「・・・・・・ウル?」
その家には蝋燭の灯火が一つ。ゆらゆらと揺れる炎が哀愁を感じさせる。
聴こえるのは少女の声、蝋燭が燃える音、本のめくれる音。そして――
「どうしましたか、ティア」
預言書の精霊の声。そのウルと呼ばれる精霊は呼ばれると直ぐに預言書の
しおりから"するり"と出現し、ティアへと顔を向ける。
「こんな時間まで起きてるとは珍しいですね」
「あ・・・・・・うん・・・」
少し顔を下に向けるティア。ウルはちらりと机の上を見る。
例の書きかけの小説と――上に1冊の本。
勿論預言書ではない。何かの本だ。
「勉強ですか?……良い事です」
「あ…うん。…あ、いや……そういう訳でも…ないけど」
「……?」
ティアの顔が、赤い。
「その……読めない字が…あったから……」
「ふむ」
勉学において読めない字があったり、理解し難い事が書かれている書物を
読む機会があるのは当然。ウルもこれを断る理由など見つかる筈も無い。
「成る程。私の分かる範囲でならお答えしましょう」
「これ……なんだけど……」