思えば、出会いは最悪だった。
私の大きな勘違いでフェルトを殺そうとしていたのだから。それを思うと、全てが終わった今でも胸が苦しくなる。
私はフェルトが好きだ。でも、その事実を考えると私は想いを打ち明ける資格なんてないのだろう。それに、フェルトにはヴィーゼがいる。同じ家、同じ世界、同じ錬金術士。これだけ共通点が揃っていて、ヴィーゼを嫌いであるはずがない。
「どうしたんだいフィー?泣いてるようだけど。」
「え…?」
心配するマックス兄さんの声。
…どうやら知らない間に涙が溢れていたようだ。声も鼻声になってた。
「いや…なんでもない。」が、私からみても強がっているのはすぐに分かる。ましてや兄妹。分からないほうがおかしい。
「よし、フィー。今日の公務は全部引き受けるから後は自由にしてくるんだ。どのみち、今のままじゃ何も出来ないだろ?」
何も聞かずにすぐに分かってくれたマックスに、フィーはありがとう、と小声で言った。
「また下着同然の姿で逃げ出されても困るしな!」
「なっ…!」
とたんにフィーの顔が真っ赤に茹であがり、マックスを睨み付ける。しかし、マックスは笑い続ける。
「ほら、怒る元気があるんだ。さっさと行った行った。」
フィーは、フェルトがいつもいるドゥルの大樹まで行く事にした。