「私の勝ちにございます」  
 ぱちん、と碁石を置く音とともに、御台所がにっこりと微笑んだ。  
 その顔を、眉を下げた公方は少し恨めしげに見やる。  
「…まったく、そちは強いのう」  
「恐れ入ります」  
 初めの内こそ負けるのが口惜しかったが、こうも毎度見事に先手を読まれてしまうと、いっそ清々しい。  
 やり直しじゃと盤上の石を片付けながら、公方はふと顔を上げた。  
「そちは碁をいつから打ち始めたのじゃ」  
 不意の問い掛けに小首をかしげた御台所の、束ねた黒髪が肩で僅かに揺れる。  
「はて…しかといつからという覚えもないのですが、随分と幼い頃より親しんでおりました」  
「幼い頃」  
 興味を抱いたように繰り返すと、御台所は肯いて続ける。  
「初めのうちは、父や兄に相手をしてもらって。  
 でも大きくなってくると、娘らしいことをせよと言われて、あまり付き合うてもらえなくなったのです」  
「そこで止めるそちではなかろう?」  
「はい。それからは専ら、碁の書物を片手に打ったり…、幼馴染を相手にするようになりました」  
 幼い頃の姿が容易に想像できて、思わず笑いがこみ上げる。  
 碁の書など、幼い娘が手にするものではあるまい。両親は、さぞや弱り切っていたに違いない。  
 今と同じように、寧ろ幼さゆえに今以上、強情な理屈を捏ねていたのだろう。  
「上様」  
 公方の忍び笑いに、御台所は頬をぷうと膨らませる。その仕草すら、今の公方には愛おしい。  
「済まぬ済まぬ。つい可笑しくての。…その幼馴染とやらは、強かったのか」  
「そうでございますね…」  
 どこか申し訳なさそうな口振りである。大方、碁にそれ程興味もない者を、無理矢理巻き込んだのだろう。  
 大体にして、薩摩だろうと江戸であろうと、囲碁好きの娘などそうは居まい。  
「ほとんどは、私の勝ちでございました」  
「なんじゃ、いまと変らぬではないか」  
「左様でございますね」  
 屈託なく笑う御台所を見ているうちに、指に挟んだ碁石がすっかり温もってしまっていることに気がついた。  
 
「…今宵はもう止めにしよう。  
 寝物語に、幼き頃の話をもっと聞かせよ」  
 
◆◇◆  
   
「碁の他には、何をして過ごしておった」  
 碁盤をずいと脇に押しやって、公方は楽しげな目を向けてくる。  
 こうして二人でいるようになって、夫は鋭敏な表情を見せてくれるようになった。  
 と同時に、今のように子どものような目をすることがある。  
「そうですね…女子のする遊びは、あまり致しませんでした」  
「ふふ、そちらしい」  
「近くの野原や散歩道を駆け回って、よく乳母に叱られておりました。  
 大きくなると、隙を見て家から抜け出して、幼馴染と町へ繰り出したり」  
 もう随分昔のことなのに、鮮やかに思い出すことができる。  
「武家の、いや、年頃の娘のすることとは思えぬわ」  
「今思えば、確かにそうでございますね。  
 でも私には、知らないことが山ほどあるのに、  
 それと分かっていながらじっとしているなど、できなかったのです」  
 あの場所、空気、温度、賑やかさ、大事な人たち。自分を育んでくれたもの。  
 色褪せぬ思い出の薩摩は、今となっては郷愁を呼び起こすには遠過ぎる場所になってしまった。  
「御台のことじゃ、武勇はそれだけではあるまい?」  
 公方の声が、御台所を僅かに引き戻す。分かっておるぞと、その目が悪戯っぽく細められている。  
「そういえば、幼馴染の通う学問所に、男の振りをして紛れ込んだこともございました」  
 尚五郎の、仰天したり弱りきったり、ころころ変った表情は今でも可笑しい。  
 思えば尚五郎は、いつもそんな表情をしていた様な気がする。否、させていたのだ、他でもない自分が。  
 目を伏せて、くすりと笑みを零す。  
 気弱なことばかり言っていた幼馴染は、きっと今は、すっかり精悍な若者になっているであろう。  
 
「…そう、か」  
 
 掛けられた声に顔を上げて、御台所は目を見張った。  
 頬杖をついていた公方が、いつの間にか頭をもたげ、ひたと御台所を見据えている。  
 見詰める眼差しと声音は、いつもと違って何処か冷たい。  
「上様…」  
 求められるままに、調子に乗ってあれこれと喋り過ぎたのだ。  
 どれもこれも、女子としては恥ずべきことばかりである。  
 天下の将軍の御台所が、飛んだお転婆、じゃじゃ馬とあっては、流石の公方もいい気分はすまい。  
―お嫌いに、なられたのだろうか。  
 胸の奥が凍りつくように、鋭く痛む。  
 
「その男を、好いておったのか」  
「え…」  
 
 思い掛けない言葉に絶句する御台所に、刹那、公方は苛立たしげな表情を浮かべた。  
「惚れておったかと聞いておる、御台」  
 公方の端正な顔が、息が掛かろうかというほどに間近に寄せられる。  
 思わず後ろに引こうとするのを、両の手を握って引き寄せ、阻まれる。  
 
 息が、詰まる。  
 
◆◇◆  
 
 瞬きすら忘れて見開かれた瞳を、公方は無表情に見詰めた。  
 
 わしの知らぬそなたは、その目で誰を見ていた?  
 何を思って、その男を見ていた?  
 
 それが嫉妬であることを、自身が一番驚いて感じていた。  
 これまで、この身に嫉妬や羨望を受けることはあっても、そんな愚かな感情など、  
厭世を決め込んだ自分には、久しく湧き上がることすらなかったというのに。  
 
−そなたは、わしが捨ててきたものを蘇らせる。  
 
「…、そのようなことは、ございませんでした」  
 いささか掠れた声で、御台が呟く。  
 自身の声で我に返ったように、御台は二、三度瞬きしてから、笑顔を見せた。  
「私にとっては、歳の近いきょうだいのような存在でございます」  
 あちらにとっても、また同じでございましょう…。  
 いつもと変らぬ、可憐な花を思わせるほころぶような笑顔。  
 思い掛けない問い詰めに驚いてか、少し潤みを帯びた眼が、偽りのないことを物語っていた。  
 
 果たして、そうだろうか。  
 
 意地の悪い科白を飲み込む代わりに、握っていた御台の手を強く引く。  
 
「あっ、」  
 
 短い悲鳴とともに胸元にしなだれ掛かる身体を、公方は両の腕で抱き込んだ。  
 ふわりと漂う香の香りを吸い込みながら、抱く力を強める。  
「苦しゅう、ございますっ」  
 囁き声が直に耳元に響いて、公方の中に目覚めたものをさざめかせる。  
 女子の躰の小ささと柔らかさに――耳朶を掠める震えた吐息の熱に、眩暈すら覚える。  
 
 御台、そなたは。  
 
 久しく眠っていた、疾うに捨てたと思っていた激情が、濁流のように堰を切って溢れ出していた。  
 
 為政者としての自覚を、人を信じることを、語らう喜びを、  
 …人を愛することを、そなたは思い出させてくれた。  
 
 重心をずらすと、どさりと音を立てて呆気なく二つの体が倒れる。  
 
 同時に、ひとりの男であることも。嫉妬も。  
 劣情も。  
 
「うえさま」  
 戸惑った表情を浮かべる唇を、躊躇いなく奪う。  
 
 御しきれぬ、劣情のまま。  
 
◆◇◆  
 
 熱く塞がれた息が苦しい。  
 違う生き物のように蠢く唇を、御台所は呆然と感じていた。  
「んんっ」  
 永く永く感じる時間の後、公方の唇が僅かに離れた。  
 息継ぐために開いた口元が、まるでそれを待っていたかのように再び塞がれる。  
 ぬめりとしたものが歯列を割り、口内を満たす。  
 聞いたこともないような水音が、その音をたてているのが自分達である事実が、  
御台所に羞恥を呼ぶ。  
―喰われておるようじゃ。上様に…  
 混乱と不安とで頭が一杯で、どうしていいか解らないというのに、反して身体は  
熱を帯び始めていた。  
 自分の身体の一部になってしまったかのような錯覚すら覚えた唇は、やがて  
ゆっくりと離された。  
 霞がかった視界に、熱を帯びた二つの眼と、二人の間に光る銀糸がぶつりと切れる様が映る。  
 
 男の細くて長い指が、御台が密やかに好いている指が、自らの淫らに光る唇を拭う。  
 口元に浮かぶ笑みは、夫が今まで見せたこともない「雄」のもので。  
 
「あっ」  
 その指先が御台の胸元に触れ、夜着の袷を暴く。  
 露わになった首筋から胸元へ、ゆっくりと公方の顔が埋められ、  
唇が、舌が這わされる。  
「おやめ、に…っ」  
 零れた哀願の言葉は、されど自ら唇を強く閉じて飲み込んだ。  
 口を開けば、どんな声が出てしまうかわからない。  
 部屋の空気は、二人の発する熱を移し始めているというのに、白い素肌が粟立つ。  
 やがて柔らかな膨らみを捕らえられて、御台の全身がびりりとした刺激で貫かれる。  
 
 触れられたところが熱くて熱くて、溶けそうだ。  
 
「あぁんっ」  
 
 ひんやりとした指先で頂をこねられて、思わず漏れた声に、慌てて両の手で口元を押さえる。  
 身を焦がさんばかりの恥じらいは、あられもない姿を曝していることへなのか、  
漏れてしまった嬌声の所為なのか、夫が我が身に施す快楽の所為か、もう判らない。  
 そんな御台所の姿などお構いなしに、与えられる愛撫は激しさを増していく。  
 首筋や鎖骨、乳房が、ちゅうと音を立てて吸い上げられ、羞恥と快楽で上向く頂は、  
公方の手でいやらしく弄ばれる。  
 
―ああ…切のうて、どうにかなりそうじゃ  
 
 胸の頂の刺激が、不意に湿度と熱を帯びたものに変わる。  
 過敏なそれは舌先でねっとりと味わうように舐め上げられ、  
そのまま公方の口内へ含まれてしまう。  
 
―うえさま、上様…!!  
 
 快感に体が跳ねるのを感じながら、這わされている公方の手を掴んだ。  
「御台…」  
 情欲の所為で掠れた男の声に呼ばれて、震えるほどの喜びが御台所を包む。  
 
「はぁ…っ、ぅえ、さま」  
 
◆◇◆  
 
 握られた手の一瞬の強さに、公方は漸く我を取り戻した。  
 白い手が、ゆっくりと力なく離れていく。  
 
 快楽と羞恥で紅く染まった妻の頬に幾筋もの涙が伝うのを、公方は呆然と見下ろした。  
 乱れた髪、唾液に濡れててらてらと光る唇。剥き出しの白い素肌に散りばめられた、赤い痕。  
 普段の可憐な御台所など、そこにはなかった。噎せ返るほどの色香を身に纏わせ、ひたすらに淫らな姿を曝している。  
 
―この愚かな仕打ちを与えたのは…わしじゃ。  
 
「…っ済まぬ御台、すまぬ」  
 涙に濡れる頬に触れようとして、咄嗟に躊躇う。  
 その体を無理矢理に暴き、乱し、蹂躙したこの手で、誰が触れられようか。  
 今頃になって襲う後悔と自責の念に、表情が歪んだ。  
 行き場を失った手のひらが、不意に白い滑らかな手でもう一度包まれる。  
「…やっと、聞けた」  
 場違いなほどに嬉しさを滲ませた声で、御台所が呟く。  
「ずっとお声を掛けて下さらぬのが、切のうて…」  
「そなた…、そなた罵らぬのか、このわしを。嫉妬も劣情も御せぬと、なぜ嗤わぬ」  
 その言葉に、御台所がゆるゆると首を横に振った。  
「そのようなこと、どうしてできましょう。私とて、上様と同じでございますのに」  
「同じじゃと?」  
「私とて、お志賀の方にやきもちを妬くこともございます。  
 …はじめて知りました、このような気持ち。  
 人を恋しいと想うことも、愛する切なさも嬉しさも喜びも全て、あなた様が教えて下さったのです」  
「御台…」  
「ですから、どうかそんな顔をなさらないで下さりませ。私はあなた様に、触れて頂きとうございます」  
 公方の手に、御台所の上気した頬がすり寄るのを、ただされるがままに見詰める。  
「…なんと愛いことを…」  
 
 酷い仕打ちを身に受けてなお、健気にも愛を告げる妻が、愛おしい。  
 こんなにも可憐で清廉な女へ向けるには、激し過ぎるほど。  
 
 今度は優しく、甘い唇を味わう。啄ばむような口付けは、角度を変え、ゆっくりと深くなっていく。  
 粘度を含んだ水音と微かな衣擦れの音が響く中、耳朶をはみ、首すじに唇を落とすと、その体が震えた。  
「っん、うえさ、ま、ぁッ」   
「…嫌か、御台?」  
 顔を上げて目に入った表情は、咄嗟に思い浮かんだものとは掛け離れていた。  
 御台所の潤みきった双眸が、色濃く情欲を宿している。  
「嫌などと…」  
 か細い声で呟く御台所の瞳が、恥ずかし気に伏せられる。  
 その仕草に愛おしさが増す思いの中で、公方は苦笑いを浮かべた。  
「無理をするな。その様な姿で愛いことを聞かされては、良いように解釈してしまうぞ」  
 態と軽口を叩く調子で返したというのに、妻はそれに小さく肯いて答えてくる。  
「良いの、か?」  
「…はい。あなた様の、お心のままに…」  
 恥じらいゆえの囁き声が、危うく保たれていたものを崩すのを感じながら、公方は、横たわる躯を掻き抱いた。  
 
 
 艶かしく輝く肌に、細やかに指を這わせていた公方は、吐息とも声ともつかぬくぐもった喘ぎに、思わず口許を緩めた。  
「何故押さえ込む、苦しかろう」  
 頑なに口を覆う手をとると、赤い唇が小さくわななく。  
「なれど、は、恥ずかしゅうございます…」  
 最後の方は、消え入りそうな声になっている。  
「わしの他には、誰にも聞こえぬと言うておろうに」  
 初めの頃に、御台所と過ごす夜は何人も立ち入ってはならぬと命じたのが、こんな所で役に立つとは夢にも思わなかった。  
女人であろうと何だろうと、御台所のいかなる声も聞かせたくない。  
「お許し、下さいませ…」  
「許さぬ」  
 きっぱりと言い放って、公方は赤い耳許に唇を寄せ囁く。  
 
 わしも、そなたの声が聞きたい…  
 
「ゃぁんっ」  
 たおやかな膨らみを少し力を強めて掴むと、妻は首を反らして悲鳴をあげた。  
 その反応に満足感を覚えながら、しっとりと吸い付く乳房を、大きく手を動かしてこねる。  
 ぷっくりと赤く主張するそれを指で弾き、もう片方を口に含むと、箍が外れたかのようにひっきりなしに甘い声が上がる。  
「快い声じゃ…」  
「やあっ、…そ、のようなこと…っあ」  
「もっと聞かせよ」  
 そのまま、じわじわと手を下部へ滑らせていくと、気が付けば御台所の両腿は擦り合わせられ、誘うように動いている。  
「ほう、これは…」  
 半身を覆っていた夜着は乱れ、今にも素肌があらわになりそうだ。それを素早く取り払うと、御台所が驚いて目を見開くのが分かった。  
「はっ…あ……うえ、さ…ま…っ!」  
−だが、誘うておるのはそなたであろう?  
 固く閉じかけた両の足を、身を滑り込ませて開かせる。  
曝された腿を撫で上げ、そのまま茂みへと這わせると、妻の全身がビクリと跳ねた。  
既に濡れ始めている所へ指を差し入れると、そこは熱く潤っており。  
「おやめくだ、さ……っ。こ、このような、あぁんっ」  
 くちゅくちゅと音を立てて掻き混ぜる指を、何も告げずに増やす。  
「これは異なことを。“触って欲しい”と申したのは誰じゃ」  
「や、それは、ひぁっ、ちが…っ」  
 次々に溢れる蜜が、指先の動きをより滑らかにして、狭いそこをほぐしていく。  
「違う? 嫌と言うなら止めるが――、」  
「もう、おか、しく…っ、なりまする…」  
 涙目の御台所に公方はニヤリと笑うと、態と無声音で語りかけた。  
「具合良うせねば、辛くなるのは解っておろう?」  
 己の昂ぶりをぐいと腿に押し付ければ、全く迫力のない表情で睨みつけてくる。  
「上様の…っ、いじわ、る」  
「わしが嫌いになったか」  
「あっ、あっ…も……う!!ひゃあっ」  
 大きな水音と共に激しく指を蠢かせ、疎かになっていた胸の頂を甘噛みしてやる。  
悲鳴を上げ身を反らせる女のナカが、長い指をきゅうと締め付けた。  
「…ぇさ、まっ、……ひゃああんっ」  
「聞こえぬ」  
「っあっ、あ、…す、きっ…」  
 とろりとした眼を向け、愛していると途切れ途切れに愛を告げる声に、公方は己の限界を悟った。  
 指を引き抜き、一気に昂ぶりを沈め込む。  
「あっ、あっ――」  
 細い腰を押さえ込んで激しく揺さぶる。引き攣る声が、甘く淫らに響く。  
「―っ、愛しておる、御台」  
 上様と甘く激しく鳴く声の中、公方はその体に己が欲を注ぎ込んだ。  
 
◆◇◆  
 
「どうしたものかのう…」  
 目を覚ますやいなや、御台所は公方の視線から逃れるように、寝具を頭から被ってしまっていた。  
 これでは、後朝の甘いひとときも何もあったものではない。  
 済まぬ悪かったと繰り返しながら、妻を包む寝具を引き剥がすと、真っ赤な顔があらわれた。  
 ぷいと顔を背けて覗いた首筋には、昨夜のしるしがくっきりと印されている。  
「こちらを向かぬか、御台」  
「意地悪な上様など知りませぬ」  
 背を向けたままで拗ねる妻の頬に、ちゅ、と唇を落とす。  
「許せ。そなたがあまりに可愛かったから、つい、な」  
 頬を膨らませ、唇を尖らせているとはいえ、満更でもなさそうな表情に見えるのは気のせいだろうか。  
 
 知らぬは、そなたばかりじゃ…。  
 そなたの傍に居って、魅了されぬ者などおるまい。この自分がそうであったように。  
 ましてや、幼馴染とあらば、な。  
 
 後ろからそっと抱きしめ、温かさに身を委ねる。  
 あれ程に身を焼き尽くした嫉妬が、嘘のようだ。  
 すると、御台所の体がもぞもぞと動いてこちらを向き、公方の胸の中にすっぽりと収まる。  
「まったくそなたは…」  
 微笑みを浮かべ、公方は妻の体を抱く腕を優しく強めた。  
 

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