――――――――――その噂は、瞬く間に女性部屋を駆け抜けた。
先日、解放軍は帝国の空中要塞トラファルガーの襲撃を受けた。
辛くも、将軍二人とグドルフを撃退することに成功し、ヨヨはトラファルガーの動力となっていた、神竜ヒューベリオンに接触を図る。
ヒューベリオンの激しい怒りに苛まれるも、帝国皇帝・サウザーの犠牲によって、王女は見事に、その怒りを克服出来た。
そして、数日後。ある噂が立った。
曰く、「神竜の憎しみを克服したはずのヨヨ様の部屋から、苦しそうな声が聞こえる」
キャンベルの神竜ヴァリトラとの接触以来、ヨヨが神竜の怒り・憎しみによって夜毎うなされていたのは周知の事実である。
まぁ、それが以前のように激しく寝込むほどのものでなくなったとして、多少なりとも残り香があるのだということも、あるだろう。
だが。人というのは、とかく物事を低俗な方向に持っていきたがる生き物なのである。
これはそんな噂が生んだ、とある一日の、青年と少女の、ほんの些細な秘め事である。
〜 『メロディア奮戦記』 〜
「…むー…」
メロディアは、不機嫌だった。
自分たちが生活している女性部屋が、ここ最近、妙な空気に包まれている。
それというのも、ディアナが数日前から、熱心に女性メンバー達によくわからないことを話し始めてからだ。
…が。ディアナは、どういうわけか、あれだけ噂を広めるのに執心だというのに、自分のところにはその噂を話してくれない。
何度もせがんではみるのだが、返ってくる答えはいつも、
「メロディアには、まだちょっと早いかもね〜」
という感じで、暖簾に腕押しであった。
何故だろう。自分が子供だから?だとしたら、どんな噂か?
いや、そもそも、理由がどうであれ、自分だけが仲間外れにされるというのが我慢ならない。
メロディアの不満は募るばかりである。
子供というのは、疎外感には敏感である。同時に、その行動力も大人の追従を許さない。
彼女が動き出すのに、それ以上の理由は、いらなかった。
「…よし、決めた」
ふん、と鼻息荒く、彼女は事の真相を暴くべく、女性部屋を後にした。
〜 〜 〜
「「女性部屋の噂?」」
男性部屋の休憩室、テーブルにかけてカード片手に向き合っているラッシュとトゥルースは素っ頓狂な声を上げた。
「うん。ほら、最近、ディアナが何かいってこなかった?」
「…っていわれてもなぁ…」
「ええ…」
シュ、と、積まれたカードの山から一枚抜き取るラッシュ。同時に一枚、ぺち、と手札を切る。
二人は顔を見合わせ、少女の問いに歯切れの悪い返事をする。
「こっちには来なかったと思うぜ、メロディア」
「…そうなんだ」
肩を竦めるラッシュを見て、メロディアは嘆息する。
それを見て、トゥルースは一言助言する。
「その噂、断片的にでもいいですから、手掛かりはありませんか?」
「え?」
「少しでも情報があれば、そこから推理して辿り着けるかもしれません。
或いは、ディアナ以外から噂が流れてきているかもしれませんし」
言いながら、山札からカードを抜き取る。
「…ん、そっか。…えっと、ちょっと待っててね、思い出すから」
「ああ。…っと、フルハウスだ」
「残念、フォーカードです、ラッシュ」
げ、と下品な声を出したラッシュは、懐から乱暴に硬貨を毟り取って、渋い顔でテーブルに叩きつける。
〜 〜 〜
夜毎ヨヨ様の部屋から苦しそうな声が聞こえる
でもヨヨ様は神竜の憎しみなんかへっちゃらなはず=@
声が聞こえるようになったのはパルパレオスが来てから…
「………」
「こんな感じ」
メロディアが何とか盗み聞きで収集した噂の断片を聞き、二人は先ほどまでの軽快な空気を淀む。
そりゃあ、そうだろう。真っ当な知識を持った大人が、こんな情報から導き出せる結論なんて、一つしかないのだから。
「どう?どう?何か分かる?」
「あー…メロ…ディア。これは、だな…」
「………むぅ」
心当たりあり、と読み取り、顔を輝かせるメロディアに、二人は気まずく視線を泳がす。
「メロディアには、まだ少し早いと、思います…」
「なんでよー!?」
相談を持ちかけ、散々考えて、まとめた情報を提示して、出てきて結論は結局、ディアナのそれと同じだった。
ここまでの不満を募らせていたメロディアは、頬を膨らませて駄々を捏ねる。
「ああ、いや、だって…なぁ?」
「…はい。流石に…」
手詰まりである。こんな年端も行かない少女に、そんな下世話な説明を嬉々としてするほど、二人は悪趣味ではない。
「ディアナもそういって、何にも話してくれないんだもん!だからラッシュとトゥルースのとこに来たんだよ?」
「あー、あー…どーすっかなぁ、トゥルース」
「ラッシュ、まずは落ち着きましょう。落ち着いて、現状を把握して…」
苦虫を噛み潰したような顔をして、打開策を練る二人。
…しかし。神は気まぐれを起こしたのか、今回ばかりは、この好奇心溢れる少女に、大人の階段を上って欲しかったようである。
―――バタンッ
「ラッシュさん、トゥルースさん!頼まれ物、調達して来たっすよーっ!」
突然。三人だけの休憩室の入り口のドアが、大声と共に勢いよく開いた。
彼らが一斉に振り向いた先にいたのは、一人のクルー。
―――そして。その、不運(いや誰の運が、とはこの際特定しない)にも、このタイミングでここに来てしまったクルーの両手には。
…どう見ても、無垢な少女の目に触れてはならないだろう書物が、高々と、掲げられていた。
「「!!!」」
「?」
「…って、え?」
一瞬にして、場の空気が凍りつく。
先ほどまでの淀んだ空気が、冬の雨の日の湿っぽい寒さだとしたら。
今度のは、さながら絶対零度の凍結地獄である。
「…!」
タンッ
こうなると、切り替えが早いのはメロディアである。
幼いながらも戦場に身を置く彼女。
そのバイタリティと恵まれた魔法教育による感受性の高さも伴い、いち早くこの空気の意味する所を理解し、駆け出した。
「あ…!」
両手の書物を、奪われる。突如として自分に突撃してきた少女に対し、非戦闘員であるクルーは、成す術もなかった。
「…これ。なに?」
ふふふ、と、小悪魔的な笑いを浮かべ、奪取した書物を手に振り返るメロディア。百点満点の、勝利の笑みである。
「「………」」
項垂れ、観念する二人。
メロディアの不敵な笑いが、
「ホントのこと話してくれないと、何だかわかんないけど、この本を皆のところに持っていっちゃうぞ☆」
と、告げていた。
…因みに。クルーの方は最後までただ呆然と、何が起こったか理解できぬまま立ち尽くしていた。
〜 〜 〜
「…んーと…」
一時間後。
メロディアは、ファーレンハイトの甲板に来ていた。
階段を上り、この艦でも数少ない、一面の青空を仰ぐことが出来るスポットに至る。
生い茂る芝生の上で、サラマンダーやムニムニ、戦竜隊のドラゴンが各々眠ったり追いかけっこをしたりしている。
彼女はそれを横目に、キョロキョロと、『彼』の姿を探す。
「…?メロディア、何しとるんじゃな?」
「あ、ドラゴンおやじ」
珍しい来客の姿に、サンダーホークの体を洗っていたドラゴン親父は手を止める。
メロディアは探す手間が省けたと、笑みを浮かべる。
「ねー、ビュウ、見なかった?」
「ビュウ?ああ、ビュウなら、裏の林で寝とるよ」
快く、先ほど巡回とドラゴンの餌やりを終えて彼が向かった先を教えるドラゴン親父。
「ありがと!じゃーね!」
「あ、ビュウ、疲れとるから、あんまり我侭しちゃいかんよ!」
「だいじょーぶ!気持ちよくしてあげるだけだからっ!」
駆け出すメロディアに、注意を促す。
ドラゴン親父も、彼女の言うことなので、肩でも揉んであげるのだろう、と感心し、それ以上気にも留めなかった。
実際、傍から見れば、何の変哲もない祖父と孫娘の、お気に入りのお兄ちゃんに関する会話に見えたろう。
だが。ドラゴン親父は、見逃していた。彼女の手に下げられていた、少し角ばった袋を。
〜 〜 〜
「…!」
林に入って数十秒ほどで、目的の人物を見つけた。
林といっても、ファーレンハイトの最後尾に茂る木々は小規模だ。
野生の動物がいるでもなし、人の気配があれば、例え寝ていてもすぐに分かる。
「ビュ…!!むぐっ」
いつもの癖で、叫んで飛びつきそうになる。今回の目的は、それでは果たされない。
というより、そんなことをしたら、先ほどのラッシュたちの反応を見るだに、彼は自分の行為を許してくれないだろうから。
今日はこっそりと、彼に近づいていく。
「すぅ…すぅ…」
林の中の、一際大きな木に背を預け、穏やかな寝息を立てる、カーナ戦竜隊隊長、ビュウ。
いつも身に着けている堅苦しい武装類は、脇の木の枝にまとめて引っ掛けてある。
「…うん」
それを見て、外す手間が省けて好都合、と、メロディアは微笑む。
頷くが早いか、彼女は手に持っていた袋を地面に置き、しゃがみ込む。
「すぅ…すぅ…」
規則正しい寝息。覗き込んだ青年の顔は、普段の凛々しい面持ちを崩し、穏やかに安らいでいる。
日常と戦場、両方の過密な実務から一時だけ解放され、夢の中で疲れを癒しているのだろう。
「………ビュウ」
彼の名を、囁く様に、小さく呼ぶ。当然、反応はない。
それを確認し、彼女は徐に――――――彼のベルトに、手をかけた。
〜 一時間前 〜
「せい…こう?」
「そう。性交」
メロディアに(人聞きは悪いが)脅迫され、彼女に性教育を施すことになったラッシュとトゥルース。
彼らはさっさと終わらせてしまおうと、とりあえず男女の性の意義について、洗いざらい吐いてしまうことにしたのだった。
「ヨヨ様とパル公は、その………多分、それをしてるんじゃないか、って、そういうことだろうよ」
「ラッシュ…」
ヨヨに思いを寄せていたラッシュは、やけっぱちになって吐き捨てる。トゥルースはそれを、複雑な面持ちで見つめる。
「えと…お互い好きな男の人と女の人が、するんだよ、ね?」
「一般的には、そうなります。ですが―――」
「こら、トゥルースッ!」
トゥルースの脳裏を、砂漠のラグーン・ダフィラでの一夜が過る。
危うく余計なことを口走りそうになったところを、ラッシュに止められる。
「…すみませんでした」
「???………それをすると、男の人は、気持ちいいんだ…?」
「「う…」」
こんな幼い女の子に、それを肯定しろというのか。否、現状では、しなければならない。
この辱め、殆ど拷問である。
「そっか…そっか。うん、わかった。ありがと」
スック、と立ち上がり、何を思い立ったか、手に持った例の本を見つめるメロディア。
扇情的な衣装を纏った、艶かしい女性で飾られた何ともいかがわしい表紙を見て、何を考えるのか。
「その、せいこうのやり方。この本に書いてある?」
「え?ま、まぁ、多少工程をすっ飛ばしてるだろうけど。………ちょっと待った、メロディア、何するつもりだ!?」
「ラッシュ、トゥルース、これ、貸してくれる?」
「!!?な、や、約束が違いますよっ!」
激しく狼狽する二人。あれほどの拷問を受け、まだ何かあるというのか。
「だいじょーぶだよ!あっちの部屋には持っていかないし、ちゃんと返すから!貸してくれないと…」
「わかった!わかったよ!好きにしてくれ!!」
もはやヤケクソになって承諾するラッシュ。トゥルースも、今回ばかりは敢えて彼の迷惑な大声を黙認する。
…結局。今回の一番の被害者は、この二人であった。
〜 〜 〜
噂の真相に辿り着き、彼女が次に興味を持ったのは、その実践だった。
何しろ、大人たちがこぞって自分に隠し通そうとしたことだ。子供であれば、背伸びしてやってみたいと思うのが世の常であろう。
まぁ今回のは、少しばかり背伸びのしすぎであると、いえなくもないかもしれないが。
それをすると、男の人は気持ちいい
メロディアがこのフレーズを聞き、彼女が好意を寄せている―――といっても、それが男女のそれかどうかには疑問が残るが―――ビュウに矛先が向かうのには、それほど時間はかからなかった。
―――で。時は現在。
彼女はこうして、憧れの青年の寝込みを襲っているのである。
「ん〜…とっ」
ベルトを外し、ぎこちない手つきでビュウのズボンをズリズリとずらしていくメロディア。
違和感に気づいて起きやしないかと、途中数拍間隔で彼の寝顔を伺う。…余程疲れているのか、はたまた誰もいない、いるはずがない旗艦の甲板だから安心しきっているのか。彼は殆ど反応しない。
「…♪」
ことが旨く運び、上機嫌でズボンの下から現れた彼の下着に手を掛ける。
そして。
―――ズリッ。
「………っ…わ…ぁ…」
勢いよく引っ張ったビュウの下着。乱した衣服の、半脱ぎの下半身を。彼の股間を、凝視する。
―――そこに現れた、見たこともない、異形の、ナニカを―――。
「…お爺ちゃんのとは、全然違う」
ほう、と溜息を漏らし、記憶の中の、かつて浴室で見た祖父の男性器をイメージする。する。する。
「…あう」
考えて、邪念を振り払う。
違う違う。こんなことをしてる場合ではなかった。しかし。
「…亀さんの頭みたいだよ。なんだか、かわいいかも」
ずらした下着の淵から、ダランと弛緩しているビュウのモノ。
見れば見るほど、好奇心をそそられる。青年の、まさしく活動期真っ盛りの男性器、その実物である。
初めて目にする彼女が興味を持つのも、仕方ない。
「…えっと…」
僅かに動揺しながら、脇に置いた袋の中をゴソゴソと物色する。
いじる間もチラチラとビュウの股間に目がいき、中々目的のものを取り出せない。
「うー…んー」
…と。四苦八苦しながら彼女が漸く取り出したものは。…ま、いうまでもないだろうが。
例の、いかがわしい本であった。
「確か、この辺に…と」
パラパラと、何とも扇情的・変質的な情景が続くページを捲っていく。
前もって少しだけ内容を確認し、初心者の自分にも出来そうな『コト』を、ある程度選出しておいたのだ。
いつも大変そうに動き回っているビュウに、少しでも喜んでもらいたい。
メロディアのそんな無垢な気持ちは果たして、今彼女の目の前でスーピー呑気に寝息を立てている当のご本人には予測もつかない亜空間からの一斉射撃の如き方向性で、形になろうとしていたのだった。
「…あった」
メロディアの手が、あるページで止まる。
紙面に写っているのは、仁王立ちした男性の(モザイクがかかっている)モノを、女性が上目遣いに頬張っている場面だ。
俗に言う、
「ふぇ…ふぇら、ちお…?」
というヤツである。
大半のページは、性に関してズブのど素人である彼女には理解できない専門用語(と彼女は思っている)と、(彼女にとっては)意味不明な液体塗れの写真などで埋め尽くされていて、実行するのは難しいと判断した。
それに対し、このページと他のいくつかは、このように行為の最中を写した写真つきで、何をすればいいのか分かり易く纏まっている。
メロディアはその『いくつか』をピックアップし、戦場に赴いたのだった。
行為に及ぶ前。最後にもう一度、ビュウの顔を覗き込む。
「スゥ…んく…スゥ…」
安らかな寝息。相変わらず、起きる気配はまったくない。
「…ビュウ。メロディアが、する、からね?」
微かに頬を紅潮させ、本能が訴える少しばかりの羞恥を押し殺し。彼女は、眠る彼の顔と同じ高さにあった自分の頭を、下げていく。
…近づく、ビュウのモノ。唇が触れる数寸手前で、メロディアはその小さな手で、彼の萎えたそれを持ち上げる。と。
「んんっ…」
「!」
僅か、呼吸を乱す。びくん、と肩を震わせ、視線を上げるメロディア。
…しかし、ビュウは眉を潜めただけで、やはり起きない。こうなれば、もう多少のことでは起きないのではないか。
思い切って、彼のモノを握ってみる。
「ん…んっ」
反応はある。だが、それだけ。
「…ビュウ…ん…」
脇に広げた本を覗き込む。…どうやら、咥え込む前に、先ずは男性のモノをぼっき≠ニいう状態にしなくてはならないらしい。
これについては、ラッシュがいっていた通り、読み手にある程度の知識があるのを前提に工程を省略しているのか、二冊の本のどこを見ても明確な答えはなかった。
ただ、彼女がいくらかを流し読みし、それら全てに共通する事項をまとめ、導き出した答えがあった。
何でもいいからとりあえずいじって刺激を与えてみる
…間違いではない、というのが、中々に悲しい。
畢竟、男性器というのは適当に刺激をすれば一先ず反応を返すのである。
「ん…ん…」
シュッ、シュッ、シュッ。手にモノを持ったまま、上下に擦ってみる。
同時に、不規則に握力に強弱を持たせ、くにくにと揉んでもみる。たまに、指を伸ばして、下の陰嚢もふにふにと突付く。
出来うる限りの、痛くなさそうな弄り方を考えて、実行に移していく。
「…く…んあ…」
次第に、ビュウの寝息のリズムが不安定になっていく。
歪んでいく彼の寝顔を、初めは横目に見ながらモノを弄っていたメロディアだったが、次第に顔ごと上に向け、正面に彼を捉えるようになる。
彼女は不思議そうに、彼の変化をまじまじと観察する。
本当に、このやり方でいいのだろうか。
ビュウの明確な返答を聞きたい。きっとビュウなら知っている。もっと気持ちよくするには、どうしたらいいのか。
メロディアなら、何でもしてあげるから。ビュウが、してほしいっていってくれれば、やってみるから。
考えながら、それでも手の動きは止めない。寧ろ、先ほどより更に早まっていくようだ。
そして―――。
「―――――――――あ」
はっと、我に返る。手の中の、違和感。先ほどまでの、柔らかい感触が、ない。
ビクン、ビクン、と脈打ち、まるで独立した生き物であることを主張するように。『ソレ』は、彼女の手の中で、立っていた―――。
「…なに、これ…」
不用意に視線を落とし、呆けるメロディア。
己が掌で、猛々しく鎌首をもたげる男根。その有様には、先ほどまでの、僅かな可愛らしさは見る影もない。
その変化に、激しく戸惑う。
だって、さっきまで、手の中に収まってたのに。こんな、こんな、大き、く…。
彼女の思考が真っ白になっている間も、屹立した醜い男根は、尚も彼女の、穢れのない瑞々しい掌を内側から圧迫する。
「…これが、ぼっき…」
今日何度目かの溜息を、ほう、と吐く。ピンク色の亀頭を見つめ、更に頬を紅潮させる。
「…っと。いけない、次は、と…」
思考を強引に引き戻し、再び横の本に目をやる。
そして、息を呑む。
「…っ」
いよいよだ。ふぇらちお≠フ、本番。
バクンバクンと、彼女の心臓が内側から感情の昂ぶりを伝えてくる。
「………」
スゥ…フゥ。一度だけ、深呼吸。
口に含むために、顔を男根に近づける。ツン、と、微かな汗臭さに混じった異臭が鼻を突く。
覚悟を決めて、彼のモノの先端を、柔らかな唇に、触れさせる。
「…んちゅ…!」
ビクンッ。瞬間、モノが明らかな反応を返す。勃起前よりも、明確な、返答。
もっと強く、と、訴える。慌てて顔を離し、戦慄(わなな)く男根を目の前に、しげしげとソレを見つめる。
…と。数拍、その場で固まった後。彼女は何を思ったか、無邪気に微笑んだ。
「…うん。メロディアが、もっと、してあげるね」
語りかけ、ピン、とモノの先端を軽く弾くメロディア。
…どうやら、彼女は強い自己主張をするビュウのモノに、ある種の動物的な愛らしさを見出したらしい。
となると、後は早い。何しろ彼女は、オレルス中で忌み嫌われるプチデビにさえ分け隔てのない愛を注ぐのだ。
一度そこに愛らしさを見出した彼女が、今更、人間の性器に何の嫌悪感を持つというのか。
「は…む…」
今度は躊躇いなく、再び顔を落とし、亀頭を口に運ぶ。
その様、傍から見たら、とてもその行為が初めてとは思えない思い切りの良さだった。
「ん、ん、ん…」
あむあむ、と、軽く口に含んだ亀頭部分を唇の淵で圧迫してゆく。
ビュウのモノは、刺激を与えるたびに、それと分かる反応をしてくれる。
メロディアは次第に、それが純粋に、喜びと楽しさに変わっていくのを実感する。
「ぷはっ…」
一度、口を離す。ひくつく男根が、名残惜しそうに脈打っている。
「ふふっ」
小悪魔的な笑みで、それを眺め、慈しむように愛でる。
もう一度可愛がってあげようと、今度は舌先を亀頭に這わせようとした瞬間―――。
「――――――メロディア。何をしてる…?」
「へ―――?」
舌を突き出したまま、頭上からした声の主の方に視線を向ける。結果的に、間抜けな構図になる。
…メロディアが見上げた先。
いつもの仏頂面に、まるで漫画のような大きな冷や汗を張り付かせたビュウが、こちらを見下ろしていた。
「…ビュウ。いつ、から?」
「………もっとしてあげるね、ピン≠フ辺りから」
いつも通り、感情を顔に出さないよう努め、冷静に状況を説明するビュウ。
巡回を終え。誰も来ないだろう甲板の裏の林で昼寝をし。
違和感を覚えて目を覚ましたら、自分の性器を仲間の少女が口にしていたのだ。
そんな無茶苦茶な光景を寝起きにかまされたこんな状況で、仮初とはいえ平静を保っている彼には、拍手を送りたい。
…だが、本人の努力とは裏腹に、不器用な仏頂面に覆われた彼の内心を大なり小なり、読める人間は艦内には少なくない。
因みに。メロディアは大≠フ方である。
「…ビュ〜ウ」
彼の微妙な表情の歪みから動揺を読み取ったメロディアは、そのまま、行為を続行しようと、微笑む。
「っ…」
メロディア本人は気づいていないだろうが。今の彼女は、性に対する意識が芽生え始めている。
実際に行為に及び、先ほどよりも更に紅潮した頬で小悪魔的な笑みを浮かべる彼女は、幼いながらに―――既に、女≠セった。
その様子を目にし、一瞬、普段のメロディアとのギャップに魅了され、うろたえるビュウ。
「…あむ」
「くあっ…!」
その隙を、メロディアは見逃さなかった。
口を僅かに広げ、唾液に塗れる亀頭を再び、勢いよく口に含む。
瞬時に、ビュウの背中に電流が走る。未体験の快感に、思わず、声が漏れる。
「メロ、ディア、ちょ…」
「ん…ん…ふ」
今度は更に口を大きく広げ、根元まで口に納めようと頬張る。
「ぐっ…!」
更なる刺激の急襲に、ビュウはあからさまに顔を歪める。
無茶苦茶だ。寝て起きて、気がついたらメロディアが俺のをしゃぶっている?何の間違いだ。冗談は王女だけにしてくれ。
「んくっ…っ!」
流石に、容易には入らない。こつん、と奥に届いた男根の先端を感じる。
ズリュッ。
僅かに咽(むせ)て、刺激を受け続けて更に大きくなった男根を、一度引き出す。
「ぷはぁ…ふぅ…ふぅ」
つう、と彼女の口と怒張の先端の間を、粘液が糸を引く。
唾液に塗れ、ビクンビクンと、力強く戦慄く男根を、うっとりと見つめる。
「………」
上気した頬に、屹立した自分のモノを前に、恍惚とした表情を浮かべる幼い少女。
その背徳的な光景に、ビュウは僅かばかり、理性を緩ませる。
「メロディア」
出来るだけ、優しく問いかける。だが。
「あ…あのね、ビュウ」
「?」
返ってきた答えは、弱弱しかった。
「メロディア、頑張るから、その、やらせてほしいの。下手かも、しれないけど、頑張って、気持ちよくなって、ほしいから、だから」
「―――――――――」
前言撤回。彼の理性は、大いに緩んだ。
何だ。要するに。今、彼女は、自分のモノを根元まで飲み込めなかったことを、『巧く出来なかった』と詫びているのか。
冗談じゃない。あんなのをいつまでも続けられたら、数分と持たないだろう。
「ビュウ、いつも忙しそうにしてるから、その、ラッシュとトゥルースに、男の人は、こういうことされると気持ちいいって」
矢継ぎ早に、支離滅裂な釈明を続けるメロディア。その唇を―――。
「ん…ふ…」
「………」
己が唇を合わせ、強引に塞ぐ。半ば、舌を押し入れ、彼女の口内を蹂躙する。
「ちゅく…ん」
それも、僅か。別に、彼女を貪ろうとキスをしたわけではない。今のは、彼女を落ち着かせるため。
第一、今ここで欲望に任せて彼女を犯したら、彼女の厚意を無駄にすることになる。
いくら俺でも、そこまで腐ってはいないつもりだ。
「メロディア………!!」
「…はぁ…はぁ…」
引き離し、彼はすぐに『やめときゃよかった』と、後悔した。
赤く上気した顔。僅かに目に溜まった涙。だらしなく、同時に艶かしく口元に光る唾液の跡。乱れた呼吸。
それらが彩る無垢な少女の、何という淫靡な事か。
確かに俺は童貞だ。だが、強姦や脅迫に走るほどイカれてもいないし、こんな年端も行かない幼子に手を出すほど、飢えが臨界点に達しているわけでもない。
だがしかし。この状況は、如何ともしがたい。
情けない話だが、既に俺の息子は俺の制止など全く受け付けないところまでいきり立ってしまっているのだった。
「ビュ、ウ…」
「メロディア。俺のいう通りに、出来るか?」
優しく、語り掛ける。
ビュウは、恐らく薄々気づいていただろう。そうする自分の滑稽な仏頂面が、これまた滑稽に赤く染まっていることに。
「ん…うん!メロディア、がんばるよ!」
ビュウの言葉で、弛緩していた自我を取り戻し、ふん、と可愛らしく気合をいれる。
そんなメロディアを見て、彼はいいようのない、妙な興奮を覚える。
「じゃあ…まずは、先を、舐めて」
「ん…」
再び顔を落とし、いわれた通り、ビュウの股間でそそり立つモノの先端に、突き出した舌を触れさせる。
ぺろり。
一瞬、うっ、と呻いた彼を見上げるが、彼の視線が、続けて、と訴えた。
確認を得て、メロディアはもう一度、その愛撫を続行する。
「…そのまま…うん、その調子」
「…ふ…ん…」
れるれる、れる。
先端の尿道口に舌先をちろちろと這わせ、微妙な刺激を与え続ける。
「そう…じゃあ、次は、そのまま、手で、擦って、みて」
「ふぁ…ん」
舌を突き出したまま、視線だけ上に向け、甘ったるい返事を返す。
指示通りに、メロディアは、男根に添えていた手を、徐々に、縦に動かし始める。
青筋が立つ醜悪なモノに、少女の白く美しい手が、リズムよく絡みつく。
「!く…」
にぎ、にぎ。メロディアは靄のかかった理性で、愛撫する手に力を込める。
元より力の弱い少女の、理性の弛緩した状態での精一杯の握力は、彼の性器に絶妙な快感を伝えていく。
―――と。気がつけば、彼女は手で男根を扱くのに夢中で、いつの間にか舌を引っ込めてしまっている。
「メロディア…口が、止まってる」
「ふぇ?…あ、ごめ、んね…」
れる、れる、ぎゅっ。
今度は、手の動きをそのままに、舌先が亀頭に密着する。
「っ!!」
ぞくり、と彼はあまりの快感に打ち震える。
行為に慣れが出てきたのか、メロディアは夢中で、二つの愛撫を一定のリズムで繰り返していく。
れろ、れろ、シュッ、シュッ、れる、ギュッ、シュッ。
時々、下の陰嚢も軽く揉みながら、彼女は愛撫のコツを掴もうと積極的に行為の幅を広げていく。
それを見て、ビュウは、断続的に襲い来る刺激に視界を歪ませながら、次の指示を出す。
「…はぁ…メロディア。先、口に、入れて」
「ふ…ふん…」
舌を突き出し、見上げながら首肯する。
と、言うが早いか、メロディアは唾液に塗れて、てらてらと光を反射する亀頭を、そのままの勢いで咥え込んだ。
「あっく…!!」
突然の刺激に、ビュウは呻く。
びくりと体を震わせ、メロディアはモノを口に含んだまま、恐る恐る上の彼の様子を伺う。
「大丈夫。気持ちいい、から」
「ふぅ…フん…」
「…歯を、立てられると、痛い。全部の歯を、上唇と下唇で包んでみるんだ。分かるか?」
こくん、と、僅かに迷いながら、『やってみる』と目で応える。
メロディアはいわれた通り、口先を窄め、奥に押しやる。
そのまま、口に含んだ亀頭部分を、圧迫する。
「ふ…ん…いい、そう」
「ん、ん、ん、ん…」
小さな口に、これ以上ないほど張り詰めた怒張の先端を頬張り、一生懸命に愛撫を続ける。
勿論、両手で扱いたり、揉んだりするのも忘れてはいない。
「………はぁ」
思わず、感嘆の溜息が漏れる。
小気味のいいリズムが、ビュウの男根に心地よい刺激を伝え続ける。
「…ん…ぶゅう、ひもひいい?」
「…咥えたまま喋るな」
むぅ、と仏頂面をいつも困ったときのように歪ませ、照れ隠しをするビュウ。
悔しいが、気持ちいいし、その与えてくる快感に反して子供っぽい仕種をするメロディアも、十分に、魅力的である。
「メロディア、もう少し、強くしても、いい、けど…?」
「んう?…ん、びゃあ…んん」
ズズッ!
「!?」
メロディアは、一気に男根の半ばまで口に押し込んだ。
ビュウにとっては完全に不意打ちである。もう少しどころか、これは、少し気を抜けばすぐに達してしまうほどの刺激だ。
「んう、ん…んんっ」
驚き歪めた彼の顔を、手応えあり、と判断した彼女は、そのままのペースで、根元まで口に納めようと顔を落とし込む。
先ほどは咽て、顔を離してしまったが、今の彼女はビュウからの指示を実行することで愛撫のコツを掴み、無理なく咥え込んでいく。
「くぅっ…メ、メロ、ディ…!」
この数分で、彼女がここまでの性技の上達を見せるとは思わなかったビュウは、不安定になっていた理性を一瞬で地平の彼方に押しやられる。
次々と飛来する極大の快感の波に、彼は一気に絶頂へと駆け上げる。
彼女の名を、呻く様な声で捻り出すが、既に彼女は自分の行為に入り込み、まるで耳に届いていない。
「く…ん…!!」
メロディアの舌が、口内に含まれたままの男根を這い回る。
カリ、裏筋、尿道口。より激しい反応を返す場所を打診する様に、彼女の舌は別の生き物のように暴れ回る。
「ん、ふ…ん」
更に、息苦しいのか、彼女は時々、急激に口で外気を吸引する。
それがより一層、ビュウのモノを吸い上げ、激しく刺激する。
既に彼女の唾液と混じり、どちらがどちらか判別は困難になっているが、彼のモノの先端からは夥しい量の先走り液が分泌されている。
だが、メロディアはそれをも、自分の行為にビュウのモノが気持ちよくて反応してくれているのだ、と解釈しお構いなしに啜り上げる。
それが、どれほど彼の快感に還元されているか、当人は認識不足ではあったが。
「メロ、ディア…はぁ、はぁ…そろそろ…!」
「ん、ん、ん、ん…」
口での激しい往復、舌での絡みつく愛撫、柔らかい両手でのマッサージ。
奏でられる三重奏に、ビュウのモノはいよいよ限界に達する…!
「メロディア、離れろ…!」
「ふぁ!?」
ぐいっ。
ビュウは力任せに、両手で彼女の顔を男根から引き剥がした。途端―――。
「くあ…っ!!」
びゅくっ、どくどくっ。
「!?…ふぇっ!」
ビュルッ、ビュクビュクビュクッ、ビュルルルッ!!
二、三度の痙攣の後、先走り液が混じった初撃が打ち出された。
その次の瞬間、パンパンに張った亀頭の先端から、凄まじい勢いで精液が迸る。
ビュククッ、ビュルビュルッ…。
「…ふぁ…はぅ」
メロディアは何が起こっているのかよく分からないという風に、呆然と、顔や衣服に降りかかる白濁液も構わずに、目前で起こっている現象を、ただ呆然と見つめる。
「くっ…はぁ、はぁ…」
まるで嵐のような快感が去り、ビュウはぐったりと、背後の大木に体重を預ける。
「………」
ぺろり。
頬や鼻に付いた、粘り気のある、見たこともない液体を舐めとり、メロディアは一人、不思議な味、と感想を漏らした。
「………む」
その光景を見て、ビュウのモノが再び鎌首をもたげそうになったが、彼はそれを、今度こそ強引にねじ伏せたのだった。
〜 〜 〜
「それ、なんとかしないとな」
「あう…変な匂い、とれないよ〜」
乱れた衣服を整え、ビュウはメロディアに付着した白濁液を拭き取ってやる。
しかし、至近距離で発射された精液を浴び、こびりついた衣服の異臭はとれず、メロディアは少し肩を落とす。
「…それで。なんで、こんなことしたんだ?俺の疲れをとるにしても、何もこんなやり方でなくてもいいだろう」
当然の疑問を口にする。
こんな状況でもなければ、ビュウは間違いなく、メロディアの行為を拒否しただろう。
「あう…だって」
かくかくしかじか。
「………成る程な。全く、あいつらの間の悪さと来たら…」
事の経緯を聞いたビュウは、呆れて顔を右手で覆う。
「でね、その、性交っていうの、を…好きな男の人と女の人がして、男の人は気持ちいいって聞いたから…」
彼女の一生懸命な弁解を聞きながら、ビュウは脇に広げられたエロ本を手に取る。
「…ふん。あいつらも、随分盛ってるみたいだな。ま、仕方ないか」
「?」
パラパラと本の中身を観察しながら、ビュウはもう一度、呆れ顔をする。
「…ねえ、ビュウ。あの噂、知ってた?」
と。突然、メロディアは真剣な声で、恐る恐る彼に訊ねる。
「…あの噂?」
「ヨヨ様が、その、…してるかも、って」
「知ってたよ。ちょっと前に、巡回先でディアナに聞いた」
あっさりと。彼は、その事実を認めた。
「ビュウは、ヨヨ様のこと、好きだったんでしょ?じゃあ…」
子供ながらに、気を遣って問う。
だが、ビュウはそんな彼女を見て、相変わらずの仏頂面に僅かな微笑を浮かべ、口元を緩ませる。
「まぁ、仕方ないさ。色恋沙汰って言うのは、そういうものなんだろう、きっと。とったりとられたり、捨てたり捨てられたり。
…尤も俺の場合は、随分中途半端な扱いなんだがな」
少し皮肉っぽく苦笑し、彼は目を伏せる。
それを、納得がいかない、という風に、メロディアは悔しそうに見つめる。
「だけど、それでも」
と。今度は、はっきりとそれと分かる微笑を湛え、メロディアを見下ろす。
「カーナが滅んで、塞ぎ込んで、立ち直って。…あの時誓った言葉は、嘘なんかじゃないから。
どんなになっても、俺はやっぱり、ヨヨを守りたいんだと思う。…半分くらい、意地と自己満足だけどな」
真っ直ぐに自分を見つめ、告白する彼の言葉には、迷いはなかった。
メロディアには大人の恋愛のことは、まだよく分からなかったけれど。それでも、彼が今の自分を嫌いではないということだけは、確信を持って言えた。
「…さて。そろそろ、戻らないとな」
立ち上がり、体に付いた土ぼこりをはたき落とす。
メロディアはそれを見上げ、一拍遅れて立ち、彼に並ぶ。
「ああ、そうだ。忘れてた」
「?」
そっぽを向き、僅かに頬を染めて、ビュウは頭を掻きながら、傍らの少女に告げる。
「…ありがとうな、メロディア。嬉しかった」
「!………うん!」
一言だけ、簡潔に述べられた、少女の奉仕への礼。
けれど、彼女にとっては、それ以上の報いは、あり得なかった。
「でも、もうこういうことはするなよ。メロディアにはまだちょっと早すぎる」
「え〜、なんで?ビュウまでそんなこというの?」
「だって、メロディア、その本がなければ、こういうことしようと思わなかっただろ?それが早すぎるって言うんだ」
「む〜…」
確かに、その通りだ。自分はあまりに、知識がなさ過ぎる。
今回の新鮮な体験の連続で、それは実感できた。ならば―――?
「じゃあ、ね、ビュウ。メロディアに、そういうこともっと教えて!」
「…は?」
「ビュウが色々教えてくれれば、メロディアももっと上手くなるし、気持ちよくしてあげられるよ!」
「いや、ちょっとまて、何を」
嬉々として提案するメロディアの迫力に、ビュウは気圧される。
「ビュウだって、気持ちよかったんでしょ?」
「…う」
それは、否定できない。悔しいが、メロディアの上達の早さは目を見張るものである。
…と、いうより。このまま彼女を放っておけば、いつまた今度のように昼寝の最中に強襲を受けないとも限らない。
午後の安らぎの一時を奪われることだけは、何としても避けたい。
ならば、予め要求を呑んで、軽めな性教育から施していったほうが、得策ではなかろうか。うむ。
「…わかったよ。でも、慌てるのは無しだ。ちゃんと教えてやるから、早まったことはするんじゃないぞ?」
「うん!!やったーっ!」
ぴょん、と跳ねて、満面の笑みを浮かべるメロディア。
その様子を見るに、これからのビュウとメロディアの間で秘密裏に行われる性教育の先が思いやられるのであった。
「じゃあさ、ビュウ!えっとね、あの本に書いてあった、きじょーい≠ニかマツバクズシ≠チて何っ?」
「………」
―――本当に、先が思いやられるのであった。
〜 『メロディア奮戦記』 完 〜