すでに日は落ち、世界は夜の帳に包まれた。  
子供たちが寝静まり、大人たちの時間が始まる頃合、  
ローアンの街入り口近くの下町にある小さな家には、  
ひそやかに甘い空気が満ちていた。  
 
「今日も、その、するの……?」  
「ええ、駄目ですか?」  
そんなやり取りを交わす間にも  
ウルはするすると寝台に座り込んだティアの衣服を脱がせていく。  
自分のものでもないくせに、やたらと馴れたその手つきを、  
潤んだ瞳で追いかけたティアは、口を噤んだ。  
スカートの下に滑り込ませた手で、  
白い足を隠す黒タイツをゆっくりと引きずり落としながら、  
ウルはティアの頬に口付ける。  
「お嫌なら、そういってくださいと、前々からいっているはずです」  
「うん、それはその、そうなんだけど……」  
ウルと肌を重ねることが嫌なわけではない。問題は別のところにある。  
「お願い、今日は一回で……」  
それは、ウルの回数である。  
人間と精霊は違うのか、一度で終わったためしがない。  
約束させても、いつの間にか流されて、  
ウルが満足するまで付き合わされるのは、まだ未成熟なティアには正直辛かった。  
 
「……」  
石のように固まり、葛藤をしている心境を綺麗な顔には微塵も浮かべぬウルを見上げながら、  
ティアはいつのまにかむき出しになっていた胸を、手でそっと覆った。  
そこには、毎夜ウルによってつけられる花びらが、ちらちらと鮮やかに舞っている。  
「……善処します」  
そう呟いたウルの指先が、再びティアの肌を辿る。  
「ん……、ぁ、ん、目標じゃなくて、ふぁ、絶対に、一回にして……ね?」  
「……」  
ティアの腕の下に隠された膨らみかけの胸に、手のひらを押し当てゆっくりと蠢かせながら、  
ウルはようやくその美しい面をしかめ感情をあらわにした。  
「ティアが悪いのです。こんなにも可愛らしく心地よい身体で私のことを誘うから、  
いけないのです。それなのに、どうしてそのような意地悪をいうのですか」  
意地悪ではなく切実な問題だ。連日連夜の交わりに、ティアの身体が悲鳴をあげている。  
「わ、私のせいじゃなくて……はっ、んん……  
が、我慢できないウルに……問題が、あると思……あっ、ん……」  
愛撫を与えられれば素直に反応するティアの身体は、  
どうみても男を誘う色香に包まれているのだが、それは仕方のないことで  
それに溺れるほうが悪いということらしい。  
わざとらしくため息を零しつつ、ウルは滑らかで白い太ももの内側をゆっくりとなぞる。  
「はっ、あぁっ!」  
その先にある潤い始めた秘所に、下着をずらして指先を潜り込ませれば、  
びくんっとティアの身体が跳ねた。耐えるようにきゅうと寄せられた細い眉、  
震えながら開くふっくらとした唇から漏れる吐息が、急速に甘くせつなくなる。  
そんなティアの痴態に喉を僅かに鳴らし、指で粘着質な水音を奏ではじめたウルは、口を開いた。  
「……仕方がありません。ティアの願いを叶えることは、私にとって至上の喜び。  
では、私が一度果てれば、今日はそれで終わりましょう」  
「……ん……はぁ、あ……ご、ごめんね?」  
「いいえ」  
恋人への欲望を燃料に、オッドアイを静かに燃やしながら艶やかに微笑むウルへと、  
ティアは喘ぎながら謝った。  
これで明日はこの腰の鈍い痛みとも多少お別れできるだろう。そう、心の中でティアは喜んだ。  
だが、甘かった。  
 
「……あ、ああっ! やっ、はっ――ん、ふぁあっ!」  
びくびくと、ティアは全身を震わせ今宵幾度目か、その脳裏を真っ白に染め上げた。  
「は、はぁ……はぁ、はぁ……」  
白い肌を汗で湿らせ、天を示す赤い頂をもつ胸を忙しなく上下させていると、  
くるり、身体をひっくりかえされる。  
「あ、あああんっ」  
そうしてまた突き上げられ、痙攣する内側をこすりあげられて、  
ティアは大きな声をあげながらシーツを握り締めた。今日取り替えたばかりだというのに、  
すっかりぐしょぐしょだ。  
ぐいと腰を持ち上げられて、はからずとも四つんばいの体勢になったティアの中に、  
相変わらず当然のように居座っているウルが、背中に口付けを落としてくる。  
「まだ、ですよ。ティア」  
「うそぉ……! どうしてぇ、あ、あん!」  
いつもなら、すでにウルも達しているはず。  
それなのに、その熱のおさまるところがみえない。果てがみえぬ快楽に、ティアがぽろぽろと涙を零した。  
「それはまあ、私、精霊ですから。ともに果てるというのも心地よいですが……いや、これもなかなか」  
人間と違い、精ではなく魔力の一部を解放するウルにとっては、それくらいの制御はできるらしい。  
そんなこと、思いもしなかったティアが、声をあげる。  
「やっ、ウルのばかぁっ、ひ、あっ、や……も、もうだめぇ……!」  
「ティアの言うとおりにしているというのに、ひどいいわれようですね。  
ティアは何度も達しておられるようですが、私はまだ一度も達していないんですよ? 約束どおりでしょう?」  
くすくすと楽しげに笑うウルの指が、繋がった箇所をぬるりとなでで、そのまま前にまわされる。  
そうして幾度も、敏感な部分を爪の先で弾かれるように刺激され、ティアはがくがくと身体を震わせた。  
「あ、それ、だめっ……!」  
「だめ、ということは、いいということですよね?」  
「やぁん、も……、ばかっ、ばかぁっ!」  
「はい、私はティア馬鹿ですから」  
決して逃がさないというようにティアの細い腰を、ウルが掴む。  
「ですからもっと……可愛らしいその姿をみせて……その甘い声を、聞かせてくださいね……?」  
「!?!!」  
ぐん、とさらに深く抉るように打ち込まれ、ティアは背を仰け反らせ声にならない悲鳴をあげた。  
 
こうして、本日も預言書の主とその精霊の、快楽に溺れる夜は明け方まで続くのであった。  
 
 
 
 

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