天璋院「何やら体が軽い。先ほどまでの苦しさが嘘のようじゃ。あ、上様・・・」
家定 「御台、長いこと苦労をかけたのう。約束通り迎えに参った」
天璋院「ようやくお目にかかれました。うれしゅうございます。ところで、その風変わりなお召し物は何でございましょう」
家定 「これか?これはジーンズと言うての、なかなか動きやすくてよいものじゃ。
今宵は御台を迎えに参るので、少しオシャレというのをしてみたのだが、どうじゃ。似合うか。
そなたにも同じものを持って参った。ペアルックというのじゃ」
天璋院「私にでございますか。ペアルックというのはお揃いのことですね。うれしゅございます」
家定 「御台は英語もわかるのか」
天璋院「はい。英国に留学した家達に教わって少し勉強いたしました」
家定 「相変わらず学問に励んでおったのじゃな。御台らしいわ。家茂は気の毒な事であったが、家達がこれからの徳川家をもり立ててくれることであろう。ほんとうにご苦労であった」
天璋院「私が徳川の女として生きることができたのは、上様のおかげにございます。私の役目も終わりました。これからは、ずっと上様とご一緒できるのですね」
家定 「そうじゃ。こちらの世界で一からやり直しじゃ。まずは結婚式を挙げ直さねばのう。わしはウエディングドレスがよい。チャペルはどうじゃ。指輪交換も誓いの口づけもせねばのう」
天璋院「上様・・・。私は上様と一緒なら、それだけで幸せにございます」
家定 「御台。可愛いことを。今宵は寝かせぬぞ」
天璋院「上様」
どこまでもラブラブな二人であった。