「おじさーん、頼まれてた森にでてきたゲヘルン全部片付け終わったよ。」
カボックにたった一軒だけある酒場にそんなことを言いながら、
まるで走ってきたかのように息を切らせながらはいってきた声の主と、
その一行をその酒場の店主であるノーマンはねぎらいの言葉をかけてくれた。
「おお、リイタ達か、ご苦労さん。で、どうだったゲヘルンのほうは?」
「んあ、なにたいしたことなかったぜ数のほうはたったの一匹だったしな。」
「そうか、そいつはよかった。ところでこのあいだのことだが、
東の方から行商人がきてな珍しい物を譲ってもらったんでそいつで新作の料理と酒を作ったんだが食べていくかい?いまなら食べ放題だぞ」
食べ放題そのフレーズを聞いて目の色を変えた人物が若干2名
「本当に食べ放題?おかわり自由?その新作料理美味しい?」
「ニャ―!食べ放題ニャ―いっぱい食べるニャ―!」
「おいおい、リイタもノルンも少し落ち着けよ・・・」
『何か言った(かニャ?)』
「こりゃなに言っても無駄だな。おっさん覚悟しとけよ、こいつら、特にリイタのほうは死ぬほど食うぜ」
「デルサス、あとでちょっと語りたい事があるんでその場動いちゃダメね」
「こ、拳でですかい・・・」
「ははは、大丈夫覚悟はもともとしてあるよ。それじゃいまから作るからテーブルので待っててくれ。」
その言葉に従ってテーブルにつく4人、新作料理を本気で楽しみにしてるノルンのとなりには
さっきのことをまだ引きずってるようなリイタが時折デルサスに殺気を飛ばしているが、
当の本人は我関せずといった表情でどの酒を飲むか選んでいる。
「よーし、できたぞ。たんと食べてくれ。あと食べ終わったあと感想よろしくな。」
「おーい、おっさん俺はこんな酒なんて頼んじゃないぞ」
「そいつはサービスださっき言った珍しい物を使って作った酒だ、多少甘いかも知れんが深みとコクは抜群だぞ」
「そいつは楽しみなこって。そんじゃまさっさと食うかどうやら待ちきれない奴もいるみたいだしな」
さっきまでテーブルの料理に集中してたらしいノルンの口元から何かの液体がぽたぽたと滴り落ちてくる。それを見つけたクレインが、
「ほらノルン口の周りよだれ、よだれ。」
と慌ててノルンの口の周りを拭こうとするが
「ニャ!?だ、大丈夫だニャ、自分で拭けるニャ。」
といいながら、ノルンは自分の着ているローブの袖の部分で口の周りをぬぐっていた。そんな中1人で先に食べてたらしいリイタはすでに一皿目を完食、二皿目に突入していた。
「ほらほら皆早く食べなよ、このお肉甘めのソースとっても合ってておいしいよ。」
「本当だニャ、甘いのにお肉とよくあってるニャ。」
といってるノルンの口の周りにはその料理にかかってる原材料名不明のソースがペットリと付いている。それをまた見つけたクレインは
「ノルン、ちょっとこっち向いて。」
「ニャ?ニャニャニャ!」
有無を言わさず口の周りをナプキンで拭いていた
「これでよし、さあもういいぞ。」
「むぅー・・・子ども扱いしないで欲しいのニャ。」
クレインに子ども扱いされたのが相当お気に召さなかったのか、少々不機嫌顔のノルンもクレインの
「わかった、わかった俺の肉半分やるからむくれるなって。」
の一言で態度一変
「ニャ!!これだからクレインは好きニャ!」
といって先程までの不機嫌顔などなかったのように、また料理に没頭し始めた。クレインの席に少し近づきながら。そしてその一部始終を見ていたリイタとデルサスは、
「へぇークレインってばやっさしいー。私今まであんなことしてもらった事あるかなぁ?」
「おまえら、こんなところでいちゃつくなよ。見ているこっちが恥ずかしくなっちまう。」
「なっ!?そんなことどうでもいいだろ!それよりもこの料理に使ってるっていう珍しい物ってなんだろうなぁ?」
「うまく話題をそらしやがったな・・・」
「本当、ズルーイ。でも珍しい物の詳細もしりたいなぁ。おじさーん、これにつかってる珍しい物って何?」
「お、聞きたいかい?そいつはなあ、マタタビだ。」
ノーマンのその一言による一瞬の静寂ののち、リイタが聞きなおした。
「おじさん、マタタビってあのマタタビだよね?」
「当たり前だ最近は栽培が困難になったらしく滅多に手にはいらないあのマタタビだ。」
「おい、クレイン確かマタタビって猫科の動物にやると・・・」
「ああ、よっぱっらったような状態になるぞ。」
みんなの視線がノルンに集中した。それが合図になったかのように料理を食べてたノルンがイスごとひっくり返った。