この日のヴィーゼは珍しく大きな音をたててベッドに沈んだ。
高位のマナに協力を願う調合が続き、彼女はかなり精神的・体力的に疲れていた。
イリスをメイラに預けていてよかったとヴィーゼはぼんやり思う。
幼い子をこの不摂生極まりない生活に付き合わせるわけには行くまい。
一昨日の連絡によると、フェルトは現在、帝国を倒すためにリーゼ宮に向かっているらしい。
これまで以上に危険な事をしている彼の危険をほんの少しでも減らしてあげたくて、
彼女は睡眠時間まで削って採取・調合をしていた。
「まったく、あいかわらずだなぁ。目の前に困ってる人がいると助けずにはいられないんだよね、フェルトは」
……フェルトは今どうしているだろうか?
今まさに危機に陥っていたりしないだろうか?
ヴィーゼはベッドに伏したまま考える。
シェアドリングで交信できるようになり、現状を知ることができるようになると、
目の前にいないという事は彼女には殊更辛くなっていた。
家から少しずつ薄れていく、彼の暮らしていた証―。
部屋はフェルトが当番を忘れたときのように汚れたりはしない。
フェルトがよく乱したままにしていたベッドも整えられたままだ。
ヴィーゼはゆっくりベッドからおりて、彼のベッドの横に座る。
シーツにぎゅっと鼻をおしつけると、うっすらではあるが、慣れた匂い。
ドゥルの大樹が消失した時の地震で、庇われた時を思い出す。
それと同時にヴィーゼの体の奥底がじわりと疼き、
彼女はあきらめたようにため息をつくと、今この場所に誰もいないことをアルテナに感謝した。
同刻、リーゼ宮客室。フェルトはヴィーゼへの報告を書いていた。
実はこの前日にリーゼ宮を奪還していたのだが、
事後処理が思いの外長くかかり、まだ書いていなかったのだった。
報告を書ききってアイテムバッグに入れようと口を開くと、
くぐもったような声がどこからか微かに耳に届いた。
「……ヴィーゼの声?……なんだか苦しそうだな」
音の聞こえてくる場所を探すと、共有されているアイテムバッグであった。
いままで音が聞こえてきたことは無かったのだが、そんなことより彼女が気になった。
最後にもらったメッセージには体調を崩しているなんて書いてなかったはずだが……
心配になったフェルトはアイテムバッグに耳を寄せた。
一方ヴィーゼはフェルトのベッドに上半身だけ預けたまま秘め事に耽っていた。
先ほどまで胸を弄っていた手は再び足の間に向かう。
焦らすように周囲を廻り、時折掠めるように指先が核心に触れるたび体が跳ねた。
誰もいない事もあり、ヴィーゼは少し大胆になっているようだった。
服は少しづつはだけ、やや小振りな双球があらわになっていた。
「フェルトは……いっつも危ないことばっかりしてっ、私の気も知らないでっ……」
敏感な突起を指先でぐっと潰すと、ヴィーゼはびくんと背をそらした。
「ほんとは……ずっと、いっしょにいたいよ……」
青いシーツに落ちた雫はヴィーゼの吐息と共に静かに染みていった。
ヴィーゼはベッドに腰掛けてアイテムバッグからグラビ石をだすと、
秘部に当てぐりぐりと転がし、甘い息をついた。
「あん……はぁっ……いつになったら、帰ってくるの、かな……」
ヴィーゼは下着の上から転がしていたのを股布をずらして中に入れ、
さらにそのまま手のひらで押し付けるように転がすと、やがて腰をひくひくと痙攣させた。
ひとしきり喘いだヴィーゼは濡れ光るグラビ石を放り出すと、
大きく息を吐いてベッドに腰掛け、伝い落ちるほどに愛液に塗れた下着を落とす。
涙と一緒に理性の欠片まで落としていたのか、その瞳に躊躇いの色は無かった。
「……シェアドリングを渡したときに、言えなかった、こと……」
上気して淡く染まった中指の先で溢れた液体を水音たてて玩び、つぶやく。
「帰ってきたら、今度こそ、言うんだから。私はあなたが、好きです、って……」
言うなり、ヴィーゼはその指先を溢れかえる泉の底へ沈めていった。
そのあとは押し殺した声で幾度も呼ばれるフェルトの名と、
鼻にかかった甘い喘ぎや荒い息遣いが続いていた。