三神たまきの独り言 
 
30代も半ばを越えると、結婚についてうるさく言われることも少なくなった。  
もちろん38歳独身女性に気を使ってのことかもしれないが・・・。  
私が今まで結婚しなかったのには、理由がある。この国の法律では、私が  
愛した人との結婚を認めてくれないのだ。若い頃は一生独身で、女性を愛して  
いこうと決めていた。  
今となって、桜田キャプテンの求婚を受け入れようかと思い始めたのは、  
これから先一人で生きていくことの不安を感じ始めたからだ。  
そんな矢先だった・・・。美咲洋子に出会ったのは・・・。  
 
 
初めて彼女に会った時、あんなに面食らったのに・・・教習を続ける  
日々の中で、私は何故か彼女に惹かれていった。今では・・・彼女の  
すべてが愛しい。  
紆余曲折・・・いろいろあったが、彼女はやっと一人前のCAになれた。  
きっと素晴らしいCAになる・・・私はそう確信している。  
彼女は、もう・・・私の手を離れたのだ。職場で会うこともほとんど  
なくなる。・・・あきらめるしかない。彼女と私では年が離れすぎて  
いる。叶うわけがない。望んではいけない。だからこそ、桜田キャプテン  
と結婚してしまおう。キャプテンには申し訳ないと思うが・・・。  
 
今日は、謝恩会。今、目の前に、ロックを歌う美咲洋子がいる。クラス  
の教習生を引き連れてバンドを組んでいるのだ。  
やっぱりかわいい。何度、教官という立場を忘れ、抱きしめたい誘惑に  
駆られたことか・・・。  
静かに桜田キャプテンとグラスを傾けていると、歌を終えた美咲洋子が  
私の前にやってきた。  
 
「三神教官、お話したいことがあります。」彼女は私の腕をつかみ、  
会場の外へとつれていった。  
 
「三神教官、私は最初三神教官のことが大嫌いでした・・・」  
 
あの時言われたことと同じ話・・・今では私に感謝している、と言って  
くれるのだろうと思った。でも、彼女の続けた言葉は・・・私の予想を  
はるかに越えていた。  
 
「今では三神教官のことが・・・だ、大好きなんです。」  
 
えっ、今なんて言った?私がポカンとした顔をしていると、彼女は顔を  
真っ赤にしながらこう言ったのだ。  
 
「好きなんです。・・・三神教官のことが・・・。いつだって教官の  
ことばかり考えてしまうんです。あぁ〜!なんて言ったら伝わるんだろ  
うこの気持ち」  
 
「好きって、どういう意味で言っているのですか?」  
嬉しいくせに・・・わかってるくせに・・・ついつい冷たく言いはなって  
しまう。彼女は、困惑し、うつむいてしまった。  
 
欲しかったものが・・・目の前にある。夢のような話だ。このチャンス  
を逃してはいけない。桜田キャプテンには申し訳ないが、キャプテンとの  
結婚は無しだ。  
私は、うつむく美咲洋子のあごをとり、ゆっくりと自分の唇を彼女の唇  
に近づけていった。ちょうど3センチくらい手前で止めてこう言った。  
 
「この続きをしてほしいくらい好きですか?」  
 
彼女は私の目をじっと見つめて、コクリとうなずいた。  
私はゆっくりと唇を離していった。  
 
「続き・・・してくれないんですか?」  
か細い声で彼女が言う。  
 
「この続きは・・・今夜私の部屋でどうですか?」  
 
「はいっ!!」  
 
そして私は、何事もなかったかのように謝恩会の会場に戻っていった。  
途中、笑みがこぼれそうになるのをこらえながら・・・。  
今夜、美咲洋子と・・・。  
 
 
美咲洋子の独り言 
 
き、緊張した〜!!美咲洋子、一世一代の賭け・・・いやぁまじで緊張した。  
言おう言おうと思っていたけど、謝恩会まで引っ張ってしまった。  
・・・三神教官への告白。。。  
ホントはステージの上から「三神教官好きだぁ〜!」て叫びたかったけど、  
冗談に思われたら嫌だから、真剣に告白してしまった。  
三神教官と桜田キャプテンがいい雰囲気だったから、少し怖気付いたけど  
・・・。  
 
結果は・・・・まさかの成功!!三神教官の部屋に行けるなんて〜!!!  
 
謝恩会の後、駅で待ち合わせ。弥生や関山ちゃんから「美咲さん、  
さっきからずっとにやけてない?」なんて言われたけど、うまく  
ごまかして、いざ駅へ!!  
 
三神教官は先に待っていてくれた。  
「遅くなってスミマセン!!」  
「皆さんとつもる話もあったんじゃないですか?」  
「いえ、それより、なにより、・・・三神教官とつもる話が・・・  
 なんちって!」  
 
三神教官の部屋は、落ち着いた色の家具で揃えられていて、さすが  
大人の女!って感じだった。  
 
「コーヒーでいいですか?」  
「あっ、はい」  
コーヒーなんていいから早くさっきのキスの続きをしてほしい。  
 
三神教官は隣の部屋で部屋着に着替えてきた。  
ち、超かわいい〜!!いつも髪をアップにしていて凛々しい教官が、  
髪をおろしている。スーツを着ている時はわからなかったけど・・・  
三神教官ってけっこう胸がでかい。。。やばい・・・触りたい。  
 
「三神教官、いつもと雰囲気違いますね」  
「その三神教官ての、もうやめませんか?もう教官じゃないんだし」  
「じゃあ、三神さん?・・・」  
「・・・たまきでいいわ」  
「た、たまき・・・さん・・・・じゃああたしのことは洋子って  
 呼んでください」  
 
「洋子・・・ずっとこうしたかった」  
 
三神教官、いや、たまきさんはあたしを引き寄せ、そっとキスを  
してくれた。  
 
 
三神たまきの独り言  
 
何年ぶりだろう。女性の肌に触れたのは・・・。しかもこんなに若い子の  
肌に・・・。  
 
ベッドの中。隣には洋子が寝息を立てている。夢にまでに見た美咲洋子が・・・。  
 
昨夜洋子から愛を告白された。まっすぐに向かってきた彼女に、私は理性を  
抑えることが出来なかった。まさかその日の内に部屋に呼んで・・・  
こんなことになるなんて・・・。普段の私なら自分を抑えてしまったかも  
しれない。  
 
キスをした後・・・しばらく見つめ合うだけで、私は何も出来なかった。  
正直言って・・・めちゃくちゃ緊張していたのだ。  
 
「たまきさん・・・」  
洋子は早く続きをしてほしそうだ。  
 
「飲まないんですか?コーヒー」  
こんな時にコーヒーなんてどうでもいいだろう・・・自分が情けない。  
 
「コーヒーなんていいんだ。あたしは、たまきさんと・・・し、したい  
 んだよっ」  
 
突然、洋子が私を押し倒し、胸をつかんできた。  
 
「アっ、ちょっと待って・・・美咲さん・・・あン」  
 
唇を塞がれ、しばらく洋子に胸を揉まれる感覚に酔っていたが、  
このまま主導権を握らせてはいけない。  
 
「ベッドに行きましょう」  
私は起き上がり、洋子の腕をとった。  
 
うおおおー!  
行き着くとこまでいってくらさい!  
三神にとって、洋子は二人目の女なのかな?  
一人目は事故死した後輩CA。そんな中での葛藤もあったのだろうか。  
トラウマに苦しむ三神教官も見てみたい。  
 
洋子にスイッチを入れられ、私の緊張はとけていた。私は、洋子をベッドに  
寝かせ、一枚ずつ服を脱がせた。洋子の乳房に下を這わせ、愛撫を続けた。  
一番大切な部分に触れると、そこは既に蜜で溢れていた。  
胸を愛撫しながら、指を入れる。絶頂に達する時、洋子は私の名前を呼んだ。  
「たまきぃぃ」  
 
しばらく抱きしめていると、洋子は私の胸に顔をうずめてきた。  
どうやらここが好きらしい。このまま寝かせてあげてもいいと  
思っていると、突然洋子は私の上にのしかかってきた。  
 
「今度はあたしがたまきさんを気持ちよくしてあげる」  
 
 
美咲洋子の独り言  
 
あたしも相当緊張してたけど、たまきさんも相当緊張していたみたいだ。  
キスの後、なかなか先に進まないから我慢できなくて押し倒して  
しまった。たまきさんの胸は柔らかくて気持ちよかったぁ〜。  
それにベッドに行った後のたまきさん、激しかったなぁ。  
女の人を抱いた経験があるのかな。めちゃくちゃ気持ちよくて・・・  
たまきさんの腕の中でそのまま眠ってしまいそうだった。  
 
けど、してもらっておいて返さないのは、美咲洋子の名がすたる!  
 
「今度はあたしがたまきさんを気持ちよくしてあげる」  
 
あたしはたまきさんの上に乗り、たまきさんの胸を揉んであげた。  
 
「洋子・・・あ・・・アン・・・」  
たまきさんの低い声があたしを刺激する。  
 
たまきさんの濡れている部分に、自分のそこを押し付けると、たまき  
さんと一つになった気がした。  
 
気が付くと、やっぱりたまきさんの腕の中で眠ってしまったらしい。  
 
「おはよう」  
「お、おはよう・・ございます。たまきさん、あたし・・・あのまま  
 寝ちゃったの?」  
「気持ちよさそうに寝ていたわよ」  
 
ふいにたまきさんに抱きしめられた。  
「洋子・・・ずっと私のそばにいてくれる?」  
「あったりまえじゃん」  
あたしはたまきさんにそっとキスをしてあげた。  
 
「たまきさん、大好きだ」  
 
 
三神たまきの独り言  
 
私は、今、幸せだ。こんな幸せがやってくるとは思っていなかった。  
美咲洋子という恋人にめぐり会えた。  
まさか恋人になれるなんて思っていなかったけど・・・。  
 
なかなか職場でも会えず、休みも合わなかったりするが、洋子は  
いつも時間を見つけては、私の部屋にやってくる。  
激しく抱き合った次の日は、フライト中腰が痛かったなどと  
言っていたこともある。  
 
無邪気な洋子は、偶然職場で会った時などに、「たまきさ〜ん」  
などと呼びかけてくることがあるが、「ここでは三神さんと呼び  
なさい」といつも注意している。  
職場では、もちろん二人の仲は秘密にしてある。洋子は、言いたくて  
しかたなさそうだが・・・。  
 
洋子に出会って救われた。  
一度は、男性との結婚に逃げようとした自分がいる。でも、今では  
美咲洋子を一生愛していくことを確信している。  
 
「洋子、愛しているわ」  
 
THE END  
 
 
番外編  
桜田信哉の独り言  
 
最近、三神さんを誘ってもいつも断られる。  
それに三神さんはどんどん綺麗になってきている。  
やっぱり、美咲洋子・・・か。  
 
いつも見ていたから、わかってましたよ、三神さん。  
あなたは、いつも美咲さんのことを見ていましたね。それに  
飲みにいくと必ず、美咲さんの話・・・。  
気づきましたよ、すぐに。三神さんは、美咲さんのことを特別な  
感情で見ているということを・・・。  
 
最近、右手の薬指に指輪をしてますね。同じ指輪、美咲さんも  
右手の薬指にしてましたよ。左手の薬指ではなく、右手だけど、  
私の目はごまかされませんよ。  
やはり美咲さんと、そういう関係になったのですね。  
 
三神さん、あなたのことが好きですから、私は潔く身を引きます。  
あなたが幸せになるのに必要なのは、美咲洋子さんだってこと  
ずいぶん前から気づいてましたから・・・。  
幸せになってください。  
 

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