどどうすることもできないで、ただ悶えている。  
 わたしは──わたしは設置している隠しカメラから得ているその映像をモニターに出して、それを見ながら、一人、ベッドの中で熱い息を吐いた。  
 

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