「・・・・・・・・・・・・」  
 勇気を振り絞った恭平の言葉に、しかしジョウの反応は醒めたものだった。  
「・・え、えーっと・・」  
 むしろ爆弾発言をした恭平の方が、気まずさに負けてその場しのぎの声を出してしまう。  
 ジョウはそんな恭平を、相変わらずの醒めた、それでいて鋭さの溢れる目で睨んでいる。  
「・・・・ご、ごめんなさい!」  
 沈黙の重みに負けたのは当然だが恭平だった。  
 垂れ流しになっているホラービデオの音声のおかげで静寂にはなっていないが、おどろおどろしい  
BGMや絶叫に近い悲鳴は、部屋の空気を確実に圧迫していた。  
「・・・・お前、結局、何しに来たんだ」  
「・・・・えっ!? だ、だから、その・・・・」  
 慌てふためく恭平を、ジョウの白けた視線が襲う。  
(な、何って、たった今、言ったじゃないかっ! い、いや待て、ジョウさんのことだ、もしかしたら  
子供を産むということが分かってないのかも、いやいや、いくらジョウさんでもそれは・・・・)  
「・・・・おい」  
「は、はいっ!」  
「早く出て行け。邪魔だ」  
「・・そ、それが」  
 一刻も早くこの場を立ち去りたいのは、既に恭平の願いでもあった。  
 しかし、と恭平は振り返って、立ちはだかる扉を見やる。  
 
「・・それが、勝手にロックされちゃったみたいで、開かないんだ・・」  
 恭平の弱気の発言に、ジョウは舌を鳴らして立ち上がる。  
 元来の臆病者の習性が働いて恭平は反射的に身を引いたが、ジョウは気にする様子もなく、  
恭平を通り越して扉のノブを弄っている。  
「・・開かんぞ」  
(だから言ったじゃないか!)  
 ジョウが振り向いた瞬間、恭平は死を覚悟するほどの恐怖を味わったが、当のジョウは  
なんでもないことのように部屋の中心まで戻ると、髪を乱暴に掻き毟った。  
「・・・・え、えと、僕はどうすれば・・・・」  
「あ?」  
「いえ! なんでもありません!」  
「好きにしろ」  
「・・・・・・は?」  
「いつか誰かが開けるだろ」  
「・・・・・・・・・・・・」  
 そう言うと、ジョウは思うところもなく服を脱ぎ始めた。恭平は慌てて扉と向き合う。  
 程なくして、バスルームを使用している音が聞こえて、恭平は部屋の方を向く。  
 そして唐突に、天啓がひらめくかのように、一つの真実と向き合った。  
「・・・・それって」  
 ごくり、と恭平の喉が鳴る。  
(・・・・扉が開くまで、この部屋にいてもいいってこと・・だよね・・?)  
 恭平は、数多くの不運の連続を思い出し、その想い出の悉くが幸福へと転ずるのを  
感じて、目に涙すら浮かべた。  
 
 
「・・・・・・ふ、ぅ」  
 恭平の口が離れると、ジョウはいつもとは違った甘い吐息を漏らした。  
「・・・・・・・・ジョウさん」  
 ベッドの上で折り重なっている二人は見つめあい、上になっている  
恭平がもう一度、ジョウの唇に自分の唇を重ねる。ジョウは初めての経験に  
戸惑い、為すがままになっている。それを感じて、恭平は恐る恐る舌を伸ばした。  
「・・・・・・・・・・」  
 恭平の舌がジョウの唇の割れ目に触れ、その感触を味わう余裕もなく、  
恭平は舌を押し入れる。恭平の舌はジョウの唇にすんなりと入っていき、恭平が  
舌を遊ばせると、ジョウも同じように舌を遊ばせた。  
 二人の舌が絡み合い、触れ合い、唾液の交換が為されていることにお互い気付いた。  
 恭平の鼻の横を、ジョウの漏れる鼻息が撫でる。それはくすぐるような快感で、  
恭平は自分の鼓動が途方もなく高鳴っていくのを感じていた。  
 
「なーんてなことになってるに違いないわっ」  
「? エイミー、まだ起きてるの?」  
「あ、セイ、もう寝るから」  
「? そう。私はシャワー浴びてから寝るわ」  
「うん、分かったぁ」  
 セイを見送ったエイミーは、ジョウの部屋に仕込んである隠しカメラから  
得ている映像をパソコン画面で眺めるための操作をしながら、  
にひひひひ、と子供らしからぬ嫌らしい笑い声を出した。  
 

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