>>133  
真宵(以下 真)「と、言うことなので実際何リットル出るか実験するんだにゃー☆」  
 ということって何だ、ということって。という伊御の呟きを無視してつみきと姫を椅子に座らせる真宵。  
 榊は榊でイェーイ☆とか言って、タライやらバケツやらを見せびらかすように頭の上に乗っけている。相も変わらずノリのいい男である。  
真「まぁ私の見立てだと一人につき、1日だいたい10リットルぐらいかにゃー」  
伊御(以下 伊)「その量だと確実に死んでいるぞ!?」  
榊「お前はもう死んでいる……!」  
姫「私がですか!?」  
つみき(以下 つ)「下らないわね」  
 わいわいがやがやと教室で騒ぐ風景には青春しているなぁと感じさせられます。  
 伊御はつみきに例の如く無自覚ポンをして、つみきは例の如く頭から蒸気が出ており、姫は榊と真宵の冗談に素直なぐらい反応している、そんな五人のいつもの風景。  
 変わっているのは周りにタライやらバケツやらがあることだけです。  
真「さてさて、伊御さん。いつもの如く無自覚ハナヂをお願いします」  
伊「するかっ! てか俺にはそんなスキルはない」  
伊御以外全員「「「「え……?」」」」  
伊「ここは怒るとこだよな?」  
榊「伊御よ、嘘はいかんなぁ、嘘は」  
伊「いや、だから……」  
榊「ほれ、試しにつみきへストロベリっとるセリフを」  
伊「え? あーー……」  
 伊御は榊からのフリに少し考えると、つみきの頭に手を載せ、満面の笑顔で、囁きました。  
   
『今日も可愛いな、つみき』  
   
つ「っ〜〜〜〜!? ////」  
 つみきは手をたしたししながらハナヂを垂らし、姫はハナヂがらダラダラ出てます。  
 榊と真宵は「今日も大量ですなぁ!!」と、ハナヂをタライに集めます。洗うのが大変そうです。  
真「さぁさぁ! その勢いでこの紙に書いてあることをしてやっちゃって下さいな!」  
榊「やっちゃっておしまいな!」  
伊「……生き生きとしているな、お前ら」  
 その意欲を別な方向に向ければ……と思うのは伊御だけではない。誰だってそう思う。俺だってそう思う。  
   
◇◇◇  
   
 さて、そうは言いつつもノリが意外といい伊御は紙に書いてあることを上から順番にしていきます。  
 じぃーーとつみきを見つめ、その視線に耐えられずにつみきが目を背けるとすかさず、つみきの顔を両手で包むように掴み、こちらを向かせ、  
   
『もっと見ていたいな。つみきの顔』  
   
 と言ったり。  
 今度はつみきの後ろに回り込み、覆い被さるようにつみきへ抱きつけば、  
   
『つみきはあったかいね』  
   
 と言ったり。  
 この他にも色々やりましたが、勘弁して下さい。あんなの書いたら恥ずかしくて死にそうてか死ぬってうわあんたら何して(ry  
   
◇◇◇  
   
 ――十分後。  
   
榊「これは思っていたより……」  
真「スゴい量だにゃー……」  
 二人が持つタライの中にはタプタプと、波打つハナヂが有りました。初めてみる光景です。あまり見たくもない光景でもありますが。  
真「……献血にでも持って行く?」  
榊「ありがた迷惑この上ないな」  
伊「いや、ただの嫌がらせだろ……」  
 そう言う伊御は現在、あぐらをかいたその中に、つみきを入れて、素晴らしく適度な優しさのなでなでしています。やめて、つみきのライフはもうゼロよっ。状態です。  
榊「ってそろそろヤバくないか!?」  
真「にゃ! 何か攻撃方法がレベルアップしとるよっ!?」  
 どうやら二人が考えた事では無いようです。伊御……恐ろしい子っ。  
伊「いや、何かつみきが辛そうだから……」  
真「それは間違いなくトドメですよっ!?」  
榊「早くっ! つみきを寝かせてあげるんだっ!!」  
 伊御が「分かった」と了承して、つみきを  
 
“お 姫 様 抱 っ こ ”  
 
をし、保健室へと向かいました。当然ですが、廊下は血の痕が点々と、いや線となって残りました。何このサスペンス。  
榊「……たまに、伊御はつみきを殺すんじゃないかと心配するんだが」  
真「つみきさん的には本能なんじゃろうけどね……」  
 ちなみに姫は既に失神していた為、軽傷で済み、いつも通り画面の端で倒れているだけです。  
   
   
◇◇◇  
   
伊「ほら、着いたよ。つみき」  
 誰もいない保健室に着いた伊御は、つみきを保健室のベッドへ寝かせます。ちゃんと洗ってからです。これ、マナーね。  
つ「……」  
伊「つみき?」  
 さて、寝かせようとした伊御ですが、つみきが何故かじ〜っ、と見てきます。こういう時は何らかの意思表示だという事だと伊御は(勿論ですが)知っています。  
伊「……寂しい?」  
つ「!? ……ん」  
 伊御の一言に、にゃんでわかったの!? と、一瞬驚くつみきですが、その通りだった為、素直に頷きました。  
伊「じゃあ、ほら。手」  
つ「ん……」  
 
 ギュッ、と少々手が痛くなるぐらい強く握るつみき。何だかその手は不思議とポカポカしています。  
つ(あったかい……)  
 そう感じたつみきは握ったその手を自然と、そして無意識に自分の頬へと向かわせます。まるでそうするのが当然かの様に。  
伊「……つみき?」  
つ「!? あ、こ、これはその……」  
 伊御の問いかけに我にかえるつみき。顔を真っ赤にしながら、あたふたと言い訳を探します。  
伊「……ちょっと失礼」  
つ「え……?」  
 そんなつみきを見て、伊御は柔らかく微笑み、つみきのもう片方の手を握ると、自分の頬へと持って来て、言いました。  
伊「ほら、一緒」  
つ「っ〜〜!?」  
 
 もう出尽くしたのかハナヂは出ません。しかし、つみきはそのせいか赤い顔を更に真っ赤にしながら俯いてしまいます。  
伊「嫌?」  
つ「!?」  
 その一言に、つみきはぶんぶんと首を横に振ります。  
 その返答に伊御は「良かった」と、また柔らかく微笑みました。  
伊「ほら、じゃあ休もうな。つみきも疲れたろ?」  
つ「……ん」  
 つみきがそう言うと、つみきの右手は伊御の左頬に、伊御の右手はつみきの右頬にと、お互い触れ合いながらゆっくりと、目を閉じます。  
伊「お休み、つみき」  
つ「……お休み」  
 そして、ゆっくりと、意識を手放しました。  
 二人はお互いの体温を、お互いの心の温もりを感じながら、幸せな寝顔になりました。  
 とても優しく、柔らかい笑顔を浮かべながら寝息を立てました。  
 そんな、ある日の放課後の保健室――。  
   
   
   
 終わり。  
   
 

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