風が皮膚を撫でる感触に、ティアが曝け出された白いお尻を震わせる。
自分の体を支えるように壁についた手の爪が、かりかりとその壁面をひっかく。
膝まで下着とともに引き摺り下ろされたタイツが絡まる細い足が、
がくがくと揺れた。
「あ……も、ウル……やめ、やめてぇ……」
表通りからいくつかはいった路地裏の、人の気配はないけれど
いつ人が来てもおかしくない場所で、ティアは甘い声で訴える。
こんな場所へと引きずり込み、その背後に立って長い指先でティアの秘所を
なぶり続けるウルは、薄い笑みを美しい面にはりつけたままだ。
ティアの、響かぬよう懸命に抑える声は、ひどく煽る色を含んでいて、
ウルは赤と青の瞳を細めた。
「駄目ですよ、これはお仕置きなんですから」
そういいながら、まろやかな臀部を愛おしそうに撫でる。
「前からいっているでしょう? もう少し危機感をもって、男と接するように、と」
「あ、はぁ……」
犯す指を増やし、かき混ぜる水音も高らかに、ウルは笑う。
「それなのに今日だけで、一体どれだけの人に贈り物をしたと思っているんです?」
「だ、だって……さ、探してるって……困ってる、て、はぁ、あうっ」
だからといって、ティア自ら方々探し回った挙句、可愛らしい笑顔つきで手渡されれば、
男どもは勘違いにするに決まっている。
あの、熱に浮かされたような男どもの顔を思い出すだけで、感情が制御できなくなる。
「まったく……あなたの優しさは美徳ですが、私にとっては残酷このうえない……!」
「んんっ!」
指を根元まで差し込んで、ばらばらに動かし容赦なくティアの内壁を攻め立てる。
「それとも、私に嫉妬させることが、目的なのですか?」
そうだとしたら、ウルはティアの手のひらの上で踊らされていることになる。
「ちが、違うよ……! や、あんっ! ん、ウル……ぁ、違うの……はぁ、ああんっ!」
足の間から背骨へ、脳へと駆け上がる快感に流されながらも、ティアは否定する。
堪えきれなくなった声が、路地裏の壁に反射して高く響いた。
くす、とウルは笑う。
「ああ、ティア。そんなにはしたない声をあげては……誰かに気付かれてしまいますよ?」
「あ……あ、やぁ……! やだ……!」
それだけは嫌だと、ティアは手元を口で覆った。
「こんな場所で、こんな風にされて、そんな声をあげて喜ぶなんて……とてもいやらしい子ですね、ティア」
ふるふると否定に頭を振るティアの首筋に、後ろから口付けてウルは囁く。
「ですが……じつに可愛らしい」
「んあっ」
前に回した指先で、敏感な部分を撫であげ押しつぶしながら、
ウルは片手で己の前をくつろげた。
ティアを求める欲望を、柔らかなお尻に擦り付ける。
硬く熱いその感触に、ティアが逃げるように身を捩る。
それを許さず、割れ目にそって動かして、ティアの蕩けた入り口を探りあてる。
「は、あ……! だめ、ウル……! こんな、こんなところで……あああっ!」
首を回し、懸命にその動きを制止しようと声を出すティアに配慮することなく、
くちゅ、と濡れた音をたてるそこへ、柔らかな肉を掻き分け押し入った。
「く、ふ……」
挿入した瞬間、いつもよりなお深い快楽を貪るように、内壁がきゅうと絡みついてくる。
眉根を寄せたウルは、ティアの腰を抱きしめ、びくつく太ももに指先を這わせて、
その波をなんとか耐えた。
「あ、だめって……いった、のにぃ……はあっ、やぁっ!」
羞恥か快楽のせいかよくわからぬ涙と、
かすれた声を零すティアにおかまいなしにウルは動き出す。
互いを激しくすり合わせるたび、じゅぷじゅぷと絡み合う音が路地裏を満たしていく。
「ふふ……ここでもし、誰かがきたら、とても驚くでしょうね」
「う、んんっ!」
精霊は普通の人間にはその姿を見られることはない。
つまり、誰かがこの行為を目撃したら……ティアがひとりでよがっているようにしか
みえないだろう。
「こんな風にお尻をつきあげて、腰を振って……目撃者は、たまらくなるに違いない」
くすくすと笑いながら、ウルはティアを突き上げる。
「そのまま、ティアを犯しにくるかもしれませんよ?」
「や、やだぁっ、そんな、そんなの……は、あっ」
恋人以外に蹂躙される己を想像したのか、ティアが激しく頭を振る。
「それが、あなたに好意を持つものだったら、ことさらでしょうね……」
捲り上げたスカートの下、自分をくわえ込むティアの秘裂の赤さに目を細めながら、
ウルは言う。
「まあ、そんなことは、私が許しはしませんが」
ぬるぬると男を飲み込み、蜜を吐き出し、ひくつく場所は、
清楚可憐なティアの容姿からは想像もつかないほどに淫らだった。
だが、そうしたのは、自分だ。
何も知らぬここに男を教えこんだのは、自分だ。
快楽に蕩けた顔、やむことのない嬌声、
滑らかな肌も、この熱も、すべては自分が作り上げた自分だけのもの。
ぞくぞくする支配感に、ぺろりと唇の端を舐め、ウルはティアの中を抉る。
激しくなった動きに、ティアが背を仰け反らせた。
「いっ……あ、あああっ! や、う、ウル……だめっ、いっちゃ、いっちゃう……!」
「……ええ、どうぞ。これで、終わりと言うわけではありませんし、ね」
掠れた声でそういって、ウルは容赦なくティアを快楽の高みへと押し上げる。
「は、あ、あ……! あ、ああああー!」
びくびくと全身を痙攣させ、ティアは容易に達した。
きつく収縮する狭い場所へと、快感を共有した証を吐き出しながら
ウルは小さく息をつく。
快楽に痺れたような腰を緩やかに動かして、すべて中に飲ませたあと、
覆いかぶさるようにティアを抱きしめる。
「次に、今日のようなことがあったら――また、お仕置きですからね?」
赤く熟れた耳朶をくすぐりながら、そう忠告する。
荒く息をつくティアが、それを理解したのかは定かではない。
だが、心の底から優しい彼女のことだ。
頼まれれば、困っているものをみれば、手を差し伸べずにはいられないだろう。
どうせすぐにまた、ウルは嫉妬の炎に駆られるに違いない。
そうしたら、今度はどこでどんな風にティアにお仕置きをしようか。
「あ、ウル……! まだ、ふあっ! もぉ……いやぁ……ゆるし、てぇ……!」
そんなことを考えつつ、落ち着くのを待つことなく再び動きだしたウルの腕の中、
哀れな少女は弱弱しくすすり泣く。
「まだ終わりじゃないですよ? 当然でしょう?」
とりあえず、今日この胸のうちに宿った火をすべて受け止めてもらわなければ。
「は、や、ああっ!!」
ウルの嫉妬深さと愛情の重さに身動きできぬティアは、ぎゅうと目を閉じて
それを受け入れるしかなかった。
古い歴史をもつローアンの街の片隅、少女の細い悲鳴は誰にも気付かれることなく
風の中へと消えていった。