その日は、セイの実家の系列会社が経営するホテルの開業祝いがあるとかで、  
ジョウ、メグ、エイミーの一行は、それなりの一張羅を身に纏いTOKYOベイ・リゾートエリアへとくりだした。  
 プレ・オープンにあわせた、関係者のみの宴会らしい。  
 完成直後のホテルの中は、けっして不快ではないもののどこか人工的な、真新しい設備独特の匂いをさせていた。  
 
 一階のロビーはすでに招待客の人波でごった返していたほどだが、立食パーティは専用の宴会場ではなく、  
なんと、客室フロア最上階のスウィート・ルームにて開催された。  
 このホテルの一等客室はすべて、バカみたいにダダっ広いことがよほどの自慢であるらしく、  
なんでも四十階より上の高層階客室はすべて、広大なビルディングのワンフロアを、まるまる一室のスウィートにしているとのこと。  
 
 どんな金持ち、いや、気違いが泊まるってゆーんだ、そんな処にと思わずメグたちは内心でツッコミながらも、  
それなりに老若男女中華系の賓客たちにまぎれ、やかましい銅鑼と音楽、獅子舞、軽業、美味いタダ飯と酒、  
極彩色の珍妙な装飾に埋めつくされた、非日常のパーティ空間を楽しんだ。  
 なにせ酔っ払いと宴会での無礼講は万国共通だ。  
 
 やがて、一ダース以上並んだ大甕になみなみとあった老酒も尽きはてた頃。  
 長の宴もお開きとなり、セイとエイミー、ジョウとメグは今夜の宿としてそれぞれホテルの一室をあてがわれた。  
 最上等ではないにしろ、ジョウらの通された部屋もスペシャルスウィートで、備えつけの浴室さえ目をみはるほどの広さがある。  
 五本爪の黄龍の彫像が空中にそびえ、鱗だらけの胴体でとぐろを巻きつつ、泳げそうなほど巨大な浴槽へと大量のお湯を吐いている。  
「すっごいなー」 大理石製のその偉容を湯船の中から見あげつつ、メグが感心しきりのコメントを述べた。  
「なんかここ、二十四時間営業の銭湯みたいだねー!」  
「……広すぎ。落ち着かん」  
 酔ってる時はやたら懐いてくるクセのあるジョウは、湯の中にふかぶかと身を沈めると、  
のんびりと眼を閉じ、隣にいるメグの肩に首をもたせかけてくる。  
 すると、(あれ?) メグは、ふと。湯船の底のほうからひたひたと寄せてくる不穏な波に気がついた。  
 なにげなく、目線をジョウのほうに投げると……  
 薄褐色の肌、筋肉の盛り上がった左肩にフライング・ドラゴンの紋様、青黒いタトゥーが現われている。  
 この模様は、ジョウの体質変化のシンボルだ。  
(と、いうことはあ……)  
 ゆっくりと下へ目線を移し、湯の中の状況を覗きこむと。  
 膝もとに例の見慣れた、赤黒いものが確認できた。  
 それ自体が意志を持つ生き物のように、しきりにぴくぴくと鎌首をもたげては、透明な湯を小刻みに揺らしている。  
(あーっ、やっぱり生えてるーっ(泣))  
 
 メグは内心、汗をかきながら湯気ごしに。  
「じょ、ジョウ、あの…立ってるよ」  
 そう言いかけると、  
「ん……酒のせいかな」  
 いつも通りのゆったりとした、低く落ち着いた声がかえる。  
「別に、なにもしない。ここだと動きづらいし。ただ…」  
 ジョウは眠そうな顔つきのまま、さらにこちらへと身体を密着させてきた。  
「ちょっと、触るぞ…」  
 すりよるように顔を寄せて呟くと、メグのたっぷりとしたふたつの膨らみを両手でつかみ、ふにふにとたわむれのように握っては離す。  
 
 握る指のあいだよりはみだして、つんと上向いた胸先のとがりを、ジョウは伸ばした舌先に絡めるようにした。  
 アゴから下がなかば湯の中に沈むのもかまわず、大きく口を開けて乳房に吸いつく。  
 そんなジョウの横顔を見おろしているメグの、胸の奥がきゅんと、音を立てて鳴る。  
(ジョウって、落ち着いて、マジメに始めると、実はそーとー上手いんだよね…)  
 目の前にあるのは、丸い歯でゴムマリと遊ぶ小犬みたいに、無心なジョウの表情。  
 だけど、甘噛みしているのはオモチャじゃなくて、……あたしの、オッパイだ。  
 肌にかるく当たる歯先と、ぴりぴりと張りつめた乳首を転がしてくる、ぬるりとした舌の感触。  
 ジョウが与えてくる巧妙な刺戟が、ぞくり、とメグの肌を震わせた。  
「ぅん、あっ…」  
 メグはつい声を洩らしてしまい、たぷん、と波を立てつつ浴槽の隅によりかかって身をそらす。  
 腿のあたりに、すべすべとした尖ったものが当たっている。  
 
 咥えていた乳首が凝って固くもりあがり、コリコリと先端までも尖りきったのを舌の感触で確かめ終えると、  
ジョウはごく満足げな顔で唇を離し、もう一方の乳房の愛撫にとりかかる。  
 メグの肩をつかんで壁に押さえつけている、細い指。贅肉のない腕。  
 一切の余剰をノミで削りとった芸術彫刻のような、ジョウのその身体にメグは見とれる。  
「ジョウ…」  
 つかまれている手の上に指を置き、こちらからもぎゅうと抱き返してあげた。  
 濡れた短い髪を撫で、頭の天辺にキスを落とす。  
 初めて会った時から思っていた。  
 この子には、捨てられた子犬みたいな可愛さがある。牙を持ってはいるが、孤独な獣のような。  
 誰かがかまってあげないと、ご飯を食べずにたった独りで、死んでしまいそうに見えるのだ。  
 
 メグを先にあがらせたジョウが、湯気の立つ細身にタオル地のバスローブをひっかけ、  
意気揚々とベッドルームへ続く扉を開けると……  
 
「好来(ハオライ)」  
 寝台の上で待っていたのは黒髪の長身、アーモンド型の瞳をもつオリエンタル・ビューティ。  
 セイだった。  
「……」  
 ナイスバディの華僑ご令嬢は、お茶目な笑顔を浮かべつつ自分を指さす。  
「メグは寝ちゃった。今日は、わたし♪」  
「きょうは、じゃないだろぉが! アホかっ」  
 痩せぎすの銀毛の孤狼は、めいっぱいの出力で吼えたが、セイは動じずただ、肩をすくめてみせる。  
 メグはどうした、と聞くと、別の部屋のソファで眠っているという。  
「一服盛ったな、」  
 ぎっと見返した、ジョウの赤い目が敵を睨んで光る。「ひきょう者」  
「あらあら」  
 ダブルベッドより脚を伸ばし、寝室の床に降り立ったレディは。そんなジョウを見下ろすようにして、  
「ひとに美味しいものを食べさせること自体は、べつに罪じゃないでしょう?」  
 切れ長の目を細めつつ、邪気もなくころころと笑う。  
「私はなんにも強制してないもの。エイミーとメグが特製点心を十皿以上もたいらげたのも、  
貴方がフカヒレの姿煮を独り占めにしたのも、ぜんぶみんなの自由意志じゃないの。  
その結果として、エイミーとメグは沈没」  
 紅いマニキュアで飾った指先で、秘薬の効果が美事なまでに現われている股の間の一件を指した。  
「貴方は独り、『これ』の使い道に戸惑っているというわけ。いわゆる自己責任論ね」  
 論理にて気圧されたジョウは、ただ苛立って舌打ちをする。  
「アクマめ」  
 東洋美女の大きな瞳が、星のごとく強い光を宿してきらめいた。  
 伸ばした白い手がジョウの肩の上に優しく置かれる。  
「中国に悪魔はいないわ。でも悪女なら古来より山ほど……」  
 
 黒い瞳とシャープなあごのラインがみるみるうちに阻止臨界点まで近づいてくる。  
 セイは両の目を優雅に閉じ、そのままジョウの唇に口づけた。  
「う」キスは長く続く。  
 真珠のような歯の間よりちろりと紅い舌先をのぞかせつつ。ゆっくりとセイの唇が離れると、  
「む、」すっかりとおとなしい顔つきにおさまったジョウが、目線をうつむかせつつ呟いた。  
「お前のことは、キライじゃないが、だけどこれは、まずいだろ」しぶしぶとした口調になり続ける。  
「だいたいが、お前には入れられないし……」  
「そおねえ」セイも、あごに指をやりつつ同意の言。  
「もしも、誰かさんが正式な婚姻の手続きもなしに、私の処女を奪ったりしようものなら。  
バレた途端に、お爺様は犯人の首根っこを掴んで三〇kmは野外を引きずり回すでしょうし、  
五時間以内にそいつの身体を一〇cm刻みのサイの目にして、カラスの餌に投げちゃうでしょうね」  
「萎えるな」  
「まったくだわ」  
 言いつつも、セイはジョウの胸元へと手のひらを寄せた。  
 腰帯で留めてあるローブの合わせの隙間より、細く長い指先を差しいれて下へ下へと延ばし、  
やがてたどりついた、口で吐く言葉とはうらはらに、腰の真ん中にていまだ充血し猛っているものを…  
握った。  
「う、うあっ」ジョウがたまらずうめく。 セイの長く赤い爪が、敏感な皮膚に軽く食い込んでいる。  
 身を引こうとしたためにかえってローブの前がはだけ、何も着けない下腹部があらわになった。  
 そこへすぐさまセイはつけこみ、邪魔な衣服を肩から払いのける。  
「凄い……」  
 バスローブが落とされ、現われた一糸纏わぬジョウの裸身の中では、やはりあるべきでない屹立した器官が異彩を放つ。  
 セイは、いきり立つジョウのそのものを見下ろし、頬を染めほう、と息を吐いた。  
「ぜんぜん皮が余ってないのね、キツそう。張り詰めてる。それに……熱い」  
 爪先でそうっと根元からなぞり上げる。  
「くはッ」 弄ばれているジョウの逸物は、セイの手の中で。  
 活火山のように重く熱をおびた赤黒い力を溜めこみ、その身をぶるぶると震わせていた。  
「考えなければ、いいじゃない……もう全然、ゆとりなんてないでしょう?」  
 
「ここは私の領地内、プライバシーは確保してあるわ。  
 護ってあげる。だってあなたは私の衛士で、私はあなたの主人だもの」  
 最高級の床上手であると同時に鋼鉄の処女でもあるという、大華僑のご令嬢という境遇が産み出した、  
非常に困った存在であるところの彼女は。  
 指先でジョウのあごをとるなり再び唇を奪い、芸術的なまでに複雑かつ、とろけるキスをしてきた。  
 繊細な動きを秘めたセイの舌先がジョウの口腔をそっと撫でるたび、背中じゅうを引き裂くような電流が  
全身を貫き、膝の力が抜け、腰がくだけかける。  
 
「ほら、」  
 ひどく広いダブルベッドにて、長い腕で裸のジョウを甘く組み伏せ、その痩せた背中にのりかかった体勢にて。  
 セイはさりげなく擦り寄せた乳房の先端で背中の感覚を刺激しながら、愛撫の手数と秘術を尽くした。  
 そろえた二本の指で背骨の左右をたどられる。それだけで腰の怒張は張り詰める。  
 セイの技術により全身の気の流れを支配され、テもなく操られているのが骨身に染みたが、これがなかなかに逆らえない。  
 薬の効果でがちがちに固くなっているジョウの肉茎を一方の手にて握り、ふわり、ゆったりと揉みほぐしつつ。  
セイの指は濡れた冷たい会陰をへて菊門へと滑っていく。  
 なめらかに動く細い爪先を、後ろの秘所へじわりとこじ入れ、揺らめく炎のごとく、内部でゆるゆると動かした。  
「ああ、あああ、そこ、だ、めだってつ、くぁあっ! う、うぁ……」  
 何一つそれらしい抵抗のできないまま、究極快楽のツボを徹底的に攻められているジョウは、令嬢にまたがられつつうめく。  
 
「く……くぅっ。うン、ふわぁ、あっ……」  
 意味のとおった言葉には変換できないレベルの、強烈、かつ莫大な快感が襲いくる。  
 ジョウは懸命に口を閉じ、洩れ出る悲鳴を噛み殺すため、ぎり、と奥の歯をくいしばる。  
「どう……いいでしょう?」  
 そう、耳元でセイが囁く。その通りだった。死ぬほど気持ちいい。気持ちは良いが、それでも人として最低の尊厳は守りたい。  
 自分の膝に爪を突き立て、あやうく発射しかけるほどの性感の波を必死にやりすごそうとした。  
 ――冗談じゃない、こんな勝手な女にここまで好き放題に玩弄されたうえ、しかもケツの穴でイってたまるか!  
 衝動的に沸きあがらせた怒りの力にまかせ、彼女のしなやかな身体を背中からはねのける。両手でもって押し倒し、  
チャイナ風のナイトウェアに手をかけるやライチの皮を剥くようにすばやく、セイの身から剥ぎ取った。  
 衣裳の下から現われる、餅のようにすべらかな白い肌が鮮烈な視覚衝撃となって両の目に飛び込む。  
 ジョウはふつふつと煮えたぎる油のように低い声をしぼり出した。  
「セイ…もう、怒ったからな…」  
「んっ…」  
 手入れの行きとどいたなめらかな皮膚、適度な弾力とヴォリュームのある乳房にむしゃぶりつき、  
ジョウは固く尖らせた舌で乳首からヘソまでをなぞり、舐め下げ、全身を味わいつくすようにキスをし続けた。  
 セイの肌からは甘いフェロモンの馨りと、化粧品由来のかすかな苦味、そして潮っぽい汗の匂いがした。  
 
 そうやって、優雅なカーブを秘めた肢体を抱きかかえつつ、口と指、掌にて撫で回していると。  
 やがて、  
「あ、ああ…」 セイが高まるような声を出し、  
 皮膚から伝わる彼女の体温がすっと二、三度、上がっていくのが感じられた。  
 その身にはさすがに相当の金がかかっているとみえ、体熱に反応した肌の表面から、高級なオイルの匂いが立ちのぼる。  
 ムスク系のオード・トワレらしい。麝香のスモーキィな薫りが、セイの甘い体臭によく馴染む。  
 なめらかな首筋に鼻を擦り寄せた。  
「うぅん…」 深いアルトの溜め息が心地よい振動となって、こちらの肌に響く。  
「んっ」 耳を舐めるとさらにいい声で鳴いた。  
 両の腕で抱きすくめている、豊かに張った肌のどこを見渡してもシミ一つ無く、どこをとってもラインは流麗。  
 セイの身体はさすが、と賛辞を洩らしたくなるような、ひどく豪奢なしろものだった。  
 なんだかひどく嬉しくなり、ジョウは頬笑みつつ彼女の白いのどに音を立てて口づけた。  
 
 やがてつと、身を離したジョウはシーツ上にぺたりと腰を降ろす。  
「セイ、頼む…」  
 同じくシーツに膝をついている素裸のセイの全身を見やって、ジョウは。  
 痩せた腹の下、股間にある反り返った屹立を見せつけるように体の位置を変え、少々の沈黙のあと、消え入るような声を出した。  
「…………なめて」  
 そう、口走った瞬間。さっきから爆ぜていた心臓が、ひときわ強烈な鼓動を打つ。  
 (セイはさっき、大丈夫だと言ったが)…もし、この寝室の様子が華僑組織の上層部、セイの親族側にモニタされていたら。  
自分は間違いなく、十秒以内に踏み込んでくる三下どもに完璧ハチの巣にされるだろう、今のはそれほど危険な発言だった。  
 まさに命懸けの要望。身のほど知らずも大概にしろといったところ。  
「……」  
 ベッドルームの空間を沈黙のとばりがおし包み、ジョウは冷たい予感にくるまれて黙りこんだ。  
 
 烈しい緊張でノドはからからに渇いている。  
 至高の快感という目標めがけて暴走している自意識の中心からはるかに引き離され、心の片隅に  
押し込められているわずかな理性が、さっきからしきりにこんなことに命をかけている自分を非難し続けている。  
 わかっているが、戻れない。すでに劣情に流されきっているのだ。  
 現世の見納め、とばかり。ジョウは彼女の目をまっすぐに見つめる。  
「……」  
 と、  
 シーツに手のひらをついていたセイが、無言のままにこくりとうなずく。  
 彼女は膝をつき上体を低くかがめて、ジョウの陽根への奉仕にかかった。  
 薄く赤いくちびるが優雅にひらき、ジョウのそのものをするりと根元までくわえ込む。  
「あ、ああ……ひゃああっ、」  
 予想以上の感覚に、つい、よがり声が出た。  
 ペニスの先端を迎え入れた喉の奥がきゅっと締まり、カリ首の全体を包み込んでいる。  
 無作法な行為とは承知しつつも、圧倒的な快感にたまらずジョウの腰は浮きあがり、  
さらに狭い、濡れた穴の奥へと突き入れようとしきりにうごめいた。  
 ジョウのペニスで喉を手荒く突かれつつも、それでもセイは諾々と、フェラチオ行為を続けている。  
 温かくぬめる舌が、ペニスの側面に絡みつこうとしきりにねちねちと動き回っている。  
「う、うう、あ、あ、あ、」  
 小刻みに、リズミカルに腰を振りながら。ジョウは、食いしばる歯の間より悲鳴を洩らす。  
「ん、んんっ、マズい……も、出そうっ!」  
 するとセイはふいに唇を離し、一瞬、こちらを見あげ婉然と微笑んだ。  
「いいわよ……」  
 それだけを呟くと、ふたたび肉棒を咥え込みその行為に没頭しはじめる。  
 
 それから、十秒とも保たずに、口中でたっぷりともてなされたペニスは急激にぐいと太さと硬度とを増し、  
そして無秩序にはじける白濁の液体を、セイの美しい顔いっぱいに噴出させた。  
 
 令嬢の紅顔を汚した犯人、ジョウは。  
「ごめん」 謝りの言葉を述べながらも、股間の陽根をふたたびむくむくと勃ちあがらせる。  
 絹の手布で顔と首すじをぬぐい終えたセイの肩に細い指をかけ、ジョウは償おうとする意識を声に乗せつつささやいた。  
「…脚、広げて」  
 セイが黒い目を見ひらく。  
「本気なの?」  
「大丈夫、入れない……入れないから、」  
 口の中が乾ききっていて舌が上手く動かない。言葉では足りない説得のため、必死の思考を眼の力にして見返した。  
「信じろ。こっちももちろん、命は惜しい」  
 そこまでを言い、彼女の顔へ鼻先を近づけキスをした。  
 口づけながら抱きしめあうと、すでに高々と天をにらみすえている陰茎は、押されて二人のお腹のあいだに  
ぺったりと挟まれる。  
 セイは黙ったままこちらの背中まで腕を回してくる。  
 膝を曲げあぐらをかいた上にセイの尻を乗せさせ、向きあう形で重心ごと受け止めた。  
 はさまっている肉塊へ滑らせた手をやりレバーか何かのように下へ押し込んで、離す。  
ぷるり、と立ちあがるペニスの先端に、  
「きゃあっ」  
濡れた秘所を撫で上げられたセイが、はじかれたように身を震わせる。Dカップの乳房もぶる、と揺すれ、視覚的効果は抜群。  
 見事に引き締まった、その白い腰を抱きしめ引きよせた。  
「このまま……いくぞ」  
 組んだ膝の上に乗せている長身を、腰と全身の筋力を使って突き上げる。  
「ンあっ! きゃあっ! んんッ! はっ、ンああっ!」  
 ベッドマットの反動を利用し、大きく身を揺するたび、ペニスの表面がセイの股ぐらでぬらぬらと光る秘肉を撫でるように擦り上げ、  
ジョウの耳の中では彼女のノドから発せられる、意味を為さない嬌声がわんわん響く。  
 正面から抱きしめているので、ジョウの鎖骨あたりのうすい皮膚に、圧しつけられてつぶれた乳頭が当たる。  
 水蜜桃のように丸い、白くて柔らかい尻に、ぜんぶの指を食い込ませていた。  
「はっ、はっ、はっ、はッ……」  
 せわしなく腰を動かしながら、衝動に負けて突き立ててしまわないように、わずかな理性を駆動させておくのが一苦労だった。  
 
 出来心を起こして(つい、うっかり)と、ほんのわずかでも腰の角度を変えようものなら、  
腿の付け根に陣取ったこの暴れ蛇は、開いたうす桃色の柔肉のあいだにある、魅力的に濡れそぼった洞穴へと、  
すっぽりと入りこんでしまうに違いなかった。  
 意志の力を総動員し、触れるだけのセックスを維持し続ける。  
「……ジョウ、私もう……」  
 セイの甘い息が耳朶にからむ。  
 余力のないジョウは、答えずさらに動きを速める。  
 こんなに辛い性行為ははじめてだった。  
 そしてこんなにもうしろめたく、強烈な快感に裏打ちされた体験も初めてだった。  
 
 首すじの肌を真っ赤に染めたセイが、ある地点でぐったりと動かなくなったことに気がついた、  
ジョウは寄り掛かる身体を抱きとめて、そおっと下へ横たえた。  
 身を離し起き上がる。  
「ジョウ…?」  
 目覚め問いかける声に。  
「出してくる」 肩を落としつつ言い捨て、バスルームへと向かおうとした。  
「ジョウ」  
 横たわったままのセイから、いまだ陶然とした色の残る声にて問いが投げかけられる。  
「怒ってる?」  
「……」  
 ジョウは踏み出す足を止めた。  
 考えるための数秒のあと、  
「…いいや」  
 振り返らずに小さく答えた。  
「お前だけのせいってわけじゃない。と、思う」  
 それはほんとうだった。  
 
 だってしょうがないじゃないか、結局は住む世界の違う人間同士なんだ。  
 
 

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