『てのひら』  
 
「じゃあつみき、また明日」  
 微笑んだ彼の、頭に乗せられた手のひら。  
 その残滓がまだあるような気がする。  
 帰り道、別れる時のそれはいつも暖かく、少し切ない。  
 触れてくれて嬉しい。でも、やっぱりもっと一緒にいたい。  
 ――あまりにも優しい、別れの知らせ。  
 そんな事を思いながらつみきはベッドの上に転がって、天井を見つめている。  
 自分の手のひらを、伊御がその手を置いた部分に重ねて、確かめるように指先でなぞる。  
 ほう、と切ない吐息が出るのを止める事は出来なかった。  
 一緒にいたい。もっと近くに。触れ合う程に。  
 頭だけじゃない。もっと色んな所に。  
 顔、唇、肩。  
 いや、それだけじゃない。  
 薄いけれど、胸も伊御になら触って欲しい。  
 お腹を撫でられたら、きっと緊張で動けなくなる。それでも触って欲しい。  
 触って欲しい。触って欲しい。触って欲しい。  
 あの暖かい手で、自分の全てを確かめて欲しい。  
「い……お……」  
 小さく呟くと、胸の奥がきゅうっとなって、少しだけ体が火照るのが分かった。  
 重ねた手のひらが、伊御の暖かさを移しているような気がする。  
 そう思って、顔に触れさせてみる。  
 じんわりと暖かさが広がって、安心感に包まれる。例え、それが錯覚でも良い。  
 さわさわと頬を撫で、顎をなぞり、首筋を下る。  
 鎖骨に触れた指先がざわざわとしたくすぐったさを伝える。思わず首をすくめてしまったが、すぐにそれは緩んで微かな熱だけが体の芯に残った。  
「ん……」  
 そっとセーターをたくしあげる。ブラウス越しに、下着に包まれた胸に触れると、甘い痺れが背筋を駆けた。  
 この指は伊御の指。そう念じて布地の上から突起をつつく。  
「ふ……」  
 より鮮明な痺れが走るのを感じた。  
 そのまま指先でこねるように胸を触る。たどたどしい手つきで、だけど必死に。  
 熱が体の内側に堆積していく。より鮮明な感覚を体が求めている。  
 それに抗う事も出来ずに、つみきはブラウスの前を開いていく、もどかしさから下着はずらすだけにして、胸に直に触れた。  
「ん……っ」  
 淡い痺れ。それが霧散すると後を追うように甘さが広がる。その甘さを求めて、指先がやわやわと胸の輪郭をなぞる。  
 段々と躊躇いはなくなり動きが大胆になっていく。手のひらで胸を包み、僅かに固くなった乳首を指の腹で転がす。  
 
 爪で軽く引っ掻くと、体がぴくんと跳ねた。じんじんと胸の先端が痒みにも似た疼きを残す。  
 それを振り払うように行為を重ねれば更に疼きは存在感を増していく。  
 体の火照りが燃え盛るような熱さに変わる頃には、つみきの理性はとろけきっていた。  
 片腕は下肢に伸び、既に潤んだ秘部を指先で捉える。  
 体液に濡れた入り口をなぞるように触れると、体がびくりと跳ねる。息すらもそれに乱され、荒い吐息が零れる。  
 ぞわりとした快感が背筋を駆けて身を震わせる。  
 白に染まった思考は用を成さず、ただ快感を貪りたいという本能が指先を一心不乱に動かす。  
「伊御……」  
 唇の隙間から漏れた響きの切なさに、一気に高揚が押し寄せるのを感じた。  
「ふ……んっ」  
 ぐっと背が仰け反る。そこに触れて間もないのに達してしまいそうなのを、ぼうっとした思考の中で恥に感じながらも止める事は出来ない。  
「……っ!」  
 何かが溢れるような感覚、体の中心から波紋のように快感が伝播してゆっくりと霧散していく。  
 残ったのは倦怠感と疲労感。  
 息が落ち着けば、思考はぼんやりと薄れていく。  
 それが寝息に変わるまでそう時間はかからなかった。  
 
「おはよう、つみき」  
 ぽん、と頭に手が置かれる。  
 暖かいそれはまるでひだまりのようで、幸せな気持ちを運んでくる。  
「今日も一日がんばろうな」  
 小さく「ん」とだけ返して、隣に立つ。  
 触れそうな距離、まだ触れない距離。  
 それを少しだけ縮めたくて、でも縮められなくて。  
 だけどもう少しだけこのままで。  
 だから今日も変わらず歩く。  
 いつもの二人の距離のままで。  
 優しさ手のひらの暖かみを愛おしく想いながら。  
 

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