オレルスの空が悲しみに染まる
その日彼女の葬儀が静かに行われた
葬儀にはかつての仲間たちが参列し、戦友の死に皆が涙を流した
そんな中一人の男がそっと棺に花をそえる
彼女の最愛の夫、そして元戦竜隊の隊長でもあった男
彼は皆が涙する中、一人だけ涙をこらえ彼女を見送った
「安らかに・・・フレデリカ・・・・・」
あの戦いが終わってから三年が過ぎたその日彼女は亡くなった
その日ビュウは真実を知った。
いや本当は既に気付いていたのに目を逸らして逃げていただけなのかもしれない。
約束の教会に他の男と入っていくヨヨ。
既に彼女のココロから自分は消え去っていたのだと。
その真実を目にしてからの日常はビュウにとって地獄だった。
幸せそうなヨヨを見る度に惨めな思いに駆られ逃げ出したくなる自分。
反乱軍のリーダーとして(こう言うとマテライトは激怒するが)戦わなければならない自分。
二つの自分の間でビュウは苦しみ続けた。
そんなビュウを救ったのはフレデリカだった。
「ビュウ・・・私じゃ駄目ですか・・・・・私では、ビュウを支えられませんか・・・・」
病弱で常に薬を手放せないような身体なのに、
それでも健気に自分を慰めてくれるフレデリカに次第にビュウの心は惹かれていった。
そして、アレキサンダーを封印し全てが終わった後二人は艦を降り、フレデリカの願いでもあった薬屋を始めた。
二人は幸せだった・・・・・
そう、一年前にフレデリカの病状が悪化するまでは・・・
「ここってこんなに広かったんだ・・・・・」
皆が帰ったその日の夜、独りきりになった家でビュウがそっと呟く。
もう愛するフレデリカはもう居ない。静まり返った部屋の空気がその現実を実感させる。
「久しぶりに会ったけどみんな全然かわってなかったなぁ。」
返事は返ってこない、当たり前の事だ。
けれども話さずにはいられなかった。寂しさに押しつぶされてしまうから。
「そういえばラッシュがワインを置いていったな・・・・」
アルコールが入れば少しは気が紛れるかもしれない。
そう思い立ったビュウは直ぐにグラスを用意し、ラッシュのワインを口にする。
フレデリカを気遣い、今まで一度も酒を飲んだことの無いビュウにとって初めての酒は、
甘く、悲しい味がした。
トントン
丁度アルコールが身体に回り始めた頃、ドアを叩く音が聞こえてきた。
「こんな夜更けに誰だろう?みんなはもう帰ったハズだし・・・・・」
不審に思いながらもビュウがドアを開けると其処には意外な人物が立っていた。