色々あって、炎上中のパトカーや、ケロシンの煙を吹いているメガ・ハイウェイを遠目にしつつ。
トレーラーの屋根の上に佇む、メグが取り出したマルボロに火をつける。
「もう陽も暮れたのに、まだまだ、暑いねぇー」
「む」
ライターの火に反応し、目ざとく振り返ったジョウが。
素早くひったくるみたいにしてその唇から紙巻きを取りあげるや、指の腹で火をもみ消した。
「あ……」
(熱くないのかな?)、と思って眺めていたメグに、ぎらりと光る三白眼を向け、
ジョウは言い出す。
「タバコは吸うな」
メグはきょとんとした顔で問い返す。
「どーして? ここ、屋上だし。別にケムくないでしょ?」
ぐっと眉をしかめ相方のすぐそばに顔を寄せ、白いキバのあいだから。
「夜、キスする時」
ジョウは絞り出すような声で言い置いた。
「ニガいから」
「んー、気持ちは分かるけど。我慢してよ、ほんの一本ぐらい」
メグは平然と答えた。
面食らったのはジョウの方だ。精一杯の殺し文句だったのに、あっさりかわされて
しまったのだから。それでも、何とか表情には出さなかった。
「だめだ」
ジョウの返事はつれない。それなのに、メグはまるで堪えていない。
「でもぉ……私だって苦いんだよ」
メグは淫魔のような視線で、ジョウを釘付けにする。
「白くて濃いのがあんなにたっぷりなんだもん。時間かかるんだからね、飲み干すの」