「明日、私は京に参る」
「はい…」
「私が戻るまでの間、母上とともに江戸を頼む」
「………」
無言で大きな瞳を涙で潤ませる妻が、家茂は愛おしくてたまらなかった。
そっと抱き寄せる。
「必ず無事に帰る…そなたの元に…」
「公方さん…」
和宮もまた、家茂の首に固く腕をまわし、夫のぬくもりを感じていた。
静かに和宮を押し倒すと、その涙を唇でぬぐった。
首筋に顔を埋めると、甘い女の香りがした。和宮はぴくりと体を跳ねさせる。
「公方さん…」
和宮の求めるままに、想いを篭めて唇を重ねる。
珍しく、和宮から舌を合わせてきた。
必死に己の口を吸う妻が可愛くてたまらず、家茂も負けじと和宮の唇を貪る。
どのくらいそうしていたのであろう。和宮の苦しそうな様子に、不承不承唇を離す。
つ、と銀の糸が二人の唇をつないでいた。
家茂は和宮を見つめた。はあはあと先程の熱いくちづけに息を乱し、頬を上気させている妻を。
その瞳にはまごうことなき情欲が溢れていた。
高貴で、汚れなき皇女は、すでに女としての悦びを知っていた。愛する夫との度重なる夜によって。
そっと、帯の結び目を外す。結び目が緩むにつれ、小ぶりだが形の良い乳房が現れる。
そのまま襟元を掴んで布地を開くと、夜着が艶やかな背中を滑り落ちる。
真っ白な妻の体は、何度触れても飽きたらず、家茂を魅了した。
じっと自分を見つめる夫の視線に、和宮は体を熱くしつつも恥じらい、背中を向けた。そんな様がまた愛らしい。
家茂は無理矢理正面を向かせようとはせず、そのまま肉の薄い背中にくちづけた。
びくん、と反応し、「公方さん…?」と少し不安げな声を出す和宮を安心させるように
「そなたの体はどこもかしこも私を引き付けて止まない」と優しく囁き、耳元にくちづけた。
背後から胸元を愛撫し、そのまま唇を滑らせて小ぶりな尻までたどりついた。
そっと、割れ目に顔を埋め、すでに濡れ始めている穴には指を差し入れた。
尻の柔肌をたっぷり舐めて甘噛みすると、和宮の太股が思わずといった様子で動いた。
背中越しでも、和宮の息が熱く、速くなっているのがわかる。
そのまま中の指を動かしながら、空いてる手で優しく脚を撫でる。
和宮はたまらず、「公方さん…」と声をかけた。
「どうした…?」
「お顔…お顔が見とうございます」
そう願う和宮にふっと微笑み、一度指を外すと和宮の体を仰向かせた。
和宮はうっとりと家茂の頬を撫でる。家茂は和宮の唇を軽く啄みながら、手を乳房へと移動させた。
乳房の形を確かめるように撫でながら乳首を親指で転がすと、和宮はおもしろいぐらいに反応した。
なおもしつこく乳首を弄る家茂に、和宮は懇願した。
「く、公方さん…っあ、あん!そ、そんなとこばっかり…ぁ、いじめんといて…っ!」
「なぜ?こんなに甘いのに」
そう言ってぱくっと頂きを口に含むと「あああああっ!」と和宮は背をのけ反らせた。
そんな妻の反応を楽しみながら、家茂は視線を下腹の薄い茂みに移す。
先程いじったせいか、夜目にも濡れているのが分かった。
愛する妻が自分の愛撫に感じていることを実感するほど、男として嬉しいことはない。
家茂はより一層体が熱くなるのを感じた。
家茂は和宮の膝を持ち、そのまま押し開いた。
そして、舌を全体に這わす。女の液はどんどんと溢れてきた。
これからしばらくは味わうことのできない妻の味。家茂は夢中でそれを啜った。舌を尖らせ、花芽を弄ぶ。
「ん……ん………っ」
和宮はたまらないというように体をよじらせた。
今度は指で花芽をいじくると、びくんびくんと体を跳ねさせる。
そんな妻の姿は、顔立ちや体型があどけないだけに煽情的で、家茂はたまらずに再び和宮の唇を貪った。
二つの唾液が、和宮の小さな口の中でぐちゃぐちゃに混ざり合った。
さらに家茂は、和宮の細い顎を押さえ舌を吸い上げる。
家茂は、己の股間が痛いほど脈打っているのを感じていた。
耐え切れず、唇を離して己の夜着を脱ぎすてる。
和宮の唇は濡れ、まだ足りないというようにその瞳は続きをねだっていた。
そんな和宮の様子に、家茂の背筋を快感がぞくぞくと駆け上がった。
少し乱暴なほどの勢いで、和宮の足を折り曲げて開く。
そして、妻の媚態にさんざん煽られ、いまにもはち切れそうになったものの先端をめり込ませる。
熱い粘膜に引っ張られるように、家茂は腰を進めて全てを収めた。
和宮は声もなく、待ち望んだ快感に体を震わせている。
家茂はゆっくりと、和宮を突き上げはじめた。
「あ…ぁっあ!」
和宮の喘ぎが家茂は好きだった。か細く、高く、愛らしい声。
もっと聞きたいと思った。耳に刻み付けて、京にまで持っていきたい…
家茂の動きが、鞭のように速くなった。激しく腰を動かしながら、己の下で乱れる和宮を目に焼き付ける。
黒い瞳は赤く潤み、丸みを残す頬は桃色に染まり、口を半分開き、白い歯の奥からいやらしく濡れる舌が見え隠れする。
すると、和宮の細腕が家茂に絡み付き、自ら腰を擦りつけるような動きをした。
「公方さん…!あああっぁっはあっ、中に、あっあっあっ中に全てください、はあ、公方さんのすべて、っ、寂しくないように…っ」「宮…!」
家茂はさらに強く腰を突き上げる。
和宮はその激しさに翻弄させながらも、家茂を決して離すまいと、細い足を彼の腰に回した。
さらなる深い密着に、若い二人の交わりは激しさを増す一方だった。
家茂は和宮の口をふさぎ、舌を吸い上げた。
「ん、ん んぅ、あっはあ…!」
あまりの激しさに本能的に上へ逃げようとする腰をしっかりと押さえ、家茂は縦横無尽に和宮の体を突き上げた。
ズチュッ、ズグ、グチャプチュズチャッジュプ!!
「んぁ、ああああああーーーーー!!!!く、くぼ、うさ、ん…!!はあああん!!」
「はっ、はっ、うぐっ」
腰を重ね、互いを固く抱きしめ、夢中で舌を啜り合う二人は、いままさに一つだった。
「あ、もう……もうっ!!…っっっぁあああああああああ!!!」
「宮、くは、ぁっ、みや、みやーーーーーーー!!!!」
ビュク、ドク、ビュルル…!!!ドクン、ドク…
凄まじい勢いで子種が吐き出され、二人ともしばらく体を震わすことしかできなかった。
やがて全て出し終えると、家茂は中に入れたまま荒い息で和宮の上に倒れこんだ。
その際、ぐちゅ、と二人を結び付けている場所が音を立てて、思わず和宮はそこを締め付けてしまった。
「うっ…」
吐精したばかりで敏感な場所を締め付けられ、家茂のそれが再び勢いよく膨らむのを和宮は感じ、震えた。
けれど、和宮は彼が欲しかった。彼の全てが欲しかった。
可能ならば、彼の体を自分に縫い付けたまま、離せなくしたいほどだった。
でも、それは不可能だから。だからせめて今夜だけは、彼の全てを自分のうちに収めていたかった。
「公方さん…」
誘うように家茂の首を引き寄せ、耳に舌を這わせる
ぴちゃ、くちゅ…
和宮の体を案じ、躊躇していた家茂だったが、そのようにされては我慢できるはずもない。
激しく唇を合わせた。
「宮…」
夫のくちづけを受けながら、和宮は昏い優越感に浸っていた。
天璋院は、この唇を味わったことなどない。
天璋院は、この方の子種を受けたことなどない。
天璋院は、この方が快感に眉根を寄せて堪えることも知らないし、この方の汗ばむ体を感じたこともない。
天璋院は天璋院は天璋院は………
「公方さんは、わたくしだけのものですもの…」
聞こえなかったのか、問い掛けるように自分を見つめる家茂に、なんでもないとくちづけて。
夫の愛撫を体中に刻み付けながら、和宮は微笑んだ。
END