ローザの服は、露出がデカい。おまけに、乳もデカい。
嫌でも気になる。目が行く。
まあ、オトコとしては、ある種当たり前のようなものなのだけど。
「スケベ!」
……なんて言われると、(例え事実でも)ムカついたりする。
今日の槍玉は、カルノだった。
「みっ、見てねェよっ!!つかオマエ、自意識過剰だろっ!?」
「何言ってんのよ!鼻の下伸ばしてたの、ちゃんと見たんだからっ!」
「な………だ、大体、そんな服着てるのが悪いんだろっ!?」
「あー!認めた!やっぱり!」
「ち、違うーーーーー!!」
口喧嘩では、カルノがローザに適うはずもない。
あっさり言い負かされ(また、墓穴を掘って)、がっくりとテーブルに突っ伏す。
コッペリアはそんなカルノの様子を見てくすくす笑い、興味深さげに顔を覗き込もうとまでする。
「ねぇねぇ、カルノ。お顔真っ赤だよぉ?ねぇねぇ、カルノってばー」
「コ、コッペリア……」
「ローザはおっぱい大きいもんねぇ。カルノ、大きいおっぱい好き?ねぇ、好き??」
イーノが止めに入るが、コッペリアは構わずにカルノを構う。
我関せず、と言わんばかりのポーズで紅茶を啜っていたアリューシャだったが、ちらりと薄目を開け、
流石に気の毒そうな表情を浮かべた。
しかし、絶対に言葉は掛けない。掛けたが最後、コッペリアの無邪気で悪意のない質問が
自分に向ってくるであろう事が、簡単に予測出来るからだ。全く、いつの時代も子供は残酷だ。
カルノを言い負かし満足したらしく、ローザは悠々とカップを傾ける。しかしそこでまたふと視線を感
じ、カップはそのままにちらりと視線だけを上げた。
斜上から感じる視線の先を追う。想像していた通り、隣に座ったシズマが無遠慮にローザの胸を眺め降
ろしていた。
「シズマ、あんたもなの?……スケベ。見ないでよ」
まじまじと見られた事に恥ずかしくなったのか、軽く腕で胸元を隠しながらローザはシズマを睨む。
声を掛けられ初めて気付いたように、シズマは小さくああ、とだけ言う。しかし、視点は依然ローザの
胸の上だ。
「ちょ、ちょっ……」
カルノの物とは違う視線。魅了されたようにぼんやりしたものではなく、しっかりとしたそれ。
動揺しはじめたローザに構わず、シズマはつい、とローザの胸元に手を伸ばした。
飄々とした動きに何故か抵抗できず、胸元を覆っていた手はシズマの指先で除けられてしまう。
「15の乳じゃねぇよなあ、確かに」
触れるか触れないかの位置に、無骨な男の指先。その悪戯な指が。胸の谷間、張りつめた部分の布に。
引っ掛けられて。
「きっつそー……」
呟かれた言葉に羞恥心が煽られて、ローザの頬が一気に紅潮する。
視線をさけるようにいやいやをして、顔を背けて。
「!!」
……ようやく、皆がいる事を思い出した。
(当たり前と言えば当たり前だが、)興味深そうにこちらを見つめる、四対の瞳。
「ちょ、見ないでよ!バカっ!!」
「あ」
一気に恥ずかしくなって、ローザは怒鳴った。………立ち上がって。
シズマの指に引っ掛かり、ズレる服。零れ落ちる、豊満な……。
「いっ、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ローザが叫ぶ。カルノが鼻を押さえる。イーノが目を丸くする。
コッペリアが笑う。アリューシャが盛大に茶を吹き出す。シズマが殴られる。
それから姑くの間修行場には、アーミーアントを大量増殖させた、鬼神のようなローザの姿があったと
言う。
めでたくなし、めでたくなし。