窓から射し込む穏やかな陽光。そして優しく自分を包み込む二つの腕。  
 ヨヨはいとおしげにそれを感じるとそっと頬をパルパレオスの胸にすり寄せた。そこか  
ら聞こえる鼓動はヨヨをいつも安心させる。目を閉じて鼓動を一つだって聞き漏らさぬよ  
うに耳を澄ませる。その確かな響きはパルパレオスがここにいる事の証明のように思える  
のだ。  
 ヨヨは口元を緩ませてさらにパルパレオスの胸に顔を埋めた。鼻腔が愛しい人の匂いで  
満たされる。あの教会で愛を誓い合った日の事を思い出すだけでこれからどんな事があろ  
うとも輝かしい未来だけは保障されていると確信できるのだから。  
「ヨヨ?」  
 可憐な含み笑いを浮かべる彼女にパルパレオスが訝しげに問いかける。  
「どうしたんだ? ヨヨ」  
「ふふ。ただ、私幸せだなって。そう思ったら急に嬉しくなっちゃって……。あの時はま  
さかこうなるなんて思ってなかったから」  
(あの時、か……)  
 パルパレオスの脳裏にさまざまな光景が浮かんでは消える。しかし、そのほとんどでヨ  
ヨの顔は悲しみに染まりその美しい瞳から大粒の涙を流していた。そしてその殆どがパル  
パレオスの責によるものだった。その罪悪感は今も彼を苦しめる。いつか自分は償わなく  
てはならない。そう、この命を棄てる事になろうとも。  
 
「パルパレオス……? 痛いわ……。どうしたの?」  
 腕の中でうめくヨヨの声にパルパレオスは驚き、慌てて彼女を抱く力を緩めた。ヨヨは  
不思議そうにパルパレオスの顔を上目遣いで見上げてくる。パルパレオスは無理に微笑を  
返した。  
「いや、なんでもない。……なんでもないんだ」  
「そう……。――じゃあ続きをしましょう?」  
 漠然とではあるがパルパレオスから何かを感じたのだろう、話を打ち切るようにヨヨが  
顎を上げてキスをねだる。彼はそれに感謝しながらもすぐにその艶やかな唇に無骨な唇が  
合わせた。小さな水音が、少しだけ部屋の中に響いていた。やがて離れた唇の間には唾液  
の橋がかかり窓からの光を返して、輝いていた。  
「んふぅ……。パルパレオス……」  
 吐息と共に漏れる自分の名前。見つめ返す瞳に映っているのは紛れも無く自分独りだけ。  
背中に走る情欲のままにパルパレオスは荒々しくヨヨの肩を抱いて再び唇を寄せた。  
 それはまるで睦み合うなめくじのように互いの粘液を絡み合わせて踊る。口元から垂れ  
落ちる粘液は窓から射し込む陽光を受けてきらめいていた。  
「――いいか?」  
 パルパレオスの短い問いにヨヨも短く頷き意志を返す。それを認めるとパルパレオスは  
そっとヨヨを横抱きに抱き上げるとゆっくりと寝台へと歩みを進めた。  
 
 寝台までの僅かな間。ヨヨはパルパレオスの首筋に腕を回し微笑み、無言で彼の横顔を  
眺めていたが、やがてその唇から言葉を紡いだ。  
「ねぇ……、パルパレオス、私、本当に幸せよ。幸せだから、あなたは何も気に病む事は  
無いのよ。それだけは、それだけは、憶えていて欲しいの」  
 心からの告白。嘘偽りない告白。その一言だけで、まるでパルパレオスはすべての罪を  
赦されたような錯覚に陥る。そして母国を、帝国を、親友を裏切った事さえも必然であっ  
たのであろうと思えてしまう。パルパレオスは胸が詰まりそうになりながらも、ともすれ  
ば涙がこぼれそうになりながらも懸命にヨヨに微笑みかけてこう言った。  
「……ありがとう、ヨヨ」  
 柔らかな音を立ててヨヨが寝台に沈む。それを追いかけるようにパルパレオスはヨヨに  
覆いかぶさり幾度も首筋に唇を落とした。その度にヨヨは震える吐息を漏らして、パルパ  
レオスの官能を刺激する。その刺激に抗う事無くゆっくりとヨヨの胸元へ手を伸ばした。  
(ここに我らを導き、そしてヨヨを苦しめる神竜がいるのだな……)  
 少しばかりの怒りと憎しみ。だがその苦しみからヨヨを救い出せるのは他の誰でもない  
自分独りだけ。その事実はいつもパルパレオスの自尊心をくすぐる。  
(そうだ。私だけなのだ。あの男ではなく私だけなのだ)  
 自分と同じ年下のクロスナイトの顔を思い浮かべてパルパレオスは僅かに口元を歪めた。  
つまらない嫉妬であるとは自分でも分かっている。当の彼も艦内で新たな恋を見つけてい  
るようでもある。だけれども、この感情だけは消す事ができない。そしてこれからも消え  
る事は無いのだろう。  
 
 彼女の胸は服の上からでも分かるほどに柔らかく、パルパレオスの動きに合わせて容易  
に形を歪ませた。彼女の顔がはっきりとした快楽に顔を歪ませる。それが面白かったのか  
パルパレオスは、時には強く荒々しく、時には優しく、丁寧に彼女の乳房に愛撫を加えて  
いった。  
 確かに乳房から伝わる刺激は、彼女を快楽の奔流に導くには十分だった。しかし、それ  
は導くだけだ。彼女を快楽の奔流へと身を投じさせるにはどこか足りなかった。ヨヨもそ  
れを感じ取っているのか、パルパレオスの腕を掴むと、乱れる吐息の中で懇願を伝えた。  
「お願い……、お願いだから、服を脱がせて、直接触ってほしいの……、このままじゃ、  
私変になってしまいそうだから……」  
「――ああ、すまない。それにしてもヨヨの胸は相変わらず感度がよいのだな」  
「やだぁ……。そんな恥ずかしい事は言わないで……」  
 ヨヨが紅潮した顔を覆い隠すのを、微笑み眺めながら、パルパレオスはヨヨの服へと手  
を伸ばした。しかし、すぐにその手は止まり、虚空をさまよう。少しばかりの間。それに  
耐え切れなくなったのか、ヨヨは紅潮した頬のまま不安げにこちらを見返してきた。その  
視線にパルパレオスは僅かな間逡巡した後、ようやく口を開いた。  
 
「す、すまない、ヨヨ。脱がし方が分からぬのだが……」  
「――えっ? やだ、パルパレオスったら、そんな事で深刻そうな顔をしていたの? ふ  
ふ、あなたらしいわ」  
 ヨヨがゆっくりと上体を起こして、身に纏う衣服に手をかける。パルパレオスは少しば  
かりの羞恥と自らも衣服を脱ぎ捨てるために、そっとヨヨから目を背けようとした。  
「だめよ……、パルパレオス。私が脱ぐのをしっかり見ていきゃ許さないわよ」  
「ど、どうしてだ。ヨヨ」  
「だって、これから同じような事があったら困るでしょ?」  
 言外に感じる響きに今度はパルパレオスの頬に紅が引かれる。それを可笑しそうに眺め  
ながら、ヨヨは衣擦れの音を大きくしていった。  
 やがて露わになっていく陶磁器のように白い肌。艶やかな肌。もし神の御業というもの  
があるとしたならば、きっとヨヨの姿を形作る時にそれはあったのだろう。やがてヨヨの  
身を隠すものがなくなった頃、その考えは厳然たる事実であるとパルパレオスは思った。  
「じゃあ、続きをお願い……できる?」  
 パルパレオスの衣服も全てが寝台の脇に脱ぎ捨てられるのを見届けるとヨヨがそっと呟  
いた。パルパレオスはもう一度ヨヨに覆いかぶさる事を返事として代えた。先程の続き  
に乳房に愛撫を加える。薄布さえない胸はしっとりとパルパレオスの荒れた掌に吸い付い  
てきた。掌の中心に当たる塊は硬く、ヨヨの興奮を如実に彼に伝えた。  
 
 柔らかな乳房がパルパレオスの思い通りに形を変えるのと似たようにヨヨの口から漏れ  
る喘ぎ声は時には甲高く嬌声を、時には甘く切ない吐息に面白いようにその色を変えた。  
 遠慮なく響くその声はもしかしたら隣の部屋までも聞こえているのかもしれない。しか  
し王族用の特別室だ。壁も厚く造られているだろうし、まさかそんな事は起こり得まい。  
それがヨヨとパルパレオスの出した結論だった。  
 ヨヨの乳房に愛撫を加えるのとは別に、パルパレオスの指がヨヨの下腹部の茂みへと這  
わされる。淡い金色のそこはすでにしとどに濡れており、パルパレオスの指は容易にその  
粘液を身に纏う事ができた。今のままで挿入できるようにも思えたが、パルパレオスはそ  
の淡い茂みの中から陰核を探り出すと人差し指と親指の間でそれを挟み込んだ。  
「あああっ! パルパレオス、そこ、そこ、気持ちいい……!!」  
 突然の強い快楽にヨヨの腰が跳ね上がる。それに気を良くしたのかパルパレオスは乳房  
への愛撫を打ち切ると、胸元に舌を這わせると、胸から臍、股間へと舌を下ろしていった。  
 
 やがては辿り着く舌。それをヨヨは待ち遠しげに見下ろしていた。目に映るのは舌を這  
わす男の髪だけだったが、それでもヨヨは目を放せずにいた。その興奮は下腹部へと伝わ  
り、茂みの潤いをさらに強いものしていった。ようやく舌が辿り着いた頃には、そこは想  
像以上に蜜で溢れていた。パルパレオスがいくら舐り、舐めとっても、そこが渇く事は無  
かった。それどころか、舐めるたびにヨヨの嬌声と共に今まで以上の蜜があふれ出してく  
る。それでも、パルパレオスはそこから目を放す事無く、それどころかさらに顔を近づけ  
ると、舌先で淫核の場所を正確に確かめ直すと、その核を歯で甘く噛む。  
「あああっあああ……!!」  
 ヨヨの嬌声を聞きながらもう一度、甘く噛む。今度は少しばかり力を入れて。こちらの  
方がヨヨにより高い快楽を与える事をパルパレオスは経験から知っていた。  
「き、気持ちいい……! お願い。パルパレオス、そろそろ入れて欲しいの。それに今の  
ままだと、あなたの顔が見えないの。お願い、あなたの顔を見たいの。あなたの顔が――!」  
 ヨヨの叫びに陰部から顔を上げて、ヨヨに覆いかぶさり唇を求める。しかし彼女はパル  
パレオスの顔を見ると、思いついたように人差し指で彼を制して言った。  
「ねぇ、やっぱり待って。あなたの顔が私ので、びしょびしょよ。だから――」  
 ヨヨはパルパレオスの頭に手を回し、自らの顔に近づけるとおずおずとパルパレオスの  
顔に舌を伸ばして、顔を濡らす粘液を舐め取り始めた。その感触にパルパレオスはくすぐ  
ったそうに目を細めた。  
 
「変な味ね……。ねぇ、パルパレオス、私のがおかしいのかな? それとも、女の人はみ  
んなこんな味なのかしら?」  
「そんな事はないさ。ヨヨのはおいしい。それに他の女になど興味はない。私にはヨヨの  
ものが一番おいしく感じられるのだから」  
「ありがとう、パルパレオス……。――ねぇ、綺麗になったでしょ?」  
 ヨヨの舌がパルパレオスの顔を這いずり終わる頃は、彼の顔からは愛液は姿を消した。  
しかし代わりにヨヨの唾液がてらてらと光っていた。  
「ありがとう、すっかり綺麗なったな。では、そろそろいくぞ……」  
「ええ……。きて……」  
 汗でヨヨの顔に張り付いた髪をどかしてやりながらパルパレオスが問いかける。ヨヨが  
こくりと頷くのを認めるとパルパレオスは剛直をヨヨの淫裂へとあてがい、徐々に沈めて  
いった。  
「あはぁぁ……。大きいっ……! 私の中に入ってくる……っ! ――ねぇ、動いて、も  
っと動いて、私の中をあなたで満たして!」  
 ぎしぎしとキングサイズの寝台が大きく軋み、それに合わせてヨヨの嬌声とパルパレオ  
スのくぐもった吐息が部屋を満たす。それだけだった。部屋に存在するものはそれだけだ  
った。今だけはヨヨを苦しめるこの世の残酷さは何処にも無く、ただ二人の恋情しか無い。  
「ああっ、もっと、もっと強く、あはぁ……っ! 気持ちひいっ! もっと、もっとォォ!」  
 ヨヨの膣内は温かく、そして無限の広がりを持っていた。豊かにパルパレオスを包み、  
ざわざわと彼を奥へと導き、優しく、時に強く締め付ける。きっとヨヨのものは名器と呼  
ばれる類のものなのであろう。パルパレオスのさほど多くない女性経験でもそれは確かに  
実感する事ができた。それほどまでにヨヨの中はパルパレオスの官能をこれ以上無いくら  
いに痺れさせた。  
 
 それでもすぐにでも達してしまいそうな感覚に奥歯をかみつつ、ヨヨの腰に打ちつけ、  
快感を送る。その度に部屋は新たな響きに満たされる。           
「あはぁ……っ! ひゃ、ああっ。ふかいよ…、大きいよ…、気持ちいいよ……!!」  
「ヨヨ、私もそろそろいきそうだ……っ! いいか? いいか?」  
「いいよ、いいよ……っ! 一緒に、一緒に、中に、中にっ!!」  
 絡みつくもの、包み込むもの、それらすべてが愛しくてヨヨに唇を落とす。  
「ヨヨ。愛してる……っ! お前が心の底からいとおしい……っ!」  
「私も……っ! 私も、私もあなたがどうしようもないくらいに、いとおしいわ……っ!」  
 
「あああっ……、愛している……っ!!」  
 
 溶け合い一つになった身体から同時に放たれる偽りの無い宣言。  
 彼女らの間には何も無い。どこまでも続く蒼穹も、隔たりも何も無い。あるとすれば、  
二人の恋情、愛情。誰が二人を否定できようか。できるとしたら、その者はきっと大人に  
なりきれない愚か者であるか、愛を知らない哀れな者だけであろう。  
 
 弾け、閃く二人の身体の精神。崩れ落ちる二つの影を汗と体液で湿る寝台が優しく受け  
止めた。ヨヨの淫裂はパルパレオスの出した白濁した液で貪欲に飲み干し続ける。やがて、  
飲み切れなかった分がごぷりとやけに大きな音を立てると、シーツの中に染み入っていっ  
た。ヨヨは荒く乱れた息を整えながら、満たされた腹部を優しく撫でた。  
(こんなに一杯なら、赤ちゃんできるのかもしれないわ……)  
 もしそうならば、どんなに幸せな事だろうか。幼い頃からの守り役はきっといい顔しな  
いだろう。しかし、それで心を変えるつもりはない。仮にこの交わりで子をなさなかった  
としても、これから何度もパルパレオスと交わっていくのだ。いつかは身ごもる事となろう。  
 そうしたのならば、きっとお腹の子は未来のカーナ国王となろう。しかしドラグナーの  
力も受け継がれてしまうかもしれない。そうしたら神竜からのこの悲しみも、つらさも、  
世の中の残酷さも同時に受け継がせてしまう。  
(そんな事はさせない。絶対に……させない。この苦しみを味わうのは私で十分なのよ  
ね……。だから――)  
 私は、終わらせる。終わらせて見せる。この苦しみも、哀しみも、戦争も、すべてを。  
だって、私は――  
(ドラグナーなのだから……!)  
 
「どうしたのだ? ヨヨ、何か心配な事でもあるのか?」  
「う、ううん、何でもないの。何でもないのよ」  
 訝しげにこちらを見つめてくるパルパレオスにヨヨは微笑を一つ返した。それを見てパ  
ルパレオスは少しばかり頬を紅潮させると、ヨヨを抱き寄せ、胸に埋めさせた。  
「きゃ……。パルパレオス?」  
「ヨヨ、私はきっとお前を幸せにしてみせる。しかし、もしお前が今、幸せだというのな  
らば、私はそれ以上にお前を幸せにしてみせる。約束だ」  
 ぎゅっとパルパレオスがヨヨを抱く腕に力を込める。ヨヨはその力強さを感じ取ると微  
笑み、パルパレオスの厚い胸板にさらに頬をすり寄せる。  
「ええ……。お願いね、パルパレオス。私を幸せにしてね……」  
「ああ、約束だ。私の命を懸けてでも、お前を幸せにして見せよう。それと、そろそろ眠  
った方がいいぞ。身体をゆっくりと休めなければならないのだから」  
「ええ、そうね。じゃあ、お休み。パルパレオス……」  
   
 やがて閉じられる二人の瞼。目が覚めた頃にはお互いに相手の顔を一番に見つけるのだ  
ろう。そんな二人を祝福するかのように蒼穹の中から太陽の光が寝台を包み込んでいた。  
 
 
 同時刻、ファーレンハイト艦内では股間を押さえ前かがみの者、壁に耳を押しつける者、  
真っ赤になって寝台に潜り込む者などはいるが、概ねオルレス救世軍は今日も平和であっ  
た。  
 
「ねえ、知ってる? ヨヨさまの話……。ヨヨさまの部屋から相変わらず、苦しそうな声が  
聞こえてくるの。また神竜のせいかなって思ったんだけど……。でも、ヨヨ様は神竜の怒  
りなんかもう、へっちゃらなんでしょ? 一体、何なのかしらねえ」  
「い、いや。分かんないな。ほ、他の皆には聞いてみたのか?」  
「うん。でも、知ってるようなのに誰も教えてくれないのよ。それでビュウなら知ってい  
るかもって思って。ねぇ、ビュウにもヨヨ様が苦しんでいる理由、分からないの?」  
 
(ア いや、分かんないな。(笑って誤魔化す)  
   それはね……。(正直にすべて教える)  
   実戦で教えてあげるから。布団に行こうか……。  
 
 

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